Q. 地盤保証と建物保証は何が違う?
A. 地盤保証は、地盤調査や地盤補強工事の不備などが原因で住宅に不同沈下が起きた場合に備える制度です。一方、建物保証は、基礎・柱・梁・屋根・外壁など、建物側の施工不良や不具合を対象とする保証です。家が傾いたからといって、必ず地盤保証が使えるわけではありません。
住宅会社から、
「地盤保証が20年間付きます」
「建物は60年保証です」
と説明されると、住宅にも土地にも問題が起きないように感じます。
しかし、保証年数だけでは本当の安心は判断できません。
重要なのは、建物に不具合が起きたときに、
- 原因が地盤なのか
- 基礎の設計なのか
- 建物の施工なのか
- 自然災害なのか
を特定し、どの保証制度の対象になるかを判断することです。
地盤保証は「土地そのもの」を保証する制度ではない
地盤保証という名前から、
「土地に問題があったら、すべて保証してもらえる」
と思うかもしれません。
しかし、一般的な地盤保証は土地の価値や安全性を無条件で保証する制度ではありません。
主な対象は、地盤調査、地盤解析、地盤補強工事などの不備によって、建物に不同沈下が発生した場合です。
不同沈下とは、建物が均等に沈むのではなく、一部分だけが大きく沈んで住宅が傾く現象です。
不同沈下が起きると、次のような不具合が発生する可能性があります。
- 床が傾く
- ドアや窓が閉まりにくくなる
- 基礎や外壁にひび割れが入る
- クロスが割れる
- 配管に負担がかかる
- めまいや頭痛などを感じる
- 売却時の評価が大きく下がる
地盤保証は、こうした不同沈下の原因が保証条件に該当した場合に、修復費用などを一定範囲で支える制度です。
建物保証は「建物側」の不具合が中心
建物保証の中心となるのは、次のような建物部分です。
- 基礎
- 土台
- 柱
- 梁
- 耐力壁
- 床
- 屋根
- 外壁
- 防水部分
新築住宅では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、住宅会社や売主が引渡しから10年間責任を負います。
さらに住宅会社が独自に、20年、30年、60年などの長期保証を設定している場合があります。
ただし、長期保証の対象範囲や延長条件は住宅会社ごとに異なります。
地盤保証と建物保証の違い
| 比較項目 | 地盤保証 | 建物保証 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 地盤調査・解析・補強工事などに起因する不同沈下 | 基礎・柱・梁・屋根・防水などの建物部分 |
| 主な不具合 | 建物の傾き、沈下に伴う損傷 | 構造上の不具合、雨漏りなど |
| 保証する主体 | 地盤会社・保証会社など | 住宅会社・売主など |
| 一般的な期間 | 10年、20年など | 法律上の10年、独自保証20年・30年・60年など |
| 保証限度額 | 制度ごとに異なる | 保証書や保険契約によって異なる |
| 地震・液状化 | 対象外となる制度が多い | 原則として対象外となる場合が多い |
| 経年変化 | 原則として対象外 | 経年劣化は対象外になることが多い |
| 保証判断 | 不同沈下の原因調査が必要 | 不具合の原因と保証対象部分を確認 |
家が傾いた場合、どちらの保証になるのか
住宅の傾きは、原因によって責任の所在が変わります。
地盤調査や地盤補強工事に問題があった場合
軟弱地盤を見落とした、解析を誤った、必要な地盤補強工事を適切に行わなかったなどが原因なら、地盤保証の対象になる可能性があります。
基礎の設計や施工に問題があった場合
地盤の状態は正しく把握されていたにもかかわらず、基礎の設計や施工が不適切だった場合は、建物側の保証や住宅会社の責任が問題になります。
土地そのものに問題があった場合
盛土、擁壁、埋設物、地下水、造成工事などが原因の場合は、一般的な地盤保証の対象にならない可能性があります。
土地の売主、造成会社、擁壁の施工会社など、別の責任が問題になることもあります。
地震や液状化が原因の場合
地震、液状化、津波、洪水などの自然災害による沈下は、一般的な地盤保証や建物保証では対象外になる場合があります。
地震保険など、別の備えが必要です。
地盤は住宅の10年保証に含まれないのか
土地である地盤そのものは、原則として住宅の構造部分ではありません。
ただし住宅会社には、地盤の状態を適切に調査し、その結果に応じた基礎を設計・施工する責任があります。
例えば、軟弱地盤であることを把握できたにもかかわらず、必要な対策をせずに通常の基礎を施工し、その結果として不同沈下が発生した場合です。
このようなケースでは、単なる地盤の問題ではなく、基礎の設計・施工上の瑕疵として住宅会社の責任が問われる可能性があります。
住宅会社から、
「地盤の問題なので、建物保証では直せません」
と言われても、その説明だけで納得してはいけません。
