Q. 防蟻工事を断ると、建物保証まで切れる?
A. 住宅会社の保証規程によっては、建物保証まで影響する場合があります。ただし、「防蟻保証だけが終了する」「シロアリに起因する構造被害だけが対象外になる」「すべての保証が終了する」など、会社によって扱いは異なります。
10年点検などで防蟻工事を提案され、
「この工事をしないと建物保証も切れます」
と言われることがあります。
防蟻工事の見積金額だけを見れば、他社へ依頼したほうが安い場合もあるでしょう。
しかし、工事を断ったことで構造や防水の長期保証まで影響するのであれば、価格だけでは判断できません。
まず確認すべきなのは、どの保証が、どこまで終了するのかです。
防蟻工事を断った場合の3つの扱い
住宅会社の保証制度は、主に次の3つに分かれます。
1.防蟻保証だけが終了する
防蟻工事を実施しなければ、その後のシロアリ被害に対する保証だけが終了する制度です。
構造や防水など、シロアリと直接関係しない保証は継続する可能性があります。
2.シロアリに起因する建物被害が対象外になる
構造保証そのものは継続していても、防蟻工事をしなかったことによって発生した構造材の損傷は保証されないという制度です。
例えば、通常の施工不良による構造上の不具合は保証されても、シロアリが柱や土台を食害したことによる損傷は対象外になる可能性があります。
3.建物を含むすべての保証が終了する
防蟻再施工を長期保証継続の必須条件とし、工事を行わなければ、その時点ですべての保証を終了すると明記した制度もあります。
この場合、防蟻工事を断る影響は、シロアリ保証だけにとどまりません。
保証制度によって差が大きいため、「他の住宅会社では大丈夫だった」という話は参考にならないことがあります。
実際に会社によって条件が違う
大和ハウス工業は、防蟻保証の満了時に保証延長工事を実施しなかったことに起因する構造・防水部分の損傷を、保証の適用除外とする旨を公表しています。
これは、防蟻工事を断っただけで直ちにすべての保証を終了させるという表現ではなく、未施工に起因する損傷を除外する考え方です。
一方、住友林業は、対象となる保証制度において、10年目の防蟻再施工を行わない場合、その時点ですべての保証が終了すると明記しています。
同じ「60年保証」でも、防蟻工事を断った場合の扱いは同じではありません。
なぜ防蟻工事が構造保証に関係するのか
シロアリは、床下や壁の内部など、普段見えにくい場所から木材を食害します。
被害が進むと、
- 土台
- 柱
- 筋かい
- 床組
- 構造用面材
- 玄関や浴室まわりの木部
などへ影響する可能性があります。
住宅会社から見れば、防蟻対策を行わなかった住宅について、シロアリ被害による構造損傷まで長期間保証することは大きなリスクになります。
そのため、防蟻工事や定期点検を構造保証の条件に組み込む制度があります。
防蟻工事をすれば絶対に被害が出ないわけではない
防蟻工事は、シロアリ被害のリスクを抑えるためのものです。
施工したからといって、将来の被害を完全に防げるとは限りません。
また、防蟻保証にも条件があります。
- 保証期間
- 保証金額の上限
- 対象となる建物部位
- 修復費用の範囲
- 駆除費用の範囲
- 定期点検の条件
- 水漏れや湿気に関する免責
- 増改築を行った場合の扱い
- 指定業者以外の施工
- 被害発見後の連絡期限
「防蟻工事をすれば安心」ではなく、被害が発生したとき、何をいくらまで保証するのかを確認してください。
防蟻工法によって再施工時期は異なる
防蟻対策には、さまざまな方法があります。
- 木部への薬剤処理
- 土壌への薬剤処理
- ホウ酸系処理
- 防蟻シート
- 基礎や配管部分の物理的対策
- ベイト工法
- 複数の方法を組み合わせた対策
工法や薬剤によって、効果の考え方、点検方法、再施工時期、保証期間が異なります。
「どの家も5年ごと」「どの家も10年ごと」と一律には判断できません。
新築時にどの防蟻工法が採用され、どの保証条件が設定されているかを確認する必要があります。
ベタ基礎でもシロアリ対策は必要?
