契約直後に多額の入金を求める住宅会社は大丈夫?
Q. 工事請負契約を結んだ直後に、数百万円の契約金や着手金を振り込むよう求められました。一般的なことですか?
A. 契約金を求めること自体は珍しくありません。しかし、まだ現場工事が始まっていないのに、請負金額の20%、30%という多額の入金を求める会社は慎重に確認するべきです。重要なのは金額ではなく、その時点で提供された業務や工事の価値と釣り合っているかです。
「契約金」「申込金」「着手金」という名前を付ければ、安全になるわけではありません。
住宅会社が倒産した場合、確認されるのは、
施主がいくら支払ったか
その時点で、いくら分の設計・申請・工事が完了しているか
です。
「多額」の基準は、工事代金に対する割合
例えば、2,400万円の住宅で、契約直後に30%の720万円を求められたとします。
その時点で完了している業務が、
- 基本設計
- 実施設計の一部
- 構造計算準備
- 建築確認申請準備
など、合計80万円相当だった場合、実質的には640万円が前払い状態です。
支払額720万円-提供済み業務80万円
=前払い部分640万円
住宅会社が倒産すると、この640万円を全額回収できるとは限りません。
契約直後の入金割合・実務上の警戒目安
法律で一律に決められた安全割合ではありませんが、倒産リスクを考える際は次のように確認します。
| 契約直後の入金割合 | 確認の目安 |
|---|---|
| 5~10%程度 | 使途、返金条件、保証対象を確認 |
| 10~20%程度 | 設計・申請・資材発注の内訳を詳しく確認 |
| 20~30%程度 | 工事前なら支払額の減額・分割を交渉 |
| 30%超 | 完成保証と前払い保全がなければ特に慎重に判断 |
割合が低くても安全とは限りません。
一方、特殊な輸入資材や注文設備を発注するため、一定の前払いが必要な場合もあります。
大切なのは、なぜ、その時点で、その金額が必要なのかを確認することです。
「資材を発注するため」は十分な説明ではない
住宅会社から、
「木材を確保するためです」
「キッチンを先に注文するためです」
「価格が上がる前に材料を買います」
と言われることがあります。
本当に資材発注のためなら、次の内容を確認してください。
- 発注する資材・設備の名称
- メーカーと品番
- 発注金額
- 発注日
- 納品予定日
- キャンセル条件
- 代金を誰が支払うのか
- 倒産時に資材の所有権が誰にあるのか
- 完成保証の対象になるのか
「資材を買う」と言いながら、実際には過去現場の下請代金や会社の借入返済へ回される可能性もあります。
請求額と資材発注額が一致しているか、書面で確認してください。
契約翌日の振込を求める会社
特に警戒するべきなのは、次のような条件です。
- 契約当日または翌日の入金
- 契約金が工事代金の20%以上
- 現金での支払い
- 代表者個人の口座への振込
- 値引きと早期入金がセット
- 完成保証書発行前の入金
- 返金条件が契約書にない
- 土地・図面・仕様・総額が未確定
- 建築確認申請前
- 住宅ローンの本審査前
一つだけで倒産を断定することはできません。
しかし、複数が重なった場合は、住宅会社が工事のためではなく、資金繰りのために契約金を必要としている可能性を疑うべきです。
完成保証があっても全額守られるとは限らない
住宅あんしん保証では、前払金を、
発注者の支払済み金額から、既施工部分の出来高を差し引いた金額
と定義しています。
前払金の保証限度は、請負金額の30%または1,100万円のいずれか低い金額です。ただし、工事引き継ぎ時の増嵩工事費用と合算した総保証限度もあるため、前払い分が無条件で全額戻るわけではありません。
住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」
完成保証があると言われたら、最低でも次の内容を確認してください。
- 前払い損失が保証対象か
- 保証限度額
- 工程ごとの支払上限
- 保証開始日
- 自分の住宅に対する保証書
「登録会社」と「保証付き住宅」は違う
住宅会社が完成保証制度へ登録していても、契約した住宅へ自動的に保証が付くとは限りません。
