Q. なぜ地震で家は傷むのか?
A. 地震の揺れによって建物が変形し、耐力壁、接合部、基礎、内外装へ繰り返し力が加わるからです
地震で家が傷むのは、単に強く揺れるからではありません。
地面が動くと、基礎も一緒に動きます。
一方、建物にはその場にとどまろうとする力が働くため、基礎と上部の建物に動きの差が生まれます。
このとき、建物には、
- 横へずれる力
- ねじれる力
- 柱を引き抜く力
- 接合部を外そうとする力
- 基礎を曲げる力
- 壁を変形させる力
が加わります。
一度の揺れで倒壊しなくても、耐力壁、釘、金物、石膏ボード、外壁などに損傷が残る可能性があります。
さらに余震が繰り返されると、その損傷が蓄積します。
地震対策は、「倒壊しないこと」だけでなく、「地震後も住み続けられること」まで考える必要があります。
1. 地面と建物の動きに差が生まれる
地震が起こると、地面は前後左右、上下に動きます。
基礎は地盤の上にあるため、地面の動きを受けます。
しかし、建物上部は慣性によって元の位置にとどまろうとします。
その結果、基礎と屋根や2階部分に動きの差が生まれ、建物が横方向へ変形します。
高い位置ほど動きが大きくなりやすいため、一般的には2階建ての上部などで揺れを強く感じることがあります。
建物が揺れること自体を完全になくすことはできません。
重要なのは、その変形を許容範囲内に抑え、力を安全に地盤へ伝えることです。
2. 建物が重いほど地震力が大きくなる
地震時に建物へ加わる力は、建物の重量と関係します。
同じ揺れを受ける場合、重い建物ほど大きな力が発生します。
建物の重さには、
- 屋根材
- 外壁材
- 柱・梁・壁
- 床
- 住宅設備
- 家具
- 太陽光パネル
- 積雪
などが含まれます。
特に、大容量の太陽光発電を屋根へ搭載する場合は、パネルや架台の重量を構造計算へ反映する必要があります。
太陽光を載せない条件で耐震等級を計算し、後から追加すれば、計算と完成した建物の重量が一致しません。
「太陽光を載せた状態でも耐震等級3ですか」と確認してください。
3. 耐力壁が変形して地震へ抵抗する
木造住宅では、筋交いや構造用面材を使った耐力壁が、地震の横方向の力へ抵抗します。
耐力壁は、まったく動かずに地震へ耐えるわけではありません。
一定の範囲で変形しながら力を負担します。
揺れが大きくなると、
- 筋交いが変形する
- 構造用面材が傷む
- 釘穴が広がる
- 釘が抜ける
- 面材が割れる
- 接合部に力が集中する
可能性があります。
地震後に建物が元の位置へ戻ったように見えても、壁の内部には損傷が残っていることがあります。
4. 柱と梁の接合部へ大きな力がかかる
地震時には、柱や梁を横へ動かす力だけでなく、接合部を引き抜いたり外したりする力も発生します。
特に耐力壁の端にある柱には、大きな引き抜き力がかかることがあります。
そのため、
- ホールダウン金物
- 柱脚・柱頭金物
- 羽子板ボルト
- アンカーボルト
- 構造用ビス
などによって部材を接続します。
必要な金物は、柱ごとに加わる力によって変わります。
金物の種類が適切でも、ビス本数が不足している、ボルトが締まっていない、設置位置が違う場合は本来の性能を発揮できません。
設計と現場検査の両方が重要です。
5. 建物のねじれが損傷を大きくする
耐力壁が建物の一方へ偏っていると、地震時に建物がねじれる可能性があります。
例えば、南側に大きな窓を並べ、北側へ水回りと壁を集中させる間取りです。
壁の強い側と弱い側で動きが違うため、建物全体が回転するように変形します。
注意したいのは、
- 南側に大開口が多い
- ビルトインガレージがある
- L字型やコの字型
- 1階のLDKに壁が少ない
- 大きな吹き抜けがある
- 1階と2階の壁位置がずれている
住宅です。
このねじれやすさを確認する指標の一つが偏心率です。
