倒産した会社の工事を、他社が引き継ぎたがらない理由とは?
Q. 住宅会社が倒産して工事が止まりました。何社かへ引き継ぎを相談しましたが、断られてしまいました。工事が残っているのに、なぜ住宅会社は引き継ぎたがらないのでしょうか?
A. 冷たいからではありません。引き継いだ瞬間に、自社が施工していない部分の品質責任、完成後の保証、追加費用、施主とのトラブルまで背負う可能性があるからです。
住宅会社から見れば、途中工事の引き継ぎは「残った部分を造る仕事」ではありません。
誰が造ったか分からない部分まで調査し、最終的に一棟の家として完成させる仕事です。
一番の理由は「前の工事まで責任を問われる」から
例えば、新しい住宅会社が内装工事だけを引き継いだとします。
完成後に雨漏りが発生した場合、原因が倒産前に施工された屋根や防水部分にあったとしても、施主から見れば「最後に完成させた住宅会社」へ相談することになります。
引き継ぎ会社は、
- 自社が施工していない基礎
- 壁の中に隠れた耐力壁
- 柱や梁の接合金物
- 屋根や外壁の防水
- 断熱材や気密施工
- 地盤改良工事
についても、完成後に説明を求められる可能性があります。
原因と責任を明確に分けられない家を引き受けることは、住宅会社にとって非常に大きなリスクです。
調査しても工事を受注できるとは限らない
通常の新築相談であれば、自社の設計・仕様・施工方法を前提に見積もりを作れます。
しかし引き継ぎ工事では、見積もりを作る前に、
- 図面と現場の照合
- 工事出来高の確認
- 施工不良の調査
- 雨濡れや劣化の確認
- 残された資材の確認
- 建築確認や保険手続の確認
- 補修範囲の検討
が必要です。
数日かけて調査しても、施工品質が悪ければ引き受けられません。
住宅会社側には調査の人件費だけが発生し、工事を受注できない可能性があります。これが、最初から相談を断る会社がある理由です。
残工事だけでは採算が合わない
施主は「あと3割の工事が残っている」と考えます。
しかし、住宅会社にとっては、残り3割の工事だけを行えばよいわけではありません。
- 現場を再調査する
- 見積もりを作り直す
- 職人を再手配する
- 足場や仮設設備を再契約する
- 入手できない部材を変更する
- 既存部分を補修する
- 行政や保険の手続を引き継ぐ
- 完成後の保証範囲を整理する
といった手間が発生します。
しかも、倒産した会社へ支払った代金が、新しい住宅会社へ渡るわけではありません。
引き継ぎ会社は、残った工事を現在の材料費・人件費で一から見積もります。そのため、施主が想定する残額と、引き継ぎ会社の見積額に大きな差が出ることがあります。
図面があっても、施工した証明にはならない
設計図に「耐震等級3」「高断熱仕様」と書いてあっても、実際に図面どおり施工された証明にはなりません。
引き継ぎ会社が確認したいのは、
- 基礎配筋の写真
- 構造金物の施工写真
- 耐力壁の施工記録
- 防水検査の記録
- 断熱・気密施工の写真
- 第三者検査報告書
- 瑕疵保険の現場検査記録
です。
これらがなければ、壁や床を剝がさないと確認できない場合があります。
壊して確認する費用を誰が負担するのか。問題が見つかった場合に誰が直すのか。ここが決まらなければ、住宅会社は引き受けられません。
瑕疵保険を付けられるか分からない
新しい住宅会社は、完成後の住宅について瑕疵保険などの資力確保措置を行う必要があります。
倒産した会社が保険申込みや現場検査を進めていれば、その検査結果を活用して新しい契約者が保険を引き継げる場合があります。国土交通省「住宅瑕疵担保履行法Q&A」
しかし、必要な検査を受けていない、施工記録がない、保険基準に合わない場合は、追加検査や是正工事を求められる可能性があります。
完成後に適切な保険を付けられる見通しが立たなければ、引き継ぎを断るのは当然です。
現場にある材料を自由に使えるとは限らない
敷地内に木材、瓦、サッシ、キッチンなどが置かれていても、すべて施主の所有物とは限りません。
倒産した住宅会社が仕入先へ代金を支払っていない場合や、返品条件付きで納入されている場合もあります。
引き継ぎ会社が所有関係を確認せず、その材料を使えば、後から仕入先や破産管財人との問題に巻き込まれる可能性があります。
材料が現場にあるから、工事費が安くなるとは限りません。
施主が求める金額と期限を守れない
倒産被害に遭った施主は、
「以前の契約残額で完成させてほしい」
「予定していた引き渡し日に間に合わせてほしい」
「前の会社と同じ保証を付けてほしい」
と考えます。
しかし、新しい住宅会社は、倒産した会社の契約金額、工期、保証内容をそのまま引き継ぐ義務はありません。
既存部分を調査し、安全性と保証を確保したうえで新しい見積もりと工期を提示します。
この説明を施主に理解してもらえないと判断した場合、住宅会社はトラブルを避けるために依頼を断ります。
すぐ引き受ける会社なら安心?
現場調査も書類確認もせず、
「大丈夫です。すぐ続きを建てます」
と回答する会社には注意が必要です。
誠実な住宅会社ほど、
- 以前の契約は解除されているか
- 図面と検査記録はあるか
- 現場に不具合はないか
- 既存部分をどこまで保証できるか
- 瑕疵保険を引き継げるか
- 追加費用はいくら必要か
を慎重に確認します。
すぐに引き受けないのは、仕事が欲しくないからではありません。
完成後の責任まで考えているからです。
引き継ぎを受けてもらいやすくする方法
施主側で次の条件を整えると、住宅会社が検討しやすくなります。
- 破産管財人と以前の契約を整理する
- 建物と資材の引き渡しを受ける
- 設計図書と工事写真を回収する
- 第三者の建築士による現場調査を行う
- 補修が必要な部分を明確にする
- 既存部分と新規工事の責任を契約書で分ける
- 新しい見積額と工期を受け入れる
- 完成保証会社や瑕疵保険法人へ相談する
完成保証制度があっても、制度によっては施主自身が引き継ぎ会社を探す必要があります。JIO「完成サポートの引き継ぎ事業者」
だからこそ、契約前に「倒産後、誰が引き継ぎ会社を確保するのか」まで確認する必要があります。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社が引き継ぎ工事を断るのは、無責任だからではありません。
前の会社が施工した部分の品質と、完成後の保証に責任を持てないからです。
私たちが引き継ぎ工事を検討する場合でも、図面、構造計算書、工事写真、検査記録、現場の施工状態を確認せずに「大丈夫です」とは言えません。
デザインハウス甲府では、万一の工事中倒産に備えて全棟に住宅完成保証を付け、重要工程の記録を残しています。
契約前に住宅会社へ、次の質問をしてください。
「御社が倒産した場合、他社が引き継げるだけの図面と施工記録が残りますか?」
「引き継ぎ会社が既存部分を保証できない場合、誰が責任を負いますか?」
倒産後に本当に必要なのは、続きを建てる会社だけではありません。
他社が責任を持って引き継げる状態で、工事と記録を残している住宅会社を選ぶことです。










