Q. 営業担当者の口約束も保証される?
A. 口約束でも合意として扱われる可能性はありますが、書面がなければ「言った・言わない」になり、保証を受けることが極めて難しくなります。重要な約束は、契約書・特約・質疑回答書・会社発行のメールのいずれかに必ず残してください。
「口約束だから無効」とは限らない
契約は、当事者双方の意思が合致すれば成立するのが原則です。
そのため、営業担当者が説明した内容も、状況によっては契約条件の一部と判断される可能性があります。
しかし、住宅は契約金額が大きく、保証期間も長期です。
数年後に不具合が発生したとき、住宅会社から、
「そのような説明はしていません」
「営業担当者個人の認識です」
「正式な保証書には書かれていません」
と言われた場合、口約束だけで説明内容を証明するのは簡単ではありません。
問題は、口約束が必ず無効になることではありません。
約束の内容と、それを会社が正式に承認した事実を証明できるかどうかです。
営業担当者の説明と会社の保証内容は別の場合がある
営業担当者は、住宅会社を代表して商品や保証を説明します。
しかし、すべての営業担当者に、会社の保証条件を自由に変更する権限があるとは限りません。
例えば、営業担当者から次のように説明されたとします。
- 「60年間、無料で直せます」
- 「住宅設備も全部10年保証です」
- 「他社で修繕しても保証は続きます」
- 「将来のメンテナンス費用はほとんどかかりません」
- 「追加工事費は発生しません」
- 「地震で壊れても保証されます」
- 「この補助金は必ず受け取れます」
ところが、契約書や保証書には、その説明が書かれていない。
あるいは、小さな文字で異なる条件が記載されている。
この状態で営業担当者が退職・異動した場合、購入者側は非常に不利になります。
住宅会社に、
「担当者が個人的に説明しただけで、会社として約束したものではありません」
と言われる可能性があるからです。
「パンフレットに書いてある」だけでも安心できない
パンフレットやホームページに「60年保証」と書かれていても、それだけで家全体が60年間無償保証されるとは限りません。
重要なのは、その下に書かれている条件です。
- 何が保証対象なのか
- 何年間無償なのか
- どのような場合が免責になるのか
- 保証延長に有償工事が必要なのか
- 他社で修繕した場合はどうなるのか
- 設備交換費や工事費も含まれるのか
広告や営業説明よりも、最終的には契約書、特約、保証約款などの記載内容が重要になります。
契約前に書面へ残すべき5項目
営業担当者から重要な説明を受けたら、少なくとも次の5項目を明確にしてください。
1.何を保証するのか
「家を保証します」では不十分です。
構造、防水、外壁、屋根、住宅設備など、対象部分を具体的に記載してもらいます。
2.何年間保証するのか
初期保証期間と、条件付きの延長保証期間を分けて確認します。
「最長60年」と「無条件で60年」は、まったく意味が違います。
3.無償対応の範囲はどこまでか
部品代だけでなく、
- 作業費
- 出張費
- 取り外し費
- 復旧費
- 足場代
- 設備交換費
まで含まれるのかを確認してください。
4.保証を受けるための条件は何か
定期点検、有償メンテナンス、指定業者による工事など、保証を継続するための条件を確認します。
5.誰が保証責任を負うのか
営業担当者個人ではなく、住宅会社が正式に責任を負うことを明確にします。
会社名、担当部署、回答者名、回答日が分かる形で残すことが重要です。
証拠として強いものは何か
すべての資料が同じ強さを持つわけではありません。
一般的には、次の順番で確認しやすくなります。
- 双方が署名・押印した契約書、特約、変更合意書
- 会社が正式に発行した保証書、仕様書、見積書
- 会社のメールアドレスから送られた回答
- 内容を住宅会社が確認した打ち合わせ議事録
- パンフレット、LINE、録音、個人のメモ
- 購入者と営業担当者の記憶だけ
LINEや録音、メモも経緯を確認する資料にはなります。
しかし、それだけで住宅会社が保証責任を認めるとは限りません。
最も確実なのは、会社が正式に承認した内容を契約書または特約へ記載してもらうことです。
営業担当者へ、このように伝えてください
口頭で重要な説明を受けた場合は、次のように書面化を依頼してください。
本日のご説明では、〇〇は無償対応、保証期間は引渡しから〇年間、保証継続に有償工事は不要とのことでした。契約条件として確認したいため、契約書または特約へ記載してください。記載できない場合は、会社としての正式な保証条件を書面でご回答ください。
この依頼に対して、
「大丈夫です。私を信用してください」
「皆さん同じ条件です」
「契約書には書けませんが、会社で対応します」
と言われても、それは保証内容を確認したことにはなりません。
書面にできない約束は、保証されない可能性がある約束として判断すべきです。
契約後に口頭で約束された場合
契約後の打ち合わせや不具合対応で口約束をされた場合は、その日のうちに確認メールを送ってください。
例えば、
本日の打ち合わせで、〇〇の不具合について無償修理を行い、工事は〇月末までに実施するとの説明を受けました。認識に相違がないかご確認ください。
と送り、住宅会社から返信を受けます。
工事内容や金額、保証条件が変更される場合は、口頭だけで済ませず、変更契約書や合意書を作成してもらいましょう。
すでに「言った・言わない」になっている場合
次の資料をできるだけ集めてください。
- 契約書、特約、保証書
- 見積書、仕様書、設計図
- パンフレットや当時のホームページ
- メール、LINE、ショートメッセージ
- 打ち合わせ記録
- 録音データ
- 説明を聞いていた家族などの証言
- 担当者名、説明日、説明場所
そのうえで、住宅会社の担当者個人ではなく、責任者や本社へ書面で回答を求めます。
重要事項について事実と異なる説明を受け、その説明を信じて契約した場合には、消費者契約法上の取消しなどが問題になる可能性もあります。ただし、適用されるかどうかは説明内容や証拠によって異なるため、個別に専門機関へ相談してください。
住宅トラブルについては、住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)や消費生活センター、弁護士などへ相談できます。
保証とは、営業トークではなく会社が負う責任
営業担当者を信用してはいけない、という話ではありません。
誠実な営業担当者ほど、自分が説明した内容をきちんと書面に残します。
逆に、大きな約束をするのに書面化を拒む場合は、契約を急がず、会社として本当に責任を負える内容なのか確認する必要があります。
国土交通省も、契約内容の不明確さや不正確さが紛争の原因になるとして、工事内容や請負代金、工期、変更方法などを具体的に書面化することの重要性を示しています。国土交通省「民間建設工事標準請負契約約款」
住宅保証で本当に頼れるのは、営業担当者の「大丈夫です」という言葉ではありません。
誰が、何を、何年間、どの条件で、どこまで無償対応するのか。
それを会社が正式な書面で約束して、初めて保証と呼べます。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










