Q. 長期保証は、将来の修繕契約と同じ?
A. 契約上は同じではありません。長期保証は保証制度であり、将来の修繕工事を必ず発注する契約とは別です。しかし、保証延長に住宅会社の点検や有償工事が必要なら、実質的に将来の修繕受注を確保する仕組みとして機能します。
「60年保証」「永年保証」と聞けば、住宅会社が長期間無料で家を守ってくれるように感じます。
しかし、初期保証終了後も保証を続けるためには、住宅会社が必要と判断した有償メンテナンス工事を実施しなければならない制度があります。
その意味では、長期保証は単なる安心サービスではありません。
住宅会社と購入者を、将来の点検や修繕までつなぐ仕組みでもあります。
長期保証と修繕工事は別の契約
長期保証は、一定の条件を満たした場合に、対象となる不具合を補修する制度です。
一方、外壁、防水、屋根、防蟻などの修繕工事は、その都度締結する工事請負契約です。
新築契約をした時点で、30年後や45年後の修繕工事まで、すべて発注が確定しているわけではないのが一般的です。
購入者には、
- 指定工事を実施して保証を延長する
- 指定工事を断って保証を延長しない
- 他社へ修繕を依頼する
- 保証が切れた後に再保証を検討する
という選択肢があります。
ただし、他社へ工事を依頼した場合や指定工事を断った場合、保証を延長できない可能性があります。
契約ではなくても、強い営業導線になる
修繕工事を強制されるわけではありません。
しかし、
「他社で工事をすれば保証を延長できません」
「今回の工事を断ると長期保証が終了します」
と言われれば、多くの購入者は指定工事を選びます。
何千万円もかけて建てた家の保証を失うことに不安を感じるからです。
その結果、住宅会社は新築引き渡し後も、
- 定期点検
- 外壁工事
- 防水工事
- 屋根工事
- 防蟻工事
- 住宅設備交換
- リフォーム工事
を受注しやすくなります。
法的に修繕契約と同じではなくても、経済的には長期的な顧客囲い込みとして機能します。
住宅会社にとっては優れた経営戦略
住宅会社にとって、新築工事だけで経営を続けるのは簡単ではありません。
人口減少や建築費高騰によって、新築住宅の着工戸数が減れば、新築受注だけに依存する経営は不安定になります。
そこで重要になるのが、引き渡し後の既存顧客です。
長期保証によって顧客との関係を維持できれば、10年後、20年後、30年後の修繕需要を受注できます。
例えば、1,000棟の顧客がいれば、毎年一定数の住宅が点検や修繕時期を迎えます。
長期保証は、購入者に安心を提供すると同時に、住宅会社へ継続的なリフォーム売上をもたらす仕組みです。
これは住宅会社にとって、非常に優れた経営戦略です。
囲い込み自体が悪いわけではない
同じ住宅会社が長期間管理することには、メリットもあります。
- 新築時の図面や仕様が残っている
- 使用材料を把握している
- 過去の点検履歴がある
- 建物独自の工法を理解している
- 工事品質を管理しやすい
- 不具合発生時の窓口が明確
- 修繕履歴を売却時に提示できる
- 工事後も建物保証を継続できる
特に、独自工法や専用部材を使用した住宅では、新築した会社へ修繕を依頼する安心感があります。
問題は、購入者が保証条件や将来費用を理解しないまま契約することです。
価格競争が働きにくくなる
保証延長工事を住宅会社または指定業者へ依頼しなければならない場合、購入者は自由に施工会社を選びにくくなります。
一般的なリフォームであれば、2~3社から見積りを取り、価格と内容を比較できます。
しかし、他社施工によって保証を失うなら、相見積りで他社が安くても選びにくくなります。
その結果、
- 指定工事の価格が適正か判断しにくい
- 値引き交渉がしにくい
- 修繕時期を自由に決めにくい
- 使用材料を自由に選びにくい
- 他社の新しい工法を採用しにくい
という状況が生まれます。
長期保証の安心と引き換えに、将来の修繕会社を選ぶ自由が制限される可能性があります。
すべての修繕費を「囲い込み費用」と考えるのは間違い
住宅は、保証の有無にかかわらずメンテナンスが必要です。
外壁、防水、屋根、防蟻、設備などは、長期間使用すれば点検や修繕が必要になります。
そのため、指定工事にかかった費用のすべてが、保証維持だけの費用とは言えません。
分けて考えるべきなのは次の3つです。
1.保証がなくても必要な修繕費
建物を維持するため、いずれ必要になる工事です。
2.保証条件によって前倒しされる費用
建物の状態としては数年待てても、保証延長の時期に合わせて実施する工事です。
3.指定業者へ依頼することによる価格差
同等工事を他社へ頼んだ場合と比べて高くなる部分です。
