Q. なぜ寒い家がなくならないのか?
A. 法律上の最低基準を満たすことと、冬に家中が暖かいことは同じではないからです
断熱基準が強化され、省エネ住宅という言葉も一般的になりました。
それでも、住み始めてから、
- リビングは暖かいが廊下が寒い
- 脱衣所とトイレが寒い
- 足元だけ冷える
- 窓の近くが寒い
- 暖房を止めるとすぐ冷える
- 高断熱住宅なのに電気代が高い
と感じる家はなくなりません。
その理由は、家の暖かさが断熱等級やUA値だけでは決まらないからです。
実際の暖かさには、
- 断熱性能
- 気密性能
- 断熱材の施工
- 窓性能
- 日射取得・日射遮蔽
- 換気設備
- 空調計画
- 間取り
- 建物形状
- 住まい方
が関係します。
「省エネ基準適合」「高断熱仕様」と書かれていても、家中の温度差が小さく、少ないエネルギーで快適になるとは限りません。
寒い家がなくならない最大の理由は、住宅業界が今も「基準を満たしたか」で売り、実際に「暖かく暮らせるか」まで確認していないからです。
1. 最低基準は、快適性の最高基準ではない
住宅の基準は、建築できる最低条件を示す側面があります。
基準を満たしているから違法ではありません。
しかし、それだけで家中が暖かくなるとは限りません。
例えば、断熱性能が一定基準に適合していても、
- 窓の近くで冷気を感じる
- 廊下や脱衣所まで暖房が届かない
- 暖房していない部屋の温度が下がる
- 床付近の温度が低い
ことがあります。
住宅会社から、
「現在の省エネ基準に適合しています」
と説明された場合は、それが最低限の適合なのか、地域の冬でも快適に暮らせる水準なのかを確認する必要があります。
法律へ適合する家と、家族が暖かいと感じる家は同じではありません。
2. 断熱等級だけで暖かさを判断している
断熱等級は、住宅の断熱性能を比較する重要な指標です。
しかし、同じ断熱等級でも、実際の暖かさが同じになるとは限りません。
住宅の体感温度には、
- UA値
- C値
- 窓の種類と大きさ
- 方位
- 断熱材の施工
- 日射
- 換気
- 暖房方式
- 建物の大きさ
- 間取り
が影響するからです。
断熱等級6という表示だけを確認し、施工や気密測定を確認しなければ、実際の性能までは分かりません。
重要なのは等級を取得することではなく、その性能を実際の建物で再現することです。
3. UA値が良くても隙間が多い家がある
UA値は、住宅の外皮からどれだけ熱が逃げやすいかを示す大切な数値です。
数値が小さいほど、設計上は熱が逃げにくい住宅になります。
しかし、UA値は家の隙間の量を直接示す数値ではありません。
隙間の量はC値で確認します。
断熱材が厚くても、住宅に隙間が多ければ、
- 暖房した空気が逃げる
- 冷たい外気が入る
- 足元で冷気を感じる
- 計画換気が機能しにくい
- 部屋ごとの温度差が生まれる
可能性があります。
断熱は、服に例えると厚さです。
気密は、ファスナーをきちんと閉めることです。
どれほど厚い防寒着でも、前が開いていれば寒く感じます。
高断熱と高気密は、セットで考えなければなりません。
4. 気密測定をしない会社が多い
C値は、設計図だけでは確定できません。
実際に完成した建物へ測定機を設置し、どれだけ隙間があるかを測る必要があります。
気密性能は、
- 大工の施工
- 気密シート
- 窓周辺の処理
- コンセント
- 配管・配線の貫通部
- 床・壁・天井の取り合い
など、現場での細かな作業によって決まります。
それにもかかわらず、
「当社は高気密住宅です」
「過去の平均C値は良好です」
と説明するだけで、全棟測定をしない会社があります。
同じ仕様でも、建物ごとに施工条件は違います。
過去の家のC値が良くても、これから建てる家のC値が良いとは限りません。
本当に高気密か確かめるには、建物ごとの測定結果が必要です。
