Q. 所有者が変わると長期保証は終了する?
A. 所有者が変わっただけで必ず長期保証が終了するわけではありません。しかし、相続・贈与・離婚・売却などで名義が変わった場合、住宅会社への届出や保証承継手続きをしなければ、保証を受けられなくなる可能性があります。家族間の名義変更でも自動承継とは考えず、保証書と約款を確認してください。
売却しなくても「所有者変更」は起こる
所有者変更というと、中古住宅として第三者へ売却する場面を想像しがちです。
しかし、次のような場合も建物の所有者が変わります。
- 親が亡くなり、子が相続した
- 親から子へ生前贈与した
- 夫婦間で持分を贈与した
- 離婚による財産分与で名義を変更した
- 共有名義から単独名義へ変更した
- 個人名義から法人名義へ変更した
- 家族信託などによって権利関係を変更した
- 第三者へ売却した
同じ家族が住み続けていても、登記上の所有者が変われば、保証制度上の手続きが必要になる場合があります。
住んでいる人が同じでも、保証を受ける人が同じとは限りません。
住宅会社によって扱いは大きく違う
所有者が変わった場合の長期保証は、大きく3種類に分かれます。
1.所有者が変わっても保証が続く
建物に対して保証する考え方で、新所有者にも保証を引き継ぐ住宅会社があります。
ただし、連絡先や所有者情報の変更手続きが必要になることがあります。
2.所定の手続きをすれば保証を承継できる
所有者変更届、点検、必要な補修、保証書の名義変更などを条件に、残りの保証期間を引き継ぐ制度です。
3.新所有者には保証を承継できない
保証が新築時の契約者本人に限定され、所有者が変わると終了する制度です。
保証書に「譲渡不可」「当初所有者に限る」などと記載されている場合があります。
同じ大手住宅会社でも制度は一律ではない
例えば、ヘーベルハウスは、所有者が変わっても保証が継続し、子世代への承継、賃貸、売却の場合も引き継がれると案内しています。ヘーベルハウス「長期保証とサービス」
一方、ミサワホームは、残りの保証期間を第三者へ引き継ぐ場合について、
- 持ち主変更の通知
- 有料の点検整備
- 保証書の名義書き換え
- 関係書類の新所有者への引渡し
などの手続きを案内しています。ミサワホーム「保証期間の延長とサービス」
どちらが正しいという話ではありません。
住宅会社ごとに保証制度が違うため、契約している保証書と約款の確認が必要だということです。
相続なら自動的に引き継がれるのか
親が亡くなり、子が住宅を相続した場合でも、住宅会社が相続の事実を自動的に把握するわけではありません。
名義変更をしないまま放置すると、
- 定期点検の案内が亡くなった親へ届く
- 保証更新の通知を受け取れない
- 所有者本人であることを確認できない
- 不具合発生時に手続きが進まない
- 保証書と登記上の所有者が一致しない
という問題が起こります。
相続後は、住宅会社へ次の内容を連絡してください。
- 旧所有者が亡くなったこと
- 新しい所有者の氏名と住所
- 相続による所有者変更であること
- 保証承継を希望すること
- 定期点検・修繕履歴の確認
- 必要な提出書類
戸籍、遺産分割協議書、登記事項証明書などを求められる場合があります。
親から子への贈与でも安心できない
親子間の名義変更だからといって、住宅会社が自動的に保証を継続するとは限りません。
保証約款上は、
「第三者への譲渡」
「所有権の移転」
として扱われる可能性があります。
相続は承継できても、生前贈与は別の手続きが必要になる制度も考えられます。
贈与契約や所有権移転登記を行う前に、住宅会社へ保証の扱いを確認してください。
離婚による財産分与にも注意
夫名義の家を、離婚後に妻名義へ変更する場合なども、保証名義の変更が必要になる可能性があります。
特に、
- 住宅の契約者は夫
- 建物の所有者は夫婦共有
- 離婚後は妻が単独所有
- 保証書は夫名義
という状態では、誰が保証請求できるのかが分かりにくくなります。
財産分与の合意書や登記手続きだけでなく、住宅会社、設備保証会社、地盤保証会社にも名義変更を届け出てください。
共有持分の変更でも確認が必要
夫婦共有から夫だけの単独名義へ変更する場合や、子どもを共有者に加える場合も、所有者情報が変わります。
住宅会社によっては、代表所有者だけの登録で対応できる場合があります。
一方で、すべての共有者の同意や本人確認を求められる可能性もあります。
「持分が少し変わっただけだから連絡不要」と自己判断しないでください。
賃貸に出すだけなら所有者は変わらない
自宅を賃貸住宅として貸し出しても、登記上の所有者が変わらなければ、所有者変更には当たりません。
ただし、保証約款に、
- 自己居住用住宅に限る
- 事業利用は対象外
- 用途変更時は届出が必要
- 入居者の使用による損傷は対象外
などの条件がある可能性があります。
所有者が変わらなくても、住宅の使用目的が変わることで保証に影響することがあります。
賃貸へ出す前に住宅会社へ確認してください。
法律上の10年責任も新所有者へ単純には移らない
新築住宅では、住宅会社や売主は、原則として引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について責任を負います。