住宅ごとの申し込み、審査、確認書・保証書の発行が必要です。
JIO完成サポートでは、施主の手元に「完成サポート確認書」が届いた時点から効力が発生するとしています。また、定められた支払割合を超えて住宅会社へ支払った工事費用は、サポート対象外です。
JIO「完成サポート 一般タイプ」
したがって、
「当社はJIOに登録しています」
「完成保証へ加入できます」
という説明だけで高額な契約金を振り込まないでください。
自分の名前と建築地が確認できる書面が届き、保証が有効になっているかを確認します。
完成保証の「タイプ」まで確認する
同じ保証会社でも、商品タイプによって前払い損失が対象外になる場合があります。
JIO完成サポートでは、一般タイプとMタイプでサポート範囲が異なり、前払金と工事出来高の差額が対象になるタイプと、対象外になるタイプがあります。
「完成保証あり」という一言では不十分です。
「私の住宅は、どのタイプですか?」
「契約直後に支払う金額は、前払い損失の保証対象ですか?」
と確認してください。
解約時にいくら戻るかも確認する
倒産だけでなく、施主側の事情で契約を解除する可能性もあります。
契約前に次の内容を確認します。
- 契約金は工事代金の一部か
- 解約時に控除される費用
- 設計料の計算方法
- 建築確認申請費
- 発注済み資材のキャンセル費
- 違約金
- 精算明細の提示方法
- 返金期限
「契約金は一切返金しません」という条項があっても、実際に行われた業務や契約内容によって扱いが変わる可能性があります。
少なくとも、何にいくら使われるのかが分からない状態で、数百万円を支払うべきではありません。
多額の入金を求められたときの対処法
1.その場で振り込まない
契約済みでも、請求された当日に振り込む必要があるのかを確認します。
2.金額の根拠を分けてもらう
例えば、
- 設計料:30万円
- 構造計算:20万円
- 建築確認申請:25万円
- 資材発注:150万円
- その他:275万円
というように、請求額の内訳を出してもらいます。
「その他」「一式」が大きければ、詳しい説明を求めてください。
3.分割払いを提案する
契約直後に500万円ではなく、
- 契約時:100万円
- 確認申請後:100万円
- 基礎工事完了後:150万円
- 上棟・構造検査後:150万円
のように、実際の工程へ分けられないか交渉します。
具体的な割合は、完成保証制度の支払条件に合わせて設定します。
4.保証会社へ直接確認する
住宅会社の営業担当者だけでなく、完成保証機関へ次の内容を確認してください。
- 保証申し込みが完了しているか
- 保証の効力は始まっているか
- 今回の支払額は条件内か
- 倒産時に前払い分がいくら保証されるか
5.振込先を確認する
契約書記載の法人名と振込口座名義が一致しているか確認し、振込明細を保存します。
住宅会社へ聞くべき8つの質問
- 契約直後にこの金額が必要な理由は何ですか?
- 設計・申請・資材発注の内訳はいくらですか?
- 支払額に相当する成果物は何ですか?
- 入金を工事工程ごとに分けられませんか?
- 住宅会社が倒産した場合、いくら保証されますか?
- 保証対象外になる金額はありますか?
- 私の住宅の完成保証書は発行済みですか?
- 解約した場合、いくら、いつ返金されますか?
この質問に数字と書面で答えられない場合は、入金を急がないでください。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社にとって契約金は、早く、多く受け取れるほど資金繰りが楽になります。
しかし、施主にとっては、家ができる前に渡すお金が多いほど、倒産時の損失が大きくなります。
デザインハウス甲府では、工事の進捗から支払いが大きく先行しない条件を設定し、全棟に完成保証を付けています。
契約直後に確認するべきなのは、
「みんな払っていますか?」
ではありません。
「今この会社が倒産したら、支払ったお金のうち、いくら戻りますか?」
です。
工事が始まっていないのに多額の入金を求める会社には、その金額に見合う根拠と保証を必ず提示してもらってください。










