倒産した住宅会社から工事を引き継ぐと、追加費用はいくらかかる?
Q. 建築途中で住宅会社が倒産し、別の住宅会社へ工事を引き継いでもらう場合、追加費用はいくらかかりますか?
A. 一律の金額はありません。現場の状態が良く、図面や検査記録がそろっていても、再調査・再契約・仮設工事などで費用が増えます。手直しや資材の再発注まで必要になれば、追加負担が数百万円になる可能性があります。
「残った工事代金を、そのまま別の住宅会社へ払えば完成する」と考える人がいます。
しかし、引き継ぐ住宅会社は、倒産した会社の見積金額、施工責任、下請契約、資材発注をそのまま引き受けるわけではありません。
新しい住宅会社として、現場を調査し、残工事を積算し直し、責任を持てる状態に直してから工事を再開します。
追加費用の計算方法
施主の実質的な追加負担は、次のように考えます。
引き継ぎ会社の工事費
+調査・手直し・再契約費用
+工期延長による家賃・利息
+倒産会社への前払い損失
-元の契約で残っていた未払金
-完成保証から支払われる金額
単純に「新しい住宅会社の見積金額」だけを見ても、倒産による総損失は分かりません。
追加費用が発生する8つの理由
1.現場の再調査
引き継ぎ会社は、倒産した会社が施工した部分をそのまま信用できません。
- 基礎の寸法・配筋・強度
- 構造材と金物
- 防水処理
- 断熱材の施工
- 配管・配線
- 図面と現場の整合性
これらを再確認する費用が発生します。
隠れて見えない部分を確認するため、壁や床を一部解体する場合もあります。
2.不具合部分の手直し
倒産直前の会社では、現場管理が弱くなっている可能性があります。
検査の結果、
- 基礎の補修
- 構造金物の追加
- 雨に濡れた材料の交換
- 防水シートの張り直し
- 配管・配線のやり直し
- 断熱材の交換
などが必要になれば、追加費用は大きくなります。
3.足場や仮設設備の再契約
現場に足場、仮設トイレ、仮設電気、建設機械が残っていても、その契約は倒産した住宅会社とリース会社との契約です。
引き継ぎ会社が改めて契約したり、既存設備を撤去して設置し直したりする費用が発生する可能性があります。
住宅あんしん保証も、引き継ぎ時に生じる手戻り工事などを「増嵩工事費用」と定義しています。
住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」
4.資材・設備の再発注
施主が住宅会社へ代金を支払っていても、その住宅会社が仕入先へ支払っていない場合があります。
- キッチン
- ユニットバス
- サッシ
- 給湯器
- 照明
- 木材
- 外壁材
発注済みだと思っていた設備が、実際には発注されていなかったり、未払いを理由に納品を止められたりすることがあります。
その場合、別の会社から改めて購入する費用が必要です。
5.仕入価格や人件費の違い
倒産した住宅会社と引き継ぎ会社では、仕入先、施工業者、標準仕様、原価が違います。
元の会社が大量仕入れや特別価格で契約していても、その価格を引き継げるとは限りません。
また、途中からの工事は作業効率が悪く、新築を最初から建てる場合より割高になることがあります。
6.図面・申請・計算書の再作成
必要な図面やデータが引き継げない場合は、再作成が必要です。
- 設計図
- 構造計算書
- 省エネ計算書
- 建築確認関係書類
- 長期優良住宅関係書類
- 設備図
- 施工図
- 仕様書
設計者や工事監理者を変更する手続きが必要になることもあります。
7.既存工事部分の保証
引き継ぎ会社にとって最も大きな問題は、他社が施工した部分の責任です。
基礎や構造部分に不具合があった場合、誰が責任を負うのかを決めなければなりません。
引き継ぎ会社が既施工部分まで保証する条件として、詳細な検査や補修を求めることがあります。
8.工期延長による生活費
工事費以外にも、次の負担が増えます。
- 仮住まい家賃
- つなぎ融資の利息
- 土地ローン
- 引越し延期費用
- 家具・荷物の保管料
- 現場の雨養生・防犯費用
これらは完成保証の対象外になる場合があります。
追加負担の計算例
次のケースで考えます。
- 元の請負金額:2,200万円
- 倒産会社への支払額:1,000万円
- 倒産時の工事出来高:900万円
- 元の契約の未払金:1,200万円
引き継ぎ会社から、次の見積もりが出たとします。
- 残工事:1,300万円
- 現場調査・検査:30万円
- 手直し工事:70万円
- 足場・資材の再契約:50万円
- 合計:1,450万円
元の未払金1,200万円に対し、引き継ぎに必要な費用は1,450万円なので、工事だけで250万円増えます。
さらに、
- 倒産会社への前払い損失:100万円
- 仮住まい・つなぎ融資の追加負担:60万円
が発生すれば、倒産による実質的な負担増は410万円です。
工事費増加250万円
+前払い損失100万円
+家賃・利息等60万円
=合計410万円
これは計算例であり、実際の金額は工事段階や現場状態によって変わります。
完成保証はどこまで負担してくれる?
完成保証があれば、前払い損失や引き継ぎによる増嵩工事費用が、一定範囲で保証される可能性があります。
住宅あんしん保証では、増嵩工事費用について「請負金額の10%または200万円のいずれか高い金額」を限度としています。
ただし、前払金と増嵩工事費用を合わせた総保証額には、請負金額の30%または1,100万円のいずれか低い金額という上限があります。
例えば、引き継ぎによる費用増加が350万円でも、保証される金額が200万円なら、差額150万円は施主負担になる可能性があります。
完成保証があることと、追加費用が一円もかからないことは同じではありません。
引き継ぎ見積もりで確認する項目
引き継ぎ会社から見積もりを取るときは、次の項目を分けてもらってください。
- 完成までの残工事費
- 既施工部分の調査費
- 不具合の補修費
- 資材・設備の再発注費
- 足場・仮設設備の再契約費
- 設計・申請変更費
- 既施工部分の保証範囲
- 完成予定日
- 追加費用が発生する条件
- 完成保証から支払われる金額
見積書に「一式」が多い場合は、工事再開後に追加請求が増える可能性があります。
安い会社へ引き継げばよいとは限らない
途中工事を引き継ぐ会社選びでは、金額だけで判断してはいけません。
必要なのは、
- 既施工部分を調査できる技術
- 構造・防水を判断できる体制
- 建築確認などの変更手続きへの対応
- 既施工部分を含めた保証範囲
- 追加工事の根拠を説明できる見積書
です。
安い見積もりで契約しても、工事開始後に問題が見つかれば、追加費用が次々と発生します。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社へ契約前に、次の質問をしてください。
「御社が倒産した場合、工事を引き継ぐ会社は決まっていますか?」
「引き継ぎで工事費が増えた場合、完成保証はいくらまで負担しますか?」
「前払い損失と追加工事費は、同じ保証限度額ですか?」
「仮住まい家賃やつなぎ融資の利息も保証されますか?」
デザインハウス甲府では、全棟に完成保証を付け、工事の進捗から支払いが大きく先行しない契約にしています。
完成保証は「倒産しても無料で家が完成する制度」ではありません。
しかし、数百万円になる可能性がある引き継ぎ費用から、施主を守る重要な仕組みです。
倒産後に必要なのは、残りの工事代金だけではありません。
他社の工事を調べ、直し、責任を引き受けてもらうためのお金が必要です。










