追加費用が住宅ローンに入らない場合、現金はいくら必要?
A.最低でも「ローンに入らない追加費用の全額」が必要です。ただし、安全に引渡しを迎えるなら、追加費用に50万~100万円の予備費を加え、さらに生活費6カ月分は別に残しておくべきです。
例えば、住宅ローンに入らない追加費用が300万円なら、
- 支払いに必要な最低現金:300万円
- 家づくり用の予備費:50万~100万円
- 安全な現金準備額:350万~400万円
- これとは別に残す生活予備費:100万~200万円程度
という考え方になります。
つまり、預金が400万円あっても、追加費用が400万円なら「払える」とは限りません。
払った翌日に貯金がゼロになる資金計画は、完成できても安心して暮らせる資金計画ではありません。
追加費用は、なぜ住宅ローンに入らないのか?
住宅ローンは、何にでも自由に使えるローンではありません。
原則として、金融機関が確認した、
- 工事請負契約書
- 土地売買契約書
- 見積書
- 資金計画書
- 建築確認書類
- 担保評価
- 申込者の収入と返済能力
などを基に融資金額が決まります。
例えば【フラット35】では、借入額は原則として住宅の建設費または購入価額以内とされ、建設費は請負契約書などで確認されます。住宅金融支援機構「フラット35ご利用条件」
契約後に設備を変更して工事費が増えても、次のような場合はローンへ追加できない可能性があります。
- すでに融資金額が確定している
- 金銭消費貸借契約を締結済み
- 追加工事の契約書がない
- 金融機関の融資対象外
- 担保評価額を超えている
- 返済負担率の上限を超える
- 追加融資の再審査に通らない
- 住宅ローン実行後に発生した
- 住宅取得に直接関係しない費用
「家に使うお金だから、住宅ローンへ入れられる」とは限りません。
住宅ローンに入れられるかは、時期で変わる
同じ100万円の追加工事でも、発生した時期によって扱いが変わります。
| 追加費用が確定した時期 | ローンへ入れられる可能性 |
|---|---|
| 住宅ローン正式申込前 | 比較的変更しやすい |
| 事前審査後・正式申込前 | 再審査により可能な場合がある |
| 正式審査中 | 金額変更と再審査が必要になる可能性 |
| 融資承認後・ローン契約前 | 金融機関の承認が必要 |
| ローン契約後・実行前 | 変更が難しくなりやすい |
| 住宅ローン実行後 | 同じローンへの追加は原則困難 |
「銀行の審査に通ったから、あとで100万円くらい増やせるだろう」という考え方は危険です。
審査済みの借入額を増やせば、返済負担率や担保評価をもう一度確認される場合があります。再審査の結果、増額できないだけでなく、当初の融資日程が遅れる可能性もあります。
現金必要額の計算方法
最低限必要な現金は、次の計算で確認できます。
最低必要現金=ローン対象外の追加工事+住宅ローン実行前の支払い+融資対象外の諸費用-手元に残っている自己資金
安全な資金計画は、さらに次のように考えます。
安全な現金準備額=最低必要現金+家づくり予備費50万~100万円
この金額とは別に、病気、失業、車の故障、教育費などに備える生活予備費を残します。
30坪の家で追加費用が発生した例
工事請負契約額2,200万円、住宅ローンも2,200万円で承認された後に、次の費用が発生したとします。
| 追加項目 | 金額 |
|---|---|
| 地盤改良工事 | 80万円 |
| コンセント・照明追加 | 25万円 |
| カップボード・設備変更 | 45万円 |
| 外構工事の追加 | 90万円 |
| エアコン・カーテン | 70万円 |
| 水道・その他の追加費用 | 20万円 |
| 追加費用合計 | 330万円 |
この330万円が住宅ローンに入らない場合、最低330万円の現金が必要です。
さらに、引渡しまでの予備費を70万円残すなら、
330万円+70万円=400万円
が家づくりに使える現金の目安です。
生活予備費として150万円を別に残すなら、必要な預金残高は、
400万円+150万円=550万円
となります。
預金が400万円しかない状態で330万円を払えば、手元には70万円しか残りません。引越し直後に車検、家電の故障、税金、医療費が重なれば、すぐに資金不足になります。
追加費用以外にも現金が必要になる
住宅ローンに入らない可能性があるのは、追加工事だけではありません。
建築・土地関係
- 契約後の設備変更
- 地盤改良費
- 残土処分費
- 水道加入金・負担金
- 造成・擁壁工事
- 外構の追加工事
- 電柱移設費
- 施主支給品
- 確認申請後の変更費
- キャンセル料・再発注費
引越し・生活関係
- 引越し代
- 仮住まい費用
- 家具・家電
- カーテン
- エアコン
- インターネット工事
- 不用品処分
- 新居で必要になる日用品
ローン・登記関係
- 融資手数料
- 物件検査手数料
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 火災・地震保険料
- 印紙税
- つなぎ融資の利息・手数料
- 固定資産税などの精算金
住宅ローン商品によっては、一部の外構、造成、地盤改良、設計費、諸費用などを融資対象にできる場合もあります。
一方、【フラット35】でも抵当権設定費用、火災保険料、融資手数料、物件検査手数料などは利用者負担とされています。実際にローンへ含められるかは、金融機関と商品ごとの確認が必要です。住宅金融支援機構「フラット35の費用」
「ローンに入る」と「先に払える」は別問題
住宅ローンの対象になる費用でも、支払い時期によっては一時的に現金が必要です。
注文住宅では、住宅会社から次のような支払いを求められることがあります。
- 契約金
- 着工金
- 上棟金・中間金
- 最終金
- 追加工事代
一方、住宅ローンは建物完成時にまとめて実行される商品があります。
その場合は、
- 自己資金で立て替える
- つなぎ融資を使う
- 分割融資を利用する
- 住宅会社と支払時期を調整する
などの対応が必要です。
【フラット35】にも、中間資金を先行・分割して受け取れる金融機関の商品がありますが、すべての金融機関が対応しているわけではありません。住宅金融支援機構「フラット35パッケージ」
したがって、総額だけでなく、何月にいくら支払うのかという資金繰り表が必要です。
追加費用をカード払いにすればよい?
