支払時期を突然早める住宅会社は、何を疑うべき?
Q. 契約書では上棟後に支払う予定だった中間金を、「資材購入のため早めに振り込んでほしい」と言われました。応じても大丈夫ですか?
A. すぐに応じてはいけません。契約後に突然、支払時期を早める会社には、資金繰り悪化、下請業者への未払い、仕入先からの信用低下などが起きていないか確認する必要があります。
契約時から決められていた支払条件と、契約後に突然変更される支払条件では、危険度が違います。
特に、
工事が予定より遅れているのに、支払いだけ早めてほしい
という依頼は、強い警戒信号です。
支払いを早める合理的な理由もある
すべての前倒し依頼が、資金繰り悪化を意味するわけではありません。
例えば、次のような理由です。
- 工事が予定より早く進み、支払条件となる工程へ到達した
- 施主が高額な特注設備を追加した
- 輸入資材を早期発注する必要がある
- 施主、住宅会社、金融機関で融資日を変更した
- メーカーの価格改定前に発注する
- 災害などによる資材不足へ備える
ただし、合理的な理由なら、次の書類を提示できます。
- 変更工程表
- 資材・設備の見積書
- メーカーの価格改定通知
- 発注書
- 支払先と発注金額
- 契約変更書
- 完成保証機関の確認
- 金融機関との変更手続書類
「会社の都合です」「資材が必要です」という口頭説明だけでは不十分です。
疑うべき5つの資金問題
1.下請業者へ支払う現金が不足している
住宅会社が下請業者や職人への支払いに困り、施主へ中間金の前倒しを求めている可能性があります。
この場合、早く支払ったお金が、その住宅の工事ではなく、過去現場の未払いへ回されることがあります。
2.仕入先から掛け払いを止められた
信用状態が悪化すると、建材店や設備メーカーから、
「今後は現金でなければ納品できない」
と条件を変更される可能性があります。
住宅会社が急に「資材を現金で買う必要がある」と言い始めた場合は、仕入先からの信用が低下していないか注意が必要です。
3.銀行からの融資が止まった
住宅会社は、運転資金を金融機関から借りて、下請代金や資材代を支払うことがあります。
借入枠の縮小や新規融資の停止によって資金が不足すると、顧客からの契約金や中間金を早く集める動きが出る可能性があります。
4.別の現場へ資金を流用している
新しい顧客から受け取ったお金で、古い現場の工事代金を支払う状態です。
新規契約と早期入金が続いている間は工事が回りますが、契約が減ると一気に止まる可能性があります。
5.給与・家賃・借入返済が迫っている
月末や決算前に支払いを早めるよう求められる場合、住宅工事以外の会社経費が不足している可能性もあります。
契約住宅の工程と関係なく、
「今月中にどうしても入金してほしい」
と頼まれた場合は、その理由を必ず確認してください。
支払時期の前倒しで損失はいくら増える?
