シニアの建て替えでは、自己資金を最低いくら残すべき?
結論
シニアの建て替えでは、建築後の手元資金として、最低500万円、できれば1,000万円以上を残すという考え方があります。
しかし、500万円や1,000万円を残せば全員安心という意味ではありません。
年金だけでは毎月の生活費が不足する世帯、車が必要な世帯、将来の介護施設入居を考えている世帯では、1,500万円以上必要になることもあります。
正しい計算方法は、次のとおりです。
残すべき資金=年金で不足する生活費+医療・介護予備費+車・家電費+住宅修繕費+緊急予備費
建築会社へ支払える金額を先に決めるのではなく、90歳、95歳まで残すお金を先に確保します。
「最低500万円」だけを基準にするのは危険
建て替え後に500万円残ると聞けば、十分なように感じるかもしれません。
しかし、次のような支出が重なれば、短期間でなくなる可能性があります。
- 車の買い替え
- エアコンや冷蔵庫などの故障
- 入院や通院
- 配偶者の介護
- 子どもへの一時的な援助
- 給湯器や太陽光設備の故障
- 葬儀やお墓に関する費用
- 介護施設への入居準備
山梨県では、生活に車が欠かせない地域が多くあります。普通車の買い替えだけでも、200万~300万円程度必要になることがあります。
500万円を残しても、車の買い替えと医療費が重なれば、残高が大きく減ります。
したがって500万円は、老後資金として十分な金額ではなく、これを下回ると不測の事態へ対応しにくくなる最低防衛ラインと考えるべきです。
最初に年金と生活費の差額を確認する
まず確認するのは、夫婦の年金見込額と毎月の生活費です。
例えば、
- 毎月の生活費:23万円
- 夫婦の年金収入:20万円
- 毎月の不足額:3万円
であれば、年間36万円の赤字です。
68歳から95歳までの27年間では、単純計算で972万円不足します。
この世帯が「1,000万円残せば安心」と考えても、そのほとんどが生活費の不足分でなくなります。医療、介護、車、住宅修繕へ使う余裕は残りません。
反対に、年金収入が生活費を上回り、別に預貯金や家賃収入などがある世帯なら、必要な手元資金は少なくなる可能性があります。
金額は、平均ではなく自分たちの収支で決めます。
老後資金は5つに分けて計算する
1.生活費の不足分
毎月の生活費から、年金などの確実な収入を引きます。
毎月の不足額×12か月×95歳までの年数
これが、生活費として取り崩す可能性のある金額です。
ただし、物価上昇、固定資産税、保険料なども考慮する必要があります。
2.医療・介護の予備費
高額療養費制度や介護保険があっても、すべての費用が公的制度で賄われるわけではありません。
通院交通費、差額ベッド代、介護用品、住宅改修、家族の移動費、施設入居時の費用などが発生する可能性があります。
夫婦の健康状態、既往歴、加入している保険、希望する介護方法を確認し、別枠で確保します。
3.車と家電の買い替え費
山梨では、70代、80代になっても車が必要になる地域があります。
今の車をあと何年使うのか、次は新車か中古車か、免許返納後の移動費をどうするかまで考えます。
冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビなども、建築後20年間にすべて一度も壊れないとは考えられません。
4.住宅の修繕・設備交換費
新築でも、将来の修繕費は必要です。
- エアコン
- エコキュート
- 換気設備
- 太陽光発電のパワーコンディショナー
- 蓄電池
- 外壁や屋根
- 水栓やトイレ設備
高性能な設備を増やすほど、将来の交換対象も増えます。
住宅会社へ、15年後、20年後に交換が想定される設備と概算費用を確認してください。
5.すぐに使える緊急予備費
病気、家族の事情、災害などは、予定どおりに発生しません。
投資信託や不動産ではなく、すぐに引き出せる預貯金として確保します。少なくとも1~2年分の基本生活費を、緊急予備費として分けておくと安心です。
金融広報中央委員会も、老後資金を「生活資金」「ライフイベント資金」「介護費」の3つに分けて考える方法を示しています。金融広報中央委員会「退職金の運用方法を考える」
68歳夫婦の計算例
例えば、次の条件で考えます。
- 年齢:夫68歳、妻65歳
- 預貯金・退職金:2,800万円
