Q. 無料点検がリフォーム営業になることはある?
A. あります。住宅会社の定期点検でも、点検結果を基に有償修繕を提案することがあります。また、無料点検を入口に不安をあおり、高額工事を契約させる「点検商法」にも注意が必要です。
「無料で点検します」
そう言われると、費用がかからないなら見てもらおうと思うでしょう。
しかし、点検そのものは無料でも、その後に有料の修繕工事や設備交換を提案されることがあります。
無料点検は、建物の状態を確認するサービスであると同時に、リフォーム工事を受注する営業機会にもなり得ます。
正規の無料点検でも工事提案はある
住宅会社が実施する定期点検では、建物の劣化や不具合が見つかれば、修繕工事を提案するのが一般的です。
例えば、
- 外壁のひび割れ
- シーリングの劣化
- バルコニー防水の劣化
- 屋根材のずれ
- 防蟻処理の更新
- 給湯器や換気設備の交換
- 排水管の清掃
などです。
必要な修繕を提案すること自体は問題ではありません。
早期に劣化を発見し、小さな補修で被害を防げる場合もあります。
問題は、工事の必要性や緊急性を説明せず、不安だけをあおって契約を急がせることです。
無料点検が営業につながる仕組み
無料点検を行う会社にも、人件費、移動費、調査費がかかります。
その費用をどこかで回収する必要があります。
住宅会社の場合は、既存顧客へのアフターサービスとして点検費を負担していることがあります。
一方、突然訪問してくるリフォーム会社の場合、点検後の工事受注を目的としている可能性があります。
無料だから中立的に診断してくれるとは限りません。
点検する会社と、工事を受注する会社が同じなら、工事提案によって利益を得る立場であることを理解しておきましょう。
不安をあおる典型的な言葉
点検商法では、次のような言葉が使われることがあります。
- このままでは雨漏りします
- 次の台風で屋根が飛びます
- ご近所へ迷惑がかかります
- 柱が腐り始めています
- シロアリが家中へ広がります
- 火災になる危険があります
- 今日なら特別価格にできます
- 近所で工事しているので足場代を安くできます
- 火災保険を使えば自己負担はありません
- メーカーから点検を委託されています
- 今決めなければ間に合いません
本当に緊急性が高い場合もあります。
しかし、正当な業者であれば、劣化状況、危険性、修繕方法、費用を資料で説明できるはずです。
恐怖だけで即決を求める業者には注意してください。
突然来た業者を屋根へ上げない
屋根は地上から状態を確認しにくいため、点検する側だけが情報を持つことになります。
点検後に見せられた写真が、本当に自宅の屋根なのか判断できない場合もあります。
また、点検中に屋根材を動かしたり、破損させたりするトラブルも否定できません。
突然訪問してきた業者には、その場で屋根へ上がらせないことが安全です。
点検が必要だと思ったら、自分で選んだ住宅会社、屋根業者、建築士などへ改めて依頼してください。
ドローンや高所カメラを使い、所有者も画面を見ながら確認できる方法もあります。
会社名と点検目的を確認する
「メーカーの依頼で来ました」
「地域の点検をしています」
という説明だけでは、正規の点検か分かりません。
次の内容を確認してください。
- 会社名
- 所在地
- 担当者名
- 電話番号
- どの会社から委託されたのか
- 点検の目的
- 点検範囲
- 費用の有無
- 修理営業を行う予定があるか
- 個人情報をどこから入手したのか
名刺に記載された番号だけでなく、メーカーや住宅会社の公式サイトに掲載された電話番号へ自分から連絡し、本当に委託しているか確認しましょう。
正当な点検と危険な点検の違い
正当な点検には、次のような特徴があります。
- 事前に日時を調整する
- 点検目的を説明する
- 点検項目が決まっている
- 点検前後の写真を見せる
- 劣化位置を図面で示す
- 緊急度を分けて説明する
- 見積書を持ち帰って検討できる
- 相見積りを妨げない
- 当日契約を迫らない
- 保証との関係を書面で説明する
一方、注意が必要なのは次のような点検です。
- 突然訪問する
- 無料だけを強調する
- すぐ屋根や床下へ入りたがる
- 点検前から工事の話をする
- 写真の撮影場所が分からない
- 危険だと繰り返す
- 家族へ相談させない
- 今日だけの値引きを提示する
