変更契約書なしで工事が進んだら、追加費用を払う必要がある?
A. 変更契約書がないからといって、必ず支払わなくてよいとは限りません。施主が工事を依頼・承認したことが証明されれば、書面がなくても追加費用が発生する可能性があります。一方、住宅会社が勝手に変更した工事まで、一方的に請求できるわけではありません。
判断のポイントは、変更契約書の有無だけではありません。
- 誰が変更を依頼したのか
- 追加料金の説明があったか
- 施主が工事を承認したか
- 施工された内容が契約に含まれていなかったか
- 請求金額に合理的な根拠があるか
を、工事項目ごとに確認します。
書面がなくても合意が成立することはある
一般的な契約は、法律に特別な定めがある場合を除き、口頭でも成立します。
例えば施主が、
「この壁をタイルに変えてください」
「30万円くらいならお願いします」
と依頼し、住宅会社がその内容で施工した場合、正式な変更契約書がなくても、追加工事への合意があったと判断される可能性があります。
LINEやメールで、
「追加20万円、了解しました。進めてください」
と送っていれば、変更契約書という名称でなくても、承認を示す記録になります。
建設業法では変更内容の書面化が必要
建設業法第19条では、建設工事の内容や請負代金などを変更するとき、その変更内容を書面または適切な電子的方法で残すことを求めています。e-Gov法令検索「建設業法」
したがって、住宅会社が変更契約書を作らず、工事後にまとめて請求する進め方は適切ではありません。
ただし、
書面化していない=追加工事代金が自動的に0円になる
とは限りません。
建設業法上の書面化義務と、実際に追加工事代金を支払う義務があるかどうかは、分けて判断されます。
支払いが必要になる可能性が高いケース
| 状況 | 支払いの可能性 |
|---|---|
| 施主が明確に追加工事を依頼した | 高い |
| 金額を確認して「進めてください」と承認した | 高い |
| メール・LINEで承認している | 高い |
| 見積書を受け取り、異議なく施工を続けさせた | 発生する可能性あり |
| 完成後に追加部分を受け入れて使用している | 合意内容によって判断 |
| 配偶者など、承認権限を与えた人が依頼した | 発生する可能性あり |
住まいるダイヤルも、追加工事について施主と施工会社が合意している場合や、見積書が提出された後、施主が工事継続に異議を述べなかった場合には、工事代金が発生し得ると説明しています。住まいるダイヤル「追加費用の相談事例」
「変更契約書へ押印していない」という一点だけで、すべての支払いを拒否するのは危険です。
支払いを争える可能性があるケース
| 状況 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 住宅会社が勝手に仕様を変更した | 施主からの依頼・承認があるか |
| 金額を一度も説明されていない | 価格についてどのような合意があったか |
| 当初契約に含まれる工事を追加請求された | 契約図面・仕様書・見積書 |
| 同じ工事が二重請求されている | 当初見積と追加見積の重複 |
| 標準品の減額がされていない | 取りやめた工事の控除額 |
| 施工ミスのやり直しを請求された | 誰の責任でやり直したのか |
| 実際には施工されていない | 写真・現場確認・納品記録 |
| 「サービス」と約束された工事 | メール・LINE・打合せ記録 |
住宅会社が「こちらの方がよいと思って変更しました」と説明しても、施主が承認していなければ、追加費用を当然に請求できるとは限りません。
施工ミスの補修は追加工事ではない
例えば、契約図面どおりに施工されていない部分を直す工事は、通常、施主が新たに注文した追加工事とは区別されます。
- 間違った壁紙を張り直す
- 契約と違うドアを交換する
- 施工不良による漏水を直す
- 図面と違うコンセント位置を修正する
住宅会社側の契約不適合や施工ミスを直す費用まで、「追加工事」として施主へ請求されていないか確認します。
ただし、施主が施工後に考えを変えて別商品へ変更した場合は、撤去・再施工費が施主負担になる可能性があります。
「必要だったから施工した」だけでは足りない
住宅会社から、
「現場で必要になったので、先に施工しました」
と言われることがあります。
本当に必要だったとしても、
- なぜ必要になったのか
- 当初見積に入っていなかった理由
- 誰の責任で発生したのか
- 施工前に連絡できなかった理由
- 金額はいくらか
- 他の方法はなかったか
を説明してもらう必要があります。
施主負担になりやすい例
- 施主希望による仕様変更
- 地中障害物など契約前に確認困難だったもの
- 契約後に追加した設備
- 施主支給品に伴う追加施工
- 施主都合によるやり直し
住宅会社負担の可能性がある例
- 見積もり漏れ
- 設計ミス
- 発注ミス
- 施工不良
- 契約図面との不一致
- 住宅会社の判断だけで行ったグレード変更
「必要な工事」と「施主が追加で支払う工事」は同じではありません。
