住宅ローン控除は、年金収入のみのシニアでもメリットがありますか?
Q
69歳です。年金だけで生活しています。建替えで住宅ローンを利用する予定ですが、年金収入だけでも住宅ローン控除を受けられるのでしょうか?
結論
年金収入だけでも、要件を満たせば住宅ローン控除を利用できます。年齢だけで対象外になる制度ではありません。
ただし、住宅ローン控除は補助金ではなく、納める所得税や住民税を減らす制度です。
そのため、年金から所得税・住民税をほとんど納めていない人は、年末ローン残高が多くても実際の減税額は少ない、またはゼロになる可能性があります。
「借入残高×0.7%」だけを見て、減税額を判断してはいけません。
控除可能額と、実際に戻る金額は違う
住宅ローン控除の基本的な計算は、年末ローン残高の0.7%です。
たとえば、年末残高が1,500万円なら、
1,500万円×0.7%=10万5,000円
が、その年の控除可能額になります。
しかし、実際の所得税が3万円しかなければ、まず所得税から控除できるのは3万円です。控除しきれない部分は、一定範囲で翌年度の住民税から控除される場合があります。
それでも控除しきれない金額が、現金で支給されたり翌年へ繰り越されたりするわけではありません。
| 年末残高 | 0.7%の計算額 | 実際の所得税・住民税 | 実際のメリット |
|---|---|---|---|
| 1,500万円 | 10万5,000円 | 合計10万円以上 | 最大10万5,000円程度 |
| 1,500万円 | 10万5,000円 | 合計5万円 | 最大5万円程度 |
| 1,500万円 | 10万5,000円 | ほぼ0円 | ほぼ0円 |
重要なのはローン残高ではなく、毎年いくら税金を納めているかです。
年金収入があっても所得税がゼロになる場合がある
公的年金収入からは、公的年金等控除、基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除、医療費控除などが差し引かれます。
その結果、課税される所得が少なければ、所得税が発生しないことがあります。
まず、公的年金等の源泉徴収票と住民税の課税通知書で、次の金額を確認します。
- 源泉徴収税額
- 所得税額
- 住民税の所得割額
- 社会保険料
- 配偶者控除などの所得控除
源泉徴収票の年金収入額だけでは、住宅ローン控除のメリットを判断できません。
2026年以降も住宅ローン減税は利用できる
2026年度の税制改正により、住宅ローン減税は2030年末までの入居へ延長されています。
2026年以降に新築住宅へ入居する場合も、一定の省エネ性能などを満たせば、年末残高の0.7%を所得税などから控除できます。国土交通省「2026年度住宅ローン減税」
デザインハウス甲府が標準とする長期優良住宅の場合、一般世帯では原則として、
- 借入限度額:4,500万円
- 控除率:0.7%
- 控除期間:13年間
となります。
ただし、シニアの建替えでは借入額が1,000万~2,000万円程度になることも多いため、4,500万円という限度額自体に大きな意味がないケースもあります。
また、年金世帯では、計算上の控除可能額より先に、納税額が上限になる可能性があります。
長期優良住宅にしても、減税を使い切れるとは限らない
長期優良住宅は、一般住宅より住宅ローン控除の借入限度額が高く設定されています。
しかし、年金収入のみで所得税・住民税が少ない人にとっては、限度額が2,000万円から4,500万円へ増えても、実際の減税額が増えない場合があります。
したがって、住宅ローン控除だけを目的に長期優良住宅を取得しても、シニア世代では大きなメリットにならないことがあります。
長期優良住宅を選ぶ場合は、
- 将来、本当に再販するのか
- 維持保全計画に沿った点検・修繕を実行できるか
- 認定申請費やメンテナンス費を回収できるか
まで考える必要があります。
減税額だけでなく、建築費と将来の維持費を含めて判断してください。
住宅ローン控除の主な要件
制度を利用するには、一般的に次の要件を満たす必要があります。
- 自分が所有し、実際に住む住宅である
- 新築・取得から一定期間内に入居する
