間取りを何回変更すると、設計料が発生する?
A.「3回まで無料」「4回目から有料」といった業界共通のルールはありません。住宅会社ごとに違い、変更回数よりも「どの段階で、どこを変更したか」によって設計料が決まります。
同じ1回の変更でも、
- 収納棚の位置を変える
- 階段と水回りをすべて移動する
- 建物を1坪大きくする
- 確認申請後に窓や耐力壁を動かす
では、設計者の作業量がまったく違います。
特に、構造計算や確認申請が終わった後の変更は、図面を直すだけでは済みません。再計算・再申請・再見積もりが必要になり、数十万円の費用が発生することがあります。
「変更1回」の数え方にも決まりはない
間取り変更の回数には、統一された数え方もありません。
例えば、1回の打ち合わせで次の変更を頼んだとします。
- キッチンの向きを変える
- 洗面所を広げる
- 収納を追加する
- 窓を移動する
- ドアの位置を変える
住宅会社によっては、これを「変更1回」と数えます。しかし、会社によっては変更箇所ごとに計算したり、大幅変更として別料金にしたりすることもあります。
反対に、1カ所しか変えていなくても、毎週少しずつ依頼すれば、図面の修正回数は増えていきます。
したがって、契約前に確認するべきなのは、単純な無料回数ではありません。
「何をもって変更1回と数えるのか」まで確認する必要があります。
設計料が発生しやすいタイミング
| 変更する時期 | 主な作業 | 追加費用の可能性 |
|---|---|---|
| 初回相談・概算提案 | ラフプランの作成 | 無料または提案料 |
| 契約前の打ち合わせ | 平面図の修正 | 規定回数まで無料の場合が多い |
| 契約後・間取り確定前 | 図面・見積もりの修正 | 契約内容による |
| 間取り確定後 | 平面図・立面図・設備図などの修正 | 発生しやすい |
| 構造計算後 | 耐力壁・梁・基礎などの再計算 | 高くなりやすい |
| 省エネ計算後 | 断熱・窓・設備の再計算 | 内容により発生 |
| 確認申請後 | 計画変更・行政手続き | 発生する可能性が高い |
| 資材発注後・着工後 | 再設計・発注取消し・やり直し | 非常に高くなりやすい |
国土交通省も、建築士の設計業務について報酬算定の基準を定めていますが、「間取り変更は何回まで無料」という基準はありません。無料範囲や追加報酬は、各社の契約条件によって決まります。国土交通省「建築士事務所の業務報酬基準」
変更内容別の追加費用イメージ
次の金額は一例です。住宅会社、設計事務所、変更範囲によって異なります。
| 変更内容 | 費用の目安例 |
|---|---|
| 収納や室内ドアなどの軽微な図面修正 | 1万~3万円 |
| 複数の部屋にまたがる間取り変更 | 3万~10万円 |
| 階段・建物形状・屋根などの大幅変更 | 10万~30万円以上 |
| 構造計算のやり直し | 5万~20万円以上 |
| 省エネ計算・認定申請の変更 | 3万~15万円以上 |
| 確認申請後の計画変更手続き | 5万~20万円以上 |
| 発注済み資材の取消し・現場のやり直し | 数十万~100万円以上の場合もある |
ここで注意したいのが、設計料と建築工事の増額は別物だということです。
「間取り変更の設計料は無料」と言われても、床面積が増えたり、窓や設備が追加されたりすれば、工事費は当然上がります。
「何回でも変更無料」なら安心なのか?
