Q. なぜ制震装置が必要なのか?
A. 耐震性能だけでは、繰り返す地震による建物の損傷まで完全には防げないからです
「耐震等級3の家なら、制震装置は必要ないのでは?」
そう考える方は少なくありません。
しかし、耐震と制震では役割が違います。
耐震は、柱、梁、床、耐力壁などで建物を強くし、大地震で倒壊しないことを目指す考え方です。
一方、制震は、建物へ伝わった揺れのエネルギーを制震装置が吸収し、建物の変形や損傷を抑えるための仕組みです。
つまり、
- 耐震=地震に耐える
- 制震=揺れを吸収する
という関係です。
大切な家族と住宅資産を守るためには、どちらか一方ではなく、「耐震+制震」で考えることが重要です。
1. 耐震等級3でも建物は揺れる
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級です。
ただし、耐震等級3だからといって、地震で建物がまったく揺れないわけではありません。
耐震性能の高い家は、構造を強くすることで地震の力に耐えます。
そのため、大きな地震が発生すれば、建物には相応の力が加わります。
倒壊を免れたとしても、
- 壁紙が切れる
- 石膏ボードが割れる
- 外壁にひびが入る
- 建具が開閉しにくくなる
- 接合部が変形する
- 耐力壁が損傷する
といった被害が起こる可能性があります。
耐震等級は非常に重要ですが、「倒壊しない」と「無傷で住み続けられる」は同じ意味ではありません。
制震装置は、建物の揺れや変形を抑えることで、構造体や内外装の損傷を減らす役割を担います。
2. 本震だけでなく余震が繰り返される
大地震は、一度揺れて終わるとは限りません。
本震の後に、何度も余震が発生することがあります。
最初の地震に耐えた建物でも、柱や梁の接合部、耐力壁、釘、金物などに目に見えない損傷が残っている可能性があります。
そこへ次の地震が来れば、建物の損傷が少しずつ蓄積します。
これは、金属を何度も曲げると弱くなるのと似ています。
1回目の揺れに耐えたからといって、2回目、3回目も同じ強さを維持できるとは限りません。
制震装置は揺れるたびに地震エネルギーを吸収し、構造体が受ける負担を小さくします。
制震装置が必要なのは、最初の大地震だけでなく、その後に繰り返す余震から家を守るためでもあります。
3. 「倒壊しない」だけでは生活を守れない
住宅の耐震性能を考えるとき、倒壊するかどうかだけで判断してはいけません。
仮に家が倒壊しなくても、構造体や内外装が大きく損傷すれば、そのまま住み続けられない可能性があります。
修理が必要になれば、
- 仮住まい費用
- 引っ越し費用
- 壁や天井の修繕費
- 外壁の補修費
- 建具の交換費
- 家具や家電の買い替え費
などが発生します。
地震保険に加入していても、必ず修理費の全額が支払われるわけではありません。
住宅ローンが残っている状態で修理費まで必要になれば、家計への負担はさらに大きくなります。
家づくりで考えるべきなのは、「命を守ること」に加えて、「地震後も生活を続けられること」です。
制震装置は、地震後に発生する修理費や生活再建の負担を減らすための備えでもあります。
4. 建物の変形を抑えることが重要
地震被害は、建物が大きく変形することで発生します。
建物が左右に揺れると、柱、梁、耐力壁、接合部、外壁、石膏ボードなどへ負担がかかります。
この変形が大きいほど、構造体や仕上げ材が損傷しやすくなります。
制震装置は、建物の変形に合わせて作動し、揺れのエネルギーを吸収します。
車に例えるなら、サスペンションやショックアブソーバーに近い役割です。
車体を頑丈にするだけでなく、路面から受ける衝撃を吸収する仕組みがあることで、車体や乗員への負担を小さくできます。
住宅も同じです。
構造を強くする耐震性能に、揺れを吸収する制震性能を加えることで、建物へ加わる負担を抑えやすくなります。
5. 耐震等級3の計算方法にも違いがある
「耐震等級3」と表示されていても、すべての住宅が同じ方法で安全性を確認しているとは限りません。
木造住宅の構造確認には、主に次の方法があります。
| 確認方法 | 主な内容 |
|---|---|
| 壁量計算 | 必要な耐力壁の量や配置などを確認 |
| 品確法による性能表示計算 | 壁量、床倍率、接合部などを確認 |
| 許容応力度計算 | 柱、梁、耐力壁、床、接合部などへ加わる力を詳細に計算 |
許容応力度計算では、建物へ加わる地震力や風圧力に対して、それぞれの部材が安全かを確認します。
耐震等級3を選ぶときは、等級だけでなく「どの計算方法で確認しているのか」まで聞いてください。
制震装置を付けたからといって、基本となる構造計算を省略してよいわけではありません。
順番としては、
- 許容応力度計算で耐震等級3を確保する
- 地盤と基礎を適切に設計する
- そのうえで制震装置を加える
ことが重要です。
弱い構造へ制震装置を付けるのではなく、強い構造に制震性能を加えるという考え方です。
6. 制震装置なら何でも同じではない
制震装置には、さまざまな種類があります。
- オイルダンパー
- ゴム系ダンパー
- 金属系ダンパー
- 摩擦系ダンパー
それぞれ、揺れを吸収する仕組みや作動特性が異なります。
重要なのは、「制震装置付き」という言葉だけで判断しないことです。
確認したいのは、次の項目です。
- 装置のメーカーと商品名
- どの程度の揺れから作動するのか
- 小さな揺れにも対応できるのか
- 繰り返す地震に対応できるのか
- 温度変化による性能差はあるか
- 耐久性に関する試験をしているか
- 何か所に設置するのか
- 建物ごとに配置を検討しているか
- 保証期間は何年か