しかし、この責任は、新築時の発注者・買主と住宅会社との契約関係を基礎としています。
相続のように権利義務を包括的に承継する場合と、売買や贈与によって住宅だけを取得する場合では、法的な扱いが同じとは限りません。
新所有者が直接住宅会社へ請求できるのか、旧所有者を通じた請求が必要なのか、個別に確認する必要があります。
住宅瑕疵保険も名義変更が必要
住宅瑕疵担保責任保険が付いている住宅でも、所有者が変われば自動的に保険上の地位が移るとは限りません。
住宅保証機構は、新築保険について、保険契約者である住宅事業者が承諾した場合に限り、転売後の買主へ名義変更が可能であり、住宅事業者による手続きが必要と案内しています。
また、同社では新築保険以外の既存保険、リフォーム保険、延長保険などについて、売却による名義変更を含む保険承継の仕組みはないとしています。住宅保証機構「住宅取得者の方」
保険の種類と保険法人によって扱いが異なるため、保険付保証明書を確認してください。
設備保証も別に名義変更する
建物保証を承継できても、次の保証が自動的に移るとは限りません。
- キッチン
- ユニットバス
- トイレ
- 給湯器
- 換気設備
- 太陽光発電
- 蓄電池
- IH・食洗機
- 地盤保証
- 防蟻保証
例えば、パナソニックの住宅用太陽光・蓄電システムでは、対象部分の所有権を譲渡する場合、速やかな名義変更手続きを求めたうえで、所有者が変わっても保証を引き継ぐと案内しています。Panasonic「長期保証 名義変更・再発行」
設備保証は、建物保証とは別の会社・別の規約で管理されています。
一つずつ名義変更の可否を確認してください。
長期優良住宅の認定も手続きが必要
長期優良住宅は、所有者が変われば自動的にすべての手続きが完了するわけではありません。
国土交通省は、相続や売買などによって認定住宅を引き継ぐ場合、所管行政庁へ認定計画実施者の地位承継の承認を申請できると案内しています。国土交通省「長期優良住宅のページ」
ただし、長期優良住宅の地位承継と、住宅会社の長期保証の名義変更は別の手続きです。
片方だけで終わらせないでください。
所有者変更時に確認する保証一覧
所有者が変わったら、次の保証を個別に確認してください。
- 住宅会社の建物保証
- 住宅瑕疵担保責任保険
- 延長保証保険
- 地盤保証
- 防蟻保証
- 住宅設備保証
- 太陽光・蓄電池保証
- リフォーム工事保証
- 長期優良住宅の認定
- 定期点検・メンテナンス契約
「住宅会社へ連絡したから、すべて変更済み」とは限りません。
名義変更の基本手順
1.保証書と約款を確認する
「譲渡」「相続」「所有者変更」「保証承継」の項目を探します。
2.登記変更前に住宅会社へ相談する
可能であれば、相続や贈与、売買の手続き前に確認します。
3.必要書類と期限を聞く
届出期限が定められていないか確認してください。
4.点検や修繕の条件を確認する
有償点検、指定工事、承継手数料が必要な場合があります。
5.保証書の名義を変更する
口頭登録だけでなく、新所有者名の保証書や承継証明書を受け取ります。
6.点検履歴を引き継ぐ
過去の点検報告書、修繕記録、施工写真を新所有者へ渡します。
7.次回点検日を確認する
名義変更中に点検期限を過ぎないよう注意してください。
住宅会社へ送る確認文
所有者変更を予定している場合は、次のように確認してください。
当住宅について、〇〇を理由に所有者を〇〇から〇〇へ変更する予定です。現在有効な建物保証、定期点検、延長保証を新所有者へ承継できるか、必要書類、申請期限、点検・補修条件、費用を書面でご回答ください。併せて、設備保証、地盤保証、防蟻保証、住宅瑕疵担保責任保険について必要な手続きもご案内ください。
「家族間なので問題ありません」という口頭回答だけで終わらせず、新所有者名の書面を受け取ってください。
手続きを忘れていた場合
すでに所有者が変わっているのに、住宅会社へ連絡していなかった場合は、すぐに相談してください。
確認するのは次の4点です。
- 現在も保証は有効か
- 遡って名義変更できるか
- 再点検が必要か
- 再保証を受けられるか
住宅会社から保証終了と言われた場合は、
- 終了した保証の名称
- 終了日
- 根拠となる保証条項
- 再保証の条件
- 法律上の責任との関係
を書面で回答してもらいます。
手続きが遅れたからといって、最初からすべてを諦める必要はありません。
長期保証は「家」についているのか「人」についているのか
60年保証と聞けば、多くの人は建物が60年間守られると思います。
しかし、所有者が変わっただけで保証が終了する制度なら、実際には、
家の60年保証ではなく、最初に契約した人だけの保証
ということになります。
将来、子どもへ家を残す予定がある人、住み替えや売却の可能性がある人にとって、保証承継の可否は資産価値に直結する重要な条件です。
所有者が変わっても長期保証が続くかは、住宅会社によって異なります。
相続や家族間の贈与でも自動承継とは考えず、必ず名義変更手続きを行ってください。
本当に長期的な安心を約束する保証なら、建てた人だけでなく、その家を受け継ぐ人まで守れる仕組みになっているはずです。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










