シニアのキッチン天板は何cmが使いやすい?身長だけで決めない選び方
結論|「身長÷2+5cm」は目安であり、最終決定ではありません
キッチンのワークトップの高さは、一般的に次の式が目安とされています。
身長÷2+5cm
しかし、シニア世代では、身長だけで決めると失敗する可能性があります。
腰や背中の曲がり、腕の上げやすさ、普段の姿勢、主に使う人、調理内容まで確認する必要があります。
最も確実なのは、ショールームで靴を脱いだ状態に近づけ、包丁、鍋、シンクの動作を実際に試すことです。
身長別の高さの目安
計算式へ当てはめると、次のようになります。
| 身長 | 天板高さの目安 |
|---|---|
| 150cm | 80cm |
| 155cm | 82.5cm |
| 160cm | 85cm |
| 165cm | 87.5cm |
| 170cm | 90cm |
多くのシステムキッチンでは、80cm・85cm・90cmなどから選びます。
ただし、身長160cmだから必ず85cmが正解とは限りません。同じ身長でも、腕の長さ、姿勢、腰痛の有無によって使いやすい高さは変わります。
低過ぎると腰へ負担がかかる
天板が低いと、調理中に前かがみになります。
特に負担が大きいのは、次の作業です。
- 野菜を切る
- 食器を洗う
- シンクの底を掃除する
- 長時間下ごしらえをする
若い頃は問題がなくても、70代・80代になると、少しの前傾姿勢が腰痛や疲労の原因になります。
現在使っているキッチンで腰が痛くなる場合は、「年齢のせい」と決めつけず、天板が低過ぎないかを確認してください。
高過ぎると肩と腕が疲れる
天板が高過ぎると、肩や肘を上げた状態で調理することになります。
特に鍋やフライパンは、天板より上に持ち手や食材がくるため、さらに高く感じます。
- 肩が上がる
- 包丁へ力を入れにくい
- 鍋の中を確認しにくい
- 重い鍋を移動しにくい
このような状態なら、高過ぎる可能性があります。
腰を守るために高くし過ぎると、今度は肩や腕へ負担が移ります。
シンクとコンロでは使いやすい高さが違う
同じキッチンでも、作業によって理想的な高さは異なります。
シンク
シンクの底は天板より低いため、洗い物では前かがみになりやすくなります。シンク側は、やや高めの方が腰の負担を抑えやすい傾向があります。
調理台
包丁を使う場合は、肘を軽く曲げた状態で、肩へ力が入らない高さが適しています。
厚いまな板を使用すると、作業面は天板より2~3cm高くなるため、普段使うまな板の厚さも考慮します。
コンロ
鍋やフライパンの底は天板より高くなります。天板が高過ぎると、鍋の中が見えにくくなります。
IHは天板とほぼ同じ高さですが、ガスコンロでは五徳の分だけ鍋が高くなります。
夫婦の身長差がある場合
夫婦でキッチンを使う場合、全員に完全に合う高さはありません。
基本的には、次の順序で決めます。
- 最も長時間調理する人
- 腰や肩に不安がある人
- 将来もキッチンを使い続ける人
身長差が大きい場合は、主に使う人へ合わせ、もう一人はまな板の厚さなどで調整します。
シニア住宅では、床へ厚い台や不安定なマットを置いて高さを調整する方法は、つまずきの原因になるためおすすめできません。
ショールームでは靴の高さに注意
ショールームでは、靴を履いたままキッチンを試すことがあります。
かかとが3cmある靴で85cmのキッチンを試すと、自宅で靴を脱いだときには、実質的に88cm程度の感覚になります。
「ショールームではちょうどよかったのに、自宅では高かった」という失敗を防ぐため、次の点を確認します。
- 自宅では裸足・靴下・スリッパのどれか
- ショールームで履いている靴の高さ
- 完成後の床から天板までの実寸
- キッチンマットを使用するか
可能なら、靴を脱ぐか、自宅と同じ高さになるよう調整して試します。
5分見るのではなく、実際の動作をする
展示されたキッチンの前に立つだけでは判断できません。
最低でも次の動作を行います。
- まな板の上で包丁を動かす
- シンクの底へ手を伸ばす
- 鍋を持ち上げる
- フライパンの中をのぞく
- 引出しを開閉する
- 食器洗い乾燥機へ食器を入れる
- 10分程度立ち続ける
そのとき、腰が曲がる、肩が上がる、肘が窮屈になる場合は、高さを見直します。
将来の身長低下を見込んで低くするべき?
高齢になると身長が低くなることがありますが、「将来縮むかもしれない」という理由だけで、現在より低いキッチンを選ぶのはおすすめしません。
天板が低いと前かがみになり、現在の腰へ負担がかかります。
将来の変化を考えるなら、低くすることより次の対策が有効です。
- シンク前で座れる場所を設ける
- 軽い鍋や調理器具を使う
- 重い物を腰から肩の高さへ収納する
- 引出し収納を中心にする
- 食器洗い乾燥機を採用する
- コンセントを使いやすい位置へ設ける
車椅子利用を想定する場合は別設計
将来、車椅子に座ったまま調理する可能性が高い場合、一般的な高さのキッチンでは使いにくくなります。
単に天板を低くするのではなく、シンクや調理台の下へ膝が入る空間、給排水管の位置、火傷防止、収納方法まで設計する必要があります。
将来対応を希望する場合は、キッチンを発注する前に伝えてください。完成後に変更すると、大がかりな工事になる可能性があります。
高さ以外に確認したいシニア向け仕様
キッチンの使いやすさは、天板高さだけでは決まりません。
- 引出しを軽く開閉できる
- 重い物を低過ぎる場所へ置かない
- 食器洗い乾燥機へかがまず入れられる
- IHやコンロの消し忘れ対策がある
- 水栓を弱い力で操作できる
- 吊戸棚へ無理に手を伸ばさない
- 冷蔵庫からシンク・調理台までが近い
- 床が滑りにくい
特に吊戸棚は、収納量より手が届くかを優先します。高い場所へ収納を増やしても、脚立が必要になればシニア住宅として安全とはいえません。
デザインハウス甲府の考え方
キッチンの高さを「身長÷2+5cm」だけで決めるのは、住宅会社側の確認不足です。
私たちは、主に使う人の身長、肘の高さ、姿勢、腰・肩の状態、まな板の厚さ、IHかガスか、普段の履物まで確認します。
さらに、ショールームでは立って見るだけでなく、切る、洗う、鍋を持つという動作を行ってから決定します。
キッチンは毎日使う設備です。
デザインや扉の色より、10年後も腰や肩を痛めず、自分で料理を続けられる高さを優先すべきです。










