Q. 火災保険を安くする方法とは?
A. 再建に必要な保険金額は削らず、水災補償・免責金額・不要な特約・重複補償を見直します。
火災保険料を安くするために、建物の保険金額を必要以上に下げるのは危険です。
大きな火災や自然災害が発生したとき、受け取れる保険金だけでは家を再建できない可能性があります。
正しい見直し方は次のとおりです。
- 複数社を同条件で比較する
- 水災リスクを土地ごとに判断する
- 免責金額を調整する
- 不要な特約を外す
- 他の保険との重複をなくす
- 家財保険金額を適正にする
- 耐震性能による地震保険割引を使う
- 1年契約と5年契約を比較する
「安い保険」ではなく、「必要な補償を、重複なく買う」ことが重要です。
方法1|複数社を同条件で比較する
同じ建物でも、保険会社によって保険料や補償内容が異なります。
少なくとも2〜3社から見積りを取ってください。
ただし、見積り条件をそろえなければ比較できません。
- 建物保険金額
- 家財保険金額
- 保険期間
- 火災・落雷
- 風災・雹災・雪災
- 水災
- 盗難
- 水漏れ
- 破損・汚損
- 地震保険
- 免責金額
- 特約
- 保険料の支払方法
A社20万円、B社30万円でも、A社に水災や地震保険が含まれていなければ、A社の方が得とは限りません。
最初に補償条件を決め、同じ条件で比較します。
方法2|建物保険金額を適正にする
建物の保険金額は、土地代や住宅ローン借入額ではなく、同等の建物を再建するために必要な再調達価額を基準にします。
例えば、住宅取得総額3,500万円の内訳が次のような場合です。
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 土地 | 800万円 |
| 建物・付帯工事 | 2,300万円 |
| 外構・諸費用 | 400万円 |
| 合計 | 3,500万円 |
土地代を含む総額3,500万円を、そのまま建物保険金額に設定するわけではありません。
一方、保険料を下げるために、再建費用2,500万円の家へ1,500万円しか保険を付けないのも危険です。
現在の火災保険では、再調達価額を基準にした実損払い方式が主流です。日本損害保険協会「火災保険の保険金」
保険会社が算定した建物評価額の範囲で、過大にも過少にもならない金額を設定します。
方法3|水災補償を土地ごとに判断する
水災補償を外すと、保険料を下げられる場合があります。
ただし、
「川が近くにない」
「山梨県には海がない」
という理由だけで外してはいけません。
確認するものは次のとおりです。
- 洪水ハザードマップ
- 内水ハザードマップ
- 土砂災害警戒区域
- 過去の浸水履歴
- 敷地と道路の高低差
- 近くの河川・水路
- 擁壁・斜面
- 周辺住民からの聞き取り
水災には、河川の氾濫だけでなく、豪雨によって道路や水路から水があふれる内水氾濫、土砂災害などがあります。
損害保険料率算出機構でも、所在地の水災リスクに応じた料率区分を設定しています。損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
土地購入前からリスクを確認し、補償の要否を判断します。
方法4|免責金額を調整する
免責金額とは、事故が発生したときに契約者が自己負担する金額です。
例えば、損害額が30万円、免責金額が5万円なら、原則として5万円は自己負担となります。
| 免責金額 | 特徴 |
|---|---|
| 0円 | 自己負担は少ないが保険料が高くなりやすい |
| 1万〜3万円 | 小さな損害にも比較的対応しやすい |
| 5万円 | 保険料と自己負担のバランスを取りやすい |
| 10万円以上 | 保険料は下がりやすいが自己負担が大きい |
生活防衛資金が十分にあり、少額損害は自分で負担できる家庭なら、免責金額を上げて保険料を抑える方法があります。
ただし、建築後の預金が少ない家庭が、免責を高くしすぎるのは危険です。
方法5|破損・汚損補償を検討する
破損・汚損補償は、日常生活で建物や家財を偶然壊してしまった場合などを補償するものです。
商品によって補償範囲は異なりますが、例えば次のような事故が対象になる場合があります。
- 家具を移動して壁を破損した
- 子どもがテレビを倒した
- 誤って窓ガラスを割った
- 家電を落として壊した
小さな子どもがいる家庭には意味があります。