必ずしもそうとは限りません。
設計者が図面を修正する以上、人件費は発生しています。「無料」という言葉は、費用が存在しないという意味ではなく、最初から建物価格に含まれている可能性があります。
また、次のような条件が付いていることもあります。
- 契約前だけ無料
- 簡易的な平面図だけ無料
- 構造計算前まで無料
- 延床面積を変えなければ無料
- 申請や積算のやり直しは別料金
- 契約後は変更1回ごとに有料
「何回でも無料」という言葉だけで判断せず、無料になる図面と作業の範囲を確認しましょう。
30坪の家で変更を繰り返したケース
建物価格2,200万円の住宅で、間取り確定後に次の変更をしたとします。
| 変更 | 発生する可能性がある費用 |
|---|---|
| 寝室とウォークインクローゼットの変更 | 3万円 |
| 階段と耐力壁の移動・構造再計算 | 15万円 |
| 建物を1坪拡大 | 設計等8万円+工事費70万円 |
| 確認申請後に窓と屋根を変更 | 20万円 |
| 合計 | 約116万円 |
このケースでは、間取り変更は4回です。
しかし、「4回変更したから116万円かかった」のではありません。構造計算後に階段や耐力壁を動かし、確認申請後に窓や屋根を変え、床面積も増やしたから高くなったのです。
つまり、変更回数より変更内容と時期のほうが重要です。
確認申請後の変更は、図面修正だけでは終わらない
確認申請後に間取りや窓などを変更すると、変更後も建築基準法に適合しているか、もう一度確認しなければなりません。
変更内容によっては軽微な変更で処理できる場合もありますが、計画変更の確認申請が必要になる場合もあります。国土交通省「省エネ・構造関係のよくあるご質問」
計画変更になると、次の費用が考えられます。
- 設計図面の修正費
- 構造計算の再計算費
- 省エネ計算の修正費
- 確認申請書類の作成費
- 審査機関へ支払う手数料
- 工期が延びた場合の関連費用
「窓を少し動かすだけ」と思っても、その窓の横に耐力壁があれば、構造計画全体に影響する可能性があります。
契約前に確認する10項目
住宅会社には、次の内容を書面で確認してください。
- 無料で作成してもらえる間取りは何案までか
- 修正は何回まで設計料に含まれるか
- 「変更1回」をどう数えるのか
- どの時点で間取り確定となるのか
- 確定後の図面修正料はいくらか
- 大幅変更と軽微な変更の区分は何か
- 構造計算のやり直しはいくらか
- 省エネ計算や認定申請の変更費はいくらか
- 確認申請後の計画変更費はいくらか
- 資材発注後のキャンセル料は誰が負担するか
特に重要なのは、間取り確定日です。
「契約した日」「構造計算を始めた日」「確認申請を出した日」など、住宅会社によって確定のタイミングが違います。
営業担当者にはこう質問する
「間取り変更は何回まで無料ですか?」だけでは不十分です。
次のように聞いてください。
どの時点まで、どの範囲の変更が契約金額に含まれていますか。構造計算後と確認申請後に変更した場合の、設計料・再計算費・申請費も教えてください。
さらに、追加費用が発生する場合は、
作業を始める前に、追加金額を書面で提示してください。
と伝えておきましょう。
金額を知らされないまま図面修正が進むと、後から「設計変更費一式20万円」などと請求され、内容を確認しにくくなります。
変更費用を抑える方法
間取り変更をゼロにする必要はありません。大切なのは、高額になりやすい段階まで変更を先送りしないことです。
- 家具と家電の寸法を早めに決める
- 収納する物を部屋ごとに書き出す
- コンセントやスイッチも間取りと同時に考える
- 家族の要望をまとめてから打ち合わせに出す
- 変更事項を小出しにせず、一度にまとめる
- 構造計算を始める前に最終確認する
- 確認申請前に窓・階段・水回りを確定する
- 変更ごとに最新の総額を出してもらう
間取りだけを見て判断せず、外観、窓、家具、照明、設備、収納まで一緒に確認すると、後からの変更を減らせます。
結論
設計料は「4回目から発生する」と決まっているわけではありません。
同じ1回でも、契約前の収納変更なら無料、確認申請後の階段変更なら数十万円ということがあります。
正直な住宅会社は、「何回でも無料」とだけ言うのではなく、
- 無料になる範囲
- 間取りの確定時期
- 確定後の設計料
- 構造再計算費
- 申請変更費
- 工事金額の増減
を契約前に示します。
間取り変更で見るべきなのは回数ではありません。変更した時期と、やり直す作業の範囲です。










