ベランダ・バルコニーをなくして「室内物干しスペース」にするメリットは?
質問
69歳です。建て替えを計画しています。今の家は2階のベランダへ洗濯物を干していますが、毎日の階段が大変です。新しい家では、ベランダをなくして室内物干しにしてもよいでしょうか?
回答
結論から言えば、洗濯物を干すためだけのベランダなら、シニアの建て替えでは無理につくる必要はありません。
おすすめは、洗濯機、室内物干し、収納を同じ場所か数歩以内にまとめる間取りです。
ただし、「高断熱・高気密住宅なら、どこへ干しても乾く」という説明は正しくありません。室内干しを成功させるには、換気だけでなく、空気の流れと除湿まで計画する必要があります。
ベランダをなくす最大のメリット
毎日の階段移動がなくなる
洗濯物は水分を含むため、洗う前より重くなります。重い洗濯かごを持って階段を上り下りする生活は、年齢とともに負担が大きくなります。
ベランダへ出る部分には段差ができることも多く、サンダルへの履き替え、強風、ぬれた床による転倒にも注意が必要です。
洗濯のためだけに毎日危険な移動を続けるより、1階で「洗う・干す・しまう」を完結させる方が現実的です。
防水メンテナンスを減らせる
建物へ組み込まれたバルコニーは、防水層、排水口、笠木、外壁との取り合いなど、雨漏りの原因になり得る部分が増えます。
定期的な清掃や防水状態の確認が必要で、劣化すれば補修費も発生します。落ち葉などで排水口が詰まると、雨水がたまる危険もあります。
使わないベランダをなくせば、建築費だけでなく、将来の点検箇所と雨漏りリスクも減らせます。
天候や花粉に左右されない
室内干しなら、突然の雨、強風、花粉、黄砂を気にする必要がありません。外出前に干し、帰宅時間を気にせず取り込めます。
洗濯物を外から見られにくいため、防犯面でも安心です。
高断熱・高気密だけでは洗濯物は乾かない
ここは住宅会社の説明で誤解が生まれやすい部分です。
高断熱・高気密住宅は室温を保ちやすい一方、洗濯物から出た水分を適切に排出しなければ、室内湿度は上がります。
室内干しを成功させるには、次の3つが必要です。
- 洗濯物の周囲へ空気を動かす
- 発生した水分を換気または除湿で取り除く
- 湿った空気を収納や居室へ滞留させない
24時間換気は家全体の空気を入れ替える設備であり、短時間で洗濯物を乾かす専用設備ではありません。サーキュレーター、除湿機、エアコンの除湿運転、衣類乾燥機などを組み合わせます。
国土交通省の省エネ住宅に関する資料でも、結露防止には断熱・気密・換気に加えて湿度管理が重要とされています。国土交通省「住宅の省エネルギー 設計と施工」
シニア夫婦なら1.5~2畳程度から検討
必ずしも3畳の独立したランドリールームが必要とは限りません。
夫婦2人なら、洗面脱衣室の一部を広げ、1.5~2畳程度の室内物干しスペースを兼用する方法もあります。専用室をつくると建築面積が増えるため、洗濯量と使い方に合わせて判断します。
確認したいのは、畳数より次の寸法です。
- 物干し金物の下に洗濯物が重ならず掛けられるか
- 洗濯物を掛けた状態でも人が通れるか
- 洗濯機の扉や引き出しと干した衣類が干渉しないか
- 除湿機を置く場所とコンセントがあるか
- 物干し竿を高くし過ぎていないか
天井近くへ物干し竿を付けると、肩が上がりにくくなったときに使えません。実際に使う人の身長と腕の上がる高さに合わせ、固定式、昇降式、着脱式を選びます。
「洗う・干す・しまう」を数歩にまとめる
使いやすい配置は、次の流れです。
洗面脱衣室・洗濯機→室内物干し→衣類収納→寝室
乾いた洗濯物をリビングまで運び、たたんでから各部屋へ戻す動線では、せっかく室内干しにしても家事負担が残ります。
下着や普段着はハンガーのまま収納する、タオル用の棚を物干しの近くに設けるなど、「たたむ作業を減らす」ことも有効です。
ただし、ファミリークローゼット内に直接干すと、衣類収納へ湿気が移る可能性があります。干す場所と収納の間には空気の流れをつくり、乾燥前の洗濯物を収納内へ入れないようにします。
ガス乾燥機やドラム式洗濯乾燥機という方法もある
洗濯物を干す作業自体を減らしたい場合は、衣類乾燥機も選択肢です。
タオルや下着は乾燥機、縮みやすい衣類だけ室内干しにすれば、大きなランドリールームが不要になることもあります。
一方で、導入費、電気・ガス代、フィルター掃除、排湿経路、将来の交換費用がかかります。乾燥機を置く場合は、低い姿勢で出し入れしなくて済む高さも確認してください。
外干しを残したい場合は1階へ
布団やシーツを日光に当てたい人まで、外干しを諦める必要はありません。
2階のベランダではなく、洗濯室から直接出られる1階の物干しスペースや、屋根のあるテラスを設ける方法があります。
- 室内から段差なく出られる
- 道路や隣家から見えにくい
- 雨が吹き込みにくい
- 寝室や収納へ戻しやすい
- 防犯上、外から侵入されにくい
この条件を満たせば、室内干しと外干しを無理なく使い分けられます。
ベランダを残した方がよいケース
次のような使い道が明確なら、ベランダを設ける価値があります。
- 2階で生活し、同じ階に洗濯機がある
- 日常的に布団や大量の洗濯物を干す
- 眺望を楽しむ場所として使う
- 敷地上、1階に外干し場所を確保できない
反対に、「戸建てにはベランダがあるものだから」「将来使うかもしれない」という理由だけなら、費用をかけてつくる必要はありません。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、ベランダをなくすこと自体を目的にしません。
現在の洗濯量、乾燥機の使用、外干しの希望、収納方法、将来の身体負担を確認し、洗濯機から収納までの歩数を減らします。
断熱等級6・UA値0.46以下、全棟気密測定によるC値0.7以下、第一種熱交換換気を基本としますが、「高性能住宅だから自然に乾く」とは説明しません。物干し位置、換気経路、除湿機や乾燥機まで含めて計画します。
使わないベランダへ建築費と修繕費をかけるより、毎日使う洗濯動線へお金を使う。その方が、老後の暮らしは確実に楽になります。