- 将来の点検や交換が必要か
単に「サービスで付けます」「標準で何本入ります」という説明では不十分です。
建物の間取りや壁配置が違えば、制震装置を設置すべき場所も変わります。
本数だけでなく、どこへ、どのような根拠で配置するのかが重要です。
7. 安価な制震装置を付ければ安心とは限らない
住宅会社の中には、耐震性能を十分に説明しないまま、「制震装置が付いているから安心です」と営業する会社もあります。
しかし、制震装置は耐震構造の代わりにはなりません。
- 許容応力度計算をしていない
- 耐力壁の配置バランスが悪い
- 床の強さを確認していない
- 柱や梁の接合部が弱い
- 基礎設計が不十分
- 地盤に合った対策をしていない
このような住宅へ制震装置だけを付けても、根本的な耐震性能が高くなったとはいえません。
広告に「耐震+制震」と書かれていても、構造計算の内容を確認しなければ本当の安全性は分かりません。
制震装置は、住宅を強く見せるための飾りではありません。
構造計算に基づいた耐震性能を補完する設備です。
8. 太陽光発電を搭載する家ほど構造確認が必要
現在は、大容量の太陽光発電を搭載する住宅が増えています。
太陽光パネルを屋根へ載せれば、その重量も建物に加わります。
さらに、屋根の形状、積雪、風圧力なども構造へ影響します。
太陽光発電を採用する場合は、パネルの重量を含めた状態で構造計算を行っているか確認してください。
太陽光パネルを載せる前の条件で耐震等級3を計算し、契約後にパネルを追加するような方法では、実際の建物条件と計算条件が一致しません。
制震装置についても、太陽光発電を含めた建物全体の重量や壁配置を考慮して配置する必要があります。
「太陽光付き」「耐震等級3」「制震装置付き」という言葉を別々に確認するのではなく、すべてを含めた建物として安全性を確認することが重要です。
9. 平屋でも制震装置を検討する意味がある
「平屋は地震に強いから、制震装置は必要ない」と説明されることがあります。
確かに平屋は、2階建てと比較して重心を低くしやすく、構造的に有利な面があります。
しかし、平屋なら必ず安全というわけではありません。
平屋でも、
- 大きなLDKを設ける
- 南側へ大きな窓を並べる
- 壁の少ない間取りにする
- 勾配天井を採用する
- 大容量の太陽光パネルを載せる
- ビルトインガレージを設ける
といった設計によって、構造上の条件は変わります。
平屋であっても許容応力度計算を行い、そのうえで制震装置の必要性と配置を検討するべきです。
「平屋だから大丈夫」ではなく、「計算して安全性を確認したから大丈夫」が正しい考え方です。
制震装置を採用する前の確認項目
住宅会社へ、次の質問をしてください。
- 耐震等級はいくつですか
- 許容応力度計算を行いますか
- 構造計算書を施主へ渡しますか
- 太陽光パネルの重量を含めて計算しますか
- 地盤調査の結果を基礎設計へ反映しますか
- 制震装置のメーカーと商品名は何ですか
- どのような仕組みで揺れを吸収しますか
- 小さな揺れから作動しますか
- 繰り返す地震に対応できますか
- 建物ごとに配置を検討しますか
- 設置位置を図面で確認できますか
- 耐久性に関する試験結果はありますか
- 点検や交換は必要ですか
- 製品保証は何年間ですか
- 制震装置を含む費用はいくらですか
具体的な資料や数字を示さず、「付いているから安心です」としか説明できない会社には注意してください。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、制震装置だけに住宅の安全性を任せません。
まず、全棟で許容応力度計算を行い、耐震等級3を確保します。
さらに、繰り返す地震による建物の揺れや損傷を抑えるため、制震装置「evoltz」を標準採用しています。
基本となる考え方は、
- 許容応力度計算による耐震等級3
- 制震装置evoltz
- 地盤調査に基づく基礎設計
- 太陽光パネルの重量を反映した構造計算
- 長期優良住宅
です。
制震装置があるから構造を弱くしてよいとは考えていません。
構造体を強くしたうえで、制震装置によって地震のエネルギーを吸収する。
「耐震か制震か」ではなく、「耐震+制震」で家族と住宅資産を守るという考え方です。
俺流結論
地震対策は、「法律を守っているから大丈夫」で終わらせてはいけません。
建築基準法は最低限の基準です。
また、耐震等級3であっても、計算方法や建物条件によって安全性の確認内容は違います。
重要なのは、
「大地震で倒壊しなければよいのか」
それとも、
「大地震の後も家族が住み続けられる家を目指すのか」
という違いです。
私は、住宅ローンが残っている家を、一度の地震で大きく損傷させたくありません。
本震に耐えても、その後の余震で損傷が広がる可能性があります。
倒壊しなくても、修理に数百万円かかり、住めなくなれば、家族の生活は守れません。
だからこそ、許容応力度計算による耐震等級3を基本とし、制震装置を加える意味があります。
削るべきなのは、必要以上に大きな面積や豪華な装飾です。
家族の命と住宅資産を守る構造性能を、価格調整のために削ってはいけません。
「制震装置が付いていますか」だけでは足りません。
「耐震等級3は許容応力度計算ですか」
「太陽光の重量も計算に入っていますか」
「制震装置はどこへ、どのような根拠で配置しますか」
ここまで確認してください。
地震が起きてから、構造性能を追加することはできません。
見えなくなる部分だからこそ、契約前に確認することが重要です。
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