Q. 家づくりで後悔しない資金計画とは?
A. 契約前に「最終総額」と「建てた後の家計」を確認する資金計画です。
家づくりの後悔は、住宅ローンの審査に落ちたときではなく、審査に通り、家を建てた後に起こります。
- 契約後に追加費用が増えた
- 頭金を入れすぎて貯金がなくなった
- 教育費を準備できなくなった
- 車の買い替えをローンに頼った
- 固定資産税や修繕費を計算していなかった
- 共働きを辞められなくなった
- 退職後も住宅ローンが残った
後悔しない資金計画とは、家を買えることを確認する計画ではありません。
契約前から90歳までの家計を見て、住宅ローンを返しながら、教育費、車、修繕費、老後資金を準備できるか確認する計画です。
資金計画で確認するのは住宅ローンだけではない
家づくりに必要なお金は、大きく5つに分かれます。
| 分類 | 主な費用 |
|---|---|
| 建築時の費用 | 建物・土地・付帯工事・外構・諸費用 |
| 毎月の費用 | 住宅ローン・光熱費・通信費 |
| 毎年の費用 | 固定資産税・保険料 |
| 将来の費用 | 修繕・設備交換・車の買い替え |
| 家族の費用 | 教育・老後・介護・医療 |
住宅会社の見積書に書かれているのは、主に建築時の費用です。
しかし、家族が実際に困るのは、建築後に必要なお金を計算していなかった場合です。
第1段階|契約前に最終総額を確定する
最初に確認すべきなのは、建物本体価格ではなく、実際に入居するまでの総額です。
総額に含まれているか確認する項目
- 建物本体工事
- 消費税
- 仮設工事
- 屋外給排水工事
- 地盤調査・地盤改良
- 設計費
- 建築確認申請費
- 長期優良住宅などの申請費
- 照明器具
- カーテン
- エアコン
- 外構工事
- 土地代
- 仲介手数料
- 登記費用
- 住宅ローン諸費用
- 火災・地震保険
- 引っ越し
- 家具・家電
見積書に「別途」「一式」「概算」「お客様手配」と書かれている項目は、金額が増える可能性があります。
契約前に、少なくとも次の3つを質問してください。
「住み始めるまでに、あと何が必要ですか?」
「この見積り以外に増える可能性がある費用は何ですか?」
「過去のお客様では、契約後に平均いくら増えましたか?」
この質問へ具体的に答えられない住宅会社とは、慎重に話を進めるべきです。
第2段階|建築後に残す現金を決める
住宅購入時に使える預金の全額を、頭金や諸費用に使ってはいけません。
建築後も、最低限次の現金を残します。
- 生活費6か月分
- 引っ越し・家具・家電費
- 税金と保険料
- 車の買い替え準備金
- 教育資金
- 医療・収入減少への予備費
例えば、毎月の生活費が30万円なら、生活防衛資金は最低180万円です。
引っ越し、家具、家電に100万円、その他の予備費に100万円を見込むなら、住宅完成後に380万円程度の現金を残す必要があります。
貯金600万円から頭金500万円を入れる計画では、借入額は減っても家計の耐久力を失います。
頭金を入れた後の残高ではなく、入居に必要な支払いをすべて終えた後の現金残高を確認してください。
第3段階|月々の実質住宅費を計算する
住宅費は住宅ローンだけではありません。
例えば、毎月返済額が9万円の場合でも、実際の住宅費は次のようになります。
| 項目 | 月平均 |
|---|---|
| 住宅ローン | 9万円 |
| 固定資産税積立 | 1万円 |
| 火災・地震保険積立 | 3,000円 |
| 住宅修繕積立 | 1万5,000円 |
| 合計 | 11万8,000円 |
広告には「月々9万円」と表示できます。
しかし、家計から実際に確保すべき住宅費は約11万8,000円です。
さらに、現在の賃貸住宅より光熱費やインターネット料金が増える場合は、その差額も加えます。
家賃と比較するなら、住宅ローン返済額ではなく、実質住宅費で比較します。