- 長時間居座る
- 契約するまで帰らない
点検結果は5段階に分けてもらう
点検後の工事提案は、次の5つに分けてもらいましょう。
- 安全上、早急な対応が必要
- 雨漏りなどの被害拡大を防ぐため早めに必要
- 1~3年以内に検討すればよい
- 経過観察でよい
- 美観や快適性を高める任意工事
すべてを「今すぐ必要」と説明する点検報告では、冷静な判断ができません。
工事を先送りした場合、いつまでに、どのような問題が起こる可能性があるのかも確認してください。
点検当日に契約しない
本当に必要な工事でも、点検した当日に契約する必要はありません。
次の資料を受け取り、一度持ち帰って検討してください。
- 点検報告書
- 劣化写真
- 劣化箇所を示した図面
- 修繕方法
- 数量と単価が分かる見積書
- 使用する材料
- 工事後の保証書案
- 工事をしない場合の影響
- 保証延長との関係
「今日契約すれば50万円値引き」という提案は、最初の価格設定が適正なのか疑問が残ります。
数日検討しただけで危険になる住宅なら、値引きより先に応急処置を提案するはずです。
住宅会社の定期点検でも確認すること
新築した住宅会社の点検だから、すべて任せてよいとは限りません。
次の点を確認してください。
- 点検だけで終了できるか
- 有料工事を断ってもよいか
- 保証延長に必須の工事はどれか
- 推奨工事と任意工事はどれか
- 他社と相見積りを取れるか
- 工事を断ると、どの保証が終了するか
- 工事価格の数量と単価が明示されているか
- 工事後に何年保証されるか
正規の定期点検でも、修繕工事を受注する営業機能を持っています。
だからこそ、点検と契約を分けて判断する必要があります。
訪問販売で契約してしまった場合
訪問販売に該当するリフォーム契約では、法律で定められた書面を受け取った日から数えて、原則8日以内であれば、書面または電子メールなどの電磁的記録によってクーリング・オフできる場合があります。
クーリング・オフを行う場合は、
- 送信したメール
- 専用フォームの画面
- 郵便の記録
- 契約書
- 見積書
- 担当者とのやり取り
を保存してください。
事業者から「もう職人を手配したから解約できない」と言われても、自己判断で諦めず、消費者ホットライン188へ相談してください。
契約形態や経緯によって扱いが異なるため、早めの相談が重要です。
無料点検を受ける前のルール
無料点検を受けるなら、家族で次のルールを決めておきましょう。
- 突然の訪問点検は断る
- 当日は点検だけにする
- その場で契約しない
- 屋根や床下へ無断で入らせない
- 点検前後の写真を撮影してもらう
- 見積書は必ず持ち帰る
- 100万円を超える工事は第三者へ相談する
- 2~3社の見積りを比較する
- 保証への影響を書面で確認する
- 家族に相談してから決める
断るときは、曖昧にせず、
本日は点検だけです。工事の契約はしません。報告書と見積書を置いて帰ってください。
と伝えてください。
無料という言葉より、点検後の目的を見る
無料点検が悪いわけではありません。
建物の不具合を早く発見し、大きな損害を防ぐ重要な機会にもなります。
しかし、無料点検の後に何を売ろうとしているのかは確認する必要があります。
無料なのは点検だけで、その先には高額な工事契約が待っている可能性があります。
点検結果は一度持ち帰り、緊急性、必要性、価格、保証への影響を確認してから判断してください。
本当に信頼できる住宅会社は、不安で契約を取るのではなく、写真と数字で必要性を説明し、考える時間を与えます。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
国民生活センターは、点検を口実に訪問し、「工事をしないと危険」などと説明して契約させる点検商法について注意を呼びかけています。国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」
消費者庁は、突然「無料診断」を持ちかけ、不安をあおってその場で契約を勧める住宅リフォーム業者へ注意するよう案内しています。消費者庁「悪質なリフォーム事業者にご注意ください」
消費者庁は、訪問販売では、法定書面を受け取った日から原則8日以内であれば、書面または電磁的記録でクーリング・オフできると案内しています。消費者庁「訪問販売」










