Q. 地盤保証があれば、家の傾きはすべて保証される?
A. いいえ。地盤保証の中心は、保証会社が認めた地盤調査・解析・基礎仕様に問題があり、地盤の不同沈下によって建物が傾いた場合の補修です。地震や液状化、擁壁の変形、建物の施工不良、床組みの変形など、地盤以外の原因による傾きは対象外になる可能性があります。
家が傾いたからといって、原因が地盤とは限らない
床に物を置くと転がる。
ドアが勝手に開く。
窓が閉まりにくい。
歩いていると体が引っ張られるように感じる。
このような症状があると、多くの人は、
「地盤が沈んだ」
「地盤保証で直してもらえる」
と考えます。
しかし、住宅の傾きには、さまざまな原因があります。
- 軟弱地盤による不同沈下
- 盛土の締め固め不足
- 地盤改良の設計・施工不良
- 基礎の設計・施工不良
- 床束や大引きの変形
- 柱や梁の変形
- シロアリや腐朽による構造材の損傷
- 地震や液状化
- 擁壁の変形
- 隣地の掘削工事
- 雨水や漏水による土砂流出
- 外構部分だけの沈下
地盤保証が使えるかどうかは、「家が傾いた」という症状ではなく、何が原因で傾いたのかによって決まります。
地盤保証とは何を保証する制度なのか
一般的な地盤保証は、地盤調査と周辺資料の解析を行い、その土地に適した基礎仕様や地盤対策を提案し、その判定どおりに施工した建物について、不同沈下しない地盤品質を保証する制度です。
不同沈下とは、建物全体が均等に沈むのではなく、一部分だけが大きく沈み、建物が傾く現象です。
ジャパンホームシールドも、地盤保証制度について、地盤調査や資料調査から地盤状況を把握し、適切な基礎仕様を提案したうえで不同沈下を保証し、事故が発生した場合には建物を水平状態へ修復する仕組みと説明しています。ジャパンホームシールド|地盤保証制度とは
ただし、保証内容、保証期間、限度額、免責事項は保証会社によって異なります。
地盤保証の対象になる可能性があるケース
次のような原因で不同沈下が発生し、保証条件を満たしていれば、地盤保証の対象になる可能性があります。
- 地盤調査で軟弱層を適切に把握できなかった
- 地盤解析の判定に問題があった
- 必要な地盤改良を不要と判定した
- 保証会社が指定した基礎仕様では地盤に対応できなかった
- 地盤改良工事が指定どおり施工されていなかった
- 改良杭の長さや位置に問題があった
- 盛土部分が不均等に沈下した
- 建物荷重によって地盤の一部だけが沈下した
地盤保証会社によっては、地盤調査会社、解析会社、地盤改良会社の責任関係を整理し、建物の傾き修正や関連する補修工事を行う制度があります。
地盤保証の対象外になりやすい7つの原因
1.地震や液状化が原因だった
通常の地盤保証では、地震、噴火、津波、液状化などの自然災害を対象外としている場合があります。
地震によって地盤が液状化し、建物が沈んだり傾いたりした場合は、地盤保証ではなく地震保険の確認が必要です。
ただし、液状化による損害が地震保険の支払基準に該当するかは、保険会社の調査によって判断されます。
「地盤保証20年」と表示されていても、20年間の地震や液状化まで保証するとは限りません。
2.擁壁が原因だった
高低差のある土地では、擁壁の変形、沈下、傾斜によって、擁壁周辺の地盤や建物へ影響が出ることがあります。
しかし、通常の地盤保証では、擁壁や地下車庫を対象外としている場合があります。
ジャパンホームシールドには擁壁起因の不同沈下に対応する特約がありますが、擁壁自体の設計瑕疵や擁壁の補修は対象外とされています。ジャパンホームシールド|擁壁特約
特約が別に用意されているということは、標準の地盤保証だけでは擁壁リスクをカバーできない可能性があるということです。
3.床や梁だけが傾いていた
室内の床が傾いていても、基礎や建物全体が沈下しているとは限りません。
- 床束の高さ調整不良
- 大引きや根太のたわみ
- 梁の変形
- 床下地の施工不良
- フローリングの不陸
などが原因で、床だけが傾いている場合があります。
この場合は、地盤保証ではなく、住宅会社の施工保証や構造保証を確認します。
4.基礎工事に原因があった
地盤は適切でも、基礎の配筋、コンクリート、形状、支持方法などに問題があり、建物が変形する可能性があります。
地盤保証会社は地盤品質を保証しても、住宅会社が施工した基礎の欠陥まで保証するとは限りません。
地盤と基礎は一体で建物を支えますが、保証上の責任者は分かれている場合があります。
5.雨水や配管漏水で地盤が流出した
雨水の排水計画に問題があり、基礎の周囲や下へ水が流れ続けると、土が流され、空洞化する可能性があります。
また、給排水管の漏水によって基礎下の土が流されることもあります。
住まいるダイヤルにも、基礎の下へ雨水が流入し、土が流されて空洞が生じたという相談事例があります。住まいるダイヤル|基礎下への雨水流入
この場合は、地盤の問題だけでなく、
- 排水計画
- 給排水設備
- 外構工事
- 基礎周辺の施工
を調査する必要があります。
6.引渡し後の増築や外構工事が影響した
引渡し後に、
- 建物を増築した
- 重い設備を設置した
- 盛土や掘削を行った
- 大きな物置を設置した
- 土間コンクリートを施工した
- 地下水や排水の流れを変えた
などの変更を行うと、当初の地盤解析時と条件が変わります。
保証会社の承認を受けずに工事を行った場合、地盤保証へ影響する可能性があります。
