Q. 保証を維持するための修繕価格は適正?
A. 住宅会社の指定価格だから適正とは限りません。一方、他社より高いという理由だけで割高とも断定できません。工事範囲・数量・材料・施工品質・工事後の保証まで同じ条件にそろえて比較する必要があります。
長期保証を延長するために、住宅会社から高額な修繕工事を提示されることがあります。
そこで問題になるのが、
「この価格は本当に適正なのか」
という疑問です。
指定業者以外へ依頼すると保証を延長できない制度では、一般的なリフォーム工事のような価格競争が働きにくくなります。
だからこそ、見積金額だけでなく、その内訳と保証の価値まで確認する必要があります。
1社だけの見積りでは適正価格を判断できない
住宅の修繕工事は、建物ごとに条件が異なります。
- 建物の大きさ
- 劣化状況
- 外壁や屋根の材料
- 足場の組みやすさ
- 下地補修の範囲
- 使用する塗料や防水材
- 周辺環境
- 工事後の保証
によって価格が変わります。
そのため、住宅会社から提示された1社だけの見積りでは、高いのか安いのか判断できません。
少なくとも2~3社から、同じ条件で見積りを取ることが有効です。
適正価格を構成する7つの費用
修繕工事の価格は、主に次の費用で構成されます。
- 材料費
- 職人の施工費
- 足場や養生などの仮設費
- 運搬費と廃棄処分費
- 現場管理費
- 工事後の保証とアフター対応費
- 住宅会社の利益
住宅会社へ依頼すると、専門業者へ直接依頼するより高くなることがあります。
しかし、その差額に、
- 工事前の建物診断
- 図面や施工履歴の確認
- 現場監督による品質管理
- 工事中の検査
- 工事後の点検
- 長期保証の延長
- 不具合発生時の窓口一本化
が含まれているなら、単なる上乗せとは限りません。
問題は、価格差の理由が説明されないことです。
「一式」だらけの見積書には注意する
適正価格を判断できない見積書には、次のような特徴があります。
- 外壁工事一式
- 防水工事一式
- シーリング工事一式
- 下地補修一式
- 諸経費一式
このような表記だけでは、施工面積、数量、単価、材料、施工方法が分かりません。
最低でも、次の項目を記載してもらいましょう。
- 施工場所
- 施工面積や長さ
- 数量
- 単価
- 使用する商品のメーカー名
- 商品名と品番
- 施工方法
- 塗布回数
- 既存材料の撤去範囲
- 下地補修の範囲
- 工事後の保証期間
明細を出せない見積書では、適正価格を証明できません。
相見積りは同じ工事内容で比較する
見積金額だけを並べても意味がありません。
例えば、同じ外壁修繕でも、
- シーリングを撤去して打ち替える
- 既存シーリングの上から増し打ちする
- 高耐久材料を使用する
- 一般的な材料を使用する
- 下地補修を含む
- 下地補修を別途精算する
では、価格も耐久性も変わります。
見積条件が違えば、150万円と220万円を単純に比較することはできません。
住宅会社から工事仕様書を受け取り、その内容を他社にも提示して、同じ条件で見積りを依頼してください。
「保証を残すための差額」を計算する
同じ工事内容で比較した結果、次の金額になったとします。
- 住宅会社の指定工事:220万円
- 他社の同等工事:150万円
- 価格差:70万円
この70万円は、住宅会社による施工管理や保証延長のために支払う追加費用と考えられます。
10年間の保証延長なら、
- 1年間当たり7万円
- 1か月当たり約5,800円
です。
その金額を支払って残る保証が、
- 何を保証するのか
- どのような不具合が対象か
- 修理費の上限はいくらか
- 免責事項は何か
- 住宅会社が倒産しても継続するか
を確認してください。
価格差だけでなく、保証によって実際に守られる金額との比較が必要です。
必須工事と推奨工事を分ける
保証延長時の見積りには、複数の性質を持つ工事が含まれていることがあります。
保証延長に必須の工事
実施しなければ保証を延長できない工事です。
建物維持のための推奨工事
劣化を防ぐためには有効ですが、今回実施しなくても保証へ直ちに影響しない工事です。
美観や快適性を高める工事
色の変更、設備更新、内装工事など、保証とは直接関係しない工事です。
これらが混ざっていると、見積総額が大きくなります。
