Q. 中古住宅として売却しても保証は引き継げる?
A. 住宅を売却して所有者が変わっても、長期保証が自動的に新しい買主へ引き継がれるとは限りません。住宅会社への事前申請、名義変更、有償点検、必要な補修工事などを条件に、残りの保証期間を承継できる場合があります。売買契約を結ぶ前に、保証する会社から「承継可能」という書面を取得してください。
「建物に付いている保証」だと思うと危険
住宅の60年保証や永年保証を、
「建物そのものに付いている保証だから、誰が所有しても続く」
と考える人がいます。
しかし、住宅会社独自の保証は、新築時の契約者と住宅会社との契約に基づくものです。
そのため、住宅を第三者へ売却すると、
- 保証がそのまま承継される
- 手続きをすれば承継できる
- 点検と補修を受ければ承継できる
- 一部の保証だけ承継できる
- 新所有者には一切承継できない
など、住宅会社によって対応が分かれます。
保証期間が残っていることと、買主がその保証を使えることは別です。
住宅の保証は5種類に分けて確認する
中古住宅として売却するときは、保証を一括して考えてはいけません。
| 保証・制度 | 売却後の扱い |
|---|---|
| 住宅会社独自の長期保証 | 約款と承継手続による |
| 法律上の新築住宅10年責任 | 新しい買主へ当然に同じ形で移るとは限らない |
| 住宅瑕疵担保責任保険 | 転売特約や名義変更の確認が必要 |
| 住宅設備・延長保証 | メーカー・保証会社の規定による |
| 地盤・防蟻・太陽光保証 | 個別の承継条件による |
「建物保証は引き継げます」と言われても、設備保証や地盤保証まで承継できるとは限りません。
保証ごとに、保証者と名義変更方法を確認してください。
住宅会社独自の長期保証は条件付きの場合がある
長期保証を新しい所有者へ承継するために、次のような条件が設けられる場合があります。
- 売却前に住宅会社へ通知する
- 所有者変更届を提出する
- 保証書の名義を書き換える
- 住宅会社による建物点検を受ける
- 必要と判断された補修工事を行う
- 他社による増改築部分を保証対象外とする
- 過去の点検・修繕履歴を提出する
- 承継手数料や点検費用を支払う
- 売買後の一定期間内に申請する
例えば、ミサワホームは、残余保証期間を第三者へ引き継ぐ場合、持ち主変更の通知、有料の点検整備、保証書の名義書き換えなどの手続きを案内しています。ミサワホーム「保証期間の延長とサービス」
つまり、保証が20年残っていても、何もしなければ新しい買主が使えない可能性があります。
法律上の10年責任も自動承継とは限らない
新築住宅では、住宅会社や売主は、引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について責任を負います。
しかし、この責任は新築時の発注者や買主と住宅会社との契約関係を前提としています。
住まいるダイヤルの相談事例では、住宅が転売された後も、新築時の発注者と施工業者との間では10年間の責任が継続する一方、中古住宅の買主が住宅瑕疵担保責任保険上の地位を承継するには、保険契約に転売特約が付いていることなどが必要と説明されています。住まいるダイヤル「前所有者名義の住宅瑕疵担保責任保険」
したがって、
「築7年だから、法律上の保証があと3年残っている」
と単純には判断できません。
誰が住宅会社へ補修を請求できるのか、保険を利用できるのかを、売却前に確認する必要があります。
瑕疵保険に「転売特約」が付いているか
新築時の住宅瑕疵担保責任保険には、住宅を転売した場合に、新しい所有者へ保険上の地位を引き継ぐための転売特約が付いている場合があります。
確認する資料は、
- 保険付保証明書
- 保険法人名
- 保険証券番号
- 転売特約の有無
- 保険期間
- 名義変更手続
- 保証する住宅会社の同意
です。
保険付保証明書を紛失している場合は、住宅を建てた会社へ問い合わせてください。
転売特約が付いていない場合でも、後から追加できる可能性があるため、保険法人と住宅会社へ確認します。
ただし、手続きが売却後では間に合わない場合も考えられます。
買主が決まってからではなく、売却活動を始める前に確認してください。
住宅設備保証も自動承継とは限らない
キッチン、ユニットバス、給湯器、換気設備、太陽光発電、蓄電池などは、建物保証とは別に管理されています。
例えば、次の条件が問題になります。
- 保証登録者が新築時の所有者のまま
- 延長保証が本人限定
- 売却時に保証が終了する
- メーカー保証は続いても販売店保証は続かない
- 製品保証書がない
- 品番や製造番号を確認できない
- 保証期間は残っていても部品がない
設備保証についても、新所有者へ名義変更できるか、メーカーまたは延長保証会社へ確認してください。
地盤保証や防蟻保証にも別の手続きがある
建物保証を承継できても、地盤保証や防蟻保証が承継できない場合があります。
