一度選んだ設備を元に戻すと、キャンセル料がかかる?
A. 発注前なら無料で戻せることもありますが、発注後はキャンセル料がかかる可能性があります。さらに、納品後・施工後では、商品代だけでなく返送料・撤去費・再取付費まで発生します。
例えば契約後に、
標準キッチンから上位キッチンへ変更したが、予算が厳しいので元へ戻したい
と考えたとします。
標準仕様へ戻すのだから、追加料金もすべて消えると思いがちです。
しかし、上位キッチンがすでに発注されていれば、その注文を取り消す費用が残ります。
キャンセル料は変更する時期で変わる
| 変更する時期 | 発生する可能性がある費用 |
|---|---|
| ショールームで選んだだけ | 基本的に無料の場合が多い |
| 住宅会社へ希望を伝えた段階 | 図面・見積変更費 |
| 変更契約後・発注前 | 変更手数料・再設計費 |
| メーカー発注後 | 商品キャンセル料・返品手数料 |
| 製造開始後 | 商品代の一部または全額 |
| 現場納品後 | 返送料・再配送費・保管費 |
| 取付後 | 撤去・処分・補修・再取付費 |
同じ設備でも、発注前と施工後では負担額が数十万円変わります。
「選んだ」と「発注した」は違う
ショールームで商品を選び、メーカー見積書を作成してもらっただけなら、通常はまだ住宅会社が商品を購入したとは限りません。
確認するのは次の3段階です。
- ショールームでプランを作成した
- 住宅会社へ変更を承認した
- 住宅会社がメーカーや商社へ発注した
キャンセル料が大きくなり始めるのは、3番目の「発注後」です。
ただし、住宅会社独自の設計変更手数料などが契約で定められていれば、発注前でも費用が出る場合があります。
標準品へ戻しても費用が消えない理由
1.変更後の商品をすでに発注している
住宅設備は、品番、色、サイズ、扉の向きなどを住宅ごとに組み合わせて発注します。
特注寸法、特注色、加工済み商品は、他の住宅へ転用できないことがあります。
メーカーや商社から住宅会社へキャンセル料が請求されれば、その費用が施主へ請求される可能性があります。
2.元の標準品をキャンセル済み
上位設備へ変更した時点で、最初の標準設備は発注対象から外されています。
元へ戻すには、
- 変更後商品の取消し
- 標準商品の再発注
- 納期の再調整
- 配送便の再手配
が必要です。
「元に戻す」というより、実務上はもう一度変更することになります。
3.図面や配線を変更済み
設備を変えると、商品だけでなく次の内容も変更されます。
- 給排水管
- 電気回路
- コンセント
- 下地
- 壁位置
- 開口寸法
- 換気ダクト
- 搬入経路
元へ戻せば、これらの図面や工事も再変更になります。
4.すでに施工した部分をやり直す
設置後に元へ戻す場合は、
- 変更設備の撤去
- 廃材処分
- 標準設備の再購入
- 再搬入
- 再取付
- 壁・床・クロスの補修
が必要です。
場合によっては、追加した設備代よりも、元へ戻す費用の方が高くなります。
追加40万円を戻しても30万円残る例
当初契約額が2,000万円だったとします。
上位キッチンへ変更し、40万円増額しました。
| 状況 | 最終金額の例 |
|---|---|
| 当初契約 | 2,000万円 |
| 上位キッチンへ変更 | 2,040万円 |
| 発注前に標準へ戻す | 2,000万円 |
| 発注後に標準へ戻す | 2,030万円 |
| 施工後に標準へ戻す | 2,060万円 |
発注後に戻した場合の内訳例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 上位キッチンのキャンセル料 | 20万円 |
| 標準品の再発注差額 | 4万円 |
| 返送・再配送費 | 3万円 |
| 図面・配線再変更 | 3万円 |
| 合計 | 30万円 |
上位設備は付かないのに、30万円だけ支払う結果です。
施主にとって、最も納得しにくい支出になります。
キャンセル料は何%?
