資産のほとんどが「自宅(不動産)」になってしまうシニアの、現金(流動資産)との黄金比率は?
こんなご相談をいただきました
「65歳で、預貯金と退職金を使って実家を建替える予定です。借金を残さないため、できるだけ現金で支払いたいのですが、建替え後にいくら残せば安心でしょうか?」
A. 老後の資産をほとんど自宅に変えてしまう建替えは危険です。万人共通の黄金比率はありませんが、建替え後も最低5年分、できれば10年分の生活費・医療費・介護費を、すぐ使える現金で残す計画をおすすめします。
「3,000万円の家があるから安心」は危険
自宅は資産ですが、預金のように必要な金額だけを引き出せません。
例えば、土地と建物に3,000万円の価値があっても、手元の預金が200万円しかなければ、次の支出に対応できない可能性があります。
- 入院、治療、介護費
- 有料老人ホームなどの入居一時金
- 車の買替えや修理
- 外壁、屋根、給湯器などの修繕
- 子どもへの援助
- 葬儀や相続手続き
- 収入減少や物価上昇
家を売れば現金化できますが、買い手が決まり、代金を受け取るまでには時間がかかります。希望価格で売れる保証もありません。
黄金比率より「必要現金額」で判断する
「不動産50%・現金50%」などの比率だけで判断するのはおすすめしません。
同じ2,000万円の預金があっても、年金額、健康状態、家族構成、車の保有、将来の施設入居によって必要額は変わるからです。
まず、建替え後に必要な現金を次の3つに分けます。
1.生活予備費
年金だけでは不足する毎月の生活費を計算します。
毎月5万円不足する場合、10年間では単純計算で600万円です。物価上昇や家電の買替えも考え、余裕を加えます。
2.医療・介護予備費
夫婦それぞれについて、入院、在宅介護、施設入居の可能性を想定します。
介護費は毎月の支出だけでなく、住宅改修、福祉用具、施設の入居一時金など、まとまった資金が必要になる場合があります。
3.住宅維持費
新築でも、将来の修繕費がなくなるわけではありません。
給湯器、エアコン、換気設備、太陽光発電設備などは、建物本体より早く交換時期を迎えます。10年、15年、20年後の修繕費を別に確保しておく必要があります。
建替え予算は「払える額」で決めない
預貯金が3,000万円あり、建替え総額が2,500万円なら、計算上は現金で支払えます。
しかし、完成後に残る現金は500万円です。夫婦の生活費不足が年間60万円なら、それだけで約8年分しかありません。ここから医療費、介護費、車、住宅修繕費まで支払うことになります。
この場合は、次のような調整を検討します。
- 建物を小さくして総額を下げる
- 設備や外構の優先順位を見直す
- 預金を使い切らず、一部を住宅ローンにする
- 建替えではなく減築やリフォームと比較する
- 土地の一部や不要な不動産を先に整理する
無借金にこだわって現金を失うより、返済可能な範囲で少額を借り、手元資金を残した方が安全な場合があります。
山梨県では「あとで売ればよい」と考えない
山梨県の戸建ては、地域によって再販性に大きな差があります。
甲府市内でも、駅、道路、買物、病院への距離、土地の形状、接道条件によって売却期間と価格が変わります。郊外や市街化調整区域では、建物に多額の費用をかけても、その金額に見合う価格で売れない可能性があります。
建築費2,500万円の家が、10年後に2,000万円で売れるとは限りません。建物の性能や長期優良住宅の認定があっても、買い手がいなければ現金化できません。
建替え前に、不動産会社へ次の2点を確認しておきましょう。
- 現在の土地はいくらで売却できるか
- 新築後に売る場合、どの程度の需要が見込めるか
リバースモーゲージやリースバックは最後の保険
自宅を現金化する方法として、リバースモーゲージやリースバックがあります。
ただし、山梨県では担保評価や再販性の問題から、希望する金額を借りられない、または融資対象にならないケースがあります。
リースバックも、売却価格が相場より低くなったり、売却後の家賃負担が続いたりするため、慎重な比較が必要です。国土交通省も、高齢者の自宅売却やリースバックに関するトラブルへ注意を呼びかけています。国土交通省「高齢者の自宅売却トラブル」
「困ったら家を担保にすればよい」ではなく、利用できなかった場合でも生活できる資金計画が必要です。
建替え前に確認する5つの数字
建築会社との契約前に、最低でも次の数字を出してください。
- 建替えにかかる本当の総額
- 完成後に残る預貯金
- 年金収入と年間生活費の差額
- 介護・医療・施設入居の予備費
- 10年から20年間の住宅修繕費
建物本体価格だけではなく、解体、仮住まい、2回の引越し、登記、外構、地盤改良まで含めて計算します。
デザインハウス甲府からのアドバイス
シニアの建替えで大切なのは、豪華な家を残すことではありません。
家を建てた後も、必要なときに使える現金を残すことです。
私たちは「この予算なら建てられます」だけでは判断しません。90歳までの収支、介護費、修繕費、完成後の現金残高まで確認し、必要であれば面積や設備を再設計します。
建替え後に現金がほとんど残らないなら、それは予算内ではありません。
自宅は小さくても、現金には余裕がある。シニアの建替えでは、その状態の方が家族にも本人にも安心です。










