Q. 保証延長工事は、他社と相見積りできる?
A. 相見積りを取ることはできます。ただし、他社へ工事を依頼すると、住宅会社の長期保証を延長できない場合があります。「見積りを取ること」と「他社へ発注すること」は分けて考えてください。
保証延長のために、住宅会社から100万円、200万円という修繕工事を提示されることがあります。
高額な工事であれば、他社の価格も確認したいと考えるのは当然です。
しかし、
「他社で工事をしたら保証は延長できません」
と言われると、相見積りを取る意味がないように感じるかもしれません。
それでも、相見積りには大きな意味があります。
相見積りを取るだけなら問題はない
他社へ見積りを依頼しただけで、通常は住宅会社の保証が直ちに終了するわけではありません。
相見積りによって確認できるのは、価格だけではありません。
- 本当に工事が必要なのか
- 修繕する範囲は適切か
- 使用する材料は妥当か
- 工法は適切か
- 工事時期を先送りできないか
- 保証延長と直接関係する工事はどれか
- 相場と比べて極端に高くないか
住宅会社の見積りを冷静に判断するためにも、第三者の意見は有効です。
他社へ発注すると保証延長できない場合がある
問題になるのは、相見積りを取ることではなく、他社へ実際に工事を依頼することです。
長期保証制度の中には、
- 住宅会社による点検
- 住宅会社が必要と判断した修繕
- 住宅会社または指定業者による施工
- 指定材料と指定工法の使用
を保証延長の条件としているものがあります。
この場合、他社のほうが安くても、他社へ発注すれば延長条件を満たさない可能性があります。
なぜ他社施工では保証できないのか
住宅会社側には、合理的な理由があります。
他社が行った工事については、
- どの材料を使ったか
- 正しい施工方法だったか
- 下地まで適切に補修したか
- 防水処理が十分だったか
- 工事記録が残っているか
- 不具合の原因が新築工事か修繕工事か
を住宅会社が完全には管理できません。
他社施工部分が原因で雨漏りが発生した場合に、新築時の住宅会社が長期間の責任を負うのは難しいという考え方です。
ただし、この仕組みは同時に、住宅会社が将来の修繕工事を受注し続ける囲い込みにもなります。
価格競争が働きにくくなる
一般的なリフォーム工事では、複数の会社が競争するため、価格や提案内容を比較できます。
しかし、保証延長に指定施工が必要な場合、購入者が選べる会社は事実上一社になります。
例えば、
- 住宅会社の見積りが220万円
- 地元リフォーム会社の見積りが150万円
- 価格差が70万円
だったとしても、他社へ依頼すると保証を失うのであれば、単純に安い会社を選べません。
購入者は、70万円の差額と延長保証の価値を比較することになります。
これが、長期保証によって価格競争が働きにくくなる仕組みです。
相見積りは同じ条件で比較する
見積金額だけを比べても、正しい判断はできません。
次の条件を揃えて比較してください。
- 工事範囲
- 施工面積
- 既存材料の撤去範囲
- 下地補修の有無
- 使用する材料の商品名
- 塗料や防水材のグレード
- 塗布回数や膜厚
- シーリングの打ち替えか増し打ちか
- 足場費
- 養生費
- 廃材処分費
- 諸経費
- 工事後の保証期間
- 点検回数
- 消費税
例えば、外壁工事でも「シーリング工事一式」だけでは比較できません。
既存シーリングを撤去して打ち替えるのか、上から増し打ちするのかで、工事内容も耐久性も変わります。
必須工事だけを分けてもらう
住宅会社の見積りには、保証延長に必要な工事以外が含まれている場合があります。
見積書を次の3つに分けてもらいましょう。
1.保証延長に必須の工事
実施しなければ保証が延長されない工事です。
2.建物維持のための推奨工事
劣化防止には有効ですが、今回実施しなくても保証延長に直接影響しない工事です。
3.希望者向けの改善工事
設備交換、断熱改修、内装変更など、保証とは別のリフォームです。
この区分が曖昧なままでは、不要な工事まで「保証のため」と思って契約してしまう可能性があります。
他社見積りは価格交渉にも使える
他社へ発注できなくても、相見積りは無駄ではありません。
同じ材料、同じ施工範囲で大きな価格差がある場合は、住宅会社へ説明を求められます。