「すべて保証延長に必要です」と言われた場合は、各工事がどの保証と関係するのか説明してもらいましょう。
下地補修の扱いを確認する
外壁塗装や防水工事では、工事を始めてから下地の劣化が見つかることがあります。
見積書に、
「下地補修は別途」
と書かれていれば、契約後に追加費用が発生する可能性があります。
事前に次の点を確認してください。
- どこまで事前調査したのか
- 想定される追加工事は何か
- 追加工事の単価はいくらか
- 追加工事前に承認を求めるか
- 追加費用の上限を設定できるか
- 写真による報告があるか
最初の見積りが安くても、追加工事で最終金額が高くなることがあります。
比較するのは契約時の金額ではなく、完成までの想定総額です。
高くても適正な工事はある
他社より高いからといって、必ず不適正とは限りません。
次のような違いがあれば、価格差が生じる理由になります。
- 専用部材を使用する
- 下地まで全面的に補修する
- 足場や養生が丁寧
- 指定施工基準が厳しい
- 複数回の現場検査がある
- 工事写真を詳細に残す
- 工事後の保証期間が長い
- 不具合発生時の対応窓口が明確
- 建物全体の長期保証が延長される
大切なのは、価格差に見合う内容があるかです。
「当社の工事でなければ保証できません」という説明だけでは、価格の妥当性を証明したことにはなりません。
適正価格を判断する7つのチェック項目
次の項目を確認してください。
- 工事範囲が図面や写真で示されているか
- 数量と単価が記載されているか
- 材料の商品名とグレードが分かるか
- 必須工事と推奨工事が分かれているか
- 追加工事の条件と単価が決まっているか
- 工事後の保証内容が書面化されているか
- 同一条件の相見積りと比較できるか
この7項目がそろわなければ、金額だけを見ても適正とは判断できません。
こんな見積りには注意する
次のような場合は、すぐに契約せず説明を求めましょう。
- 「一式」表記が多い
- 数量や単価がない
- 材料の商品名が書かれていない
- 保証延長に必要な工事が分からない
- 工事を急がせる
- 当日契約だけ大幅値引きする
- 他社との比較を嫌がる
- 保証対象外になる範囲を説明しない
- 追加工事の単価が決まっていない
- 保証内容が口頭だけ
保証を失う不安を利用して契約を急がせる会社には注意が必要です。
契約前に住宅会社へ確認すること
新築契約前に、将来の修繕価格についても質問してください。
- 保証延長に必要な工事項目は何ですか
- 何年目に工事が必要ですか
- 現在価格での概算はいくらですか
- 数量と単価を明示した見積書を出しますか
- 必須工事と推奨工事を分けますか
- 他社と相見積りできますか
- 他社施工でも保証を延長できますか
- 指定工事後は何年間保証されますか
- 30年間・60年間の想定修繕総額はいくらですか
「将来の価格は分からない」という回答だけで終わらせず、現在価格によるモデルケースを提示してもらいましょう。
適正価格とは、説明できる価格
最も安い見積りが適正とは限りません。
最も高い見積りが安心とも限りません。
適正価格とは、
- 工事の必要性
- 施工範囲
- 材料
- 数量
- 単価
- 品質管理
- 工事後の保証
を購入者へ説明できる価格です。
長期保証を維持するための工事だからといって、価格まで無条件に受け入れる必要はありません。
保証を残すためにいくら余分に支払うのか、その保証が何を守るのかまで数字で比較してください。
保証年数ではなく、保証を維持する総額と説明の透明性で住宅会社を選ぶことが重要です。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターは、1社だけの見積りでは金額の適正性を判断しにくいため、2~3社から相見積りを取得することが有効と案内しています。住まいるダイヤル「複数の見積書を取って比較しましょう」
同センターは、見積書について工事箇所、数量、仕様、単価を確認し、追加工事の条件も事前に決めるよう案内しています。住まいるダイヤル「リフォーム見積書セルフチェックのポイント」
同センターの見積チェック事例でも、設備のグレードや工事範囲が異なる場合は比較が難しいため、同一条件で再見積りするよう助言しています。住まいるダイヤル「二社の見積金額が大きく異なる事例」