住宅ローン実行前のカードローン、キャッシング、リボ払い、家電の分割払いには注意が必要です。
金融機関は住宅ローン以外の借入れも含めて返済負担を確認します。【フラット35】でも、自動車ローン、教育ローン、カードローン、キャッシング、分割払い、リボ払いなどが総返済負担率の計算対象です。住宅金融支援機構「総返済負担率」
住宅ローン承認後でも、新たな借入れによって、
- 借入額を減らされる
- 再審査になる
- 融資実行が遅れる
- 最悪の場合は融資を受けられなくなる
可能性があります。
追加費用を払えないからといって、銀行へ相談せずにカードローンを使ってはいけません。
現金が足りないと分かったらどうする?
まず、追加工事を発注する前に止めることです。
順番は次のとおりです。
- 追加後の最終総額を出してもらう
- 住宅ローンに入る費用と入らない費用を分ける
- 金融機関へ増額可能か確認する
- 再審査に必要な書類と日数を確認する
- 現金支払いの時期を一覧にする
- 設備・外構・面積を見直す
- 入居後に施工できる工事を延期する
- 生活予備費を残せるか確認する
削減しやすい候補は、次のようなものです。
- 外構を一部後回しにする
- カップボードを置き家具へ変更する
- エアコンの設置台数を段階的にする
- 照明やカーテンを再選定する
- 設備のグレードを標準へ戻す
- 造作収納を市販家具へ変更する
ただし、断熱、気密、耐震、防水、構造計算など、完成後に簡単に直せない性能を先に削るのはおすすめできません。
見た目や設備は後から変えられますが、壁の中の性能は後から変えると高額になります。
変更工事は金額確認前に発注しない
追加費用で最も危険なのは、
とりあえず工事を進めてください。ローンは後で考えます。
という進め方です。
変更するたびに、次の書面を出してもらいましょう。
- 変更内容
- 追加金額
- 減額金額
- 税込差額
- 住宅ローンへ入れられるか
- 現金支払額
- 支払期限
- 工期への影響
- 変更後の最終総額
金額に納得し、資金を確保してから変更契約書へ署名します。
口頭で「数万円くらいです」と言われた変更が10件重なれば、簡単に100万円を超えます。
住宅会社に確認する質問
契約前には、次のように質問してください。
契約後に追加費用が出た場合、住宅ローンへ組み込める期限はいつですか。ローンに入らなかった場合、引渡しまでに必要になる最大現金額はいくらですか。
さらに、
地盤改良、外構、照明、カーテン、エアコン、登記、保険、引越しまで含めた現金支払い表を出してください。
と伝えましょう。
「ローンに入れられると思います」では不十分です。
金融機関名、対象費用、手続期限、再審査の有無まで確認する必要があります。
総額表示で本当に必要なもの
本当の総額表示は、建物価格だけを見せるものではありません。
少なくとも次の3つを分けて提示する必要があります。
| 表示する金額 | 内容 |
|---|---|
| 住宅取得総額 | 土地・建物・付帯工事・諸費用 |
| 住宅ローン予定額 | 金融機関から借りる予定額 |
| 必要現金額 | 契約から入居までに現金で払う金額 |
さらに、必要現金額は支払い時期別に表示します。
- 契約時
- 着工時
- 工事中
- 引渡し時
- 入居後
これがなければ、「総額は分かっているのに途中で現金が足りない」という事態が起こります。
結論
追加費用が住宅ローンに入らない場合、最低限必要なのは追加費用の全額です。
しかし、安全な家づくりには、
追加費用全額+家づくり予備費50万~100万円+別に残す生活費6カ月分
が必要です。
追加費用300万円なら、家づくりに使える現金を350万~400万円確保し、生活予備費は別に残すのが安全です。
正直な住宅会社は、追加費用が発生してから「現金でお願いします」と言うのではなく、契約前に、
- 追加費用の可能性
- ローン対象になる範囲
- 金額変更の期限
- 現金支払いの時期
- 最大必要現金額
まで説明します。
住宅ローンが通った金額と、家が完成する金額は同じとは限りません。最後に確認するべきなのは借入可能額ではなく、引渡しの日に手元へいくら残るかです。