5. 断熱材は入っていても、施工に隙間がある
断熱材は、商品名だけで性能が決まるものではありません。
断熱材の性能を発揮させるには、隙間なく連続して施工する必要があります。
例えば、
- 柱と断熱材の間に隙間がある
- 配管周辺に断熱材が入っていない
- 断熱材が潰れている
- 筋交いや金物周辺が欠損している
- 天井と壁の断熱がつながっていない
- 窓周辺の施工が不十分
といった状態では、そこが熱の逃げ道になります。
計算上のUA値が良くても、施工不良まですべて数字へ反映されるわけではありません。
しかも断熱材は、完成すると壁や天井の中へ隠れます。
完成見学会だけでは確認できません。
構造見学、施工写真、検査記録を確認し、断熱施工を誰がチェックするのか聞く必要があります。
6. 窓の性能と大きさを軽視している
冬の寒さを考えるうえで、窓は重要です。
壁へ十分な断熱材を入れても、窓の性能が低かったり、窓が必要以上に大きかったりすると、熱が逃げやすくなります。
窓の近くで寒く感じる原因には、
- ガラスや枠の表面温度が低い
- 窓付近で冷やされた空気が床へ下がる
- サッシ周辺に隙間がある
- 大きな窓から熱が逃げる
ことなどがあります。
南側の窓は、冬の日射を取り入れられる場合があります。
しかし、方位や周辺建物を考えずに大きくしても、期待通りの日射が得られるとは限りません。
また、夏には日射を遮らなければ室温が上がります。
窓は大きければ良い、高性能ならどこへ付けてもよいというものではありません。
方位、大きさ、ガラス、サッシ、庇を総合して計画する必要があります。
7. リビングだけを暖房する前提で設計されている
昔の住宅では、家全体ではなく、人がいる部屋だけを暖房する方法が一般的でした。
リビングではストーブやエアコンを使い、廊下、トイレ、脱衣所は暖房しない。
この考え方では、部屋ごとの温度差が大きくなります。
新築住宅でも、断熱・気密性能と空調計画が不十分なら同じ問題が残ります。
リビングは22℃でも、脱衣所が10℃という家では、家全体が暖かいとは言えません。
特に入浴時は、暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動し、熱い浴槽へ入るため、身体への負担が大きくなります。
暖かい家とは、リビングの温度だけが高い家ではありません。
生活する範囲の温度差を小さくできる家です。
8. 換気によって熱を捨て続けている
住宅には換気が必要です。
ただし、暖めた室内空気を排出し、冷たい外気をそのまま取り入れれば、室温が下がりやすくなります。
冬の換気による熱損失を抑える方法の一つが、熱交換換気です。
排出する空気の熱を回収し、取り入れる外気へ移すことで、換気による温度低下を抑えやすくします。
ただし、設備の熱交換率だけを見ればよいわけではありません。
- 気密性能
- 給排気口の配置
- 空気の流れ
- 必要換気量
- フィルターの清掃
- 設備の維持管理
- 低温時の運転特性
なども関係します。
高性能な換気設備を付けても、家が隙間だらけなら、計画した場所から空気を取り入れにくくなります。
断熱、気密、換気は一体で考える必要があります。
9. 空調計画が住宅性能と合っていない
高断熱高気密住宅でも、エアコンの位置や能力が不適切なら、温度差が生まれることがあります。
例えば、
- 暖気が吹抜け上部へたまる
- 個室まで暖気が届かない
- 扉を閉めると室温が下がる
- エアコンの風が直接人へ当たる
- 建物に対して能力が不足している
- 室外機の設置環境が悪い
といった問題です。
「高性能住宅だからエアコン1台で家中暖かい」という説明も、すべての間取りに当てはまるわけではありません。
建物面積、部屋の配置、日射、扉の開閉、家族の生活習慣によって条件は変わります。