- 住宅ローンの返済期間が原則10年以上ある
- 床面積などの要件を満たす
- 合計所得金額が2,000万円以下である
- 新築住宅は所定の省エネ性能を満たす
- 親族などからの取得ではない
- 借入金が住宅の建築・取得に使われている
2026年以降の新築では、性能区分によって借入限度額や対象期間が異なります。契約前に住宅会社と税理士へ確認してください。国土交通省「住宅ローン減税Q&A・2026年7月更新」
返済期間を10年未満にすると対象外になることがある
シニア世代では、「早く返したいから8年ローンにする」「退職金で繰上返済する」という計画もあります。
しかし、当初から返済期間が10年未満のローンは、原則として住宅ローン控除の対象になりません。
また、当初は10年以上でも、繰上返済によって返済期間が10年未満になると、その後は控除を受けられなくなる場合があります。
ただし、控除を残すためだけに利息を払い続ける必要はありません。
たとえば、
- 住宅ローン金利:2.0%
- 控除率:0.7%
なら、控除をすべて使えても金利負担の方が大きい可能性があります。さらに、控除を使い切れない年金世帯なら、繰上返済が有利になることもあります。
「減税が終わるまで返さない」ではなく、支払利息と実際の減税額を比較します。
リ・バース60は対象外になる可能性が高い
リ・バース60などのリバースモーゲージ型住宅ローンは、毎月は利息だけを支払い、元金を死亡時に一括返済する仕組みです。
一般的な住宅ローン控除は、10年以上にわたって分割返済する借入金などを対象とするため、死亡時一括返済型の商品は対象要件を満たさない可能性があります。
「住宅ローンという名前だから対象になる」と考えず、借入予定の金融機関から年末残高証明書が発行されるか、税務署・税理士へ確認してください。
親子で資金を出す場合は名義にも注意
親と子で建築費を負担する場合、住宅ローン控除を受けられるのは、原則として自分が負担するローンと、自分が所有する建物持分に対応する部分です。
たとえば、子どもがローンを全額借りているのに、建物を親名義にすれば、子どもが住宅ローン控除を受けられないだけでなく、子から親への贈与と判断される可能性があります。
- 誰が借りるか
- 誰が返済するか
- 誰がいくら自己資金を出すか
- 建物を何%ずつ所有するか
この4点を一致させることが基本です。
年金生活者は確定申告が必要
住宅ローン控除を初めて受ける年は、確定申告が必要です。
給与所得者は2年目以降、勤務先の年末調整で手続きできる場合がありますが、年金収入のみの人は年末調整がないため、基本的に確定申告で控除を受けます。
主な必要書類は次のとおりです。
- 住宅ローンの年末残高証明書
- 工事請負契約書
- 土地・建物の登記事項証明書
- 公的年金等の源泉徴収票
- 長期優良住宅などの認定書類
- 住宅性能を証明する書類
- 補助金や贈与に関する書類
手続き時点の必要書類は、税務署や税理士へ確認してください。
契約前に行う試算
住宅会社の説明で「13年間で最大○百万円お得」と言われても、その金額をそのまま信じてはいけません。
最低でも、次の3つを年ごとに試算します。
- 年末ローン残高×0.7%の控除可能額
- 年金から実際に納める所得税・住民税
- 住宅ローンの年間利息
たとえば控除可能額が年間10万円でも、実際の減税が3万円、支払利息が20万円なら、「住宅ローン控除があるから借りた方が得」とはいえません。
まとめ
年金収入だけでも住宅ローン控除を利用できます。しかし、シニア世代で本当に確認すべきなのは、計算上の最大控除額ではありません。
実際に納める税金がいくらあり、そのうち何円を取り戻せるかです。
デザインハウス甲府では、住宅ローン残高だけでなく、年金収入、所得税・住民税、支払利息、繰上返済まで含めて実際のメリットを確認します。
住宅ローン控除を受けるために借入額を増やしたり、返せるお金をあえて返さなかったりするのは本末転倒です。
減税で戻る金額より、銀行へ支払う利息が多ければ、それは節税ではありません。
シニアの建替えでは、「最大いくら控除できるか」ではなく、「利息を差し引いて、実際にいくら得なのか」で判断することが大切です。










