融資した銀行は、住宅会社の倒産に責任を負う?
A. 原則として、銀行は住宅会社の倒産や工事未完成について責任を負いません。銀行が審査しているのは主に借りる人の返済能力と担保であり、住宅会社の完成保証人ではないからです。
住宅ローンの審査が通ると、
銀行も認めた住宅会社だから安全
危険な会社なら銀行が融資しないはず
住宅会社が倒産したら、銀行も何らかの補償をしてくれる
と思ってしまう人がいます。
しかし、住宅会社との工事請負契約と、銀行との金銭消費貸借契約は別の契約です。
- 住宅会社:家を完成させる
- 施主:工事代金を支払う
- 銀行:施主へお金を貸す
- 施主:銀行へ借入金を返済する
住宅会社が家を完成できなくても、銀行が施主へ貸したお金が自動的に消えるわけではありません。
銀行は住宅会社を保証したのではなく、施主へ融資しただけです。
住宅ローン審査に通っても、住宅会社が安全とは限らない
銀行の住宅ローン審査では、一般的に次のような内容が確認されます。
- 申込者の年収
- 勤務先
- 勤続年数
- 年齢
- 他の借入状況
- 信用情報
- 返済負担率
- 土地・建物の担保評価
- 建築確認や工事請負契約の内容
住宅会社の名称や工事請負契約書も提出しますが、それは住宅会社の倒産可能性を保証するための審査とは限りません。
銀行が融資を承認したからといって、
- 住宅会社の決算が健全
- 下請業者への支払いが正常
- 完成まで資金が続く
- 工期どおりに完成する
- 契約金が安全に管理される
ことを保証したわけではありません。
住宅ローン審査の合格は、住宅会社への安全証明書ではありません。
住宅会社が倒産しても借入金は残る
施工会社が倒産すると、施主には住宅会社に対する前払金返還請求権などが発生する可能性があります。
一方、銀行はすでに施主へ融資を実行しています。
「住宅会社からお金が戻らないこと」と「銀行から借りたお金を返すこと」は別問題です。
そのため、
家が完成していない
住宅会社へ支払ったお金が戻らない
それでも銀行への返済は残る
という状態になる可能性があります。
施工会社が破産した場合、工事を続けるには現在の契約関係を整理し、別の施工会社と新たな工事請負契約を結ぶ必要があります。住まいるダイヤルも、破産管財人が関わる契約解除や工事継続の判断について、法律家の助言を受けながら慎重に進めるよう案内しています。住まいるダイヤル「建築途中に施工業者が破産した事例」
土地のローンはどうなる?
住宅会社が倒産して建物が完成しなくても、土地を購入するために借りたローンは残ります。
土地はすでに施主名義になり、その土地へ銀行の抵当権が設定されていることがあります。
建物が未完成でも、
- 土地代
- 土地購入諸費用
- 登記費用
- 土地に関するローン利息
は消えません。
工事再開ができなければ、家のない土地に対するローンと、仮住まいの家賃を同時に負担する可能性があります。
つなぎ融資で支払ったお金はどうなる?
注文住宅では、建物が完成して住宅ローンが実行される前に、次の代金を支払う必要があります。
- 土地代
- 契約金
- 着工金
- 上棟金
- 中間金
この資金を一時的に借りるのが、つなぎ融資です。
つなぎ融資は、建物完成後に実行される住宅ローンで一括返済する仕組みが一般的です。
商品によっては、土地代、着工金、中間金を複数回に分け、工事請負金額の大部分まで融資できるものがあります。例えば全宅住宅ローンの案内では、着手金と中間金を合わせて工事請負金額の最大80%まで利用できるとしています。全宅住宅ローン「つなぎ融資」
完成前に多額の融資が実行されるからこそ、住宅会社の倒産リスクに注意が必要です。
住宅会社へ支払ったつなぎ融資が回収できなくても、つなぎ融資の借入契約は残ります。
さらに、工事再開が遅れれば、次の問題も起きます。
- つなぎ融資の利息が増える
- 融資期間の期限を迎える
- 住宅ローンへの切り替えができない
- 引き継ぎ工事の追加資金が必要になる
- 再審査を求められる
- 追加融資を受けられない
「完成後に住宅ローンで返せばよい」と考えていても、家が完成しなければ予定していた住宅ローンが実行されない可能性があります。
分割融資なら被害を防げる?
住宅ローンを工事の進捗に合わせて分割実行する金融機関もあります。
分割融資には、完成前に必要な資金を住宅ローンとして借りられる利点があります。
しかし、すでに実行された融資は借入金です。
住宅会社が倒産しても、次のように扱われる可能性があります。
- 実行済み融資:施主の債務として残る
- 未実行融資:銀行が工事再開計画を確認する
- 引き継ぎ会社への支払い:再審査や契約変更が必要
- 追加費用:別途審査が必要
- 工期延長:融資条件の変更が必要
分割融資で重要なのは、回数ではありません。
工事出来高以上の融資を実行しない仕組みになっているかです。
銀行の現場確認は、施工品質の保証ではない
銀行や保証会社が、融資実行前に工事の進捗を確認する場合があります。
しかし、その確認は主に、
- 融資条件を満たしているか
- 担保となる建物が進捗しているか
- 融資金の使途が適切か
- 次の分割融資を実行できるか
を判断するためのものです。
住宅の施工品質を細部まで検査し、設計図書どおりに施工されていることを施主へ保証するものとは限りません。
銀行が上棟を確認して中間金を実行しても、
- 耐震等級3になっている
- 断熱材が適正に施工されている
- 防水工事に不備がない
- 構造金物が図面どおりに取り付けられている
ことまで保証したとは限りません。
融資の進捗確認、建築士の工事監理、第三者検査は役割が違います。
銀行に責任を問える可能性はある?
