第一種換気は元が取れる?回収年数の考え方
結論から言うと、第一種熱交換換気が光熱費だけで元を取れるかは、住宅ごとに違います。
「熱回収率が高いから必ず元が取れる」「30年住めば差額を回収できる」とは断定できません。
建築地域、断熱・気密性能、設備価格、換気風量、冷暖房の使い方、電気料金、フィルター代、将来の修理費によって結果が変わるからです。
第一種換気の価値は、光熱費の削減だけではありません。
外気を室温に近づけて取り込む快適性、給気経路を管理しやすいこと、フィルターを通して外気を取り込めることまで含めて判断する必要があります。
なぜ第一種換気は元が取れると言われるのか
第一種熱交換換気は、給気と排気の両方を機械で行い、排気する室内空気から熱を回収します。
第三種換気では、暖房や冷房で整えた室内空気を排出し、外気を自然給気口からそのまま取り入れます。
冬は冷たい外気、夏は暑く湿った外気を室内へ入れるため、その温度差を冷暖房設備で再び調整しなければなりません。
第一種熱交換換気は、捨てる空気が持つ熱を利用して外気の温度を室温へ近づけるため、換気による冷暖房負荷を抑える効果が期待できます。
この冷暖房エネルギーの削減分を積み重ねれば、第三種換気との初期費用差を回収できる可能性がある、というのが「元が取れる」といわれる理由です。
熱回収率92%は光熱費92%削減ではない
ここは特に誤解されやすい部分です。
熱回収率92%と表示されていても、住宅全体の暖房費や冷房費を92%削減できるという意味ではありません。
熱回収率は、換気によって排出する空気と取り入れる空気の間で、どの程度の熱を回収できるかを示す設備性能です。
住宅の光熱費には、窓、壁、屋根、床から逃げる熱、日射、家電、給湯、家族の生活時間なども影響します。
また、カタログ上の熱回収率は一定の測定条件による数値です。実際の住宅では、外気温、風量、フィルターの汚れ、施工状態などによって結果が変わります。
熱回収率については、熱回収率92%とは?で詳しく解説しています。
回収年数はどう計算するのか
第一種換気の回収年数を検討する場合、単純な考え方は次のようになります。
回収年数=追加で必要な総費用÷年間の実質削減額
追加で必要な総費用には、次の費用を含めます。
- 第三種換気との初期費用差
- フィルター交換費用の差
- 定期的なメンテナンス費用
- ファンや基板などの修理費
- 将来の本体交換費用
年間の実質削減額は、次のように考えます。
冷暖房費の削減額-換気設備の電気代増加分
第一種換気は熱を回収しますが、給気と排気の両方でファンを動かします。
熱回収によって減らせる冷暖房費だけを計算し、換気設備自体の消費電力を無視すると、実際より有利な結果になる可能性があります。
反対に、フィルター代や修理費を必要以上に大きく設定すれば、不利な結果になります。
公平に比較するには、同じ間取り、同じ断熱性能、同じ設定温度、同じ電気料金で計算することが必要です。
具体的な金額を断定できない理由
「第一種換気なら年間いくら得になる」という数字だけで判断するのは危険です。
年間の削減額は、次の条件で変わります。
- 建築する地域の気候
- 住宅の床面積
- UA値とC値
- 家族の在宅時間
- 冷暖房する部屋と時間
- エアコンの設定温度
- 換気設備の消費電力
- 実際の換気風量
- 電気料金
- 熱交換器の性能
例えば、冷暖房をほとんど使用しない家庭では、回収できる熱そのものが少なくなります。
一方、冬と夏に長時間冷暖房を使う家庭では、熱交換によるメリットが大きくなる可能性があります。
住宅会社から回収年数を提示された場合は、年間削減額だけでなく、計算条件と使用した電気料金まで確認してください。
高気密でなければ回収計算が崩れる
第一種熱交換換気の効果を生かすには、住宅の気密性能が重要です。
建物に隙間が多いと、外気が熱交換器を通らずに室内へ入ります。
熱交換していない外気が窓まわり、配管まわり、床などから侵入すれば、計算上期待した効果を得にくくなります。
