自宅を建替える資金を捻出するために、保有している「投資信託や株式」を解約すべきかどうかの判断基準
こんなご相談をいただきました
70歳で自宅の建て替えを計画しています。預金だけでは足りないため、保有している投資信託や株式を売却しようと考えています。老後の運用資産を建築費に使ってもよいでしょうか?
A. 建築費が必要だからといって、投資信託や株式をすべて解約するのは危険です。「建築費に使う資産」「老後の生活を守る現金」「長期運用を続ける資産」の3つに分けて判断します。
建築費が決まったら相場から切り離す
建築契約後は、着工金、中間金、引渡し金など、支払時期が決まります。
1年以内に支払う予定の建築費を株式や投資信託のまま保有すると、支払直前の株価下落によって資金が不足する可能性があります。
例えば、建築費に使う予定の1,000万円を投資信託で保有し続け、支払い前に20%下落すると、800万円になってしまいます。
「もう少し上がってから売ろう」と待つことは、建築資金で投資を続けているのと同じです。使用時期が決まった資金は、契約前から段階的に現金化する方が安全です。
全額を建築費へ入れてはいけない
シニアの建て替えでは、完成後の預金残高が重要です。
建て替え後も、次の支出が続きます。
- 毎月の生活費
- 固定資産税と火災・地震保険
- 医療費や介護費
- 自動車の購入・維持費
- 家電製品の買替え
- 子どもや孫への支援
- 住宅の修繕費
- 施設入居の初期費用
「ローンを組みたくないから」と投資資産をすべて売却し、現金を建築費へ投入すると、完成後に病気や介護が発生したとき、再び家を担保にして借りることになりかねません。
最低残高を一律に決めるのではなく、95歳程度までのキャッシュフロー表を作り、医療・介護の予備費を別枠で残します。
課税口座は売却代金と手取り額が違う
特定口座や一般口座で保有している上場株式・投資信託に利益が出ている場合、売却益には原則として20.315%の税金がかかります。国税庁「株式等を譲渡したときの課税」
例えば、次の投資信託を売却するとします。
- 売却価格:2,000万円
- 取得価格:1,200万円
- 売却益:800万円
- 税金の概算:約162万円
- 税引後の概算:約1,838万円
建築資金として2,000万円使えるわけではありません。
証券会社の画面に表示されている評価額ではなく、取得価格、含み益、税金、手数料を確認した後の手取り額で資金計画を作ります。
含み損がある資産も確認する
課税口座で含み損がある株式や投資信託を売却した場合、一定の要件を満たせば、同じ年の上場株式等の譲渡益や配当などと損益通算できる場合があります。
控除しきれない損失は、確定申告などの要件を満たせば、翌年以後3年間繰り越せます。国税庁「上場株式等の譲渡損失の損益通算・繰越控除」
複数の商品を保有している場合は、含み益の大きい商品だけを一度に売るのではなく、含み損のある商品との組み合わせも税理士や証券会社へ確認しましょう。
NISA口座を売却する場合
NISA口座内の投資信託や株式は、売却益が非課税です。そのため、1,000万円を売却すれば、原則として税金を差し引かれずに建築資金へ使えます。
ただし、非課税で運用を続けられる資産を手放すことにもなります。
2024年以降のNISAでは、売却した商品の取得価格相当額の非課税保有限度額が翌年以降に再利用できます。ただし、売却価格ではなく簿価で復活し、その年の年間投資枠が増えるわけではありません。金融庁「NISAのよくある質問」
また、NISA口座で生じた損失は、課税口座の利益と損益通算できません。
どの資産から売るべきか
一般的には、次の順序で検討します。
- 余裕資金として保有している普通預金
- 満期が近い定期預金
- リスクが高く、今後も保有する理由が弱い商品
- 課税口座の含み損または含み益が小さい商品
- 課税口座の含み益が大きい商品
- 長期保有を予定していたNISA資産
ただし、NISAを残すために高金利のローンを増やすのが有利とは限りません。
投資の将来収益は不確実ですが、ローンの利息と手数料は確実に発生します。「運用利回りの方が高いはず」という前提だけで借入額を増やすのは危険です。
一括売却と分割売却
建て替えまで時間がある場合は、一度にすべて売却する方法だけでなく、数回に分けて現金化する方法があります。
例えば、1,200万円を建築費へ使うなら、契約時、着工前、上棟前などに分けて400万円ずつ現金化します。
分割売却なら価格変動の影響を分散できますが、支払直前まで売却を先延ばしにしてはいけません。少なくとも必要な支払額は、支払日の数か月前までに現金で確保しておきます。
判断に必要な3つの金額
売却前に、次の3つを計算します。
- 建て替えに本当に必要な総額
- 売却後、税引き後に使える金額
- 建て替え後に残る金融資産
建物本体価格だけでなく、解体、仮住まい、往復の引越し、登記、外構、家具・家電まで含めます。
希望総額が2,700万円でも、老後資金を守るために建築規模を見直し、2,200万円へ抑えられれば、投資資産を500万円多く残せます。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社は「資産があるなら現金で払えます」と言います。しかし、その資産は建築会社のために貯めたお金ではなく、老後の生活を守るためのお金です。
デザインハウス甲府では、投資資産の評価額をそのまま建築予算へ入れません。税引後の手取り額、完成後の現金残高、95歳までの生活費を確認し、必要なら住宅面積や設備を調整します。
建てられる金額と、使ってよい金額は違います。家を完成させることより、完成後もお金の不安なく暮らせることを優先すべきです。