- 毎月の生活費:23万円
- 年金収入:月21万円
- 毎月の不足:2万円
- 95歳まで計算
生活費の不足は、27年間で約648万円です。
さらに、
- 緊急予備費:300万円
- 車の買い替え:250万円
- 医療・介護予備費:300万円
- 家電・住宅設備交換:200万円
とすると、残しておきたい資金は合計約1,700万円です。
この世帯が建て替えに使える自己資金は、
2,800万円-1,700万円=1,100万円
が一つの目安になります。
建て替え総額が2,500万円なら、自己資金を増やして無理に現金建築するのではなく、建物を小さく再設計するか、返済可能な範囲で一部ローンを検討します。
※これは考え方を示す試算例であり、すべての世帯に当てはまる金額ではありません。
建て替え総額に含めるべき費用
自己資金を計算するときは、建物本体価格だけを見てはいけません。
建て替えでは、次の費用も発生します。
- 既存住宅の解体
- アスベスト調査・除去
- 仮住まい
- 2回分の引越し
- 荷物の保管・不用品処分
- 地盤改良
- 屋外給排水
- 建築確認・各種申請
- 外構工事
- 登記・火災保険
- カーテン・照明・エアコン
- 予備費
本体価格2,000万円でも、これらを加えると総額が2,500万円を超える可能性があります。
本体価格だけで自己資金を投入すると、完成直前に追加費用が発生し、残す予定だった老後資金まで使うことになります。
「ローンを残すのは不安」と「現金を残さない危険」を比較する
シニア世代では、住宅ローンを残すことに強い抵抗を感じる人がいます。
確かに、年金生活に入ってから高額な返済を続ける計画は危険です。
しかし、現金をすべて建物へ変えてしまうことも同じように危険です。高齢になってから医療費や介護費が必要になっても、住宅を担保にして簡単にお金を借りられるとは限りません。
山梨県では、住宅の再販性や担保評価によって、リバースモーゲージなどを利用できないケースもあります。
ローンを利用する場合は、
- 毎月返済額を年金収入の範囲内にする
- 完済年齢を明確にする
- 金利が上がった場合も試算する
- 団信へ加入できるか確認する
- 手元資金を残した場合と比較する
ことが必要です。
借金0円だけを目指すのではなく、住宅ローンと現金残高の両方が無理のない状態を目指します。
子どもの援助や住宅売却を前提にしない
「不足したら子どもに助けてもらう」
「家を売れば現金になる」
「将来は施設へ入るから大丈夫」
という前提で自己資金を減らすのも危険です。
子どもにも住宅ローン、教育費、老後資金があります。建て替えた住宅も、希望価格ですぐ売れるとは限りません。
特に山梨県では、立地によって再販価格に大きな差が出ます。建築費2,500万円の家が、必要なときに同額で売れるわけではありません。
老後資金は、子どもの援助や住宅の売却を含めなくても成立する計画を基本にします。
建築会社へ確認する5つの質問
契約前に、次の質問をしてください。
- 建て替えに必要な総額はいくらですか
- 完成後に追加で必要になる費用はありますか
- 15年、20年後の修繕・設備交換費はいくらですか
- 補助金が0円でも同じ資金計画で建てられますか
- 95歳時点の預金残高まで確認していますか
「預貯金はいくらありますか」と聞くだけで、建築後に残る資金を確認しない会社には注意が必要です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、「自己資金が2,000万円あるから、2,000万円使える」とは考えません。
まず年金、生活費、医療・介護、車、修繕費を確認し、90歳、95歳まで残すべき金額を先に決めます。
その結果、希望する建て替え総額が高過ぎる場合は、
- 延床面積を小さくする
- 使わない和室や客間をなくす
- 水回りをまとめる
- 造作や設備のグレードを見直す
- 外構工事を必要最低限にする
などで再設計します。
ただし、耐震、断熱、気密、換気など、命と将来の光熱費に関わる基本性能は安易に削りません。
建て替えに使えるお金は、現在持っている金額ではありません。老後に必要な資金を差し引いた残りです。
「最低500万円残せば大丈夫」ではなく、自分たちの95歳までの生活を数字にしてから契約することが、シニアの建て替えで後悔を防ぐ方法です。