特に防蟻保証は、
- 指定時期の再処理
- 定期点検
- 指定業者による施工
- 保証更新料
- 所有者変更届
などが条件になっていることがあります。
地盤保証も、保証会社、地盤調査会社、住宅会社のどこが保証主体なのかによって手続きが異なります。
「住宅会社の60年保証が承継できるから、すべての保証が続く」とは考えないでください。
長期優良住宅の地位承継は、建物保証とは別
長期優良住宅の認定を受けている住宅を売却する場合、認定計画実施者の地位を新所有者へ承継する手続きがあります。
国土交通省は、相続や売買などによって所有者が変わる場合、所管行政庁へ地位の承継の承認を申請できると案内しています。国土交通省「長期優良住宅のページ」
ただし、長期優良住宅の認定を承継することと、住宅会社の長期保証を承継することは別の手続きです。
両方を個別に確認する必要があります。
売却前に行う8つの手続き
1.すべての保証書を集める
建物、設備、地盤、防蟻、太陽光、蓄電池などに分けて整理します。
2.保証の残存期間を確認する
「最長60年」ではなく、現在有効な保証が何年残っているかを確認します。
3.住宅会社へ売却予定を伝える
売却前に必要な手続き、期限、費用を確認します。
4.承継できる保証を書面でもらう
対象部分、残存期間、名義変更条件を明記してもらいます。
5.必要な点検を受ける
有償点検や補修工事が条件なら、内容と費用を確認します。
6.リフォーム履歴を整理する
他社で工事した部分は、元の保証対象外になる可能性があります。
7.点検・修繕記録を買主へ引き渡す
保証書だけでなく、過去のメンテナンス履歴も重要です。
8.売買契約書に保証承継の内容を記載する
「保証あり」だけではなく、保証者、対象部分、期間、承継条件を記載します。
住宅会社へ送る確認文
売却を検討した時点で、次のように確認してください。
当住宅の売却を検討しています。現在有効な建物保証について、第三者へ売却した場合に承継できる保証の対象部分、残存期間、必要な点検・補修、手続期限、費用をご回答ください。併せて、住宅瑕疵担保責任保険の転売特約の有無と名義変更方法についてもご確認ください。
口頭で「たぶん引き継げます」と言われただけでは、売却広告へ保証ありと記載しないでください。
買主へ「60年保証付き」と簡単に説明してはいけない
売却時に、
「大手メーカー施工、60年保証付き」
と表示すると、買主は60年間の保証がそのまま承継されると受け取る可能性があります。
実際には、
- 残り12年だけ
- 構造と防水だけ
- 有償点検後に承継
- 他社リフォーム部分は対象外
- 次回の指定工事をしなければ終了
という条件があるかもしれません。
売却広告では、
所定の点検・名義変更手続により、構造・防水保証の残存期間を承継できる可能性があります。詳細は住宅会社の承認によります。
など、確定している内容と未確定の内容を分けて表示してください。
承継できない場合は中古住宅用の瑕疵保険を検討する
元の長期保証を承継できない場合でも、既存住宅売買瑕疵保険を利用できる可能性があります。
これは、売却前に建物検査を行い、一定の条件を満たした住宅について、売却後に対象となる不具合が見つかった場合の補修費用などに備える保険です。
保証期間、対象部分、保険金額、検査内容は保険商品によって異なります。
元の住宅会社の保証承継とは別の制度として、不動産会社や保険法人へ相談してください。国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険について」
保証の承継は中古住宅の価値を見える化する
同じ築年数の住宅でも、
- 保証書がない
- 点検記録がない
- 修繕履歴が分からない
- 保証を承継できない
住宅と、
- 保証の残存期間が明確
- 点検記録がそろっている
- 必要な修繕が行われている
- 新所有者へ保証を承継できる
住宅では、買主の安心感が違います。
保証を承継できるから必ず高く売れるとは限りませんが、買主の不安を減らし、価格交渉で不利になりにくくする材料になります。
60年保証でも、売却時にゼロになる可能性がある
家を建てるとき、多くの人は自分が住み続けることだけを考えます。
しかし、転勤、相続、介護、離婚、住み替えなどで、住宅を売却する可能性はあります。
そのとき、長期保証が新しい所有者へ承継できなければ、残りの保証期間が実質的に失われます。
中古住宅として売却しても保証を引き継げるかは、住宅会社や保証制度によって異なります。
自動承継とは考えず、売却前に必ず書面で確認してください。
本当に資産価値を支える保証とは、最初の所有者だけを守る保証ではありません。
次の所有者へ、性能、点検記録、修繕履歴と一緒に引き継げてこそ、長期保証は中古住宅の価値になります。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










