熱交換率92%とは?
結論から言うと、熱交換率92%とは、室内から排出する空気と外気の温度差に対して、熱交換素子が92%相当の熱を給気側へ移す性能を示します。
ただし、次の意味ではありません。
- 外気が室温の92%になる
- 暖房費が92%下がる
- 家全体の熱損失を92%防げる
- 常にカタログどおりの給気温度になる
92%は、換気設備の決められた試験条件における性能値です。数字の大きさだけでなく、その意味と測定条件を理解する必要があります。
熱交換換気の仕組み
24時間換気では、室内の汚れた空気を外へ排出し、新鮮な外気を室内へ取り入れます。
一般的な第三種換気では、冬に0℃の外気が給気口からそのまま入ります。その分、暖房で再び空気を暖めなければなりません。
熱交換換気は、排出する暖かい室内空気から熱を回収し、冷たい外気へ移してから室内へ給気します。
夏は反対に、冷房された室内空気の冷たさを利用し、高温の外気を室温へ近づけて取り入れます。
熱交換換気の基本的な仕組みは、熱交換換気とは?で詳しく解説しています。
熱交換率92%の計算例
温度交換効率が92%の場合、冬の給気温度は次の式で考えられます。
給気温度=外気温+(室温-外気温)×温度交換効率
例えば、次の条件で計算します。
- 室温20℃
- 外気温0℃
- 温度交換効率92%
室温と外気温の差は20℃です。
20℃×92%=18.4℃となるため、理論上の給気温度は、
0℃+18.4℃=18.4℃
となります。
熱交換を行わない場合は0℃の外気が入りますが、温度交換効率92%なら、試験条件上は18.4℃程度まで室温へ近づけて給気する計算です。
ただし、これは単純化した計算例です。実際の給気温度は、外気温、室温、風量、湿度、ダクト、本体の設置場所などによって変わります。
「熱回収率」と「温度交換効率」は同じなのか?
住宅業界では、「熱交換率」「熱回収率」「温度交換効率」という言葉が、同じような意味で使われることがあります。
しかし、厳密には製品によって表示している内容が異なります。
- 温度交換効率:温度に関する熱をどの程度交換するか
- 湿度交換効率:水蒸気に関する働きをどの程度交換するか
- 全熱交換効率:温度と湿度の両方を含めた熱交換性能
- 熱回収率:一般的に回収できる熱の割合を示す表現
製品を比較するときは、単に「92%」という数字を見るのではなく、何を92%回収する数値なのかを確認する必要があります。
暖房時と冷房時で効率が異なる製品や、風量設定によって数値が変わる製品もあります。
92%なら残りの熱損失は8%だけなのか?
熱交換率92%でも、住宅全体の熱損失が8%になるわけではありません。
熱交換の対象になるのは、換気設備を通過する給気と排気です。住宅では、換気以外にも次の場所から熱が移動します。
- 屋根
- 外壁
- 床や基礎
- 窓
- 玄関ドア
- 建物の隙間
さらに、レンジフード、浴室換気、局所換気など、熱交換素子を通らずに排気する設備もあります。
したがって、熱交換率92%は、家全体の省エネ率ではありません。
断熱性能を示すUA値、気密性能を示すC値、窓の性能、換気設備を組み合わせて判断する必要があります。
カタログ値と実際の性能が異なる理由
カタログに記載された熱交換率は、決められた条件で測定された設備単体の性能です。
実際の住宅では、次の条件によって給気温度や省エネ効果が変わります。
風量の違い
風量設定が変わると、空気が熱交換素子を通過する速度も変わります。製品によっては、弱運転と強運転で熱交換効率が異なります。
ダクトからの熱損失
ダクトが断熱区画の外を通っていたり、断熱処理が不十分だったりすると、熱交換した後の空気が給気口へ届くまでに熱を失います。
給気と排気のバランス
ダクトの長さ、曲がり、分岐、フィルターの詰まりなどによって給排気の風量が変化します。換気設備は、本体性能だけでなくダクト設計と風量調整が重要です。
住宅の隙間
気密性が低い住宅では、熱交換器を通らない外気が隙間から入ります。どれだけ熱交換率が高くても、設備を通過しない空気から熱を回収することはできません。
熱交換換気を生かすには、高気密と換気の関係とは?を理解することが重要です。
熱交換率が高ければ良い換気なのか?
熱交換率は重要ですが、その数字だけでは良い換気設備か判断できません。
比較すべき項目は次のとおりです。
- 必要な換気量を確保できるか
- 各部屋へ空気が届くか
- 実効換気量が確保されているか
- ファンの消費電力
- 運転音
- フィルターの性能
- 清掃や交換のしやすさ
- 本体の点検・交換方法
- 交換部品の価格と供給体制
熱交換率が高くても、ファンの消費電力が大きい、運転音がうるさい、清掃が難しい、必要な風量が出ないという設備では、総合的に優れているとは言えません。
国土交通省の資料でも、全熱交換器は効率だけでなく、風量、保守点検などを考慮して選定することが示されています。
フィルターが詰まると性能を生かせない
熱交換換気には定期的なメンテナンスが必要です。
外気側のフィルターへ、ほこり、虫、花粉などがたまると、給気量が低下する可能性があります。給気と排気のバランスが崩れれば、設計した換気経路も維持しにくくなります。
入居前には、次の内容を確認してください。
- フィルターの清掃頻度
- フィルターの交換時期
- 交換部品の品番と価格
- 本体の点検方法
- 熱交換素子を清掃できるか
- 将来の機器交換方法
熱交換率92%という性能を維持するには、設備を設置するだけでなく、住み始めてから適切に管理する必要があります。
光熱費は92%下がるのか?
熱交換率92%でも、住宅全体の光熱費が92%削減されるわけではありません。
家庭の電気は、冷暖房だけでなく、給湯、照明、調理、家電などにも使用されます。また、換気設備自体もファンを動かすために電気を使います。
光熱費への効果は、次の条件によって異なります。
- 地域の外気温
- UA値とC値
- 住宅の広さ
- 家族構成
- 冷暖房時間
- 設定温度
- 電気料金
- 換気風量
- 太陽光発電の有無
熱交換率から、毎月の電気代を一律に計算することはできません。
費用対効果は、第一種換気は元が取れる?でも解説しています。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、熱回収率92%の第一種熱交換換気を基本としています。
ただし、換気設備単体の数字だけを高性能住宅の根拠にはしていません。
- 断熱等性能等級6
- UA値0.46以下
- C値0.7以下
- 全棟気密測定
- 第一種熱交換換気
- 熱回収率92%
山梨県は冬の朝晩が冷え込み、夏は高温になります。外気と室温の差が大きい時期ほど、換気による熱損失を抑える意味が大きくなります。
一方、建物に隙間が多ければ、熱交換器を通らない外気が入ります。
そこで、断熱・気密・換気を一つの仕組みとして設計し、実際の住宅でC値を測定しています。
俺流ポイント
私はお客様に、
「92%という数字だけを買わないでください」
とお話ししています。
熱交換率92%は、換気設備として高い性能を示す数字です。しかし、その数字だけで住宅の快適性や電気代は決まりません。
必要なのは、
UA値0.46以下の断熱性能、C値0.7以下の気密性能、全棟気密測定、適切な換気設計、入居後のメンテナンス。
このすべてを組み合わせることです。
住宅会社を比較するときは、「熱交換率はいくつですか」だけでなく、何の効率なのか、どの風量での数値なのか、実際の住宅で換気を機能させる気密性能があるのかまで確認してください。
設備の最高値ではなく、家全体でその性能を生かせるかを見ることが大切です。