確認する内容は次のとおりです。
- 価格差が生じる理由
- 独自材料や専用部材の有無
- 工事管理費の内容
- 長期保証を付けるための費用
- 工事後の点検費用
- 足場や諸経費の内訳
- 値引きや工事範囲の調整が可能か
単に「他社より高い」と伝えるのではなく、同じ工事項目の単価と数量を比較して質問することが有効です。
他社施工でも一部保証が残る場合がある
他社へ工事を依頼したら、必ず家全体の保証がすべて終了するとは限りません。
保証規程によっては、
- 他社が施工した部分だけ対象外
- 他社工事に起因する不具合だけ対象外
- 防水保証だけ延長されない
- 構造保証は継続する
- 保証延長全体が認められない
など、取り扱いが異なります。
「他社で工事をすると保証が切れます」と言われたら、次の内容を書面で確認してください。
- 終了する保証の名称
- 対象となる部位
- 保証が終了する日
- 継続する保証
- 他社工事と無関係な不具合の扱い
- 再保証を受けられる条件
他社へ依頼する前に必ず書面確認する
営業担当者や点検担当者の口頭説明だけで判断してはいけません。
担当者が異動や退職をすれば、後から説明内容を証明できなくなる可能性があります。
他社へ工事を依頼する前に、次のような内容で住宅会社へ書面回答を求めてください。
今回提案された工事について、他社から相見積りを取得した場合と、他社へ施工を依頼した場合で、現在の保証および延長保証にどのような影響があるか、対象部位と保証期間を含めて書面で回答してください。
この回答を受け取ってから、発注先を決めてください。
契約前に住宅会社へ確認すること
本来、この問題は新築から30年後ではなく、新築契約前に確認すべきです。
住宅会社へ次の質問をしてください。
- 保証延長工事は御社への発注が必須ですか
- 指定業者以外の工事でも保証を延長できますか
- 同じ材料と工法なら他社施工を認めますか
- 第三者検査を受ければ他社施工でも認められますか
- 相見積りを取ることに制限はありますか
- 他社施工の場合、どの保証が対象外になりますか
- 他社工事と無関係な部分の保証は残りますか
- 保証延長工事の価格表はありますか
- 現在価格での30年・60年間の想定費用はいくらですか
- 工事後の保証期間は何年間ですか
保証書と保証延長規程を契約前に見せてもらい、説明と書面が一致しているか確認しましょう。
保証の価値と価格差を比較する
指定工事が220万円、他社工事が150万円なら、価格差は70万円です。
判断すべきなのは、
その70万円を支払ってでも残す価値のある保証なのか
ということです。
保証対象が構造と防水の一部に限られ、免責事項が多いのであれば、保証のためだけに高額な差額を支払う価値があるのか慎重に考える必要があります。
一方、住宅会社による点検、施工管理、修繕記録、再発時の対応まで含まれるのであれば、価格差に意味がある場合もあります。
相見積りを拒む会社には注意する
他社へ発注した場合に保証を延長しないという条件には、住宅会社側の理由があります。
しかし、見積りを比較すること自体を嫌がったり、工事内容や単価の説明を拒んだりする会社には注意が必要です。
正当な価格であれば、他社との違いを説明できるはずです。
相見積りは、安い会社を探すためだけではありません。指定工事の価格と内容が妥当かを確認するために必要です。
保証を残すか、他社へ依頼するかは、その後に決めればよいのです。
長期保証を選ぶときは、保証年数だけでなく、将来の修繕会社を自分で選べるかまで確認してください。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
住友林業は、維持保全計画書に基づくメンテナンス工事を同社で実施した場合、構造躯体と防水を最長60年間保証すると公表しています。住友林業「60年保証・アフターサービス」
積水ハウスは、同社以外の業者による増改築などで同社の設計基準に合致しない状態になった場合、保証の適用除外になると案内しています。積水ハウス「長期保証制度(永年保証)」
大和ハウス工業は、同社が関与しない増改築や補修に起因する不具合など、保証内容を満たさない場合は適用除外になるとしています。大和ハウス工業「長期保証・アフターサポート」