一方、少額の損害は自分で負担すると決めるなら、補償を外したり免責を高くしたりすることで、保険料を抑えられる場合があります。
保険料だけでなく、年間で実際にどの程度利用する可能性があるか考えます。
方法6|家財保険金額を適正にする
建物の火災保険では、家具や家電が補償されないことがあります。
家財保険へ加入する場合も、保険金額を過大に設定すれば保険料が上がります。
| 世帯 | 家財保険金額の目安 |
|---|---|
| 単身 | 200万〜400万円 |
| 夫婦 | 400万〜700万円 |
| 4人家族 | 600万〜1,000万円 |
| 高額家財が多い家庭 | 個別計算 |
これは一般的な目安です。
実際には次の家財を積み上げて計算します。
- 冷蔵庫・洗濯機
- テレビ・パソコン
- エアコン
- ソファ・ダイニング
- ベッド・寝具
- 衣類
- 食器・調理器具
- 子ども用品
- その他の生活用品
4人家族だから自動的に1,500万円という設定ではなく、実際に買い直す金額を確認します。
方法7|特約の重複をなくす
火災保険には、さまざまな特約を付けられます。
しかし、すでに他の保険へ同様の補償が付いている可能性があります。
重複しやすい補償
- 個人賠償責任
- 携行品損害
- 弁護士費用
- 類焼損害
- 日常生活の破損補償
- 借家人賠償
- 自転車事故への補償
特に個人賠償責任特約は、自動車保険、傷害保険、クレジットカードなどへ付帯している場合があります。
複数契約しても、実際の損害額を超えて重複して受け取れるとは限りません。
夫婦それぞれの保険を一覧にし、家族全体で一つあれば足りる補償を確認します。
方法8|地震保険の割引を使う
地震保険には、建物の耐震性能などによる割引があります。
主な割引は次のとおりです。
- 免震建築物割引
- 耐震等級割引
- 耐震診断割引
- 建築年割引
耐震等級3などの条件を満たせば、地震保険料の割引を受けられる可能性があります。
ただし、必要書類を提出しなければ適用されない場合があります。
住宅会社へ、次の書類が使えるか確認してください。
- 住宅性能評価書
- 長期優良住宅認定書
- 設計内容説明書
- 耐震等級を証明できる書類
- 建築確認関係書類
高い耐震性能は、地震時の被害を抑えるだけでなく、地震保険料にも関係します。
地震保険を外せば安くなるが危険
地震保険を外せば、支払保険料は下がります。
しかし、一般的な火災保険では、地震、噴火、津波を原因とする火災や損壊は原則として補償されません。
地震保険は火災保険とセットで加入し、保険金額は火災保険の30〜50%です。
上限は建物5,000万円、家財1,000万円です。財務省「地震保険制度の概要」
保険料を安くする目的だけで外すのではなく、次の条件を確認します。
- 住宅ローン残高
- 地震後に使える預金
- 建物の耐震性能
- 地盤リスク
- 家財の再購入費
- 仮住まい費用
- 二重ローンに耐えられるか
耐震等級3だから地震保険が不要とは限りません。
耐震性能は被害を抑えるもの、地震保険は被災後の生活再建資金です。
方法9|風災の免責条件を比較する
火災保険では、風災、雹災、雪災の補償条件も商品によって異なります。
- 免責なし
- 免責5万円
- 免責10万円
- 一定額以上の損害だけ対象
保険料が安くても、台風で屋根やカーポートが損傷した際、自己負担が大きい可能性があります。
山梨県でも、強風、台風、雹、雪による被害は考えられます。
保険料と免責条件をセットで比較してください。
方法10|5年契約と1年契約を比較する
火災保険や地震保険には、複数年契約と1年契約があります。
長期一括払いは、1年契約を毎年更新するより保険料が抑えられる場合があります。
ただし、一括でまとまった現金が必要です。
地震保険は最長5年で、2〜5年の長期契約には長期係数が設定されています。日本損害保険協会「地震保険の保険期間」
比較する項目は次のとおりです。
- 5年間の総保険料
- 1年契約を5回更新した場合
- 一括払いと年払い
- 中途解約時の返戻金
- 補償内容を変更できる時期
- 更新時の保険料上昇
目先の支払額ではなく、5年間の総額で比較します。
方法11|月払いにする前に総額を見る
火災保険料を月払いにすると、一度の負担を抑えられます。
しかし、分割払では一括払より総額が高くなる場合があります。