必要なのは、空調設備の商品を選ぶことではなく、家全体で空気と熱がどう動くかを設計することです。
10. 吹抜けや大空間だけを先に決める
吹抜けや大きなLDKは、開放感のある魅力的な空間をつくれます。
しかし、空間の体積が大きくなるため、断熱・気密・空調計画が不十分な家では寒さを感じやすくなる場合があります。
問題は吹抜けそのものではありません。
性能と空調が不足した吹抜けです。
同じように、
- リビング階段
- 大きな窓
- 勾配天井
- 玄関直結のLDK
- 広い廊下
なども、設計条件によって室温へ影響します。
間取りを先に決め、後から設備で暖めようとすると、冷暖房費が増えることがあります。
空間デザインと温熱設計は、同時に考える必要があります。
11. 価格競争で見えない性能が削られる
住宅の価格を安く見せるために、最も削られやすいのが完成後に見えなくなる部分です。
- 断熱材の厚み
- 窓性能
- 気密施工の手間
- 気密測定
- 熱交換換気
- 現場検査
- 空調設計
これらを削っても、完成写真では違いが分かりにくいからです。
同じ外観、同じキッチン、同じ30坪なら、一般の方には似た家に見えます。
しかし、冬の室温、温度差、光熱費には差が出ます。
安いこと自体が悪いのではありません。
問題は、何を削って安くしているのか説明しないことです。
価格を比較するときは、建物本体価格だけでなく、断熱等級、UA値、C値、窓、換気、気密測定まで同じ条件で比較してください。
12. お客様が見える設備を優先しやすい
家づくりでは、高級キッチンや造作洗面へ50万円追加することには価値を感じても、断熱、気密、換気へ同じ金額を使うことには迷う人がいます。
理由は、設備は目に見え、断熱材は完成すると見えなくなるからです。
モデルハウスやSNSでも、写真映えする設備や内装が中心になります。
その結果、
- キッチンを上位仕様にする
- タイルを追加する
- 間接照明を増やす
- 建物を広げる
一方で、
- 窓性能を下げる
- 気密測定をしない
- 換気設備を安価にする
- 断熱性能を最低限にする
という逆転が起こります。
キッチンは将来交換できます。
しかし、壁の中の断熱と気密を全面的に直すには、大きな費用がかかります。
見える設備より先に、見えない基本性能を確保すべきです。
13. 「寒ければ暖房を強くすればいい」と考えている
性能が低くても、大きな暖房設備を使えば室温を上げることはできます。
しかし、暖めた熱が次々に外へ逃げる家では、暖房費が増えます。
また、空気の温度が高くても、窓、壁、床の表面温度が低ければ、体から熱を奪われ、寒く感じることがあります。
暖かい家とは、強い暖房で室温だけを上げた家ではありません。
熱を逃がしにくくし、壁、床、窓の表面温度を下げにくくした家です。
エアコンの大きさで解決する前に、建物そのものの性能を整える必要があります。
14. 完成後の室温を確認していない
住宅会社が性能を説明するとき、UA値や断熱等級だけを示すことがあります。
しかし、お客様が知りたいのは数値そのものではありません。
- 冬の朝、室温はどのくらいか
- 暖房を止めると、どのくらい下がるか
- リビングと脱衣所の温度差はどの程度か
- どの暖房を、何時間使うのか
- 実際の電気代はどの程度か
という暮らしの結果です。
もちろん、室温と電気代は、外気温、家族人数、設定温度、日射、生活習慣によって変わります。
そのため、特定の金額や温度を保証することは難しいでしょう。
それでも、同じ地域で建てた実例、温度データ、光熱費の参考値を示せる住宅会社なら、判断材料が増えます。
性能数値だけでなく、実際の暮らし方まで説明できるか確認してください。
寒い家を避けるための確認項目
| 確認する部分 | 確認内容 |
|---|---|
| 断熱 | 断熱等級、建物ごとのUA値、断熱材の厚み |
