隣の家との「境界線」が曖昧なまま建替えるリスクと、確定測量の費用。
こんなご相談をいただきました
「築50年の実家を建替える予定ですが、隣地との境界杭が見当たりません。昔からあるブロック塀を境界として設計を進めても大丈夫でしょうか?」
A. 境界が曖昧なまま解体や建替えを進めるのは危険です。ブロック塀や生け垣が、正しい境界線上にあるとは限りません。解体契約前に資料を調べ、必要なら土地家屋調査士へ確定測量を依頼してください。
ブロック塀が境界とは限らない
昔からある塀やフェンスを、隣地との境界だと思っている方は少なくありません。
しかし、実際には次のようなケースがあります。
- 塀が自分の土地側に設置されている
- 塀が隣地側へ越境している
- 隣家との共有物になっている
- 過去の所有者が便宜的に設置しただけ
- 地震や地盤沈下によって位置が動いている
- 境界杭が解体や造成工事でなくなっている
「何十年も問題がなかった」という事実だけでは、法的な境界を証明できません。
境界が曖昧なまま建替える5つのリスク
1.建物の配置を間違える
設計者が想定した敷地寸法と実際の境界が違えば、建ぺい率、道路斜線、隣地との離隔距離などへ影響します。
数十cmの違いでも、建物を小さくする、配置を変更する、確認申請をやり直すといった問題につながります。
2.塀や擁壁を勝手に壊してしまう
共有塀や隣地所有の擁壁を自分のものだと思い、解体すると損害賠償問題になる可能性があります。
解体業者へ「敷地内は全部撤去してください」と指示する前に、所有者と境界を確認する必要があります。
3.足場が隣地へ越境する
敷地いっぱいに建てる計画では、足場、屋根、雨樋、室外機などが隣地へ出る危険があります。
完成後だけでなく、工事中に足場を設置できるかも確認してください。
4.工事が途中で止まる
解体後に隣家から「その場所はうちの土地です」と指摘されれば、測量と話合いが終わるまで工事を止めることになります。
その間も仮住まいの家賃や住宅ローンの手続きは続きます。数十万円の測量費を避けた結果、より大きな追加費用が発生する可能性があります。
5.将来売却できない
境界が確認できない土地は、買主や金融機関から敬遠されることがあります。
自分たちの代では売らなくても、相続した子どもが売却するときに問題が表面化します。
現況測量と確定測量の違い
測量には主に次の違いがあります。
| 種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 現況測量 | 現在見えている塀・杭・建物などを測る |
| 境界確定測量 | 登記資料などを調査し、隣接所有者の立会いを経て境界を確認する |
現況測量は建物配置の検討には使えますが、隣地所有者と境界を確認したことにはなりません。
境界杭がない、登記面積と実測面積が違う、古い公図しかない場合は、境界確定測量を検討します。
確定測量の流れ
一般的には、土地家屋調査士が次の手続きを行います。
- 公図・登記事項証明書・地積測量図などの調査
- 現地測量
- 道路・水路など官有地との確認
- 隣接地所有者への連絡
- 現地での境界立会い
- 境界確認書の取り交わし
- 境界標の設置
- 確定測量図の作成
隣地が相続登記されていない、所有者が遠方にいる、意見が一致しない場合は、時間がかかります。
費用と期間の目安
一般的な宅地の境界確定測量は、30万~80万円程度が一つの目安です。
ただし、次の条件では100万円を超えることもあります。
- 土地が広い
- 隣接地の数が多い
- 道路や水路との境界確認が必要
- 山林や傾斜地を含む
- 相続人が多数いる
- 登記面積と実測面積が大きく違う
- 過去の測量資料が少ない
- 境界について争いがある
期間は順調なら1~3か月程度が目安ですが、隣接所有者との調整や行政との立会いにより、半年以上かかる場合もあります。
金額と期間は土地ごとに異なるため、土地家屋調査士へ事前に見積もりを依頼してください。
解体前に境界杭を守る
既に境界杭がある場合でも、解体工事で抜けたり、重機で移動したりすることがあります。
解体前に次の対応を行います。
- 境界杭の位置を写真で残す
- 杭から動かない構造物までの距離を測る
- 解体業者と一緒に杭を確認する
- 杭の周囲を目立つ色で表示する
- 撤去する塀と残す塀を図面で示す
- 解体後に杭が残っているか再確認する
「杭を抜かないでください」という口頭指示だけでなく、解体範囲図へ記載してください。
越境物も書面で整理する
境界確認では、線の位置だけでなく、次の越境物も確認します。
- 屋根や雨樋
- エアコン室外機
- 給排水管
- 樹木の枝や根
- ブロック塀
- 擁壁
- 電線や引込線
- 物置やカーポート
すぐ撤去できない場合は、将来建替える際に撤去することや、所有者が変わっても約束を引き継ぐことなどを覚書にします。
話合いで解決しない場合
隣地所有者と境界について合意できない場合は、法務局の筆界特定制度を利用する方法があります。
筆界特定制度は、登記された際に定められた土地の境である「筆界」の位置を、専門家の意見を踏まえて法務局が特定する制度です。法務省「筆界特定制度」
ただし、筆界特定制度は土地の所有権争いをすべて解決する制度ではありません。状況によっては、土地家屋調査士、司法書士、弁護士への相談が必要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
境界問題で最も危険なのは、建物の図面と見積もりを完成させてから測量を始めることです。
境界が数十cm動けば、
- 希望した建物が入らない
- 駐車場が狭くなる
- 配置変更で確認申請が遅れる
- 解体・着工時期がずれる
- 仮住まい費用が増える
可能性があります。
建替えでは、最初に公図、地積測量図、登記事項証明書、境界標を確認してください。
境界杭は、小さくても建替え全体を止める力があります。境界が曖昧なら、間取りより先に確定させる。これが隣人関係と建替え予算を守る基本です。










