シニアの家に和室は必要?小上がりとフラットのどちらがよい?
結論
シニア世代だからといって、和室が必ず必要とは限りません。
判断基準は「畳が好きか」だけではなく、次の3点です。
- 床に座って自力で立ち上がれるか
- 布団で寝続けられるか
- 来客が本当に泊まりに来るか
今後の安全性と介護まで考えるなら、独立した和室より、リビングの一部をフラットな畳コーナーにする方が使いやすいケースが多くなります。
小上がりは便利に見えますが、段差が将来の転倒原因になる可能性があります。
「来客用の和室」は本当に必要か
和室を希望する理由として多いのが、「子どもや孫が泊まりに来たときのため」です。
しかし、実際に宿泊するのが年に1~2回であれば、そのために毎日使わない部屋をつくることになります。
例えば3畳の和室でも、面積は約1.5坪です。仮に建築総額を坪80万円で考えると、単純計算で約120万円分の面積を使用します。さらに、畳、建具、収納などの費用もかかります。
年間2回の宿泊のために100万円以上の空間を確保するより、普段はリビングとして使い、必要なときだけ布団を敷ける場所をつくる方が合理的です。
「来客があるかもしれない」ではなく、過去3年間に何人が何泊したのかを確認して判断しましょう。
シニアに独立和室をおすすめしにくい理由
独立した和室には、落ち着きがある、仏間を設けやすい、来客を泊められるなどのメリットがあります。
一方で、シニア住宅では次の問題が考えられます。
- 普段使わず物置になる
- 掃除する部屋が増える
- 布団の上げ下ろしが負担になる
- 床から立ち上がりにくくなる
- 将来、車椅子で使いにくい
- 介護ベッドを置きにくい
- 建築面積と総額が増える
特に布団生活は、毎日の立ち座りに加え、布団を押入れへ収納する負担があります。現在は問題がなくても、10年後、15年後も続けられるとは限りません。
老後の寝室は、畳に布団よりも、ベッドを置ける洋室を基本にした方が安全です。
フラットな畳コーナーのメリット
リビングと同じ高さで畳を敷くフラットな畳コーナーは、独立和室より用途を広げられます。
- 洗濯物をたたむ
- 昼寝をする
- 孫を遊ばせる
- 一時的に布団を敷く
- 仏壇を置く
- 介護時の休憩場所にする
段差がないため、つまずきにくく、掃除もしやすくなります。将来、畳をフローリングへ変更し、リビングの一部として使うことも比較的容易です。
独立させる場合でも、完全な壁で囲わず、引き戸で仕切れる設計にすれば、普段はリビングと一体で使えます。
小上がりは本当にシニア向きか
小上がりには、腰掛けやすい、空間に変化が出る、床下収納をつくれるというメリットがあります。
床へ直接座るより、小上がりの縁に腰掛けた方が立ち上がりやすい人もいます。その場合は、ベンチのように使える高さと手すりを計画すれば有効です。
ただし、小上がりには明確なデメリットがあります。
- 夜間に段差を踏み外す
- 視力が低下すると段差を認識しにくい
- 車椅子で上がれない
- 介護者が移乗を補助しにくい
- ロボット掃除機が一度に掃除できない
- 床下収納は腰をかがめないと使えない
消費者庁は、加齢による筋力や視力の低下によって、とっさの対応が難しくなり、住宅内の段差が転倒・転落につながると注意を呼びかけています。消費者庁「住環境における高齢者の事故」
「収納が増えるから」という理由だけで小上がりを採用するのはおすすめしません。
小上がりを採用するなら必要な対策
現在の身体状況を確認したうえで小上がりを採用する場合は、次の点に配慮します。
- 腰掛けやすい高さにする
- 上り下りする位置を限定する
- 壁側に手すりを設ける
- 段差部分の色を変えて見やすくする
- 足元照明を設置する
- 角を丸くする
- 通路の途中に配置しない
- 将来撤去できる構造にする
中途半端な1~3cm程度の段差は、かえって気づきにくく、つまずく原因になります。国土交通省の高齢者向け住宅情報でも、生活動線上の小さな段差への注意が示されています。サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
小上がりをつくるなら、単なるデザインではなく、座る・立つという動作を実際に確認して高さを決める必要があります。
畳だから転んでも安全とは限らない
畳はフローリングより柔らかい印象がありますが、転倒事故を防げるわけではありません。
畳の縁、フローリングとの境目、置き畳のずれがつまずきの原因になることもあります。市販の置き畳を後から敷く場合は、滑り止めと段差を確認してください。
また、車椅子や介護ベッドを使用すると、畳がへこんだり傷んだりする可能性があります。将来、寝室として使用する可能性があるなら、畳からフローリングへ変更できる設計にしておくと安心です。
仏壇のためだけに和室をつくる必要はない
「仏壇があるから和室が必要」と考える人もいますが、現在は洋室やリビングに合うコンパクトな仏壇も増えています。
仏壇の寸法を先に測り、リビングの一角や収納の一部に専用スペースを設ければ、独立した和室をつくらなくても対応できます。
重要なのは部屋の名称ではなく、日常的に手を合わせやすく、掃除や換気ができる場所に配置することです。
和室をつくるか判断する5つの質問
間取りを決める前に、次の質問へ具体的に答えてみましょう。
- 現在、週に何回畳へ座っているか
- 床から手を使わず立ち上がれるか
- 10年後も布団を上げ下ろしできるか
- 過去3年間で来客は何泊したか
- 和室をなくした分、建築費を抑えたいか
回答が曖昧であれば、独立和室をつくる必要性は高くありません。
デザインハウス甲府の考え方
シニア住宅では、「昔の家にあったから」「来客が泊まるかもしれないから」という理由だけで和室をつくるべきではありません。
使わない和室にも建築費、固定資産税、冷暖房、掃除、将来の修繕費がかかります。
畳で過ごす習慣がある人には、リビングと一体で使えるフラットな畳スペースを検討します。小上がりは、実際の立ち座りを確認し、将来の車椅子生活まで考えて採用を判断します。
和室は、あれば便利な部屋ではありません。毎日使う人にだけ価値がある部屋です。
老後の家づくりでは、年に数回の来客より、そこに暮らす本人の毎日の安全と使いやすさを優先することが、後悔を防ぐポイントです。