耐力壁の量だけでなく、配置バランスまで計算する必要があります。
6. 床と屋根にも地震力が伝わる
地震の力は、耐力壁だけで受けるものではありません。
床や屋根が受けた力を、耐力壁へ適切に伝える必要があります。
この役割を担うのが水平構面です。
床や屋根が弱ければ、力を耐力壁へ均等に伝えられず、一部へ負担が集中する可能性があります。
特に、
- 大きな吹き抜け
- リビング階段
- 複雑な建物形状
- 床の大きな開口
- 壁位置のずれ
がある住宅は注意が必要です。
壁の数だけ確認しても、本当の耐震性は分かりません。
床、屋根、壁、接合部を一体で計算することが重要です。
7. 基礎にも曲げ・引っ張りの力が加わる
地震時には、建物上部から基礎へ大きな力が伝わります。
基礎は、その力を地盤へ安全に流す役割を担います。
地震によって基礎に、
- 曲げる力
- 引っ張る力
- 圧縮する力
- せん断力
- ねじれる力
が加わります。
基礎設計が不十分だと、
- ひび割れ
- アンカーボルト周辺の損傷
- 基礎立ち上がりの変形
- 建物と基礎の接続部の損傷
につながる可能性があります。
基礎の鉄筋量や配置は、すべての住宅で同じにすればよいわけではありません。
建物荷重、耐力壁、地盤条件を反映した設計が必要です。
8. 地盤が弱いと揺れや沈下の影響を受ける
住宅の耐震性能が高くても、地盤に問題があれば建物は傷む可能性があります。
軟弱地盤では、地震の揺れが大きくなる場合があります。
また、
- 不同沈下
- 液状化
- 擁壁の変形
- 盛土の崩壊
- 地割れ
が起これば、基礎や建物へ大きな影響が出ます。
地震対策では、
- 過去の土地利用
- 地形
- 盛土・切土
- 地盤調査
- 地下水位
- 擁壁
- 液状化リスク
まで確認する必要があります。
強い建物を、弱い地盤の上へ対策なしで建てても安心とはいえません。
9. 大きな窓は耐力壁を減らす
明るく開放的な家をつくるため、南側へ大きな窓を並べる設計があります。
しかし、窓の部分には耐力壁を配置できません。
窓を増やすほど、地震へ抵抗する壁を配置できる場所が減ります。
特に、
- 大きな掃き出し窓
- コーナー窓
- 吹き抜けの連続窓
- 幅の広い引き違い窓
- 1階LDKの大開口
を採用する場合は、構造計算が重要です。
開放感を優先するあまり、残った壁へ過度な力を集中させてはいけません。
10. 吹き抜けは床の連続性を変える
2階床は、部屋として使うだけでなく、地震力を耐力壁へ伝える役割があります。
吹き抜けをつくると、その部分には床がありません。
吹き抜けが大きい、階段と連続している、周辺の壁が少ない場合は、床と梁の設計が重要になります。
吹き抜けがあるから危険という意味ではありません。
許容応力度計算によって、
- 床の強さ
- 梁の寸法
- 耐力壁の配置
- 接合部
- 建物のねじれ
を確認し、必要な補強を行えば設計できます。
11. 内装は構造体より先に傷むことがある
地震で家が倒壊しなくても、内装には損傷が出る可能性があります。
- 壁紙が切れる
- 石膏ボードが割れる
- タイルにひびが入る
- 建具が動きにくくなる
- 家具が転倒する
- 照明が落下する
といった被害です。
壁紙の切れや石膏ボードのひびは、建物が変形した証拠の一つです。
見た目だけ補修するのではなく、必要に応じて構造体や接合部に問題がないか確認してください。
12. 外壁や防水部分も傷む
地震の変形は、構造体だけでなく外壁や防水部分にも影響します。
- 外壁材のひび
- シーリングの切れ
- 窓周辺の隙間
- 屋根材のずれ
- 防水層の損傷
- 配管接続部の破損
が起こる可能性があります。
外壁のひびやシーリング切れを放置すると、雨水が侵入し、断熱材や構造材を傷める原因になります。
