Q. 生命保険はいくら必要?
A. 子育て世帯の死亡保障は1,000万〜3,000万円が一つの目安ですが、必要額は家庭ごとに計算します。
年収の何倍、子ども一人につき何千万円という決め方ではありません。
必要な死亡保障額は、次の式で計算します。
遺族の生活費+教育費+緊急費用-遺族年金-配偶者収入-預貯金-勤務先の保障-団信効果
住宅ローンを組むと団体信用生命保険へ加入する場合が多く、契約者が死亡すると住宅ローン残高が返済される可能性があります。
その場合、住宅ローン分まで一般の生命保険で二重に保障する必要はありません。
生命保険は「いくら入れるか」から考えない
生命保険を検討すると、
「3,000万円あれば安心」
「年収の5倍必要」
といった説明があります。
しかし、同じ年収でも必要額は違います。
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
- 配偶者の収入
- 住宅ローン
- 団信の保障内容
- 預貯金
- 教育方針
- 遺族年金
- 勤務先の死亡退職金
- 親からの支援
先に保険金額を決めるのではありません。
家族が死亡後に必要とする金額を計算し、公的保障や資産で不足する部分だけを生命保険で補います。
必要保障額の計算式
死亡保障額は、次のように整理します。
遺族に必要なお金
- 毎月の生活費
- 子どもの教育費
- 住居費
- 車の買い替え
- 葬儀・整理費用
- 住宅修繕費
- 配偶者の老後資金
差し引けるお金
- 遺族年金
- 配偶者の給与収入
- 預貯金
- 投資資産
- 勤務先の死亡退職金
- すでに加入している保険
- 団信によってなくなる住宅ローン
- 子どもの学資保険
差し引いた不足額が、生命保険で準備すべき死亡保障額です。
遺族年金を確認する
子どものいる家庭では、一定の要件を満たすと遺族基礎年金を受け取れる可能性があります。
2026年度の遺族基礎年金は、子のある配偶者の場合、年額84万7,300円に子の加算額が加わります。
| 子どもの人数 | 年額の概算 |
|---|---|
| 1人 | 約109万1,000円 |
| 2人 | 約133万5,000円 |
| 3人 | 約141万6,000円 |
1人目と2人目の子の加算額は各24万3,800円、3人目以降は各8万1,300円です。日本年金機構「遺族基礎年金」
対象となる子は、原則として18歳になった年度の3月31日までです。
子どもが年齢条件を外れると、遺族基礎年金は終了または減額します。
会社員には遺族厚生年金もある
亡くなった人が厚生年金へ加入していた場合、一定の要件を満たせば遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。
年金額は、原則として亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を基に計算します。日本年金機構「遺族厚生年金」
実際の受給額は、加入期間、収入、家族構成、遺族の年齢などによって異なります。
自営業者など国民年金中心の家庭と、会社員の家庭では、必要な生命保険額が変わります。
また、遺族厚生年金制度には改正が予定されているため、現在の制度だけで長期計画を固定せず、年金事務所やねんきんネットなどで個別に確認してください。
団信に入ると生命保険を減らせる可能性がある
住宅ローンの団体信用生命保険は、契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合に、住宅ローン残高が返済される仕組みです。
例えば、住宅ローン残高3,000万円が団信で完済されるなら、遺族は毎月の住宅ローン返済を続ける必要がなくなります。
住宅購入前に死亡保障4,000万円へ加入していた家庭でも、住宅購入後は必要額が下がる可能性があります。
住宅ローン契約後には、必ず生命保険を見直してください。
団信があっても生命保険は必要
団信は住宅ローン残高を返すための保障です。
次のお金までは準備できません。
- 毎月の生活費
- 子どもの教育費
- 車の維持・買い替え
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 住宅修繕
- 葬儀費用
- 配偶者の老後資金
住宅ローンがなくなっても、家族の生活は続きます。
