高額療養費制度や介護保険の自己負担割合(1割〜3割)を考慮した、シニアの「医療・介護予備費」の適正額
こんなご相談をいただきました
65歳で自宅の建て替えを検討しています。
医療費には高額療養費制度があり、介護保険も原則1割負担と聞きました。それなら、老後の医療費や介護費をそれほど多く残さなくても大丈夫でしょうか。
建て替え後、手元にいくら残しておけば安心ですか?
A. 医療・介護予備費として、夫婦で最低300万~500万円を住宅資金とは別に確保したいところです。介護施設への入居や長期介護まで考えるなら、500万~800万円を一つの目安として個別に試算します。
ただし、これは全世帯に共通する正解ではありません。
年金額、預貯金、持病、民間保険、子どもの居住地、住宅ローン残高によって必要額は大きく変わります。大切なのは、退職金や預貯金をすべて建築費に入れないことです。
高額療養費制度があっても、医療費がゼロになるわけではない
高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限を超えた場合に、その超過分が支給される制度です。
2026年8月からは制度が見直され、月単位の上限に加えて年間上限も設けられています。ただし、所得区分などによって上限額が異なるため、自分のケースを確認する必要があります。厚生労働省
さらに、次のような費用は原則として対象外です。
- 入院時の食事代
- 差額ベッド代
- 先進医療の技術料
- 通院交通費
- 入院用品や家族の付添費用
- 保険適用外の治療費
「医療費には上限があるから大丈夫」と考えていると、制度外の支出や毎月続く負担で、預貯金が減っていく可能性があります。
介護保険も「すべて1割」ではない
介護サービスの自己負担割合は、所得に応じて1割・2割・3割に分かれます。
また、介護保険施設に入居する場合は、介護サービスの自己負担とは別に、居住費、食費、日常生活費などが必要です。厚生労働省・介護サービス情報公表システム
在宅介護でも、次の費用が発生することがあります。
- 紙おむつや衛生用品
- 通院や送迎の費用
- 配食サービス
- 保険対象外の家事援助
- 車椅子で使える家具や設備
- 家族が介護するための休業・交通費
高額介護サービス費による上限制度もありますが、すべての支出が上限の対象になるわけではありません。
予備費300万~500万円は「余ったお金」ではない
建て替え相談では、2,000万円の預貯金があると、「1,500万円を自己資金に入れて、借入を少なくしたい」と考える方がいます。
しかし、建て替え後に残る現金が500万円しかなければ、そこから医療・介護費、車の買い替え、住宅修繕、固定資産税などを払わなければなりません。
住宅ローンを減らすことだけを優先して、生活資金を失っては本末転倒です。
私たちは、少なくとも次の3つを分けて考えます。
- 毎日の生活を守る生活予備費
- 医療・介護に備える予備費
- 外壁・屋根・設備交換に備える住宅修繕費
医療・介護予備費300万~500万円とは別に、生活費や住宅修繕費も残す必要があります。
夫婦同時ではなく「一人になった後」まで計算する
見落としやすいのが、夫婦のどちらかが先に亡くなった後です。
遺族年金への切り替えなどにより世帯収入が減る一方、固定資産税、住宅の維持費、車の費用などは半分にはなりません。さらに、残された配偶者が要介護になれば、家族の支援を受けられない可能性もあります。
建て替え資金は、夫婦二人の現在の年金額だけでなく、次の条件でも確認します。
- どちらか一人になった場合
- 要介護状態が5年以上続いた場合
- 施設へ入居した場合
- 医療費と住宅修繕が同じ年に重なった場合
- 90歳、できれば95歳まで生きた場合
予備費の目安
簡易的には、次のように考えます。
- 持病が少なく、保険が充実し、家族の支援も見込める:300万~500万円
- 持病がある、子どもが遠方、在宅介護に不安がある:500万~800万円
- 民間施設への入居も想定する:施設の入居金と月額費用を別枠で加算
この金額を全額普通預金に置く必要はありませんが、急な入院や介護に使える現金・換金しやすい資産として確保することが重要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
建築会社は「自己資金を増やせば、住宅ローンの返済が楽になります」と説明しがちです。
確かに借入額は減ります。しかし、60代・70代の建て替えでは、借金を減らすことと同じくらい、使える現金を残すことが重要です。
建物を豪華にしても、医療費や介護費が必要になったとき、家の壁や床を売って現金にすることはできません。特に山梨県の戸建住宅は、建築費をかけた分だけ高く再販できるとは限りません。
建て替え前には、現在の希望額だけでなく、建築後の預貯金残高を90歳または95歳まで試算してください。予備費が不足するなら、面積、設備、外構、自己資金額を調整するべきです。
シニアの建て替えで守るべきなのは、住宅ローンの少なさではありません。病気や介護が始まっても、家を手放さずに暮らせる現金です。










