Q. 保証を受けるために、不具合の証明は必要?
A. 住宅会社へ最初に連絡する段階で、購入者が不具合の原因まで証明する必要はありません。ただし、保証を確実に受けるためには、「いつ・どこで・どのような現象が起きたか」を写真、動画、メールなどで残す必要があります。住宅会社が保証対象外と判断し、争いになった場合は、第三者調査などによる原因の証明が必要になることがあります。
「不具合の記録」と「原因の証明」は違う
住宅の保証請求では、次の2つを分けて考える必要があります。
1.不具合が発生していることの記録
- 天井から水が落ちている
- 外壁にひび割れがある
- 床が沈む
- 建具が閉まらない
- 給湯器にエラーが表示される
- 室内の一部だけ異常に寒い
このような現象を、写真や動画で記録します。
2.不具合が発生した原因の証明
- 防水工事の施工不良
- 構造材の変形
- 地盤沈下
- 配管の接続不良
- 断熱材の欠損
- 設備機器の製造上の問題
- 居住者の使用方法
- 経年劣化や自然災害
原因の特定には、専門知識や機器を使った調査が必要になる場合があります。
最初から購入者が原因まで特定する必要はありません。
本来は、不具合の連絡を受けた住宅会社や保証者が現場を確認し、原因を調査するべきです。
購入者が最低限残すべき7つの証拠
不具合を発見したら、次の内容を残してください。
- 発見した日と時間
- 不具合が発生した場所
- 建物全体と不具合部分の写真
- 現象が分かる動画
- 天候、気温、湿度、風向き
- 住宅会社へ連絡した日と回答内容
- 不具合が広がっていく経過
写真は、近くから撮影したものだけでは場所が分かりません。
次の3種類を撮影してください。
- 部屋全体が分かる写真
- 不具合の位置が分かる写真
- ひび割れや水滴などの状態が分かる接写
日時が記録されるスマートフォンで撮影し、元のデータを削除しないことも重要です。
住まいるダイヤルも、不具合が起きたときは写真や動画などで現象の記録を残すよう案内しています。住まいるダイヤル「雨漏り補修と保険の直接請求」
不具合別に残すべき記録
雨漏り
- 雨が降っているときの動画
- 水が入っている場所
- 雨の強さ、風向き、発生時間
- 濡れた範囲
- 雨が止まった後の状態
- 家具や家電への被害
雨漏りは、住宅会社が調査に来たときには乾いていることがあります。
そのときの状況を動画で残していなければ、
「雨漏りを確認できません」
と言われる可能性があります。
外壁・基礎のひび割れ
- 建物のどの面か
- ひび割れの長さ
- ひび割れの幅
- 最初に発見した日
- その後広がっているか
定規やクラックスケールを一緒に写し、同じ場所を定期的に撮影してください。
床や建物の傾き
ビー玉が転がる動画だけでは、建物の傾きを証明できないことがあります。
床材のわずかな凹凸や風でも転がるからです。
気になる場合は、住宅会社へ測定を依頼し、
- 測定機器
- 測定場所
- 測定数値
- 測定者
- 測定日
を記載した報告書を求めてください。
結露・カビ・寒さ
- 室温と湿度
- 外気温
- 発生時間
- 発生場所
- 暖房や換気設備の運転状況
- 窓や壁の表面温度
- カビが広がる経過
「寒い」「結露が多い」という感覚だけでは、施工不良か生活条件によるものか判断できません。
温湿度計などを使って数値を残すことが重要です。
住宅設備の故障
- メーカー名
- 製品名と型番
- 製造番号
- エラーコード
- 故障時の動画
- 購入日、引渡し日
- 点検・清掃・修理履歴
エラー表示を消したり電源を入れ直したりする前に、写真を撮ってください。
自分で修理してから連絡するのは危険
不具合を見つけたとき、先に別の業者へ修理を依頼すると、原因の確認ができなくなる場合があります。
住宅会社から、
- 修理前の状態を確認できない
- 他社の工事によって原因が変わった
- 指定業者以外が触ったため保証できない
と言われる可能性があるからです。
原則として、修理前に保証責任を負う住宅会社へ連絡し、現場を確認してもらってください。
ただし、大量の雨水が入っている、漏電の危険がある、給水管から水が噴き出しているなど、被害の拡大や安全上の危険がある場合は応急処置が必要です。
その場合も、
- 応急処置前の写真と動画を撮る
- 住宅会社へ連絡する
- 応急処置の内容を記録する
- 領収書と作業報告書を保存する
という順番を守ってください。
電話だけで連絡してはいけない
保証期間内に電話で連絡しても、その記録が住宅会社に残っていなければ、
「保証期間中に申し出を受けていません」
と言われる可能性があります。