7.建物ではなく外構だけが沈下した
玄関ポーチ、駐車場、犬走り、ブロック塀、カーポート、アプローチなどが沈下しても、住宅本体の不同沈下でなければ、地盤保証の対象外になる場合があります。
地盤保証の対象建物と、対象外となる外構・工作物を確認してください。
地盤調査をしただけでは保証にならない
地盤調査を行ったことと、地盤保証が付いていることは別です。
地盤保証を有効にするには、一般的に、
- 指定された方法で地盤調査を行う
- 保証会社が地盤解析を行う
- 指定された基礎・地盤改良を採用する
- 地盤改良の施工報告書を提出する
- 建物荷重や配置を変更しない
- 保証料を支払う
- 保証書を発行する
などの手続きが必要です。
営業担当者から、
「地盤調査をするので大丈夫です」
と言われただけでは、保証が発行されるとは限りません。
契約前に、保証会社名、保証期間、限度額、保証番号が記載された保証書が発行されるか確認してください。
20年保証でも、補修費全額が出るとは限らない
地盤保証には、次のような費用が設定されている場合があります。
- 地盤の再調査費
- 建物を水平に戻す工事費
- 基礎の補修費
- 内外装の復旧費
- 設備配管の補修費
- 仮住まい費用
- 引越し費用
一方で、次の費用は対象外になる可能性があります。
- 土地そのものの価値下落
- 擁壁の補修
- 外構の補修
- 精神的損害
- 営業損失
- 保証限度額を超える費用
- 性能向上を目的とする工事
- 地盤事故と関係のない劣化部分
「最大5,000万円保証」と表示されていても、不同沈下が発生すれば必ず5,000万円支払われるわけではありません。
実際に必要と認められた補修費を、保証条件と限度額の範囲で負担する制度です。
どの程度の傾きなら問題なのか
住まいるダイヤルの技術資料では、床の傾斜について、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性を次のように整理しています。
- 3/1000未満:可能性が低い
- 3/1000以上6/1000未満:一定程度存在する
- 6/1000以上:可能性が高い
ただし、これは地盤保証が支払われる基準や、欠陥を自動的に確定する基準ではありません。
傾斜の程度から、構造上の問題が存在する可能性を判断する一つの目安です。住まいるダイヤル|床の傾斜
例えば6/1000は、水平距離1メートルで6ミリの高低差です。
しかし、部屋の一部分だけがへこんでいるのか、建物全体が同じ方向へ傾いているのかで原因は変わります。
専門家によるレベル測量が必要です。
ビー玉だけで家の傾きを判断しない
床にビー玉を置く方法は、傾きを感じるきっかけにはなります。
しかし、
- 床材表面の凹凸
- フローリングの施工精度
- 床の部分的なたわみ
- 空調によるわずかな気流
などでも転がることがあります。
地盤の不同沈下を判断するには、
- 各部屋の床レベル
- 基礎天端の高さ
- 壁や柱の傾斜
- 基礎のひび割れ
- 外壁のひび割れ
- ドア・窓の変形
- 地盤調査報告書
- 地盤改良施工報告書
を総合的に確認する必要があります。
家の傾きを感じたら記録する
次のような症状があれば、住宅会社と地盤保証会社へ早めに連絡してください。
- ドアが勝手に開閉する
- 窓や引き戸が動きにくい
- 床に傾きを感じる
- 家具が傾いている
- 基礎に斜めのひび割れがある
- 外壁やクロスに連続したひび割れがある
- 配管が外れたり漏水した
- 建物と玄関ポーチの間に隙間ができた
- 雨水が建物周囲へ集中している
- 地震後に症状が発生した
連絡前に、
- 症状を感じた場所
- 発見した日
- 床や壁の写真
- ドアの動きを撮影した動画
- 基礎・外壁のひび割れ
- 地震や近隣工事の有無
- 症状が拡大しているか
を記録してください。
契約前に確認する質問
住宅会社へ、次の内容を確認してください。
- 地盤保証会社はどこですか
- 保証期間は何年間ですか
- 保証限度額はいくらですか
- 保証書は住宅所有者へ発行されますか
- 地盤改良工事をしない判定でも保証されますか
- 地震や液状化は対象ですか
- 擁壁や地下車庫は対象ですか
- 外構部分の沈下は対象ですか
- 仮住まい費用や引越し費用は対象ですか
- 住宅会社が倒産しても保証は継続しますか
- 建物を売却した場合、保証は引き継げますか
- 保証対象外となる増築や外構工事は何ですか
- 不同沈下の判定は誰が行いますか
- 補修方法は誰が決めますか
地盤保証より、地盤事故を起こさない仕組みが重要
地盤保証は、万が一の不同沈下に備える重要な制度です。
しかし、家が傾いた後に保証を受けられても、調査、交渉、仮住まい、補修工事には長い時間と大きな負担がかかります。
本当に重要なのは、
- 適切な地盤調査
- 周辺地形や造成履歴の確認
- 地盤データの正確な解析
- 建物荷重に合った基礎設計
- 地盤改良工事の施工管理
- 擁壁と排水計画の確認
- 完成後の保証書発行
です。
地盤保証は、「家が傾いたら何でも無料で直す保証」ではありません。地盤の不同沈下だけを保証するのか、擁壁・液状化・仮住まいまで含むのかを契約前に確認してください。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