地震後は倒壊の有無だけでなく、雨漏りにつながる損傷も確認する必要があります。
13. 設備配管も地震で傷む
給水管、排水管、ガス管、電気配線などは、建物と一緒に動きます。
建物本体と地面、設備機器の動きが異なると、接続部へ負担がかかります。
地震後に、
- 水漏れ
- 排水不良
- ガス漏れ
- エコキュートの転倒
- 配管の外れ
- 電気設備の故障
が起こる可能性があります。
建物だけでなく、給湯器、蓄電池、室外機などの固定方法も確認してください。
14. 家具の転倒で内装と人が傷つく
建物が倒壊しなくても、家具や家電の転倒によって大きな被害が出ることがあります。
- 冷蔵庫
- 食器棚
- 本棚
- テレビ
- タンス
- 吊戸棚の中身
などです。
家具が壁や床へ衝突すれば、内装も傷みます。
さらに、避難経路をふさぐ可能性があります。
新築時から、
- 家具固定用の下地
- 造作収納
- 吊戸棚の耐震ラッチ
- 家具を置かない避難経路
- 寝室の家具配置
を計画しておくことが重要です。
15. 本震だけでなく余震で損傷が蓄積する
大地震は、一度揺れて終わるとは限りません。
本震の後に、何度も余震が続くことがあります。
最初の揺れで、
- 釘穴が広がる
- 面材が変形する
- 金物周辺へ力が集中する
- 石膏ボードにひびが入る
- 外壁やシーリングが傷む
と、次の揺れでは損傷した状態から地震力を受けます。
1回目に耐えたから、2回目も同じ状態で耐えられるとは限りません。
繰り返す地震に対する備えとして、構造体の強さに加え、揺れのエネルギーを吸収する制震装置を検討する意味があります。
16. 耐震等級3でも無傷を保証するものではない
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級です。
大地震に備えるうえで、非常に重要な性能です。
ただし、耐震等級3は、
- まったく揺れない
- 壁紙が切れない
- 外壁が割れない
- 家具が倒れない
- 地震後も必ず無修理で住める
ことを保証するものではありません。
耐震とは、建物を強くして地震へ耐える考え方です。
大きな地震力を受ければ、倒壊を免れても、建物には変形や損傷が起こる可能性があります。
「耐震等級3だから大丈夫」で終わらず、計算方法、施工、制震、地盤まで確認してください。
17. 同じ耐震等級でも計算方法が違う
同じ耐震等級3でも、確認方法が違う場合があります。
| 確認方法 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 壁量計算 | 必要な耐力壁量などを確認 |
| 品確法による計算 | 壁量、床、接合部、基礎などを確認 |
| 許容応力度計算 | 各部材へ加わる力と耐力を詳細に確認 |
許容応力度計算では、柱、梁、耐力壁、床、接合部などへ加わる力を個別に確認します。
建物の間取り、重量、窓、吹き抜けが違えば、必要な部材も変わります。
「耐震等級3相当」ではなく、どの方法で正式に確認するのかを聞いてください。
18. 制震装置は建物の変形を抑える
制震装置は、地震の揺れによるエネルギーを吸収し、建物の変形を抑えるために使われます。
耐震と制震は役割が違います。
- 耐震=構造を強くして地震に耐える
- 制震=揺れのエネルギーを吸収する
制震装置によって変形を抑えることは、構造体だけでなく、内装や外壁の損傷を減らすことにもつながります。
ただし、制震装置は耐震性能の代わりではありません。
許容応力度計算による耐震等級3を基本とし、そのうえで制震装置を加えることが重要です。
地震によって傷みやすい部分
| 部分 | 起こり得る損傷 |
|---|---|
| 耐力壁 | 面材、筋交い、釘の変形 |
| 柱・梁 | 変形、接合部の損傷 |
| 金物 | ビス、ボルト周辺の損傷 |
| 基礎 | ひび割れ、アンカー周辺の損傷 |