地盤調査結果を基礎設計へ正しく反映したのかを確認する必要があります。
地盤改良工事をしたから安全とは限らない
地盤改良工事は、費用をかければ絶対に安全になる工事ではありません。
次のような不備があれば、不同沈下につながる可能性があります。
- 地盤調査地点が少なかった
- 地層の変化を見落とした
- 建物の重量を正しく反映していなかった
- 改良深度が不足していた
- 改良体の位置や本数が不足していた
- 施工記録が残されていなかった
- 腐植土や地下水の影響を考慮していなかった
- 盛土や擁壁の状態を確認していなかった
反対に、地盤改良工事をしていないから危険とも限りません。
調査結果に基づき、改良不要と合理的に判定され、適切な基礎が施工されていれば問題ありません。
重要なのは、
地盤改良工事をしたかどうかではなく、調査・解析・基礎設計・施工が一貫しているかです。
「保証限度額1億円」でも何でも直るわけではない
地盤保証には、数千万円から1億円など、大きな保証限度額が表示されることがあります。
実際に住宅保証機構が案内する地盤保証制度の一つには、20年間、保険金額1億円という商品があります。
しかし、1億円まで無条件で支払われるという意味ではありません。
保証対象となる事故であることが認められ、契約上の条件を満たした費用について、保証限度額の範囲内で支払われる制度です。
確認すべきなのは大きな限度額だけではありません。
- 何を原因とする不同沈下が対象か
- 誰が保証対象か
- 修復工事費はどこまで対象か
- 原因調査費は対象か
- 仮住まい費用は対象か
- 引越し費用は対象か
- 免責金額はあるか
- 地震や液状化は対象か
- 擁壁に起因する沈下は対象か
保証金額より、保証条件を見る必要があります。
擁壁がある土地は特に注意が必要
高低差のある土地や古い擁壁がある土地では、建物直下の地盤だけを調査しても十分とは限りません。
擁壁そのものが沈下・傾斜すれば、地盤が動き、住宅にも影響が出る可能性があります。
ところが、一般的な地盤保証では、擁壁を原因とする不同沈下が対象外になる場合があります。
擁壁のある土地では、次の点を確認してください。
- 擁壁の所有者は誰か
- 建築確認や検査済証があるか
- 擁壁の構造と築年数
- 水抜き穴が機能しているか
- ひび割れ、膨らみ、傾きがないか
- 地盤保証に擁壁特約があるか
- 擁壁から建物までの距離
- 建築制限や行政指導の有無
「地盤保証20年」という言葉だけでは、擁壁の安全まで保証されません。
不同沈下が疑われたときの対応
床の傾き、建具の不具合、基礎や外壁のひび割れなどが同時に発生した場合は、写真を撮るだけでなく、発生日と変化を記録してください。
そのうえで、次の資料を揃えます。
- 地盤調査報告書
- 地盤解析・判定書
- 地盤改良工事報告書
- 基礎伏図
- 構造計算書
- 地盤保証書
- 建物保証書
- 瑕疵保険の付保証明書
- 工事中の施工写真
- 引渡し後の点検記録
最初から「地盤のせい」「建物のせい」と決めつけず、第三者による傾斜測定や原因調査を行うことが重要です。
契約前に確認すべきこと
住宅会社へ、次の質問をしてください。
- 地盤調査はどの方法で行いますか
- 地盤判定を行う会社はどこですか
- 地盤保証は何年間ですか
- 保証限度額はいくらですか
- 不同沈下の修復費用はどこまで対象ですか
- 仮住まい・引越し・原因調査費も対象ですか
- 地震や液状化は対象ですか
- 盛土や擁壁に起因する沈下は対象ですか
- 地盤調査結果を誰が基礎設計へ反映しますか
- 地盤保証と建物保証の責任が重なった場合、誰が窓口になりますか
特に重要なのは最後の質問です。
地盤会社と住宅会社が、
「地盤の問題です」
「基礎の問題です」
と責任を押し付け合えば、施主はその間で動けなくなります。
原因調査から修復まで、住宅会社が一つの窓口として対応するのかを確認してください。
保証年数より「責任の境界線」を確認する
地盤保証20年、建物保証60年と聞けば、長期間守られているように感じます。
しかし、本当に問題になるのは不具合が起きたときです。
原因が地盤と建物の境界にある場合、保証書の内容が曖昧だと、どちらの保証でも対象外と判断される可能性があります。
地盤保証は土地全体の安全保証ではありません。建物保証も、すべての傾きを無条件で直す保証ではありません。
契約前に確認すべきなのは、保証年数の長さではなく、
- 何が対象なのか
- 何が対象外なのか
- 誰が原因を調査するのか
- 誰が修復責任を負うのか
- 保証が重なる部分を誰が取りまとめるのか
という責任の境界線です。
大きく表示された「20年」「60年」より、不具合が起きたときの対応手順を確認してください。
参考:
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










