リバースモーゲージの死亡時売却で、家が安くしか売れなかった場合、相続人に返済義務はありますか?
質問
リバースモーゲージ型住宅ローンを利用して建て替える予定です。契約者の死亡後に家を売却して元金を返済すると聞きましたが、想定より安くしか売れず、ローンが残った場合は、子どもが不足分を返済するのでしょうか?
回答
結論から言えば、相続人が不足分を返済するかどうかは、「ノンリコース型」と「リコース型」のどちらを契約したかで決まります。
- ノンリコース型:売却しても残った債務は、原則として相続人へ請求されない
- リコース型:売却後の不足分を相続人が返済する必要がある
「リバースモーゲージなら、売却後の借金はすべてなくなる」とは限りません。契約前に必ず契約方式を確認してください。
具体的にいくら残るのか
例えば、契約者死亡時の状況を次のように仮定します。
- ローン残高:1,500万円
- 住宅の売却価格:1,000万円
- 仲介・登記・家財処分など:100万円
- 返済へ充当できる金額:900万円
- 不足する残債:600万円
この600万円の扱いが、契約方式によって変わります。
ノンリコース型の場合
担保となっている土地・建物を適正な手続きで売却しても残った債務について、相続人は原則として返済する必要がありません。
リコース型の場合
売却後に残った600万円も相続債務となり、相続人へ返済を求められる可能性があります。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」でも、ノンリコース型なら、担保物件の売却代金が債務へ届かなくても、残債務の返済は不要と明記されています。住宅金融支援機構「契約者が亡くなった場合の返済」
ノンリコース型でも「完全に負担ゼロ」とは限らない
ノンリコース型なら、売却後の残債を返済しなくてよいのが大きな利点です。
ただし、次の費用まで金融機関がすべて負担してくれるとは限りません。
- 相続登記費用
- 不動産仲介手数料
- 抵当権抹消などの登記費用
- 測量費
- 家財処分費
- 遺品整理費
- 引っ越し費用
- 売却までの固定資産税
- 建物や庭の管理費
- 必要な補修・解体費
同居する配偶者や子どもがいれば、売却前に新しい住まいへ移る費用も必要です。
「残債を請求されない」ことと、「死亡後の手続きにお金がかからない」ことは別です。
債務免除益へ課税される可能性がある
見落としやすいのが税金です。
住宅金融支援機構は、ノンリコース型で返済不要となった残債務について、債務免除益とみなされ、一時所得が発生し、所得税等が課税される可能性があると案内しています。住宅金融支援機構「リ・バース60」
したがって、ノンリコース型だから、相続人に一切の金銭負担が生じないとは断言できません。
実際の課税関係は、契約内容、相続関係、売却額などによって変わるため、税務署または税理士への確認が必要です。
担保評価額は将来の売却価格ではない
金融機関が融資時に行う担保評価は、将来その価格で売れることを保証するものではありません。
死亡時の売却価格は、次の条件で変わります。
- 土地相場の下落
- 地域人口の減少
- 建物の劣化
- 維持管理の状態
- 接道や擁壁の問題
- ハザード区域への指定
- 周辺の中古住宅需要
- 売却時の解体費
- 相続人が早期売却を希望するか
急いで売却すれば、相場より安い価格で処分せざるを得ない場合もあります。
借りたときの担保評価額と、20年後・30年後に現金化できる価格は同じではありません。
山梨県では建物より土地の再販性が重要
山梨県では、建物に高額な費用をかけても、その費用が中古住宅価格へ反映されるとは限りません。
特に次のような土地は、売却価格が下がったり、買い手が長期間見つからなかったりする可能性があります。
- 市街地から離れている
- 市街化調整区域にある
- 接道条件が悪い
- 旗竿地や高低差のある敷地
- 古い擁壁がある
- 浸水・土砂災害リスクがある
- 周辺に空き家が多い
- 生活に車が必須
- 解体費や造成費が高い
そのため、山梨県では、リバースモーゲージを申し込んでも再販性を理由に断られたり、希望額より融資額が大幅に少なくなったりするケースがあります。
長期優良住宅や高性能住宅として建てたからといって、将来必ず高く売れるわけではありません。
売却価格が残債を上回った場合
反対に、住宅が高く売れる場合もあります。
例えば、残債1,000万円に対して、売却諸費用を差し引いた手取りが1,300万円なら、残った300万円は原則として相続財産になります。
ただし、売却価格が当初の取得価格を上回るなど一定の場合には、譲渡所得税等が発生する可能性があります。
「高く売れた分はすべて自由に使える」と決めつけず、売却前に税務確認を行います。
リコース型なら相続放棄で解決できるのか
リコース型で多額の不足債務が残る場合、相続放棄や限定承認を検討することがあります。
ただし、相続放棄をすると、原則として住宅ローンの債務だけでなく、預貯金、不動産など他の相続財産も受け継げません。
また、相続放棄や限定承認は、原則として相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。財産調査が間に合わない場合は、期間伸長を申し立てられることがあります。裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
相続財産を処分するなど、先に行った行為によって判断へ影響する可能性もあるため、金融機関、司法書士、弁護士へ早めに相談してください。
契約前に確認する8項目
- ノンリコース型かリコース型か
- 死亡時の元金残高はどの程度になるか
- 売却価格が残債を下回った場合の扱い
- 売却費用を誰が負担するか
- 債務免除益の課税可能性
- 相続人による任意売却の期限
- 売却できない場合、いつ競売へ移るのか
- 配偶者や同居家族の退去期限
本人だけで説明を受けず、配偶者と相続予定の子どもも同席します。
金融機関から、借入時点だけでなく、10年後、20年後、30年後の元金残高と、金利上昇時の利息負担を出してもらいましょう。
先に「本当に売れる家か」を確認する
リバースモーゲージを利用するなら、建築会社との契約前に、金融機関の担保評価と融資審査を受けます。
さらに、不動産会社にも次の点を確認すると現実的です。
- 現在の土地価格
- 周辺の成約事例
- 中古住宅として売れそうか
- 土地として売る場合の解体費
- 売却までにかかる期間
- 建物の適正な大きさと間取り
金融機関が融資することと、将来すぐ売れることは同じではありません。貸す側の評価だけでなく、実際に売る側の意見も必要です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、リバースモーゲージを「月々の支払いが安い住宅ローン」として勧めることはしません。
死亡時の残債、想定売却額、売却諸費用、金利上昇、配偶者の住まい、子どもの負担を比較します。山梨県では住宅の再販が難しい土地も多いため、担保評価と家族合意が整う前に建築契約を進めるべきではありません。
借りるなら、原則としてノンリコース型を優先して検討します。それでも、売却費用や税金まで含めて、本当に家族へ負担を残さないかを確認します。
「家を売れば返せる」は計画ではありません。いくらで売れ、費用を引いた後にいくら残り、不足分を誰が負担するのか。そこまで数字にして初めて、安全な資金計画になります。










