Q. 病気になったら住宅ローンはどうなる?
A. 病気になっただけでは住宅ローンはなくなりません。団信の保障条件に該当しない限り、返済は続きます。
最も注意したいのは、「団信に入っているから、病気になっても住宅ローンは安心」という思い込みです。
一般的な団体信用生命保険は、主に死亡または所定の高度障害状態などが保障対象です。病気で休職した、収入が減った、治療費が増えたというだけでは、住宅ローン残高がゼロにならない場合があります。
つまり本当に怖いのは、医療費そのものよりも「働けない間も住宅ローン返済が続くこと」です。
病気になった後の住宅ローンはどうなる?
状況によって扱いが変わります。
| 病気になった後の状態 | 住宅ローン |
|---|---|
| 通院しながら働ける | 通常どおり返済 |
| 休職して収入が減る | 通常どおり返済 |
| 退職して無収入になる | 通常どおり返済 |
| 団信の保障条件に該当する | 保険金で残高が完済される可能性 |
| 返済が遅れる | 遅延損害金や信用情報への影響が生じる可能性 |
| 長期間返済できない | 一括請求、競売などに進む可能性 |
「病名がついたら完済」ではありません。
がん、脳卒中、急性心筋梗塞などを保障する団信でも、診断だけで対象になるものと、一定期間の就業不能状態などが必要なものがあります。保障開始までの待機期間や免責事項も商品によって異なります。
病気になってからでは変更できない可能性があるため、住宅ローン契約前に保障条件を確認することが重要です。
一般団信と疾病保障付き団信の違い
| 団信の種類 | 主な保障内容 |
|---|---|
| 一般団信 | 死亡・所定の高度障害状態など |
| がん団信 | 所定のがんと診断された場合など |
| 3大疾病保障 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中など |
| 8大疾病保障 | 3大疾病に生活習慣病などを追加 |
| 全疾病保障 | 所定の就業不能状態などを幅広く保障 |
ただし、同じ名称でも保障条件は金融機関によって違います。
確認すべきなのは「何という団信か」ではなく、次の5項目です。
- どの病気が対象になるか
- 診断だけで支払われるか
- 就業不能状態が何日続けば対象になるか
- 住宅ローン残高が全額なくなるか
- 上皮内がん、精神疾患、既往症などは対象か
保障範囲が広い団信には、金利上乗せや保険料負担がある場合もあります。名前の安心感だけで選ばず、条件と費用を比較しましょう。
会社員には傷病手当金がある
健康保険に加入する会社員などが、業務外の病気やケガで働けず、給与を受けられない場合は、傷病手当金を受給できる可能性があります。
協会けんぽの場合、連続する3日間の待期を経た4日目以降が対象で、1日当たりの支給額は原則として標準報酬月額を基に計算した額の3分の2です。支給期間は、支給開始日から通算1年6か月です。詳しい要件は全国健康保険協会の傷病手当金案内で確認できます。
ただし、注意点があります。
- 手取り収入の全額が保障される制度ではない
- 住宅手当や残業代が減る可能性がある
- 原則として自営業者には同じ傷病手当金がない
- 支給期間には限度がある
- 申請から入金までの生活費も必要になる
傷病手当金があっても、以前と同じ生活を続けられるとは限りません。
収入が3分の2になった場合を計算する
たとえば、病気になる前の手取り月収が30万円だった世帯を考えます。
| 項目 | 病気になる前 | 休職後の想定 |
|---|---|---|
| 月の収入 | 30万円 | 20万円 |
| 住宅ローン | 9万円 | 9万円 |
| 固定資産税・保険・修繕積立 | 3万円 | 3万円 |
| 住居費合計 | 12万円 | 12万円 |
| 収入に対する住居費割合 | 40% | 60% |
収入が減っても、住宅ローン、固定資産税、火災保険料などは基本的に減りません。
この状態で食費、光熱費、通信費、車、教育費、医療費を払えば、家計はすぐに赤字になります。
病気に耐えられる住宅ローンとは、健康なときに払える金額ではなく、収入が減ったときにも一定期間耐えられる金額です。
生活防衛資金はいくら必要?