請負金額2,400万円の住宅で考えます。
契約上は、上棟・構造検査後に累計60%を支払う予定でした。
ところが、基礎工事段階で同じ金額を先に払ってほしいと言われたとします。
- 支払後の累計額:1,440万円
- 基礎工事段階の出来高:仮に480万円
- 実質的な前払い:960万円
1,440万円-480万円
=960万円
この直後に住宅会社が倒産すれば、960万円が前払い損失として問題になります。
予定どおり上棟・構造検査後まで待っていれば、少なくとも基礎工事しかできていない段階で960万円を危険にさらさずに済みます。
これは支払時期の危険性を示す計算例であり、実際の出来高は現場ごとに確認が必要です。
請求書が届いても契約変更ではない
住宅会社から前倒しした日付の請求書が届いても、それだけで契約書の支払条件が変更されたとは限りません。
まず、工事請負契約書、契約約款、支払予定表を確認してください。
国土交通省は、建設工事の請負契約では、当事者間の権利義務を明確にし、不明確な契約条件による紛争を防ぐため、標準請負契約約款を整備しています。
国土交通省「建設工事標準請負契約約款」
支払条件を変更する場合は、少なくとも次の内容を書面で合意します。
- 変更前の支払日・支払条件
- 変更後の支払日・支払条件
- 前倒しする金額
- 変更理由
- 工事出来高
- 資材の発注内容
- 倒産時の保証範囲
- 工事が中止した場合の精算方法
口頭やLINEだけで前倒しに同意しないでください。
完成保証の対象外になる可能性
支払時期を早めると、完成保証制度が定める支払割合を超える可能性があります。
JIO完成サポートでは、工事の進捗に応じた支払割合を定め、その割合を超えて住宅会社へ支払った工事費用は、サポート対象外になると明記しています。
JIO「完成サポート 一般タイプ」
住宅会社から、
「完成保証があるから先に払っても大丈夫です」
と言われても、住宅会社の説明だけで判断してはいけません。
保証機関へ直接、
「現在の工程で、累計○○万円を支払っても保証対象ですか?」
と確認してください。
前払い損失と引き継ぎ費用は同じ保証枠になる場合がある
住宅あんしん保証では、支払済み金額から既施工部分の出来高を差し引いた金額を前払金としています。
前払金と引き継ぎ時の増嵩工事費用には保証限度があり、両方を合わせた総保証額にも上限があります。
住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」
つまり、前倒しによって前払い損失が増えると、引き継ぎ工事費用へ使える保証枠が少なくなる可能性があります。
前払いを増やすことは、倒産時の損失を増やすだけでなく、家を完成させるための保証余力まで減らすことがあります。
特に危険な前倒し依頼
次の項目が重なるほど危険度が高くなります。
- 工事が予定より遅れている
- 現場に職人が来ていない
- 現場監督と連絡が取れない
- 下請業者から未払いの話を聞いた
- 資材の納品が止まっている
- 値引きと引き換えに前払いを求める
- 振込先口座が突然変わった
- 法人口座ではなく個人口座を指定された
- 完成保証機関への確認を嫌がる
- 「払わなければ工事を止める」と言われる
一つでも異変があれば、前倒しを止めて状況を確認してください。
安全な確認手順
1.現在の工事出来高を確認する
現場写真だけでなく、可能であれば工事監理者や第三者検査機関へ確認します。
2.前倒し理由を書面でもらう
何を、どこから、いくらで購入するためなのかを明確にします。
3.契約書の支払条件を確認する
支払条件となる工程へ到達していなければ、契約どおりの支払いを主張します。
4.完成保証機関へ直接確認する
前倒し後の累計支払額が、保証対象内か確認します。
5.金融機関へ連絡する
つなぎ融資や分割融資を使う場合は、住宅会社の依頼だけで実行せず、金融機関へ事情を説明します。
6.契約変更書を作成する
前倒しに合理的な理由があり、支払いに同意する場合でも、口約束ではなく書面に残します。
住宅会社への回答文
前倒しを求められたら、次のように回答してください。
契約書では、今回の支払いは上棟・検査完了後となっています。現在はその工程へ到達していないため、契約どおり工程完了後に支払います。前倒しが必要な場合は、理由、資材発注明細、現在の出来高、完成保証の対象範囲を書面で提示してください。保証機関へ確認後に判断します。
この回答に対して強く反発したり、確認を拒否したりする会社には、さらに注意が必要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
工事代金の支払予定表は、住宅会社が自由に変更するためのものではありません。
施主のお金と工事を、同じ速度で進めるための約束です。
デザインハウス甲府では、工事の進捗から支払いが大きく先行しない条件を設定し、全棟に完成保証を付けています。
支払時期の前倒しを求められたときに確認するのは、
「払えるかどうか」
ではありません。
「なぜ、契約時には必要なかったお金が、今すぐ必要になったのか」
です。
工事が進んでいないのに、支払いだけを早める会社には、直近の資金繰り悪化を疑ってください。










