施主支給は本当に安い?取付費と保証はどうなる?
A.商品だけを見れば安くなることがあります。しかし、送料・搬入費・取付費・部材費・管理費まで含めると、住宅会社から購入するより高くなるケースもあります。さらに、故障時は「商品」と「施工」の保証窓口が分かれます。
施主支給とは、照明、設備、建材などを施主が自分で購入し、住宅会社や専門業者へ取付けだけを依頼する方法です。
ネット通販では、住宅会社の見積もりより商品が20%、30%安く表示されていることがあります。
しかし、比較するべきなのは商品価格ではありません。
「正常に使用できる状態まで取り付け、故障時に対応してもらう総額」で比較する必要があります。
施主支給で追加される費用
施主支給の総額は、次の計算になります。
商品代+送料+荷受け費+保管費+取付費+接続部材+調整費+廃材処分費+現場管理費
住宅会社の設備価格には、商品代以外の費用が含まれていることがあります。
| 費用項目 | 施主支給で確認すること |
|---|---|
| 商品代 | 税込価格か、必要部品込みか |
| 送料 | 大型商品・複数口の追加送料 |
| 荷下ろし | トラックから誰が降ろすのか |
| 搬入費 | 室内まで誰が運ぶのか |
| 保管費 | 現場で保管できるか |
| 検品費 | 品番・数量・破損を誰が確認するか |
| 取付費 | 通常取付か、施主支給専用料金か |
| 接続部材 | 配管・配線・アダプターなど |
| 下地工事 | 壁補強、開口、電源、給排水 |
| 調整・試運転 | 誰が正常作動を確認するか |
| 廃材処分 | 梱包材・既存設備の処分費 |
| 管理費 | 工程調整・業者手配・責任管理 |
| 再訪問費 | 部品不足で後日再施工する費用 |
「ネットで25万円安かった」と思っても、これらを加えると差額が消えることがあります。
キッチンを施主支給した場合の計算例
同じように見えるキッチンで、次の価格差があったとします。
| 項目 | 住宅会社から購入 | 施主支給 |
|---|---|---|
| 商品価格 | 125万円 | 100万円 |
| 送料・荷下ろし | 含む | 5万円 |
| 現場搬入・保管 | 含む | 3万円 |
| 組立・取付費 | 含む | 12万円 |
| 給排水・電気接続 | 含む | 5万円 |
| 管理・検品・調整 | 含む | 5万円 |
| 梱包材処分等 | 含む | 2万円 |
| 合計 | 125万円 | 132万円 |
商品価格だけなら25万円安く見えます。
ところが、使用できる状態までの総額では、施主支給のほうが7万円高くなりました。
さらに、商品が予定日に届かなかったり、部品不足で職人が再訪問したりすれば、追加費用が発生します。
施主支給で安くなりやすいもの
施主支給に向いているのは、比較的簡単に交換でき、住宅本体への影響が少ない商品です。
- ペンダント照明
- シーリングライト
- カーテン
- 鏡
- タオル掛け
- トイレットペーパーホルダー
- 室内物干し
- 家具
- 置き型家電
- インテリア小物
ただし、照明でも重量があるものや、天井補強が必要なものは事前確認が必要です。
施主支給で慎重に考えるもの
次の設備は、商品と工事を切り離すと責任範囲が複雑になりやすくなります。
- システムキッチン
- ユニットバス
- トイレ
- 洗面化粧台
- 食器洗い乾燥機
- 給湯器・エコキュート
- エアコン
- 第一種換気設備
- 太陽光発電・蓄電池
- 分電盤・EV充電設備
- 窓・玄関ドア
- 造作建具
- 外壁材・屋根材
- 防水に関係する設備
水漏れ、結露、換気不足、電気容量、構造、防水などに影響する設備は、商品選定と施工を一体で管理したほうが安心です。
特に、高断熱・高気密住宅では、換気設備やエアコンを単なる家電として扱えません。
- 必要風量
- ダクト計画
- 気密処理
- 冷暖房負荷
- 室外機の設置位置
- ドレン排水
- 電源容量
まで住宅全体と一緒に設計する必要があります。
住宅会社は取付けを断れる?
断ることはあります。
住宅会社には、施主が購入したすべての商品を取り付けなければならないという義務はありません。
次のような場合は、施主支給を認めてもらえない可能性があります。
- 安全性を確認できない
- 国内規格への適合が分からない
- 施工説明書がない
- 必要部品が不明
- 中古品・展示処分品
- 海外製品
- 保証条件が確認できない
- 構造・防水・気密に影響する
- 指定施工店以外が施工すると保証対象外になる
- 工期に間に合う納品を保証できない
- 補助金や認定制度の対象外になる
住宅会社が断るのは、利益を取れないからとは限りません。取付後の安全と保証責任を負えないことが理由の場合もあります。
施主支給品の保証は誰がする?
