Q. 家づくりで一番大切なお金の考え方とは?
A. 「いくら借りられるか」ではなく、「家を建てた後に、いくら残せるか」で考えることです。
住宅会社や金融機関は、住宅ローンを借りられるかどうかを確認します。
しかし、本当に大切なのは審査に通ることではありません。
住宅ローンを返しながら、教育費、車、修繕費、老後資金を準備し、家族が無理なく暮らし続けられるかです。
借りられる金額から家を選ぶのではなく、将来必要なお金を先に確保し、残った金額から住宅予算を決める。
これが家づくりで一番大切なお金の考え方です。
「月々払える」は安全を意味しない
住宅広告では、次のような表現が使われます。
「家賃並みの月々7万円台」
「今の年収なら4,000万円まで借りられます」
「返済期間を延ばせば、希望の家が建てられます」
確かに、返済期間を長くすれば毎月返済額は下がります。
しかし、家の価格が安くなったわけではありません。
返済期間が長くなり、利息が増え、完済年齢が遅くなっただけです。
月々の返済額だけを小さく見せる資金計画は、家の買いやすさを演出できますが、家計の安全性までは保証しません。
借りられる額と返せる額は違う
銀行は、主に年収、勤続年数、他の借入、信用情報、返済負担率などから融資額を判断します。
しかし、銀行は各家庭のすべての将来支出を決めてくれるわけではありません。
- 子どもを私立大学へ進学させたい
- 一人暮らしの仕送りが必要になる
- 10年後に車を2台買い替える
- 親の介護が必要になる
- 夫婦のどちらかが仕事を辞める
- 退職後も生活資金を残したい
こうした事情は家庭ごとに異なります。
住宅ローン審査に通ったからといって、その金額を安全に返せるとは限りません。
借りられる額と返せる額の違いは?でも詳しく解説しています。
住宅予算は最後に決める
住宅予算を決める正しい順番は次のとおりです。
- 毎月の生活費を確認する
- 生活防衛資金を残す
- 教育費を確保する
- 車の買い替え費用を計算する
- 住宅修繕費を積み立てる
- 老後資金を確保する
- 収入減少と金利上昇を試算する
- 残った金額から住宅予算を決める
多くの資金計画では、この順番が逆になっています。
先に希望する家の見積りを作り、足りない分を住宅ローンで調整する。
それでも月々の返済額が高ければ、40年ローンや50年ローンへ延ばす。
これでは住宅を売るための計算になってしまいます。
建物価格ではなく住み始めるまでの総額を見る
家づくりでは、建物本体価格だけを見て判断してはいけません。
実際に住み始めるまでには、次のようなお金が必要です。
- 建物本体工事
- 付帯工事
- 屋外給排水工事
- 地盤改良
- 建築確認申請
- 設計費
- 照明・カーテン
- エアコン
- 外構工事
- 登記費用
- 住宅ローン諸費用
- 火災・地震保険
- 引っ越し
- 家具・家電
- 土地購入費と仲介手数料
「建物価格2,000万円」と表示されていても、住み始めるまでの総額が2,500万円、2,800万円になる場合があります。
大切なのは、広告に掲載された価格ではありません。
契約前に、最終的にいくら必要なのかが分かることです。
安く見える家と、総額が安い家は違う
最初の見積りが安い住宅会社でも、契約後に追加費用が増えれば、最終的な支払額は高くなります。
一方、付帯工事、申請費、照明、カーテン、エアコンなどを含めて最初から提示する会社は、初回見積りが高く見える場合があります。
比較すべきなのは見積書の一番上にある金額ではありません。
次の条件をそろえた総額です。
- 同じ延床面積
- 同じ断熱性能
- 同じ耐震性能
- 同じ設備仕様
- 同じ付帯工事
- 同じ外構条件
- 同じ税・諸費用
- 実際に住み始められる状態
価格の安さではなく、価格の正直さを比較する必要があります。
頭金を入れすぎてはいけない
頭金を増やせば、借入額と毎月返済額は減ります。
しかし、預金を使い切ってはいけません。
住宅完成後も最低限、次のお金を残す必要があります。
- 生活費6か月分
- 引っ越し費用
- 家具・家電費
- 教育資金
- 車の買い替え資金
- 医療費などの緊急資金
- 税金・保険料
- 想定外の支出
毎月の生活費が30万円なら、生活防衛資金だけでも180万円です。
貯金500万円から頭金400万円を入れ、残り100万円で新生活を始める計画は、返済額が下がっても安全とはいえません。
住宅ローン残高を減らすことと、使える現金を残すことは、分けて考える必要があります。
教育費を住宅へ使わない
住宅予算を300万円増やしても、長期ローンでは毎月の差が小さく見えます。
しかし、教育資金としての300万円には大きな意味があります。
- 大学の入学金と授業料
- 自宅外通学の家賃
- 生活費の仕送り
- 受験料と交通費
- 奨学金の借入額を減らす資金
住宅設備は将来交換できます。
しかし、子どもの進学時期を後から変更するのは簡単ではありません。
家を少し広くするために教育資金を使い、子どもへ奨学金を背負わせる。
その住宅予算が本当に正しいのか、契約前に考える必要があります。
共働き収入を限界まで使わない
夫婦二人の年収を合算すれば、住宅ローンの借入額を増やせる可能性があります。
しかし、現在の収入が35年間続くとは限りません。
- 出産・育児
- 病気やけが
- 親の介護
- 転職
- 勤務時間の短縮