45万円の変更が70万円で請求される例
施主が次の変更を口頭で依頼したとします。
| 変更内容 | 施主が想定した金額 |
|---|---|
| キッチン変更 | 30万円 |
| 可動棚追加 | 10万円 |
| コンセント追加 | 5万円 |
| 合計 | 45万円 |
引渡し前に住宅会社から届いた請求書は、次の内容でした。
| 請求内容 | 金額 |
|---|---|
| 商品差額 | 45万円 |
| 発注済み商品のキャンセル料 | 8万円 |
| 下地・配線のやり直し | 7万円 |
| 図面変更・現場管理費 | 5万円 |
| 消費税等 | 5万円 |
| 合計 | 70万円 |
この場合、「変更契約書がないから0円」とは限りません。
一方で、施主が45万円までしか説明を受けていなければ、残り25万円について、
- 事前説明があったか
- 本当に必要だったか
- 単価は妥当か
- 施主が承認したか
を確認する余地があります。
最初に確認する10項目
追加請求を受けたら、工事項目ごとに次を整理します。
- 当初契約に含まれていたか
- 誰が変更を希望したか
- いつ依頼・提案されたか
- 金額説明を受けたか
- 誰が施工を承認したか
- メール・LINE・議事録があるか
- 実際に施工されているか
- 標準品の減額が反映されているか
- 二重請求になっていないか
- 単価・数量・諸経費の根拠があるか
「払う・払わない」を総額だけで判断せず、一つずつ分けます。
住宅会社へ請求根拠を出してもらう
次の資料を求めます。
- 追加変更工事の一覧
- 変更前後の図面
- 商品名・品番・数量
- 材料費・施工費
- 取りやめた標準品の控除額
- 発注書・納品書
- 施工前後の写真
- 施主が承認した記録
- 諸経費の計算方法
- 変更後の契約総額
住宅会社には、こう伝えます。
「変更契約書がないため、追加工事ごとに、依頼者・承認記録・施工内容・金額根拠・標準品の減額を提示してください」
「一式請求」のまま払わない
例えば、
追加変更工事一式 2,800,000円
だけでは、何にいくらかかったのか確認できません。
少なくとも、次のように分けてもらいます。
| 工事項目 | 増額 | 減額 | 差引額 |
|---|---|---|---|
| キッチン変更 | 60万円 | ▲30万円 | 30万円 |
| ドア変更 | 15万円 | ▲8万円 | 7万円 |
| 電気追加 | 12万円 | なし | 12万円 |
| 可動棚追加 | 8万円 | なし | 8万円 |
増額だけでなく、契約から削除された工事の減額も必要です。
工事中なら書面で停止を求める
まだ追加工事が進行中なら、住宅会社へ早急に書面で伝えます。
現在提示されている追加変更工事について、工事内容と金額を承認していません。変更見積書と変更契約書を確認し、双方が合意するまで、当初契約範囲を超える工事・発注を進めないでください。
ただし、工事全体を一方的に止めると工期や損害の問題が生じる可能性があります。
止める対象は、未承認の追加変更部分と明確にし、当初契約の工事まで止める場合は専門家へ相談します。
支払いを一方的に全額止めるのも危険
追加請求に納得できなくても、当初契約の残金まで一方的に支払わないと、施主側の契約違反を主張される可能性があります。
- 当初契約で確定している金額
- 双方が合意している追加金額
- 争いがある追加金額
を分けます。
どの部分をいつ支払うかは、契約書を確認したうえで、必要に応じて弁護士や住宅専門相談窓口へ相談してください。
今後の変更手続きを作り直す
一度でも変更契約書なしで工事が進んだら、その後のルールを決めます。
追加変更は、住宅会社が見積書を提出し、施主が変更契約書へ署名した後にのみ発注・施工する。
変更契約書には、次を記載します。
- 変更内容
- 商品・品番
- 増額
- 減額
- 税込差引額
- 工期への影響
- 発注・施工承認日
- 変更後の契約総額
解決できない場合の相談先
住まいるダイヤルには、変更契約書や詳細な見積書がないまま工事が進み、高額な追加請求を受けた相談事例があります。
追加工事代金が発生するかどうかは、合意の有無、見積書、工事内容の重複などを確認して判断するとされています。住まいるダイヤル「納得できない追加費用の相談事例」
住宅会社と解決できない場合は、次へ相談できます。
- 国土交通大臣指定「住まいるダイヤル」
- 消費者ホットライン188
- 建築士・弁護士
- 住宅紛争審査会
結論
変更契約書がない場合でも、
施主が依頼・承認した追加工事なら、支払いが必要になる可能性があります。
一方で、
住宅会社が無断で施工した工事、契約に含まれる工事、施工ミスの補修、二重請求まで支払う必要があるとは限りません。
判断する単位は「追加請求280万円」ではなく、工事項目の一つひとつです。
書面がないから0円ではない。しかし、施工したから全額払えでもない。
正直な住宅会社は、工事を先に進めて施主を逃げられなくするのではなく、追加・減額・最終総額を見せ、双方が署名してから施工します。










