Q. 年収の何倍まで借りて良い?
A. 一つの目安は年収の5倍以内。6倍を超えたら慎重、7倍以上は家計全体の再確認が必要です。
ただし、年収倍率だけで安全な住宅ローン額は決まりません。
同じ年収600万円でも、子どもの人数、車の台数、現在の貯金、教育方針、年齢によって返せる金額は異なります。
最終的には、次の条件を満たす金額までに抑える必要があります。
- 教育費を積み立てられる
- 車の買い替え資金を準備できる
- 建築後も現金を残せる
- 金利が上昇しても赤字にならない
- 収入が減っても返済できる
- 70歳前後までの完済を目指せる
年収倍率ごとの借入額
| 世帯年収 | 4倍 | 5倍 | 6倍 | 7倍 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 1,600万円 | 2,000万円 | 2,400万円 | 2,800万円 |
| 500万円 | 2,000万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | 3,500万円 |
| 600万円 | 2,400万円 | 3,000万円 | 3,600万円 | 4,200万円 |
| 700万円 | 2,800万円 | 3,500万円 | 4,200万円 | 4,900万円 |
| 800万円 | 3,200万円 | 4,000万円 | 4,800万円 | 5,600万円 |
年収600万円で4,200万円借りれば、年収の7倍です。
銀行の審査に通る可能性があっても、教育費、車、修繕費、老後資金を準備できるとは限りません。
平均年収倍率は安全基準ではない
住宅金融支援機構の2025年度【フラット35】利用者調査では、所要資金の平均年収倍率は全体で6.6倍でした。
平均世帯年収は約716万円、平均総返済負担率は22.8%です。住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」
ただし、この年収倍率は「所要資金÷世帯年収」であり、住宅ローン借入額だけの倍率ではありません。
自己資金も含まれるため、
「平均が6.6倍だから、年収の6.6倍まで借りてよい」
という意味ではありません。
平均は、実際に利用した人の結果です。あなたの家計の安全基準ではありません。
年収600万円で借りた場合の返済額
年収600万円の家庭が、35年返済、金利1.5%、元利均等、ボーナス払いなしで借りた場合の概算です。
| 年収倍率 | 借入額 | 毎月返済額 | 年間返済額 |
|---|---|---|---|
| 4倍 | 2,400万円 | 約7万3,500円 | 約88万円 |
| 5倍 | 3,000万円 | 約9万1,900円 | 約110万円 |
| 6倍 | 3,600万円 | 約11万円 | 約132万円 |
| 7倍 | 4,200万円 | 約12万8,600円 | 約154万円 |
年収600万円でも、手取りは600万円ではありません。
税金や社会保険料を差し引いた手取りから、住宅ローンを返します。
さらに、固定資産税、保険、修繕費も必要です。
住宅ローン以外に月3万円前後必要になる
例えば、借入3,600万円の毎月返済額が約11万円でも、実質的な住宅費はそれだけではありません。
| 項目 | 月平均の想定例 |
|---|---|
| 住宅ローン | 約11万円 |
| 固定資産税積立 | 1万円 |
| 火災・地震保険積立 | 3,000円 |
| 住宅修繕積立 | 1万5,000円 |
| 合計 | 約13万8,000円 |
住宅ローンは年収の6倍でも、実質住宅費は月約13万8,000円です。
光熱費や自治会費などが増えれば、さらに負担は大きくなります。
年収倍率だけでなく、住宅を維持する費用まで含めて判断してください。
金利3%になった場合も確認する
借入3,600万円、35年返済の場合、金利によって毎月返済額は変わります。
| 金利 | 毎月返済額の概算 |
|---|---|
| 1.0% | 約10万2,000円 |
| 1.5% | 約11万円 |
| 2.0% | 約11万9,000円 |
| 3.0% | 約13万9,000円 |
金利1%と3%では、毎月約3万7,000円の差です。
固定資産税、保険、修繕積立を加えると、金利3%の場合の実質住宅費は月16万円を超える可能性があります。
変動金利を利用するなら、現在の金利だけで住宅予算を決めてはいけません。
安全性の目安
年収の4倍以内
比較的余裕を作りやすい水準です。
教育費、車、修繕費、老後資金を積み立てやすく、収入減少にも対応しやすくなります。
ただし、年収が低い家庭では生活費の割合が高いため、4倍でも必ず安全とは限りません。
年収の5倍前後
子育て世帯が一つの基準として検討できる範囲です。
ただし、建築後の現金、教育費、完済年齢を確認する必要があります。
共働き収入を満額使わないと返済できない場合は、5倍でも慎重に判断します。
年収の6倍前後
住宅費の負担を感じやすくなる水準です。
子どもが二人以上、車が二台、大学進学を予定している家庭では、詳細な長期シミュレーションが必要です。
金利上昇や収入減少時に教育積立を継続できるか確認してください。
年収の7倍以上
銀行から借りられても、家計全体では危険になる可能性があります。