銀行が常に免責されるという意味ではありません。
例えば、次のような事情がある場合は、銀行側の説明や融資実行に問題がなかったか、個別に検討する余地があります。
- 融資条件に反して資金が実行された
- 必要な進捗確認をせず、多額の資金が支払われた
- 施主の承諾なく住宅会社へ資金が送金された
- 銀行が住宅会社の安全性を明確に保証した
- 事実と異なる説明によって支払いを促した
- 住宅会社と特別な関係があり、契約へ深く関与した
- 倒産が現実化している状況で融資を実行した
ただし、銀行に法的責任があるかは、融資契約、説明書、振込依頼書、融資実行時の状況などによって判断されます。
「銀行も住宅会社を知っていたはず」という理由だけで、損失補償を求められるとは限りません。
問題があると考える場合は、契約書や送金記録を持って弁護士、全国銀行協会相談室などへ相談してください。
2,200万円の家で起きる資金不足
次のケースを考えてみます。
- 工事請負金額:2,200万円
- つなぎ融資で住宅会社へ支払い済み:1,100万円
- 実際の工事出来高:800万円
- 工事進捗を超えた前払い:300万円
- 元の契約で残っている工事価値:1,400万円
- 引き継ぎによる追加費用:250万円
- 引き継ぎ会社の見積額:1,650万円
- 当初予定していた未実行融資:1,100万円
工事を完成させるには1,650万円必要ですが、未実行融資は1,100万円しかありません。
不足額は550万円です。
さらに、工事再開まで6か月かかり、仮住まい家賃、つなぎ融資利息、荷物保管料が月15万円かかれば、90万円が追加されます。
必要な追加資金は合計640万円です。
銀行が追加融資を承認しなければ、施主が自己資金で用意しなければ家を完成できない可能性があります。
一方、すでに実行された1,100万円の借入は残ります。
これが、住宅会社倒産による「家がないのに借金が残る」状態です。
銀行は倒産時に何をしてくれる?
銀行に完成責任はありませんが、早く相談すれば次の対応を検討してもらえる可能性があります。
- 未実行融資の停止
- つなぎ融資期間の延長
- 引き継ぎ会社への振込先変更
- 住宅ローン実行期限の変更
- 追加融資の審査
- 返済開始時期や返済条件の見直し
- 一定期間の返済額軽減
- 返済期間の延長
ただし、すべて審査が必要で、必ず認められるわけではありません。
全国銀行協会は、住宅ローンの返済条件変更として、月々の返済額を一時的に減額する方法や返済期間を延長する方法などを案内しています。ただし、総返済額が増える点にも注意が必要です。全国銀行協会「カウンセリングサービスに関するFAQ」
住宅金融支援機構も、返済が困難になった場合は、返済中の金融機関へ相談し、審査を受けたうえで返済方法を変更する流れを案内しています。住宅金融支援機構「月々の返済でお困りになったとき」
返済を滞納してからではなく、住宅会社の工事停止や倒産の情報を得た時点で連絡してください。
契約前に銀行へ確認すべき10項目
- 融資は何回に分けて実行される?
- 各回の融資実行条件は?
- 誰が工事出来高を確認する?
- 施主の承諾なしに住宅会社へ送金される?
- 工程より早い支払いを求められた場合、融資を止められる?
- 住宅会社が倒産したら未実行融資はどうなる?
- 引き継ぎ会社へ変更しても融資を利用できる?
- つなぎ融資の期限を延長できる?
- 追加工事費の融資を再審査できる?
- 完成保証の有無を融資条件として確認する?
銀行には、次のように具体的に質問してください。
上棟時に住宅会社へ支払う金額は、その時点の工事出来高を超えていませんか。
住宅会社が倒産した場合、残りの融資を別の住宅会社へ使うために、どのような手続きが必要ですか。
金利だけで銀行を選ばず、建築途中の融資管理まで確認することが重要です。
最も安全なのは「銀行に守ってもらう」ことではない
倒産被害を減らす基本は、次の5つです。
- 工事出来高より先に代金を支払わない
- 契約時に多額の入金をしない
- 支払い前に現場の進捗を確認する
- 全棟完成保証のある住宅会社を選ぶ
- 図面・申請書類・検査記録を工程ごとに受け取る
銀行が融資してくれるから安心なのではありません。
融資されたお金を、いつ、いくら、どの条件で住宅会社へ支払うかが重要です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、住宅ローンが通るかどうかだけで家づくりを判断しません。
- 建物・付帯工事・申請・消費税を含めた総額
- 工事進捗に合わせた支払い条件
- 全棟完成保証
- 許容応力度計算
- 契約前の性能・仕様の書面化
- 住宅ローンと老後資金を含めた返済計画
を契約前に確認します。
銀行が貸してくれる金額と、安心して返せる金額も同じではありません。
また、銀行が融資を承認した住宅会社と、最後まで安全に家を完成できる住宅会社も同じではありません。
銀行は、施主の返済能力を審査する。
完成保証会社は、住宅会社の倒産に備える。
住宅会社は、家を完成させる。
それぞれの役割を混同してはいけません。
住宅会社が倒産しても、融資は消えません。だから住宅ローンを申し込む前に、完成保証と安全な支払い条件を確認してください。