C値が設計図から自動的に決まることはありません。実際の建物で気密測定を行わなければ、隙間の量は確認できません。
第一種換気の費用対効果を説明しながら、全棟で気密測定を行っていない住宅会社には注意が必要です。
高気密と換気の関係とは?でも、計画換気と気密性能の関係を解説しています。
光熱費以外の価値もある
光熱費だけで元を取れなくても、第一種熱交換換気に価値がないとは限りません。
冬に冷たい外気が給気口から直接入る第三種換気と比較すると、熱交換型の第一種換気は、給気による温度差を和らげやすくなります。
冷気を不快に感じて給気口を閉めてしまうと、必要な換気量を確保できません。
毎日24時間使う設備だからこそ、室内へ入る空気の温度や、換気を止めずに暮らせる快適性も判断材料になります。
また、適切な給気フィルターを使用すれば、花粉や外気中の粉じんなどを減らして取り込むことができます。
ただし、住宅設備で花粉症を治療できるわけではありません。詳しくは、高気密住宅は花粉症対策に効果がある?をご覧ください。
維持できなければ元は取れない
どれだけ高性能な換気設備でも、フィルターが目詰まりした状態では、必要な換気風量を確保しにくくなります。
換気風量が減れば、熱交換性能以前に、室内の空気を適切に入れ替えられません。
第一種換気を選ぶ前に、次の点を確認してください。
- フィルターの価格と交換頻度
- 清掃に必要な時間
- 本体と点検口の位置
- 熱交換素子の清掃方法
- ファンや基板の交換可否
- 故障時の修理窓口
- 将来の本体交換方法
高性能でも、住む人が手入れできない設備は、長期的な費用対効果が悪くなります。
初期費用とカタログ性能だけでなく、30年間維持できる設備かどうかを確認する必要があります。
第三種換気の方が合理的な場合もある
すべての住宅で第一種換気が最適とは限りません。
建築費を優先したい場合、比較的温暖な地域、冷暖房の使用時間が短い家庭、将来の設備管理を簡単にしたい場合には、第三種換気が合理的な選択になることもあります。
ただし、第三種換気でも気密性能と給気口の配置は重要です。
「安いから第三種」「高性能住宅だから第一種」と決めるのではなく、家族の暮らし方と住宅全体の設計から選びます。
第三種換気のメリットと注意点は、第三種換気とは?で確認できます。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、山梨の冬の冷え込みと夏の暑さを考え、第一種熱交換換気を重視しています。
住宅性能として組み合わせているのは、次の内容です。
- 第一種熱交換換気
- 熱回収率92%
- C値0.7以下
- 全棟で気密測定
- 断熱等級6
- UA値0.46以下
設備単体で元を取るのではなく、断熱・気密・換気を一体で設計し、冷暖房した空気をできるだけ無駄にしない住宅を目指しています。
俺流ポイント
私は「第一種換気なら必ず元が取れます」とは説明しません。
家族構成も暮らし方も将来の電気料金も違うのに、すべての住宅で同じ回収年数になるはずがないからです。
私なら住宅会社に、年間削減額ではなく、その計算条件を聞きます。
第三種換気との差額、換気設備の消費電力、フィルター代、修理費、想定する冷暖房時間、UA値、実測C値まで確認します。
それを説明できず、「高性能だから得です」と言う会社は選びません。
元が取れるかだけで考えるなら、第一種換気が正解とは限りません。
しかし、冬の冷気を和らげ、計画した場所から外気を取り入れ、換気を止めずに快適に暮らすことまで含めれば、光熱費だけでは測れない価値があります。
回収するのは設備代だけではありません。毎日の快適性と、無理なく換気を続けられる住環境です。
山梨県甲府市・甲斐市周辺で第一種換気を検討している方には、都合のよい削減額ではなく、初期費用、維持費、消費電力、住宅性能を含めた条件でご説明します。