次のような条件がそろわなければ、借入額を下げることをおすすめします。
- 年齢が若い
- 今後も安定収入が見込める
- 十分な金融資産がある
- 子どもの教育資金を別に確保している
- 車や他の借入がない
- 建築後も十分な現金が残る
- 金利上昇への余裕がある
年収倍率7倍を「普通」と考えてはいけません。
世帯年収と一人の年収を分けて考える
夫600万円、妻300万円なら、世帯年収は900万円です。
年収5倍なら、計算上は4,500万円になります。
しかし、妻が出産、育児、介護などで退職すれば、世帯年収は600万円です。
借入4,500万円は、夫一人の年収に対して7.5倍になります。
共働き世帯では、次の2つの倍率を確認してください。
- 現在の世帯年収に対する倍率
- 主たる収入だけに対する倍率
共働きが終わると急に危険な倍率になる住宅ローンは、慎重に判断する必要があります。
返済負担率も確認する
年収倍率とともに確認したいのが、返済負担率です。
返済負担率は、年収に対する年間返済額の割合です。
返済負担率=年間ローン返済額÷額面年収×100
年収600万円、住宅ローンの年間返済額132万円なら、住宅ローンだけの返済負担率は22%です。
しかし、カーローン年間36万円、奨学金年間18万円があれば、年間返済額は186万円です。
この場合の総返済負担率は31%になります。
住宅ローン以外の借入も含めて確認しなければなりません。
返済負担率は手取りでも見る
金融機関の返済負担率は、一般的に額面年収を基に計算します。
しかし、実際の生活では手取り収入から返済します。
額面年収600万円、手取り月収が仮に約40万円、実質住宅費が月14万円なら、手取りの35%です。
ここから食費、光熱費、保険、教育費、車代を支払います。
審査上の返済負担率が低くても、手取りに対する実質住宅費が高ければ、貯金できない家計になります。
年収倍率が低くても危険な家庭
年収の5倍以内でも、次の条件がある場合は注意が必要です。
- 子どもが三人以上いる
- 私立進学を希望している
- 車を二台所有している
- カーローンや奨学金がある
- 親への経済的援助が必要
- 現在の預金が少ない
- 購入年齢が高い
- ボーナスの割合が高い
- 自営業で収入変動が大きい
- 共働きを継続できるか分からない
年収倍率は、家計を簡単に確認するための入口です。
最終判断には使えません。
年収倍率が高くても対応できる家庭
反対に、年収倍率が6倍を超えていても、次の条件があれば対応できる場合があります。
- 十分な預金・投資資産がある
- 教育費をすでに確保している
- 今後も安定した収入が見込める
- 他の借入がない
- 車を所有しない
- 親からの資金援助が確定している
- 建築後も生活費1年分程度が残る
- 売却しやすい土地・住宅である
ただし、「将来は年収が上がる予定」だけでは安全条件になりません。
現在の資産と、収入が上がらない場合の家計も確認します。
年収500万円で3,500万円は大丈夫?
年収500万円で3,500万円を借りれば、年収倍率は7倍です。
35年返済、金利1.5%では、毎月返済額は約10万7,000円です。
固定資産税、保険、修繕積立を加えると、実質住宅費は月13万〜14万円程度になる可能性があります。
子ども二人、車二台の家庭なら、教育費と車の積立を含めた長期シミュレーションが必要です。
「月10万円台だから払える」という判断だけでは危険です。
年収600万円で4,000万円は大丈夫?
年収倍率は約6.7倍です。
35年返済、金利1.5%では、毎月返済額は約12万2,000円です。
住宅関連の税金、保険、修繕積立を加えると、実質住宅費は月15万円前後になる可能性があります。
年収600万円でも、子育て費用、車、現在の預金によっては負担が大きくなります。
共働き収入を含む600万円の場合は、片方の収入が減った条件も必ず確認してください。
年収から住宅予算を決める正しい順番
年収倍率を最初に使うのではなく、次の順番で計算します。
- 毎月の手取り収入を確認する
- 現在の生活費を確認する
- 教育費を確保する
- 車の買い替え費用を積み立てる
- 住宅修繕費を積み立てる
- 老後資金を確保する
- 収入減少時の家計を確認する
- 金利3%の返済額を確認する
- 残った金額から住宅ローン額を決める
- 最後に年収倍率を確認する
先に「年収の6倍まで」と決めるのではありません。
家族に必要なお金を残した結果、その借入額が年収の何倍なのかを確認します。
俺流結論
住宅ローンは、年収の5倍以内を一つの目安とします。
6倍を超えたら慎重にシミュレーションし、7倍以上なら住宅総額を再確認するべきです。
しかし、本当の安全基準は年収倍率ではありません。
教育費を守れる。
車を買い替えられる。
住宅修繕費を積み立てられる。
収入が減っても赤字にならない。
金利が上昇しても返済できる。
70歳前後までの完済を目指せる。
ここまで確認して、初めて返せる住宅ローン額が分かります。
平均年収倍率が高いから、自分も借りてよい。
銀行が貸してくれるから、安全に返せる。
この考え方は危険です。
年収の何倍借りられるかではなく、家族の未来に必要なお金を残したうえで、いくら返せるか。
住宅ローンは、この順番で決めるべきです。