団信に加入したから生命保険がすべて不要になるわけではありません。
必要保障額のモデルケース
夫35歳、妻32歳、子ども8歳と6歳の家庭を想定します。
夫が主たる収入者で、住宅ローンは団信によって完済される前提です。
遺族に必要なお金
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 生活費の不足額・月8万円×15年 | 1,440万円 |
| 子ども二人の教育費不足 | 800万円 |
| 葬儀・整理・緊急費用 | 200万円 |
| 必要額合計 | 2,440万円 |
差し引けるお金
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 預貯金 | 400万円 |
| 勤務先の死亡退職金など | 200万円 |
| 差し引ける金額 | 600万円 |
この例では、
2,440万円-600万円=1,840万円
生命保険で補う死亡保障は、約1,800万〜2,000万円が一つの目安になります。
遺族年金や配偶者収入を「生活費の不足額」を計算する段階で反映している想定です。
実際の必要額は、家族ごとに異なります。
団信がなければ住宅ローン残高を加える
同じ家庭でも、団信がなく住宅ローン残高3,000万円がそのまま残る場合、必要保障額は大きく変わります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生活・教育などの必要保障 | 1,840万円 |
| 住宅ローン残高 | 3,000万円 |
| 合計 | 4,840万円 |
団信の有無だけで、必要保障額が3,000万円変わります。
生命保険を検討するときは、住宅ローン残高だけでなく団信の保障内容まで確認してください。
ペアローンは団信の範囲に注意する
夫婦それぞれが住宅ローンを借りるペアローンでは、一般的に夫婦がそれぞれ自分の借入分へ団信を付けます。
例えば、夫2,500万円、妻1,500万円を借りた場合、夫が死亡しても、妻の1,500万円は残る可能性があります。
| 契約者 | 借入残高 | 夫死亡時の一般的な扱い |
|---|---|---|
| 夫 | 2,500万円 | 団信で返済 |
| 妻 | 1,500万円 | 返済が残る |
| 合計 | 4,000万円 | 妻の借入分は継続 |
商品によって保障内容は異なります。
連生団信など、どちらかに万一があった場合に夫婦のローンが保障される商品もあります。
生命保険を減らす前に、団信でどこまで消えるのか確認してください。
妻の死亡保障も必要
夫が主たる収入者でも、妻の生命保険が不要とは限りません。
専業主婦や短時間勤務でも、妻が亡くなれば次の費用が増える可能性があります。
- 保育園・学童
- 家事代行
- 食事・宅配
- 夫の勤務時間短縮
- 夫の収入減少
- 子どもの送迎
- 親族の支援費用
家事や育児には経済的な価値があります。
妻が亡くなった後も夫が同じ働き方と収入を維持できるか確認し、不足する金額を保障します。
必要保障額は子どもの成長とともに減る
子どもが0歳の家庭と、高校3年生の家庭では、これから必要になる生活費と教育費が違います。
一般的には、子どもの成長とともに必要保障額は減ります。
| 時期 | 必要保障額の傾向 |
|---|---|
| 子ども誕生直後 | 最も大きい |
| 小学校 | 大きい |
| 中学・高校 | 徐々に減る |
| 大学卒業 | 大幅に減る |
| 夫婦のみ | 葬儀・老後中心 |
一生涯同じ死亡保障額を持つ必要はありません。
子どもの独立、住宅購入、預金増加に合わせて保障を減らします。
定期保険と収入保障保険を使う
子育て中の大きな死亡保障には、定期保険や収入保障保険が向いている場合があります。
定期保険
一定期間内に死亡した場合、まとまった保険金を受け取ります。
教育費や住宅以外の大きな資金を一括で準備しやすい方法です。
収入保障保険
死亡後、契約で定めた期間まで毎月または年金形式で保険金を受け取ります。
残りの保障期間が短くなるほど、受取総額が減る仕組みが一般的です。
子どもの成長とともに必要保障額が減る家庭に合いやすく、同じ初期保障額の終身保険より保険料を抑えられる可能性があります。
終身保険だけで大きな保障を作らない
終身保険は保障が一生続き、解約返戻金がある商品もあります。