| 気密 | 全棟測定か、C値の基準、未達時の対応 |
| 窓 | サッシ、ガラス、ガス、方位、大きさ |
| 施工 | 断熱・気密施工の写真、検査方法 |
| 日射 | 冬の日射取得、夏の日射遮蔽 |
| 換気 | 方式、熱交換率、空気経路、清掃方法 |
| 空調 | エアコンの位置、能力、部屋間の温度差 |
| 間取り | 吹抜け、階段、扉、生活範囲 |
| 実績 | 過去のC値、室温・光熱費の参考データ |
| 総額 | 必要な性能が見積もりに含まれているか |
住宅会社へ質問すべきこと
- 断熱等級はいくつですか
- この建物のUA値はいくつですか
- 気密測定は全棟で行いますか
- C値の基準はいくつですか
- 基準を満たさない場合は修正しますか
- 断熱施工を誰が確認しますか
- 窓のサッシとガラスの仕様は何ですか
- 冬の日射をどのように取り入れますか
- 夏の日射をどのように遮りますか
- 換気方式と熱交換率はいくつですか
- エアコンは何台、どこへ設置しますか
- 脱衣所やトイレの温度差をどう抑えますか
- 同じ地域での室温や光熱費の実例はありますか
- 断熱・気密・換気は標準価格に含まれていますか
「高断熱だから暖かいです」という回答だけでは不十分です。
数字、測定、施工、空調まで説明してもらってください。
デザインハウス甲府の考え方
山梨県は、夏の暑さだけでなく、冬の朝晩の冷え込みにも備える必要があります。
だから私たちは、エアコンの能力だけに頼るのではなく、建物そのものから熱を逃がしにくくすることを重視しています。
デザインハウス甲府では、
- 壁厚約160mmの2×6工法
- 断熱等級6、UA値0.46以下
- 全棟気密測定、C値0.7以下
- Low-Eアルミ樹脂複合サッシ・アルゴンガス
- 熱回収率92%の第一種熱交換換気
- 全棟許容応力度計算による耐震等級3
- 制震装置evoltz
- 太陽光発電8kW以上
- 長期優良住宅
- 住宅完成保証
を標準としています。
UA値を計算するだけではなく、全棟で気密測定を行うのは、実際の建物に隙間が少ないことを確認するためです。
価格を抑えるために、断熱、気密、耐震を削ることはしません。
最初に見直すのは、必要以上の面積、複雑な建物形状、使用頻度の低い部屋、過剰な設備や装飾です。
24坪平屋3LDKは総額2,050万円、30坪二階建て3LDKは総額2,200万円を一つの目安としています。いずれも付帯工事・建築確認・消費税込みです。
建築時だけ安い家ではなく、建てた後の光熱費と健康まで考えた家を、無理のない総額で提案します。
俺流結論
寒い家がなくならないのは、技術がないからではありません。
暖かい家を建てる方法は、すでに分かっています。
断熱を高める。
隙間を減らす。
窓を適切に選ぶ。
日射を設計する。
熱を回収しながら換気する。
建物に合った空調を計画する。
そして、完成後に測定して確かめる。
問題は、それを標準で行うかどうかです。
住宅業界では今も、本体価格を安く見せることが優先され、完成後に見えなくなる断熱、気密、換気が後回しになることがあります。
お客様も、目に見えるキッチンや内装へ予算を使い、見えない性能を削ってしまうことがあります。
しかし、冬に家族を守るのは、豪華なキッチンではありません。
壁の中の断熱材、窓、気密施工、換気、空調計画です。
「高断熱住宅です」という言葉ではなく、断熱等級、UA値、C値、全棟測定、窓、換気を確認してください。
特にC値を測らない高気密住宅は、結果を確認していない高気密住宅です。
寒い家をなくすには、基準を満たすだけでは足りません。
設計し、施工し、測定し、結果を公開するところまで必要です。
暖かい家は、営業トークではつくれません。
数字と現場でつくられます。
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