第4段階|教育費が最もかかる時期を見る
子育て世帯の資金計画では、現在の家計だけを見てはいけません。
子どもが高校、大学へ進学する時期の家計を確認します。
例えば、子どもが8歳と6歳なら、10年後と12年後に大学進学を迎えます。
兄弟が同時に大学へ通い、一人当たり年間200万円の費用がかかれば、2年間は年間400万円です。
その時期に確認する数字は次のとおりです。
- 住宅ローン残高
- 毎月返済額
- 教育資金残高
- 夫婦の年齢と収入
- 車の買い替え時期
- 住宅設備の交換時期
「今は払える」ではなく、「教育費のピークでも払えるか」で判断します。
第5段階|車と住宅修繕を積み立てる
山梨県では、夫婦それぞれに車が必要な家庭も少なくありません。
車1台300万円を10年ごとに買い替えるなら、単純計算で毎月2万5,000円の積立が必要です。
住宅にも将来、次の交換や修繕が発生します。
- エアコン
- 給湯器
- IHクッキングヒーター
- 食洗機
- トイレ
- 外壁・屋根
- シーリング
- 太陽光発電設備
- 蓄電池
- 換気設備
住宅修繕用として、少なくとも月1万〜2万円を専用口座へ積み立てる計画が必要です。
車と住宅修繕を計算から外すと、将来の支出を新たなローンで補うことになります。
第6段階|共働き終了を想定する
現在共働きだからといって、35年間ずっと同じ収入が続くとは限りません。
- 出産・育児
- 病気・けが
- 転職
- 親の介護
- 子どもの不登校
- 勤務時間の短縮
- 夫婦関係の変化
少なくとも、次の3条件で家計を比較します。
| シナリオ | 確認内容 |
|---|---|
| 通常 | 現在の夫婦収入が続く |
| 収入減少 | 片方の収入が半分になる |
| 共働き終了 | 主たる収入だけになる |
通常条件だけで成立する住宅予算は、安全とはいえません。
収入減少時に教育積立を止めなければ返済できない場合は、借入額を見直す必要があります。
第7段階|金利上昇を試算する
変動金利を利用する場合は、現在の金利だけで返済計画を作ってはいけません。
借入3,500万円、35年返済の概算では、金利によって返済額が変わります。
| 金利 | 毎月返済額の目安 |
|---|---|
| 1.0% | 約9万9,000円 |
| 2.0% | 約11万6,000円 |
| 3.0% | 約13万5,000円 |
1%から3%になると、毎月約3万6,000円増えます。
この差額を教育費、食費、貯蓄の削減でしか吸収できないなら、借入額が大きすぎます。
金利3%になっても年間収支が赤字にならないか確認してください。
第8段階|完済年齢を確認する
返済期間だけでなく、完済時の年齢を確認します。
| 借入時年齢 | 35年返済 | 40年返済 | 50年返済 |
|---|---|---|---|
| 30歳 | 65歳 | 70歳 | 80歳 |
| 35歳 | 70歳 | 75歳 | 85歳 |
| 40歳 | 75歳 | 80歳 | 90歳 |
| 45歳 | 80歳 | 85歳 | 95歳 |
40歳で50年ローンを組めば、完済は90歳です。
返済期間を延ばせば月々の負担は下がりますが、住宅が安くなるわけではありません。
子育て世帯では教育費を守りながら、70歳前後までの完済を一つの目標にします。
第9段階|退職金を使わずに計算する
退職時に住宅ローンが残る場合でも、最初から退職金で完済する前提にしてはいけません。
退職金は次の費用にも必要です。
- 老後生活費
- 医療費
- 介護費
- 住宅修繕
- 車の買い替え
- 配偶者一人になった後の生活費
まず退職金を使わない状態で、住宅ローンと老後生活が成り立つか確認します。
そのうえで余裕があれば、退職時に一部繰上返済を検討します。
「退職金で返す予定」は、金額と老後資産を計算していなければ計画とはいえません。