電話をした後に、メールや書面で次のように送ってください。
本日〇月〇日、〇〇様へ電話でお伝えしたとおり、2階寝室の天井に雨漏りと思われる染みが発生しています。発見日時は〇月〇日午後〇時頃です。写真と動画を添付しますので、現地調査と保証対応について、〇月〇日までにご回答ください。
これで、
- 連絡した日
- 不具合の場所
- 発生している現象
- 調査を依頼した事実
を残せます。
保証期間内でも、通知が遅れると不利になる
「まだ保証期間中だから、次の点検で言えばよい」
と考えてはいけません。
時間が経つほど原因の特定が難しくなり、被害が拡大する可能性があります。
また、民法第637条では、請負の目的物について種類や品質の契約不適合を知った場合、原則として知ったときから1年以内に請負人へ通知しなければ、追完請求などができなくなる規定があります。ただし、新築住宅の構造・防水に関する責任や個別の保証約款など、適用関係は契約と不具合によって異なります。e-Gov法令検索「民法第637条」
保証期間に余裕があるように見えても、不具合を発見したらすぐに書面で通知してください。
住宅会社が「証拠がない」と言った場合
次の内容を、書面で確認してください。
- どの事実が確認できないのか
- どのような調査が必要なのか
- 誰が調査するのか
- 調査費用は誰が負担するのか
- 保証対象外とする具体的な根拠
- 再調査はできるのか
住宅会社が原因調査を行わず、
「写真だけでは分かりません」
「現地で再現できないため対応できません」
と回答する場合は、調査方法の提案と正式な回答書を求めてください。
第三者調査が必要になる場合
次のような場合は、第三者の建築士や専門調査会社への依頼を検討します。
- 住宅会社が調査を行わない
- 原因について双方の意見が違う
- 何度修理しても再発する
- 構造や雨漏りに関する重大な不具合
- 高額な有償工事を求められた
- 裁判や紛争処理を検討している
第三者調査では、不具合の現象だけでなく、
- 契約図面や仕様書との相違
- 施工状態
- 原因と不具合の因果関係
- 必要な補修方法
- 想定される補修費用
まで報告書に記載してもらうことが重要です。
ただし、第三者調査の費用を購入者が一時的に負担する場合があり、その費用を住宅会社へ請求できるとは限りません。依頼前に調査範囲と費用を確認してください。
ひび割れがあれば、必ず施工不良になるわけではない
目に見える不具合があるからといって、自動的に瑕疵や施工不良と認定されるわけではありません。
国土交通省には、住宅紛争処理で不具合と構造上の瑕疵との関係を検討するための技術的基準がありますが、この基準も瑕疵の有無を機械的に確定するものではなく、個別の発生状況などを総合的に考慮するとされています。国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」
だからこそ、感覚的な主張だけでなく、記録と調査が必要です。
購入者に専門家レベルの証明を求める会社には注意
購入者は建築の専門家ではありません。
雨漏りを発見した購入者に対して、
「どこから水が入ったのか証明してください」
「施工不良であることを証明してください」
と最初から原因の立証を丸投げするのは、誠実な保証対応とは言いにくいでしょう。
購入者が行うべきなのは、発生している現象を記録し、速やかに連絡することです。
その現象を調査し、原因と補修方法を説明するのが住宅会社の役割です。
ただし、住宅会社の判断に納得できず、損害賠償や裁判まで進む場合には、購入者側にも主張を裏付ける証拠が必要になります。
証拠は、住宅会社を疑うためではない
写真、動画、メールを残すことは、最初から住宅会社と争うためではありません。
不具合の原因を早く特定し、適切な補修を行うためです。
記録が残っていれば、住宅会社も調査しやすくなります。
逆に記録がなければ、
- いつ発生したのか分からない
- 保証期間内だったか分からない
- 修理前の状態を確認できない
- 被害の広がりが分からない
- 原因を再現できない
という状況になります。
保証を受けるために、購入者が最初から不具合の原因まで証明する必要はありません。
しかし、記録のない不具合は、後から証明することが非常に難しくなります。
不具合を見つけたら、まず写真と動画を撮る。
その日のうちに住宅会社へ書面で連絡する。
そして、原因調査と回答を求める。
保証は、持っているだけでは使えません。
不具合が発生した事実を残し、期限内に正しく請求して、初めて機能する制度です。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