住宅設備のキャンセル料に、業界共通の割合はありません。
| 発注状況 | 請求例 |
|---|---|
| 未発注 | 0円~事務手数料 |
| 発注直後・返品可能 | 商品代の10~30%程度 |
| 製造開始・特注品 | 商品代の30~100% |
| 納品後 | 商品代+返送料・再配送費 |
| 施工後 | 商品代+撤去・処分・再施工費 |
これは固定相場ではなく、あくまで想定例です。
メーカー・商品・発注先・製造状況によって変わります。
「契約後は一律30%」と言われた場合も、いつ、何を発注し、どのような損害が発生したのか確認してください。
全額キャンセル料は必ず有効?
住宅会社が、
発注後のキャンセルは、理由を問わず商品代100%
と定めていても、どのような場合でも当然に全額が認められるとは限りません。
消費者契約法第9条では、契約解除に伴う違約金や損害賠償について、同種の契約解除で事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分を無効としています。
また、消費者から求められた場合、事業者はキャンセル料の算定根拠の概要を説明するよう努めることとされています。消費者庁「解約料に関する説明資料」
ただし、設備変更が建築請負契約の一部変更に当たる場合、契約内容や発注状況によって法的評価は異なります。
「高いから無効」と自己判断せず、まず算定根拠を確認します。
キャンセル料の根拠を確認する
次の資料を住宅会社へ求めます。
- メーカー・商社への発注日
- 発注した商品名・品番・数量
- メーカー側のキャンセル回答
- キャンセル料の請求書
- 商品が製造開始されているか
- 返品・他現場への転用が可能か
- 返送料・再配送費
- 図面変更費
- 施工済み部分の撤去費
- 標準品の再発注費
質問は、こうです。
「キャンセル料○万円の内訳と、実際に発生した費用の根拠を出してください」
「会社の決まりです」だけでは、金額の妥当性を判断できません。
発注前なのに高額なキャンセル料を請求されたら
まだメーカーへ発注していないなら、商品代全額相当の損害が発生しているとは考えにくい場合があります。
ただし、住宅会社がすでに、
- 設計作業
- 図面変更
- 見積作成
- メーカーとの打合せ
- 構造・設備検討
を行っていれば、変更手数料などが発生する可能性はあります。
確認するのは、
実際に何の費用が発生したのか
です。
単に施主の変更を抑止するための高額なペナルティになっていないか確認します。
変更前に「無料変更期限」を聞く
設備を選ぶときは、次の4つの日付を確認します。
| 日付 | 確認内容 |
|---|---|
| 仕様決定日 | 色・形・品番を決める期限 |
| 無料変更期限 | いつまでなら費用なしで戻せるか |
| 発注予定日 | 住宅会社が商品を注文する日 |
| 施工予定日 | 現場へ搬入・設置する日 |
「来週発注します」ではなく、
〇月〇日午後5時以降はキャンセル料が発生する
と具体的に書面で出してもらいます。
迷っている設備は発注しない
迷ったまま、
「とりあえず、この仕様で進めてください」
と承認するのは危険です。
住宅会社にとって「進めてください」は、発注許可です。
迷っている場合は、
この設備は未決定です。発注しないでください。発注前に改めて承認を取ってください。
とメールや打合せ記録へ残します。
住宅会社側にも発注確認が必要
正直な住宅会社は、設備発注前に次を確認します。
- 最終商品名
- 品番
- 色
- サイズ
- 左右勝手
- オプション
- 追加金額
- 発注後の変更費用
- 納期
- 施主の署名
「変更できます」と説明するだけでなく、いつから変更できなくなるかまで伝えるべきです。
すでにキャンセル料を請求された場合
すぐに支払う、または全面拒否するのではなく、次の順番で確認します。
- 契約書の変更・取消条項
- 発注日と施主の発注承認
- メーカー側の取消条件
- 実際に発生した損害
- 返品・転用の可否
- 標準品へ戻す費用
- キャンセル料の算定根拠
説明に納得できない場合は、住まいるダイヤル、消費者ホットライン188、弁護士などへ相談します。
結論
一度選んだ設備でも、発注前なら無料で戻せることがあります。
しかし、
- メーカー発注後
- 特注品の製造開始後
- 現場納品後
- 施工後
と進むほど、キャンセル料は高くなります。
設備を元に戻しても、発注・配送・施工に使った時間と費用までは元に戻りません。
正直な住宅会社は、キャンセル料を後から突然請求するのではなく、無料変更期限・発注日・発注後の負担額を、設備決定前に説明します。