資金計画は3案を比較する
一つの住宅予算だけを提示されると、それが安全なのか判断できません。
少なくとも次の3案を比較してください。
希望優先案
希望する土地、広さ、間取り、設備を優先した案です。
希望を実現した場合、教育費や老後資金がいくら減るかを確認します。
おすすめ標準案
耐震、断熱、気密、換気などの基本性能を守りながら、過剰な広さや高額設備を調整します。
住みやすさと将来家計のバランスを重視します。
安全重視案
収入減少や金利上昇があっても、教育費と生活防衛資金を守れる案です。
建築後の現金を多く残し、完済年齢を早めます。
| 比較項目 | 希望優先 | 標準 | 安全重視 |
|---|---|---|---|
| 建築総額 | 高い | 中間 | 低い |
| 建築後の現金 | 少ない | 標準 | 多い |
| 毎月返済額 | 高い | 中間 | 低い |
| 完済年齢 | 遅い | 標準 | 早い |
| 収入減少への耐久力 | 低い | 中間 | 高い |
「建てられるか」だけでなく、何を選ぶと何を失うのかを数字で確認することが重要です。
高性能住宅の光熱費削減を活用する
高断熱・高気密住宅によって削減できた光熱費は、使ってしまわず専用口座へ積み立てる方法があります。
例えば、以前の光熱費より毎月2万円削減できれば、年間24万円です。
10年間単純に積み立てれば240万円になります。
この資金は次の目的に使えます。
- 住宅修繕
- 教育費
- 車の買い替え
- 期間短縮型の繰上返済
ただし、光熱費削減額は家族人数、生活時間、設定温度、電気料金、太陽光発電量によって変わります。
過大な削減額を前提に住宅ローンを組んではいけません。
契約前の資金計画チェックリスト
次の質問にすべて「はい」と答えられるか確認してください。
- 住み始めるまでの総額が確定している
- 「別途」「一式」「概算」の内容を確認した
- 地盤改良が発生した場合の金額を見込んでいる
- 建築後も生活費6か月分以上の現金が残る
- 家具・家電・引っ越し費用を計算した
- 教育費のピークを確認した
- 車の買い替え時期を確認した
- 住宅修繕費を積み立てられる
- 片方の収入が減った場合も赤字にならない
- 金利3%の返済額を確認した
- 70歳前後の完済を目指せる
- 退職金を使わない老後計画がある
- 90歳までの資産推移を確認した
一つでも確認できていない場合は、契約を急がず、住宅総額と家計を再計算するべきです。
住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションでも、返済額や将来のライフイベントを含めた試算ができます。
家づくりで後悔する資金計画
次のような説明だけで契約するのは危険です。
- 家賃と同じだから大丈夫
- 年収から計算すると借りられる
- ボーナス払いを使えば払える
- 50年ローンなら月々が安い
- 将来は年収が上がる
- 退職金で返せばよい
- 太陽光発電で住宅ローンを払える
- 契約後に詳しい金額を決める
- 外構やエアコンは後で考える
これは安全性を確認した資金計画ではなく、現在の月額を低く見せた販売計画です。
俺流結論
家づくりで後悔しない資金計画とは、希望する家を買えるように数字を調整することではありません。
希望する家を建てても、家族の人生が壊れないかを確認することです。
住宅ローン審査に通る。
月々の返済額が家賃と変わらない。
頭金を入れれば借入額が減る。
それだけでは不十分です。
最終総額、建築後に残る現金、教育費、車、修繕費、収入減少、金利上昇、完済年齢、90歳までの資産。
ここまで確認して、初めて「建てても大丈夫」と判断できます。
契約前に数字を確認する数時間が、建築後の30年、40年を守ります。
家を建てたことを後悔しないために、家の資金計画ではなく、家族の人生全体の資金計画を作るべきです。