- 会社の業績悪化
- 夫婦関係の変化
共働き収入を満額使わなければ返済できない住宅ローンは、夫婦に働き続けることを強制します。
理想は、主たる収入だけでも最低限返済できることです。
難しい場合でも、どちらかの収入が半分になった条件で家計を試算してください。
返済期間より完済年齢を見る
住宅ローンを考えるときは「35年返済」「40年返済」という期間だけでなく、完済年齢を確認します。
| 借入時年齢 | 35年返済 | 40年返済 | 50年返済 |
|---|---|---|---|
| 30歳 | 65歳 | 70歳 | 80歳 |
| 35歳 | 70歳 | 75歳 | 85歳 |
| 40歳 | 75歳 | 80歳 | 90歳 |
| 45歳 | 80歳 | 85歳 | 95歳 |
40歳で50年ローンを組めば、計算上の完済は90歳です。
毎月返済額が低くても、安全な計画とはいえません。
子育て世帯では、教育費を守りながら70歳前後までの完済を一つの目標にします。
退職金を最初から返済へ使わない
「退職金で残りを返せばよい」という説明にも注意が必要です。
退職金は住宅ローンだけのためのお金ではありません。
- 老後の生活費
- 医療費
- 介護費用
- 車の買い替え
- 住宅修繕
- 配偶者一人になった後の生活費
退職金を使わなければ完済できない住宅ローンを組む場合は、退職金を返済した後に老後資金がいくら残るか確認してください。
退職時点のローン残高だけでなく、90歳までの資産推移を見ることが重要です。
月々返済額ではなく実質住宅費で考える
住宅取得後に必要なのは、住宅ローンだけではありません。
例えば住宅ローンが月9万円でも、次の費用が発生します。
| 項目 | 月平均の想定例 |
|---|---|
| 住宅ローン | 9万円 |
| 固定資産税積立 | 1万円 |
| 火災・地震保険積立 | 3,000円 |
| 住宅修繕積立 | 1万5,000円 |
| 合計 | 11万8,000円 |
この場合、実質的な住宅費は月9万円ではなく、約11万8,000円です。
さらに光熱費や駐車場代が増える場合もあります。
家賃との比較も、住宅ローン返済額だけで行ってはいけません。
住宅性能を削れば本当に安くなるのか
予算が厳しいとき、断熱、気密、耐震、換気などの性能を削る提案があります。
しかし、性能を落とせば建築時の価格は下がっても、次の負担が増える可能性があります。
- 冷暖房費
- 温度差による不快感
- 結露対策
- 将来の性能改修費
- 災害時の損害リスク
削る順番を間違えてはいけません。
最初に見直すべきなのは、過剰な広さ、複雑な形状、高額な内装、使わない設備です。
家族の安全、健康、将来の光熱費に関わる基本性能は、安易に削るべきではありません。
住宅価格ではなく生涯住宅コストを見る
本当に比較すべきなのは、契約時の建築価格だけではありません。
- 建築総額
- 住宅ローン利息
- 35年間の光熱費
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 修繕・交換費用
- 完済年齢
- 売却や相続時の価値
建築価格が100万円安くても、光熱費や修繕費が長期間高くなれば、生涯住宅コストでは逆転する可能性があります。
目先の安さではなく、住み続けるために必要な総額で判断します。
資金計画は3つの条件で比較する
住宅ローンの試算は、現在の好条件だけで作ってはいけません。
最低でも次の3つを比較します。
希望優先案
希望する土地、広さ、設備を優先した計画です。
実現できるかだけでなく、教育費や老後資金へ与える影響を確認します。
おすすめ標準案
住宅性能と暮らしやすさを守りながら、過剰な広さや設備を調整した計画です。
住宅、教育、老後のバランスを重視します。
安全重視案
収入減少、金利上昇、教育費増加があっても耐えられる計画です。
建築後の現金を多く残し、完済年齢を早めます。
3案を数字で比較すれば、住宅に何を求め、何を守るべきかが見えてきます。
良い資金計画の合格条件
次の項目を確認できれば、比較的安全性の高い資金計画です。
- 住み始めるまでの総額が分かっている
- 建築後も生活費6か月分以上の現金が残る
- 教育資金を別に確保できる
- 車の買い替え費用を計算している
- 住宅修繕費を積み立てられる
- 収入が減っても返済できる
- 金利上昇時も家計が赤字にならない
- 70歳前後までの完済を目指せる
- 退職金を使わなくても生活できる
- 90歳まで資産が残る
審査に通ったかどうかではなく、この項目を満たせるかで判断します。
俺流結論
家づくりで一番大切なのは、家にいくら払えるかではありません。
家を建てた後、家族のためにいくら残せるかです。
住宅会社は家が完成すれば代金を受け取ります。
しかし、お客様の暮らしと返済は、その日から何十年も続きます。
広告価格を安く見せること。
返済期間を延ばして月々を低く見せること。
借入可能額いっぱいの家を勧めること。
それは、住宅を売るためには都合がよくても、家族の人生にとって正しいとは限りません。
教育費、車、修繕費、老後資金、そして建築後に残す現金。
これらを先に確保し、残った予算で建てられる家を考える。
豪華な家を建てることより、建てた後も家族が笑って暮らせること。
それが、家づくりで一番大切なお金の考え方です。










