建替えて数年で施設へ入ったら、経済的に大きな損失になる?
結論|数年で全員が退去すれば経済的損失は出やすくなります
70代で2,000万~3,000万円をかけて建替え、わずか3~5年で夫婦とも施設へ入ることになれば、経済的には不利になりやすいといえます。
新築時にかけた建築費が、そのまま売却価格になるわけではないからです。
ただし、その数年間を寒さ、地震、段差、転倒の不安なく暮らせた価値まで、すべて無駄だったとはいえません。
大切なのは、施設へ入る可能性を無視して建てることではなく、入居後も売却、賃貸、家族の居住へ切り替えられる「出口のある家」にしておくことです。
建築費と売却価格は同じではない
例えば、建替えに2,500万円かけたとしても、5年後に2,500万円で建物を売れるとは限りません。
中古住宅の価格は、次の条件で決まります。
- 土地の所在地
- 道路・接道条件
- 周辺の取引価格
- 買物・病院・交通の利便性
- 建物の広さと間取り
- 駐車台数
- 築年数と維持状態
- 地域の購入希望者数
高性能住宅や長期優良住宅であっても、建築費全額が売却価格へ反映される保証はありません。
山梨県では、建物が新しくても、郊外、市街化調整区域、接道条件の悪い土地、広過ぎる土地などでは、買い手が限られることがあります。
「5年住んだから5分の1を回収できた」とは考えない
住宅は、住んだ年数に応じて単純に建築費を回収する商品ではありません。
2,500万円の家へ5年間住んだから、500万円分ずつ価値を使ったという計算にはなりません。
実際には、次の費用も発生します。
- 解体
- 仮住まい
- 往復2回の引越し
- 外構
- 登記
- 住宅ローン利息
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 売却時の仲介・登記などの費用
短期間で退去する可能性が高い場合は、建替え、必要最小限の改修、住替えの3案を総額で比較すべきです。
施設へ入った後の5つの選択肢
1.配偶者が住み続ける
夫婦の一方だけが施設へ入る場合、もう一方が自宅で生活を続けることがあります。
この場合、すぐに売却する必要はありません。
ただし、一人分の年金収入で、住宅ローン、固定資産税、光熱費、修繕費、施設費を同時に負担できるか確認します。
2.子どもが住む
子どもが住む予定なら、売却せず活用できます。
しかし、「将来住むかもしれない」は計画とはいえません。勤務先、配偶者、子どもの学校、自宅の有無によって、実際には住めないケースが多くあります。
建替え前に、子どもへ明確に確認すべきです。
3.売却する
売却できれば、施設費や老後資金へ充てられます。
ただし、住宅ローンが残っている場合は、原則として売却代金などでローンを完済し、抵当権を外す必要があります。
売却査定額よりローン残高が多い場合は、不足額を預貯金から支払わなければ売却できない可能性があります。
4.賃貸する
賃貸にすれば家賃収入を得られる可能性があります。
しかし、家賃がそのまま利益になるわけではありません。
- 入居者募集
- 管理委託料
- 修繕
- 固定資産税
- 火災保険
- 空室期間
- 退去時の原状回復
- 所得税の申告
また、山梨では戸建賃貸の需要が地域によって大きく異なります。建替え前に、想定家賃ではなく、地元不動産会社から実際に貸せる家賃と入居需要を確認します。
5.空き家として維持する
売るか貸すかを決められず、空き家にする方法です。
しかし、空き家でも固定資産税、保険、庭木、換気、通水、修繕、防犯などの管理が必要です。
誰も管理しなければ、湿気、害虫、雨漏りによって建物は急速に傷みます。
「とりあえず空き家」が最も費用と手間を残す選択になることもあります。
認知症になると簡単に売却できない
家が本人名義の場合、本人の判断能力が低下すると、家族が代わりに自由に売却できるとは限りません。
施設費を用意するために家を売りたくても、契約意思を確認できなければ、成年後見制度などの手続きが必要になる場合があります。
家族信託、任意後見、遺言、代理権などには、それぞれ条件と限界があります。
建替え時点で、土地・建物の名義と、判断能力が低下した場合に誰が管理・処分するのかを、司法書士などへ相談しておくことが重要です。
短期退去へ備えた家のつくり方
数年後に売却・賃貸する可能性があるなら、特殊過ぎる家を避けます。
- 22~24坪程度のコンパクトな平屋
- 一般家庭が使いやすい2LDK・3LDK
- 駐車場2台
- 段差の少ない間取り
- シンプルな外観と屋根
- 一般流通品で交換できる設備
- 過剰な造作家具をつくらない
- 維持管理しやすい外壁・屋根
- 耐震等級3を許容応力度計算で確認
- 断熱等性能等級6と気密測定
ただし、高性能だから高値で売れるとは限りません。売却では、建物性能以上に立地と再販需要が影響する地域もあります。
「良い家を建てれば必ず売れる」という前提で資金計画を立てないことが大切です。
建替え前に不動産査定を取る
出口を考えるなら、家を建てる前に現在の土地の査定を取ります。
不動産会社へ確認する内容は次のとおりです。
- 更地ならいくらで売れるか
- 新しい平屋付きなら、いくら程度で売れそうか
- 賃貸なら月額いくらか
- どの広さ・間取りに需要があるか
- 売却まで何か月程度かかりそうか
- 土地を分割した方が売りやすいか
住宅会社の「資産価値が残ります」という説明だけでなく、実際に地域で売買・賃貸を行う不動産会社の査定を確認します。
建替えを慎重に考えた方がよいケース
次の項目が複数当てはまる場合は、大規模な建替えを急ぐべきではありません。
- 5~10年以内の施設入居を具体的に考えている
- 夫婦とも通院や介護が必要
- 子どもが家を引き継がない
- 土地の再販性が低い
- 建替え後の預貯金が少ない
- 施設費を家の売却代金に頼る
- 住宅ローンを長期間残す
- 本人が資産管理へ不安を感じている
この場合は、小規模改修、断熱・耐震リフォーム、利便性のよい場所への住替え、賃貸住宅も比較します。
「最後の家だから新築」という感情だけで決めると、数年後に家族へ処分問題を残す可能性があります。
デザインハウス甲府の考え方
建替えて数年後に施設へ入る可能性は、誰にも否定できません。
そのため私たちは、「何年住めば元が取れるか」ではなく、次の3つを確認します。
- 建替え後も施設費と老後資金を残せるか
- 夫婦の一方が施設へ入っても家計を維持できるか
- 誰も住まなくなった家を売る・貸す・引き継ぐ方法があるか
建替える場合も、夫婦2人に必要な面積へ絞り、売却や賃貸でも使いにくくならない間取りにします。
建替えは、長く住めれば成功、短ければ失敗という単純な話ではありません。
ただし、出口を決めず、老後資金を使い切って大きな家を建てることは明確に危険です。数年で退去しても家族が困らないところまで計画して、初めてシニアの建替えといえます。