一方、子育て期間に必要な2,000万〜3,000万円の保障をすべて終身保険で準備すると、保険料が高額になる可能性があります。
保険料が家計を圧迫し、教育費や住宅修繕費を積み立てられなくなっては意味がありません。
目的を分ける方法があります。
| 目的 | 保険の考え方 |
|---|---|
| 子育て期間の大きな保障 | 定期・収入保障 |
| 葬儀・整理費用 | 終身保障を検討 |
| 医療費 | 医療保険・現金を検討 |
| 教育資金 | 預貯金・学資保険・運用 |
| 老後資金 | NISA・iDeCoなどを検討 |
すべての目的を一つの保険で解決しようとしないことが重要です。
医療保険と死亡保険は別に考える
生命保険という言葉には、死亡保険、医療保険、がん保険、就業不能保険などが含まれる場合があります。
しかし、保障するリスクは違います。
- 死亡保険:家族の生活費・教育費
- 医療保険:入院・手術
- がん保険:がん治療
- 就業不能保険:働けない期間の収入
- 団信:住宅ローン残高
死亡保障が3,000万円必要だから、医療保険も高額にするという考え方ではありません。
リスクごとに不足額を計算します。
死亡より就業不能が家計を圧迫する場合もある
死亡した場合は団信で住宅ローンが完済される一方、病気やけがで長期間働けなくても、団信の支払条件に該当しなければ住宅ローンは残ります。
そのため、次の条件も確認します。
- 会社の傷病手当金
- 有給休暇
- 障害年金
- 団信の疾病保障
- 就業不能保険
- 生活防衛資金
- 配偶者の収入
死亡保障だけを大きくし、働けない場合の備えがない家計も危険です。
生命保険料は家計の何%?
保険料に絶対的な正解はありません。
ただし、保険料が高すぎて次の積立ができないなら、保障内容を見直します。
- 教育資金
- 生活防衛資金
- 車の買い替え
- 住宅修繕
- 老後資金
例えば手取り40万円で、生命保険・医療保険・学資保険などの保険料が月6万円なら、手取りの15%です。
保障が重複していないか、貯蓄性保険へ偏っていないか確認します。
保険は家計を守るための商品です。
保険料が原因で現金を残せない状態にしてはいけません。
住宅購入時が保険見直しのタイミング
住宅購入時には、家計と保障が大きく変わります。
- 団信へ加入する
- 住宅ローン返済が始まる
- 固定資産税が発生する
- 現金が減る
- 火災・地震保険へ加入する
- 将来の住宅修繕費が必要になる
住宅購入前の生命保険をそのまま継続すると、住宅ローン分の保障が重複する可能性があります。
削減できた保険料は、教育費、生活防衛資金、住宅修繕へ回します。
生命保険を減らす前の確認項目
- 団信でどのローンが消えるか
- 夫婦それぞれの借入残高
- がん・疾病団信の保障条件
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
- 配偶者の収入
- 会社の死亡退職金
- 現在の預貯金
- 子どもの教育資金
- 既契約の生命保険
- 一人になった後の生活費
団信に入ったという理由だけで、すぐに生命保険を解約してはいけません。
新しい団信の保障開始を確認してから見直します。
保険ショップ任せにしない
生命保険は、保険会社や商品を比較する前に必要保障額を計算します。
保険販売者へ、次の内容を説明してもらってください。
- 遺族の年間生活費
- 遺族年金の試算額
- 配偶者収入
- 教育費
- 団信で消えるローン
- 預貯金
- 必要保障期間
- 必要保障額の計算根拠
「皆さん3,000万円に入っています」という説明だけで契約してはいけません。
俺流結論
子育て世帯の死亡保障は1,000万〜3,000万円が一つの目安です。
しかし、この金額をそのまま全家庭に当てはめることはできません。
本当に必要な生命保険額は、
遺族の生活費と教育費から、遺族年金、配偶者収入、預貯金、勤務先の保障、団信効果を差し引いた不足額
です。
住宅ローンを組み、団信へ加入したら、生命保険を必ず見直す。
住宅ローン分の保障が重複していれば減らす。
ただし、生活費、教育費、固定資産税、修繕費は団信では支払われないため、必要な保障は残す。
保険料を多く払えば安心になるのではありません。
家族に必要な保障を、必要な期間だけ持ち、浮いた保険料を教育費と現金へ回す。
それが住宅購入後の正しい生命保険の考え方です。