実質的な保証維持コストを見るには、この三つを分ける必要があります。
保証のために支払う追加額を計算する
例えば、同じ仕様と工事範囲で比較して、
- 住宅会社の指定工事:220万円
- 他社の同等工事:150万円
- 有料点検費:5万円
- 延長される保証期間:10年間
だったとします。
指定工事と他社工事の差額は70万円です。
有料点検費を加えると、保証を維持するための追加負担は75万円と考えられます。
10年間で割れば、
- 1年間当たり7万5,000円
- 1か月当たり6,250円
です。
この費用を支払うことで、何が保証されるのかを確認します。
- 構造のどの部分が対象か
- 雨漏りのどの原因が対象か
- 修理費の上限はあるか
- 経年劣化は対象外か
- 自然災害は対象外か
- 住宅会社が倒産しても保証されるか
月額6,250円の価値がある保証なのか、具体的に判断できます。
「保証を残すこと」が目的になっていないか
本来の目的は、家を安全で快適な状態に維持することです。
しかし、長期保証を意識し過ぎると、
- 保証を切らさないこと
- 指定された工事を全部行うこと
- 住宅会社へ工事を依頼し続けること
自体が目的になってしまうことがあります。
保証を維持するために高額な修繕費を払い続けても、その保証で実際に守られる範囲が狭ければ、本末転倒です。
保証を残す費用と、保証がなかった場合に負担する可能性のある修理費を比較してください。
保証を延長しない選択もある
指定工事を断り、長期保証を延長しないことも選択肢です。
その場合は、
- 定期的に第三者点検を受ける
- 修繕費を自分で積み立てる
- 複数社から相見積りを取る
- 工事写真や履歴を保管する
- 不具合が小さいうちに修繕する
- 火災保険などとの役割を整理する
といった自己管理が必要になります。
保証を延長しないから、建物を放置してよいわけではありません。
住宅会社の保証から、自分で維持管理する方法へ切り替えるということです。
再保証制度があるか確認する
住宅会社によっては、一度保証が切れても、点検と必要な有償工事を行うことで保証を再開できる制度があります。
ただし、
- 再点検が有料
- 劣化部分をすべて修繕する必要がある
- 保証が切れていた期間の不具合は対象外
- 建物の状態によっては再保証できない
- 一定期間を過ぎると再保証を受けられない
などの条件が付く場合があります。
「今回延長しなければ二度と戻れないのか」も確認してください。
契約前に住宅会社へ聞くべき質問
新築契約前に、次の内容を書面で確認してください。
- 無条件の初期保証は何年間ですか
- 保証延長は何年ごとですか
- 延長時の点検は無料ですか
- どのような有償工事が必要ですか
- 工事は御社または指定業者への発注が必須ですか
- 他社施工でも保証を延長できますか
- 現在価格で想定修繕費はいくらですか
- 30年間・60年間の想定総額はいくらですか
- 指定工事を断ると、どの保証が終了しますか
- 保証が切れた後に再保証を受けられますか
- 住宅会社が倒産した場合、保証はどうなりますか
- 中古住宅として売却した場合、保証を引き継げますか
保証書を契約後に初めて受け取るのではなく、契約前に確認することが重要です。
長期保証は「無料の安心」ではない
長期保証そのものが悪いわけではありません。
同じ住宅会社が点検、修繕、保証を一貫して行うことには大きな安心があります。
しかし、その安心には将来の有償メンテナンスと業者選択の制限が付く可能性があります。
長期保証は将来の修繕契約と同じではありません。しかし、保証を続ける限り、その住宅会社へ修繕を依頼し続ける仕組みになり得ます。
比較すべきなのは保証年数ではありません。
- 保証対象
- 延長条件
- 指定工事
- 業者選択の自由
- 保証維持の総額
- 住宅会社の経営継続性
まで含めて判断してください。
本当に正直な住宅会社は、大きな「60年」だけでなく、将来どのような工事を、いくらで行う可能性があるのかまで契約前に説明します。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
積水ハウスは、初期保証終了後も、必要な有料点検と有償補修工事を行うことで保証を延長する制度を公表しています。積水ハウス「長期保証制度(永年保証)」
大和ハウス工業は、保証満了時の点検・診断に基づく有料メンテナンス工事を実施した場合に保証を延長する制度を公表しています。大和ハウス工業「長期保証・アフターサポート」
住友林業は、維持保全計画書に基づくメンテナンス工事を同社で実施した場合、構造躯体と防水を最長60年間保証すると案内しています。住友林業「60年保証・アフターサービス」