住宅会社や金融機関から、
「月々数千円です」
と言われた場合も、契約期間全体の総額を確認してください。
住宅ローンと同じように、月額が小さいことと、総額が安いことは別です。
方法12|補償対象の設備を整理する
新築住宅では、次の設備が建物補償に含まれるか確認します。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナー
- 蓄電池
- カーポート
- 物置
- フェンス
- 門扉
- 宅配ボックス
- エアコン室外機
- 給湯器
別の機器保険やメーカー保証に加入している場合、補償が一部重複する可能性があります。
一方、火災保険に含まれていると思っていた設備が対象外ということもあります。
何を補償しているか整理してから、不要な重複を外します。
住宅会社や銀行の見積りだけで決めない
住宅会社や金融機関から火災保険を紹介されることがあります。
手続きが簡単というメリットはありますが、その保険が最も安いとは限りません。
次の条件をそろえて比較してください。
- 紹介された保険
- 他の代理店型保険
- インターネット型保険
- 現在加入している保険会社
- 自動車保険との組み合わせ
安さだけでなく、事故時の相談、申請支援、対応窓口も確認します。
大きな災害時に、契約内容を自分だけで確認して請求できるかも判断材料です。
保険金請求歴だけを理由に契約しない
「火災保険を使えば無料で屋根修理ができる」という営業にも注意が必要です。
保険金は、契約で補償される偶然な事故による損害に対して支払われるものです。
経年劣化や通常のメンテナンスは、原則として補償対象になりません。
事実と異なる事故内容で請求することはできません。
台風や雹などで被害を受けた場合は、次の資料を残します。
- 被害箇所の写真
- 発生日
- 天候記録
- 修理見積書
- 点検報告書
- 施工前後の写真
訪問業者へ保険金請求をすべて任せず、まず保険会社や正規代理店へ確認してください。
5年後の更新費用も積み立てる
5年契約の保険料が30万円なら、次回更新のために月5,000円を積み立てます。
| 5年間の保険料 | 毎月の積立額 |
|---|---|
| 20万円 | 約3,400円 |
| 30万円 | 5,000円 |
| 40万円 | 約6,700円 |
| 50万円 | 約8,400円 |
新築時の諸費用として払ったら終わりではありません。
住宅ローン返済中にも更新が来ます。
固定資産税、住宅修繕費と一緒に、住宅維持費として積み立てます。
削ってはいけない補償
保険料を安くした結果、生活再建できなくなっては意味がありません。
次の補償を外す場合は慎重に判断してください。
- 再建費用を満たす建物保険金額
- 火災・落雷
- 地域に必要な風災・雹災・雪災
- ハザードリスクがある土地の水災
- 住宅ローンが大きく残る家庭の地震保険
- 買い直しが難しい家財
- 仮住まい・残存物撤去などの費用
安くする対象は「重複」と「不要な補償」です。
家族の生活再建に必要な補償ではありません。
火災保険見直しチェックリスト
- 建物保険金額は再調達価額になっているか
- 土地代を含めていないか
- 家財保険金額は過大ではないか
- 水災リスクをハザードマップで確認したか
- 免責金額を比較したか
- 個人賠償責任が重複していないか
- 破損・汚損補償が必要か
- 太陽光やカーポートは補償対象か
- 地震保険の割引を使っているか
- 1年契約と5年契約を比較したか
- 複数社から同条件で見積りを取ったか
- 次回更新費用を積み立てているか
この条件をそろえてから、保険料を比較します。
俺流結論
火災保険を安くする最も正しい方法は、建物の保険金額を削ることではありません。
水災リスクを土地ごとに確認する。
自己負担できる範囲で免責を設定する。
家財保険金額を適正にする。
個人賠償などの重複をなくす。
耐震等級による地震保険割引を使う。
同じ補償条件で複数社を比較する。
これが正しい方法です。
火災保険は、使わなければもったいない商品ではありません。
大きな災害が起きても、住宅ローンを抱えた家族が生活を再建するための保険です。
年間数千円を削るために、数千万円の住宅を守れない契約にしてはいけません。
安さではなく、必要な補償を重複なく、適正な価格で備える。
これが火災保険を安くする本当の考え方です。










