60代の住宅ローンは、退職金で一括繰上返済すべき?
結論|退職金を全額使った一括返済はおすすめしません
60代で住宅ローンを組んでも、退職金が入ったからといって、すぐに全額返済する必要はありません。
繰上返済をすれば利息は減りますが、一度返済した現金は簡単には戻せません。60代以降は、新たな融資を受けることも難しくなります。
先に確保すべきなのは、住宅ローンの完済資金ではなく、医療、介護、車、家電、住宅修繕、毎月の生活費不足に備える現金です。
「借金がなくなる安心」だけで決めない
退職金で住宅ローンを完済すれば、毎月の返済がなくなり、精神的には安心できます。
しかし、次のような状態になるなら危険です。
- 住宅ローンは0円になった
- 預貯金もほとんどなくなった
- 年金だけでは生活費が不足する
- 車の買替えや医療費を払えない
- 修繕費を再び借りることができない
家はあっても、生活に使える現金がない状態を「資産がある」とは言い切れません。
繰上返済前に残すお金を計算する
一括返済を考える前に、少なくとも次の金額を計算します。
必要な手元資金=毎年の生活費不足×10年+予定支出+緊急予備費
例えば、次の家庭を考えてみます。
- 年金で不足する生活費:年間60万円
- 10年間の不足額:600万円
- 車の買替え:200万円
- 家電・住宅修繕:150万円
- 医療・介護の予備費:300万円
この場合、今後必要になる資金は合計1,250万円です。
退職金と預貯金が2,000万円あり、住宅ローン残高1,000万円を完済すると、残る現金は1,000万円です。住宅ローンはなくなっても、将来必要と考えられる1,250万円を下回ります。
この状態なら、一括返済より一部繰上返済を検討すべきです。
繰上返済で減る利息はいくらか?
例えば、1,000万円を返済期間10年、金利年2%で借りた場合、完済までの利息は概算で約100万円です。
今すぐ1,000万円を返済すれば、その後の利息は減ります。しかし、老後に使える現金も一度に1,000万円減ります。
約100万円の利息を減らすために、1,000万円の流動資金を失っても大丈夫なのか。この比較が必要です。
特に低金利のローンでは、繰上返済による利息軽減額が、想像ほど大きくないことがあります。
一括返済より「一部繰上返済」が現実的
手元資金を残しながら負担を減らすなら、一部繰上返済が有効です。
一部繰上返済には、主に2つの方法があります。
| 方法 | 効果 | 60代で向いているケース |
|---|---|---|
| 期間短縮型 | 完済時期を早め、利息を減らす | 収入に余裕があり、早く完済したい |
| 返済額軽減型 | 毎月の返済額を減らす | 年金生活後の家計を安定させたい |
60代では、利息を最大限減らすことより、毎月の支出を抑える方が安心につながる場合があります。
住宅金融支援機構も、期間を短くする方法と、毎月の返済額を減らす方法を案内しています。住宅金融支援機構「繰上返済」
住宅ローン控除が終わる可能性にも注意
住宅ローン控除を利用している途中で期間短縮型の繰上返済を行い、当初の返済開始から完済までの期間が10年未満になると、その年以降は控除を受けられなくなる場合があります。
繰上返済で減る利息だけでなく、失う住宅ローン控除額も計算しなければなりません。国税庁「繰上返済等をした場合の償還期間」
団体信用生命保険も確認する
団体信用生命保険へ加入している住宅ローンでは、契約者が死亡または所定の状態になった場合、保険で残債が完済されることがあります。
退職金で先に完済すれば、その後は団信による保障もなくなります。
例えば、夫が退職金1,000万円でローンを完済した直後に亡くなった場合、妻には家が残りますが、退職金1,000万円は残りません。完済しなければ、団信でローンがなくなり、現金を妻へ残せた可能性があります。
団信の保障内容、年齢制限、保険金が支払われない条件まで確認して判断します。
繰上返済を優先しやすいケース
次の条件がそろっている場合は、繰上返済を検討しやすくなります。
- 完済後も十分な生活予備資金が残る
- 住宅ローン金利が高い
- 住宅ローン控除が終了している
- 団信の保障効果が小さい、または加入していない
- 毎月の返済が年金生活を圧迫している
- 他に金利の高い借入れがない
反対に、手元資金が少ない、今後の収支が赤字、医療・介護費が読めない場合は、一括返済を急ぐべきではありません。
デザインハウス甲府の考え方
60代の建替えでは、「何歳で完済するか」だけを目標にしてはいけません。
本当に確認すべきなのは、完済した後にいくら残るのか、90歳まで生活を維持できるのかです。
私たちは、退職金を自動的に住宅ローンへ充てるのではなく、次の3案を比較します。
- 繰上返済をしない
- 一部だけ繰上返済する
- 全額を一括返済する
それぞれについて、毎月返済額、完済年齢、支払利息、住宅ローン控除、団信、90歳時点の残存資産を確認します。
住宅ローンが残っていることより、老後資金がなくなることの方が危険です。完済の安心と、現金を残す安心の両方を数字で比較して決めるべきです。