施主支給では、一般的に保証が次のように分かれます。
| 不具合の原因 | 主な相談先 |
|---|---|
| 商品自体の初期不良 | 購入店・メーカー |
| 製品内部の故障 | 購入店・メーカー |
| 取付け方法の不良 | 取付業者 |
| 配管・配線の接続不良 | 施工した業者 |
| 配送中の破損 | 販売店・配送会社 |
| 現場保管中の破損 | 保管責任を負った者 |
| 品番・サイズの選定ミス | 選定・購入した施主 |
| 建物との適合確認ミス | 契約上の確認担当者 |
| 原因を特定できない不具合 | 責任争いになりやすい |
最も困るのは、故障原因が分からない場合です。
例えば、施主支給した食洗機から水漏れしたとします。
メーカーは、
商品に異常はありません。接続工事が原因です。
施工業者は、
接続に問題はありません。商品の不良です。
と言う可能性があります。
住宅会社から商品と施工をまとめて購入していれば、まず住宅会社へ連絡できます。しかし施主支給の場合、施主自身が販売店、メーカー、取付業者の間に入って原因を整理しなければならないことがあります。
メーカー保証があれば安心では?
メーカー保証は、一般的に商品そのものの故障を対象とします。
取付工事や建物側の不具合まで、すべてメーカーが保証するわけではありません。
例えば、メーカーの保証規定には、施工説明書に従わない取付けや、指定外の施工に起因する不具合を保証対象外とする内容があります。LIXILの浴室製品でも、取付けやシステムバス以外の工事に起因する不具合は免責事項として示されています。LIXIL「浴室製品の保証」
また、保証期間の開始日にも注意が必要です。
- 購入日から開始
- 納品日から開始
- 取付日から開始
- 引渡し日から開始
など、商品によって異なります。
家の完成より6カ月早く購入した場合、入居時にはメーカー保証が6カ月分減っている可能性があります。
保証書だけでなく、領収書、購入履歴、品番、製造番号、取付日、取付業者の記録も保存してください。
新築住宅の10年保証で直せる?
住宅設備の故障が、すべて新築住宅の10年保証で直せるわけではありません。
法律上の10年間の責任と住宅瑕疵担保責任保険の中心となるのは、
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
キッチン、トイレ、エアコン、照明などの商品故障が、自動的にこの10年保証の対象になるわけではありません。
住宅会社が独自に提供する住宅設備10年保証についても、施主支給品は対象外となることがあります。
契約前に、
施主支給品は、御社の設備保証と定期点検の対象になりますか。
と確認してください。
補助金の対象外になることもある
補助制度によっては、施主支給や「商品購入と取付工事を別契約にする方式」が対象外になる場合があります。
例えば「みらいエコ住宅2026事業」のリフォームでは、住宅所有者が設備を購入して取付けを住宅事業者へ依頼する、いわゆる施主支給・材工分離工事は補助対象外とされています。みらいエコ住宅2026事業「リフォーム対象要件」
制度ごとに要件は異なりますが、補助金10万円を受けるための設備をネットで5万円安く買い、結果として補助対象外になれば、かえって5万円損をします。
長期優良住宅、ZEH、各種認定、設備保証についても、施主支給前に確認が必要です。
ネットで買う前に確認する12項目
商品を注文する前に、住宅会社へ次の内容を書面で確認してください。
- 施主支給を認めてもらえるか
- 品番・サイズが建物に適合するか
- 必要なオプション部品は何か
- 下地補強が必要か
- 電源・配線・給排水工事が必要か
- 搬入日と搬入場所はいつか
- 荷下ろしを誰が行うか
- 現場で保管してもらえるか
- 取付費と管理費はいくらか
- 商品不足時の再訪問費はいくらか
- 商品と施工の保証範囲はどう分かれるか
- 補助金・認定・住宅設備保証へ影響しないか
「施主支給できますか?」だけでは不十分です。
次のように質問してください。
この商品を施主支給した場合、送料・荷受け・保管・取付け・接続部材・管理費まで含めた追加総額はいくらですか。故障した場合、商品と施工をそれぞれ誰が保証しますか。
商品が遅れた場合の工期はどうなる?
施主支給品が予定日に届かなければ、取付業者が作業できません。
その結果、次の費用が発生する可能性があります。
- 職人の再手配費
- 再訪問費
- 工程変更費
- 仮設設備費
- 完成検査の延期
- 引渡し延期
- 住宅ローンや家賃の追加負担
商品が届かないために引渡しが遅れても、その原因が施主支給品にあれば、住宅会社へ遅延責任を求めることは難しくなる可能性があります。
契約書には、次の内容を入れておく必要があります。
- 納品期限
- 納品が遅れた場合の対応
- 商品不足時の追加費用
- 工期が遅れた場合の責任
- 代替商品への変更権限
施主支給で失敗しない判断基準
施主支給に向いているのは、次の条件を満たす商品です。
- 本当に総額が安い
- 建物性能に影響しない
- 取付けが比較的簡単
- 故障時に取り外しやすい
- 国内で修理できる
- 保証窓口が明確
- 納品時期を確実に管理できる
- 住宅会社が事前に承認している
反対に、水・電気・構造・防水・気密・換気に関係するものは、数万円の差だけで施主支給を決めないほうが安全です。
結論
施主支給が安いかどうかは、商品価格では判断できません。
比較するべきなのは、
- 商品代
- 送料
- 荷下ろし・搬入費
- 保管・検品費
- 取付費
- 部材・接続費
- 現場管理費
- 保証
- 故障時の出張費
- 工期遅延のリスク
まで含めた総額です。
正直な住宅会社は、施主支給を一律に拒否するのでも、何でも受け入れるのでもなく、住宅会社から購入した場合と施主支給した場合の完成総額・保証範囲を並べて説明します。
安く買えたかより、壊れたときに誰が最後まで直すのか。その答えまで決まって初めて、本当に安い施主支給です。










