Q. 「経年劣化なので保証対象外」と言われる理由は?
A. 経年劣化は、時間の経過や通常使用によって生じる摩耗・変色・性能低下であり、施工不良や製品不良とは区別されるためです。ただし、住宅会社が「経年劣化」と言っただけで保証対象外と確定するわけではありません。発生時期、劣化の程度、施工方法、同じ部位との比較から、本当に通常の劣化なのかを確認する必要があります。
経年劣化は、住宅所有者が負担するのが基本
住宅は、完成した瞬間から少しずつ変化します。
紫外線、雨、風、温度差、湿気、乾燥、日常使用などによって、材料や部品は徐々に劣化していきます。
例えば、次のような現象です。
- 外壁や屋根の色あせ
- シーリング材の硬化やひび割れ
- クロスの変色や汚れ
- 床材のキズや摩耗
- 木材の収縮や反り
- 樹脂部品の変色や変形
- パッキンやフィルターの消耗
- 金属部分のサビ
- 水アカやカビの発生
これらが通常の使用や時間の経過によって発生したのであれば、住宅会社の施工責任ではなく、住宅所有者が維持管理する範囲と判断されることがあります。
LIXILのサッシ・玄関ドアの保証でも、使用に伴う消耗や摩耗、樹脂部品の変質・変色などの経年変化・経年劣化は、保証期間内でも有料修理となる免責事項に含まれています。LIXIL|サッシ・玄関ドア・玄関引戸の保証
住宅会社にとって便利な言葉でもある
一方で、「経年劣化」は非常に幅の広い言葉です。
住宅会社から、
「木造住宅だから動きます」
「時間がたてば多少は割れます」
「材料の特性です」
「経年劣化なので保証対象外です」
と言われると、専門知識のない住宅所有者は反論しにくくなります。
しかし、築年数が経過しているからといって、すべての不具合が経年劣化になるわけではありません。
施工方法や材料選定に問題があり、本来より早く劣化した可能性もあります。
経年劣化という言葉だけで、施工不良の可能性まで消えるわけではないのです。
経年劣化と施工不良は何が違う?
判断のポイントは、単に「築何年か」ではありません。
次の4項目を確認します。
1.発生した時期
築10年、15年を経過してから徐々に色あせや摩耗が発生した場合は、経年劣化の可能性があります。
一方で、完成後1年から3年程度で、広い範囲にひび割れ、はがれ、漏水などが発生した場合は、施工方法や材料選定を確認する必要があります。
築年数が浅いのに、
「よくあることです」
「自然に劣化しただけです」
という説明だけで終わらせるべきではありません。
2.発生している範囲
建物全体が均等に変色しているなら、日射や風雨による経年変化かもしれません。
しかし、特定の一面だけ、特定の窓の周辺だけ、同じ施工箇所だけに不具合が集中している場合は、施工や納まりに原因がある可能性があります。
- 特定の窓の下だけ外壁が変色する
- バルコニー周辺だけ雨染みが出る
- 同じ方向の外壁だけひび割れる
- 特定の部屋だけ結露やカビが発生する
- 一部の床だけ大きく沈む
このような偏りがある場合は、「建物全体の自然な老朽化」という説明と矛盾することがあります。
3.同じ材料・同じ部位との比較
同じ時期に施工した外壁の一部だけが著しく劣化しているなら、その部分の下地、施工方法、日射、雨掛かりなどを確認する必要があります。
近隣の同じ住宅と比べて著しく早く劣化している場合も、判断材料になります。
ただし、方角、周辺環境、使用状況が異なるため、比較だけで施工不良と断定することはできません。
比較は原因調査を求めるための材料として使います。
4.不具合の原因
見た目が同じでも、原因によって責任の所在は変わります。
例えば、外壁のひび割れでも、
- 塗膜の通常劣化
- 下地材の継ぎ目処理不足
- シーリングの施工不良
- 構造体の変形
- 地盤沈下
- 地震や台風
- メンテナンス不足
など、複数の原因が考えられます。
原因を調べずに「ひび割れ=経年劣化」と決めることはできません。
法律上の10年保証も、すべての劣化を保証しない
新築住宅では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任が定められています。
しかし、外壁の色あせ、クロスのすき間、設備の消耗など、住宅のあらゆる劣化が法律上10年間保証されるわけではありません。国土交通省|住宅瑕疵担保履行法Q&A
一方で、経年劣化に見える現象が、構造上の問題や雨水の浸入につながっている場合は、単なる見た目の劣化では終わらない可能性があります。
保証期間、保証対象、原因を分けて確認する必要があります。
「経年劣化です」と言われたときの確認方法
住宅会社へ、次の内容を書面で回答してもらってください。
- 経年劣化と判断した具体的な根拠
- 保証対象外とする保証書の条項
- 施工不良や製品不良ではないと判断した理由
- 原因を確認するために行った調査内容
- 同じ材料の一般的な劣化状況との比較
- 放置した場合に起こる可能性
- 補修方法と費用の内訳
最も重要なのは、
「築年数が経過したから」ではなく、「なぜ、この不具合が通常の経年劣化と判断できるのか」
を説明してもらうことです。
写真と記録を残す
不具合を発見したら、補修する前に記録を残してください。
- 建物全体の写真
- 不具合部分の拡大写真
- 定規を当てた写真
- 発見した年月日
- 雨の日と晴れの日の違い
- 不具合が広がっているか
- 住宅会社へ連絡した日
- 担当者から説明された内容
- 点検報告書と見積書
最初は小さなひび割れでも、半年後に広がれば、重要な判断材料になります。
同じ場所を、同じ角度から1か月、3か月、6か月後に撮影すると、変化を証明しやすくなります。
納得できなければ第三者へ相談する
住宅会社の説明に納得できない場合は、別の建築士や住宅診断の専門家へ調査を依頼する方法があります。
特に、
- 築年数が浅い
- 雨漏りが発生している
- 不具合が急速に拡大している
- 同じ場所を何度直しても再発する
- 住宅会社が原因調査をしない
- 保証対象外の根拠を書面で出さない
という場合は、第三者の判断を検討してください。
国土交通大臣指定の住宅相談窓口である「住まいるダイヤル」には、築3年の住宅で外壁のひび割れを経年劣化と説明された相談事例も掲載されています。住まいるダイヤル|築3年の外壁ひび割れ相談
本当に怖いのは、言葉で調査を終わらせること
住宅は必ず劣化します。
経年劣化をすべて住宅会社へ無料で直すよう求めることはできません。
しかし、住宅会社が「経年劣化」という一言だけで原因調査を終わらせることも、正しい対応とはいえません。
確認すべきなのは、言葉ではなく根拠です。
- いつ発生したのか
- どこに集中しているのか
- どの程度進行しているのか
- 施工方法に問題はなかったのか
- 保証書のどの条項に該当するのか
「経年劣化です」と言われたら、そこで諦めるのではなく、「何を調べて、どう判断したのですか」と聞いてください。
保証対象外という結論より、その結論に至った調査と根拠を確認することが、施工不良を経年劣化として処理されないための自己防衛になります。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