ベタ基礎だから、シロアリが絶対に侵入しないとは言えません。
侵入経路として考えられるのは、
- 基礎のひび割れ
- 配管まわり
- 基礎と玄関土間の接合部
- 増築部分との取り合い
- 基礎断熱部分
- 外部から基礎へ接する木材や物品
- ウッドデッキや植木
などです。
シロアリ対策の必要性は、基礎形式だけではなく、構造、断熱方法、配管計画、周辺環境を含めて判断します。
防蟻工事と点検は別
「薬剤を再施工すること」と「床下を点検すること」は別です。
防蟻工事を今回は見送る場合でも、床下点検までやめるべきではありません。
点検では次の項目を確認します。
- 蟻道の有無
- 木材の食害
- 床下の湿気
- 給排水管からの漏水
- 木材の腐朽
- 基礎のひび割れ
- 配管貫通部の隙間
- 断熱材の脱落
- カビの発生
水漏れや高い湿気があれば、シロアリ以外の問題にもつながります。
防蟻保証を継続しない場合でも、定期的な点検は必要です。
指定業者でなければ保証されない場合がある
住宅会社より安い防蟻業者へ依頼しても、住宅会社の長期保証を継続できるとは限りません。
同じ薬剤を使用したとしても、
- 施工範囲
- 薬剤濃度
- 使用量
- 穿孔する位置
- 建物への影響
- 施工記録
- 施工後の保証
を住宅会社が管理できないためです。
他社へ依頼する前に、次の点を確認してください。
- 指定業者以外の施工を認めるか
- 指定薬剤を使えばよいか
- 施工前後の検査を受ければよいか
- 他社施工後も構造保証は継続するか
- どの保証だけが対象外になるか
口頭ではなく、書面で回答してもらいましょう。
防蟻工事の見積りで確認すること
見積金額だけでなく、次の項目を確認してください。
- 施工する床下面積
- 施工対象となる木部
- 使用する薬剤の商品名
- 施工方法
- 薬剤の使用量
- 玄関や浴室部分の施工方法
- 床下へ入れない部分の扱い
- 施工前のシロアリ点検
- 施工後の保証期間
- 保証金額の上限
- 被害時の修復範囲
- 定期点検の回数
- 次回の再施工時期
「防蟻工事一式」だけでは、他社との比較も施工内容の確認もできません。
工事を断る前に聞くべき10の質問
住宅会社へ次の質問をしてください。
- 防蟻工事を断ると、防蟻保証だけが終了しますか
- 構造保証や防水保証も終了しますか
- シロアリに起因する損傷だけが対象外ですか
- 保証規程のどの条項に書かれていますか
- 指定業者以外で施工しても保証を継続できますか
- 今回使用する薬剤と工法は何ですか
- 防蟻保証は何年間延長されますか
- 被害発生時の保証上限額はいくらですか
- 被害木部の修復費も保証されますか
- 今回断っても、後から再保証を受けられますか
「工事しなければ保証が切れます」という説明だけでは判断しないでください。
保証を残す費用と、守られる金額を比較する
例えば、防蟻工事へ一定額を支払い、10年間の防蟻保証を延長するとします。
そのときは、
- 10年間で支払う防蟻工事費
- 保証される損害の上限額
- 構造保証へ与える影響
- 指定業者と他社の価格差
- 住宅の構造と侵入リスク
を比較します。
防蟻工事費だけを見て高い、安いと判断するのではなく、その工事によって継続する建物保証の価値まで含めて考える必要があります。
防蟻工事を断る判断は、保証書を見てから
防蟻工事は、見えない床下へ行うため、効果を実感しにくい工事です。
だからといって、不要と決めつけるのも危険です。
一方で、「建物保証が全部切れる」と不安をあおられ、保証規程を確認しないまま契約するべきでもありません。
防蟻工事を断ると建物保証まで切れる住宅は、実際にあります。しかし、すべての住宅会社が同じ条件ではありません。
確認すべきなのは、防蟻工事の必要性だけでなく、
- 何の保証が終了するのか
- 何年間の保証が得られるのか
- 被害時にいくらまで守られるのか
- 他社施工でも認められるのか
です。
長期保証を比較するときは、大きく書かれた「60年」だけでなく、防蟻工事を断ったときの条件まで確認してください。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
大和ハウス工業は、防蟻保証の満了時に保証延長工事を実施しなかったことに起因する、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の損傷を、保証の適用除外とすると公表しています。大和ハウス工業「長期保証・アフターサポート」
住友林業は、対象となる保証制度において、10年目の防蟻再施工を行わない場合、その時点ですべての保証が終了すると明記しています。住友林業「耐久性能」
ミサワホームは、採用する防蟻工法や再処理によって保証期間やメンテナンス方法が異なることを案内しています。ミサワホーム「耐久性(防腐・防蟻)」