住宅購入後も、最低限「生活維持費の6か月分」は現金で残したいところです。
自営業、歩合給、片働き、持病がある世帯は、12か月分を目安に考えます。
| 毎月の生活維持費 | 6か月分 | 12か月分 |
|---|---|---|
| 25万円 | 150万円 | 300万円 |
| 30万円 | 180万円 | 360万円 |
| 35万円 | 210万円 | 420万円 |
ここでいう生活維持費には、住宅ローンだけでなく、食費、光熱費、保険料、通信費、教育費、車の維持費なども含めます。
頭金や家具家電に現金を使い切り、住宅購入直後に貯金がほとんど残らない資金計画は危険です。
病気になったら最初にすること
返済が厳しくなりそうなら、延滞する前に動きます。
- 団信の保障内容を確認する
- 勤務先に休職制度と所得補償を確認する
- 健康保険の傷病手当金を申請する
- 医療保険や就業不能保険を確認する
- 家計の固定費を止める
- 返済中の金融機関に相談する
住宅金融支援機構では、病気などで収入が減った人に対し、返済期間の延長や一定期間の返済額軽減などの変更メニューを設けています。審査があり、総返済額が増える場合もありますが、延滞する前の相談が重要です。詳しくは住宅金融支援機構の返済方法変更案内を確認してください。
やってはいけない対応
病気で収入が減ったとき、次の対応は避けるべきです。
- クレジットカードのリボ払いで生活費を補う
- カードローンで住宅ローンを返す
- 金融機関からの連絡を無視する
- 貯金がなくなるまで誰にも相談しない
- 団信の保障対象だと自己判断する
- 住宅ローン返済を優先して治療を中断する
借金で住宅ローンを返し始めると、問題が見えにくくなり、負債だけが増えます。
自宅を守るためにも、返済が遅れる前に金融機関へ相談してください。
家を建てる前に行う病気リスクの確認
安全な資金計画を作るなら、次の条件で家計を再計算します。
- 夫の収入が半年間ゼロ
- 妻の収入が半年間ゼロ
- 世帯収入が1年間30%減少
- 医療・通院費が月3万円増加
- ボーナスが全額なくなる
- 復職後の収入が以前より20%下がる
この条件でも住宅ローン、教育費、車、修繕費を維持できるか確認します。
返済できない場合は、保険を増やす前に借入額を下げることを考えましょう。毎月3万円の返済を減らせば、年間36万円、10年間で360万円の余裕が生まれます。
病気に強い住宅ローン計画とは?
病気に強い計画には、次の特徴があります。
- 住宅ローン返済額を手取りの20%前後に抑える
- 固定資産税、保険、修繕費を含めても25%程度を目指す
- ボーナス払いを使わない
- 購入後も生活防衛資金を残す
- 団信の保障条件を契約前に読む
- 片方の収入だけでも一定期間返済できる
- 70歳前後までの完済を目指す
- 90歳までの家計をシミュレーションする
高額な疾病保障をつければ安全になるわけではありません。
保障を充実させても、毎月の返済額が大きすぎれば、対象外の病気、短期間の休職、介護離職などで家計が崩れます。
最初に借入額を抑え、そのうえで不足するリスクを団信や保険で補う。この順番が大切です。
俺流結論
病気になっても、住宅ローンは自動的になくなりません。
団信が適用されなければ、収入が減っても返済は続きます。だから住宅ローンは、健康で働き続けられることを前提に組んではいけません。
本当に安全な住宅ローンとは、銀行が貸してくれる金額ではなく、病気、休職、収入減が起きても家族が暮らし続けられる金額です。
家は家族を守るためのものです。住宅ローンを守るために、治療や教育、老後を犠牲にする計画では意味がありません。
借入額を抑え、現金を残し、団信の条件を確認する。この3つが、病気に負けない家づくりの基本です。










