ローン返済中のシニアが「認知症」になった場合、返済や家の管理はどうなる?
結論からいうと、認知症になっても住宅ローンは消えません。団体信用生命保険も、一般的には死亡や所定の高度障害などが対象であり、認知症と診断されただけではローンが完済されない場合がほとんどです。
返済口座から毎月正常に引き落とされていれば、直ちに家を失うわけではありません。しかし、本当に怖いのは返済額ではなく、本人が契約や財産管理をできなくなることです。
家族でも勝手に手続きはできない
本人の判断能力が低下すると、配偶者や子どもであっても、当然に次の手続きを代行できるわけではありません。
- 預金の引き出しや口座変更
- 返済条件の変更や借り換え
- 繰上返済
- 自宅の売却
- 抵当権に関する手続き
- 施設入居に伴う住宅の処分
銀行が本人の意思を確認できない場合、取引が制限されることがあります。全国銀行協会も、預金の払い出しには原則として本人の意思確認が必要と案内しています。ただし、対応は銀行や事情によって異なるため、まず取引金融機関への相談が必要です。全国銀行協会「本人の意思確認ができない場合の預金引出し」
返済が止まれば延滞になる
認知症になったこと自体が、直ちにローンの延滞になるわけではありません。しかし、口座残高の管理ができず引き落としが止まれば、通常の住宅ローンと同様に延滞扱いとなります。
そのまま放置すれば、遅延損害金の発生、残債の一括請求、最終的には担保となっている住宅の売却や競売につながる可能性があります。
「家族が何とかしてくれる」ではなく、誰が口座を確認し、どの資金から返済を続けるのかまで決めておく必要があります。
判断能力があるうちに準備する
対策は、認知症になってからではなく、本人に判断能力があるうちに行います。
主な方法は次の3つです。
1.銀行の代理人制度を確認する
金融機関によっては、あらかじめ家族を代理人として登録できる制度があります。対応できる取引範囲は銀行ごとに違うため、返済口座の管理や入出金をどこまで任せられるか確認します。
2.任意後見契約を検討する
任意後見は、判断能力があるうちに、将来の財産管理を任せる人と内容を決めておく制度です。公正証書で契約し、判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで始まります。法務省「任意後見制度について」
すでに判断能力が低下している場合は、家庭裁判所へ法定後見を申し立てる方法があります。ただし、家族が必ず後見人に選ばれるとは限らず、専門職が選任されて継続的な報酬が必要になる場合もあります。
3.家族信託は金融機関と専門家に事前確認する
家族信託を利用して、住宅や預金の管理を家族へ任せる方法もあります。ただし、信託契約を結べば住宅ローンの契約変更や売却まで自由にできるとは限りません。
抵当権が設定された住宅を信託財産に入れる場合は、金融機関の承諾や契約上の確認が必要です。家族信託だけで認知症対策がすべて解決すると考えるのは危険です。
成年後見人がいても、自宅を自由に売却できるとは限らない
本人が施設へ入所し、ローン返済のために自宅を売却したい場合でも、成年被後見人の居住用不動産を売却するには、原則として家庭裁判所の許可が必要です。許可を得ずに処分した場合、その行為は無効となります。裁判所「居住用不動産の処分」
そのため、「認知症になったら家を売ってローンを返せばよい」という計画は、想定どおりに進まない可能性があります。
特に山梨県では、地域によって住宅の再販に時間がかかり、希望価格で売れないケースもあります。売却代金でローンを完済できるのか、売却までの返済を誰が続けるのかも検討しておかなければなりません。
契約前に確認する5項目
シニアが住宅ローンを組む場合は、少なくとも次の内容を家族と共有します。
- 認知症になった場合も返済できる資金があるか
- 団信で認知症が保障されるか
- 返済口座を誰が管理するか
- 配偶者だけになっても返済を続けられるか
- 自宅を売却しても残債が残らないか
ローン残高、金融機関、返済口座、毎月の返済額、団信の保障内容、重要書類の保管場所も一覧にしておきましょう。
まとめ
認知症になったときに困るのは、ローンが突然なくなることではありません。ローンは残っているのに、本人も家族も手続きできなくなることです。
デザインハウス甲府では、月々の返済額だけでなく、認知症、介護、施設入居、配偶者の単独生活、自宅売却まで含めて資金計画を確認します。
シニアの建て替えで重要なのは、「今なら借りられるか」ではありません。本人が判断できなくなった後も、家族が困らず返済と財産管理を続けられるかです。契約前に金融機関、司法書士などの専門家、家族を交えて準備しておくことが、家と老後資金を守る最も現実的な対策です。










