新築から15年後に夫婦どちらかが「有料老人ホーム」に入る場合の、自宅の「売却・賃貸・維持」の収支比較
A. 夫婦の一方が施設へ入ると、家の維持費はほとんど減らないまま、施設費が月15万~30万円以上加わる可能性があります。建て替え時には、15年後に「残った配偶者が住み続ける・売る・貸す」の3案を資金計画へ入れてください。
65歳で建て替えれば、15年後は80歳です。この頃は、外壁やシーリング、給湯器などの修繕時期とも重なります。
介護費だけを考え、住宅ローン、固定資産税、保険、修繕費を見落とすと、家は新しくても老後資金が急速に減ります。
施設費は表示された月額だけではない
有料老人ホームでは、一般的に次の費用が発生します。
- 入居一時金または前払金
- 家賃
- 管理費
- 食費
- 水道光熱費
- 介護保険の自己負担
- 医療費・薬代
- おむつ・日用品
- 洗濯・理美容
- 通院付き添い
- 個別サービス費
「月額15万円」と表示されていても、すべてを含めると月20万円を超えることがあります。施設ごとの費用は重要事項説明書で確認します。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、施設ごとの利用料やサービス内容を確認できます。介護サービス情報公表システム
夫婦の生活費が二重になる
例えば、次のような家計です。
| 支出 | 月額例 |
|---|---|
| 施設へ入る配偶者 | 20万円 |
| 自宅に残る配偶者の生活費 | 15万円 |
| 固定資産税・保険・修繕積立 | 3万円 |
| 合計 | 38万円 |
夫婦の年金手取りが月24万円なら、毎月14万円の赤字です。
10年間続けば、
14万円×12か月×10年=1,680万円
になります。
施設入居後は食費が1人分減っても、住宅の固定資産税、火災保険、インターネット、修繕費などは半分になりません。
3つの選択肢を比較する
| 選択肢 | メリット | 主なリスク |
|---|---|---|
| 残った配偶者が住む | 住環境を変えずに済む | 二重生活費、修繕・管理負担 |
| 自宅を売却する | 介護資金を現金化できる | 希望価格で売れない、転居が必要 |
| 自宅を賃貸する | 家賃収入を得られる | 空室、修繕、管理、貸せない立地 |
| 空き家で維持する | 将来戻れる可能性を残す | 収入なしで税金・管理費だけ発生 |
残った配偶者が住み続ける場合
住み慣れた家で生活できる安心感があります。特に、近所、病院、買い物、子どもの家が近ければ、住み続ける価値があります。
ただし、一人で暮らすには家が大き過ぎると、掃除、庭、光熱費、防犯の負担が増えます。
建て替え時から次のようにしておくと、一人になった後も暮らしやすくなります。
- 24~28坪程度へコンパクト化
- 1階または平屋で生活を完結
- 寝室とトイレを近づける
- 庭や植栽を増やし過ぎない
- 防犯・非常通報設備を準備
- 車を手放した後の移動手段を確認
売却する場合
売却できれば、施設費や残った配偶者の住み替え資金を確保できます。また、固定資産税、火災保険、庭や外壁の維持費がなくなります。
ただし、山梨県の戸建住宅は、立地によって再販性が大きく異なります。建築費2,500万円の家が、15年後に同程度の価格で売れるとは限りません。
査定では、建物性能より次の条件が強く影響することがあります。
- 駅、病院、スーパーまでの距離
- 前面道路と接道条件
- 土地の形や高低差
- 市街化調整区域か
- 浸水・土砂災害リスク
- 下水道・浄化槽
- 地域の買い手の数
資金計画では、楽観的な売却価格ではなく、土地価格を中心とした低めの金額でも成立するか確認します。
賃貸する場合
家賃収入で施設費の一部を補える可能性がありますが、「新しい家だから貸せる」とは限りません。
仮に家賃が月9万円でも、すべてが手元に残るわけではありません。
- 管理委託料
- 固定資産税
- 火災保険
- 空室期間
- 入居者募集費
- 給湯器・エアコンなどの修理
- 退去時の原状回復
- 所得税・住民税
これらを差し引くと、実質収入が月5万~7万円程度になる場合もあります。
また、シニア向けに特殊な間取りへし過ぎると、一般の子育て世帯へ貸しにくくなります。段差のない2LDK・3LDK、駐車場2台など、地域の賃貸需要も意識します。
住宅ローン返済中に賃貸へ出す場合は、金融機関の承諾が必要になることがあります。
空き家のまま維持するのは最も負担が大きい
夫婦とも施設へ移るなどして空き家になった場合でも、次の費用は続きます。
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 庭木・草刈り
- 換気・通水
- 防犯
- 外壁・屋根の修繕
- 水道・電気の基本料金
人が住まない家は、漏水、カビ、害虫、設備故障へ気づくのが遅れます。「いつか戻るかもしれない」という理由だけで何年も維持すると、老後資金を消耗します。
空き家にするなら、「1年以内に売却する」「半年後に賃貸判断する」など期限を決めてください。
認知症になる前に権限を整理する
家の所有者が施設へ入り、認知症などで意思能力を失うと、家族が勝手に売却や賃貸を行うことはできません。
将来、自宅を介護費へ変える可能性があるなら、元気なうちに次の対策を検討します。
- 建物と土地の名義確認
- 家族信託
- 任意後見契約
- 遺言書
- 共有名義の整理
- 配偶者や子どもとの方針確認
家族信託を利用する場合も、売却・賃貸権限が契約へ適切に記載されている必要があります。司法書士、弁護士、税理士へ事前に相談しましょう。
建て替え時に準備する金額
15年後の施設入居を想定するなら、少なくとも次の資金を建築費とは別に考えます。
- 施設入居の初期費用
- 施設費と年金の不足額5~10年分
- 自宅の外壁・屋根修繕費150万~200万円
- 残った配偶者の生活予備費
- 売却までの維持費
- 引越し・家財処分費
これらを残せないほど建築費を使う計画は、見直す必要があります。
デザインハウス甲府では、新築時の夫婦2人の暮らしだけでなく、15年後に一人が施設へ入るケース、一人暮らしになるケース、家を売却するケースまで資産残高を確認します。
老後の家は「最後まで住む前提」だけで建ててはいけません。15年後に住む人が一人になっても維持でき、必要なら現金化できる家にしておくことが重要です。