| 外壁 | ひび、ずれ、シーリング切れ |
| 内壁 | 壁紙切れ、石膏ボード割れ |
| 窓・建具 | 開閉不良、枠の変形 |
| 屋根 | 屋根材のずれ、破損 |
| 配管 | 接続部の破損、水漏れ |
| 家具・設備 | 転倒、移動、落下 |
地震後は、見える部分だけでなく、構造や設備まで点検する必要があります。
地震後に確認する項目
- 建物が目で見て傾いていないか
- 基礎に大きなひびやずれがないか
- 外壁やシーリングに損傷がないか
- 屋根材が落下・移動していないか
- 窓やドアが正常に動くか
- 床に傾きや沈みがないか
- 壁紙や石膏ボードのひびが増えていないか
- 水道や排水から漏れがないか
- 給湯器や室外機が傾いていないか
- 異音や異臭がないか
- 擁壁や地盤にひび、沈下がないか
- 制震装置や構造部分の点検が必要か
危険を感じる場合は、無理に建物へ入らず、建築士や行政などへ相談してください。
契約前に確認する項目
- 耐震等級はいくつですか
- 耐震等級3相当ではなく正式に取得しますか
- 許容応力度計算を行いますか
- 柱、梁、床、接合部まで計算しますか
- 基礎も建物ごとに計算しますか
- 地盤調査結果を基礎設計へ反映しますか
- 偏心率を確認しますか
- 1階と2階の壁位置を確認しますか
- 吹き抜け周辺の床と梁を計算しますか
- 太陽光パネルの重量を含めますか
- 制震装置は標準ですか
- 制震装置のメーカーと商品名は何ですか
- 繰り返す地震へ対応できますか
- 構造部分を誰が検査しますか
- 施工写真を受け取れますか
- 地震後の点検体制はありますか
- 構造計算書と評価書を受け取れますか
広告の言葉ではなく、計算書、評価書、検査記録で確認してください。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、「耐震等級3なら絶対に無傷」とは説明しません。
大地震では、耐震性能の高い住宅でも大きな力を受けます。
だからこそ、構造を強くするだけでなく、揺れによる変形と損傷を抑えることが重要だと考えています。
基本となる構造は、
- 許容応力度計算による耐震等級3
- 制震装置evoltz
- 地盤調査に基づく基礎設計
- 太陽光パネルの重量を反映した構造計算
- 面で建物を支える2×6工法
- 長期優良住宅
- 完成保証
です。
耐震と制震は、どちらか一方を選ぶものではありません。
耐震で倒壊を防ぎ、制震で建物の揺れや損傷を抑える。
地震後も家族が住み続けられる可能性を高めるため、両方を組み合わせます。
俺流結論
地震で家が傷むのは、建物が弱いからだけではありません。
建物は、揺れながら地震の力へ耐えるからです。
耐力壁、釘、金物、柱、梁、基礎が力を受け、建物全体が変形します。
倒壊しなくても、その内部には損傷が残る可能性があります。
さらに余震が続けば、最初の地震で傷んだ部分へ、再び力が加わります。
だから私は、「耐震等級3です」という説明だけでは安心しません。
「許容応力度計算ですか」
「基礎まで計算していますか」
「太陽光の重量を含めていますか」
「制震装置は付いていますか」
「構造検査をしていますか」
ここまで確認します。
地震で最優先するのは、家族の命です。
しかし、倒壊を免れても、修理に数百万円かかり、住宅ローンを払いながら仮住まいをすることになれば、生活は壊れます。
目指すべきなのは、地震で倒れない家だけではありません。
揺れを抑え、損傷を減らし、地震後も住み続けられる可能性を高めた家です。
キッチンや壁紙は後から交換できます。
構造、基礎、制震装置は、完成後に簡単には追加できません。
削ってはいけないのは、見えなくなる部分です。
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