認知症対策としての「任意後見制度」と建替え資金管理の組み合わせ。
こんなご相談をいただきました
「高齢の親名義の家を建替える予定です。将来、親が認知症になっても、子どもが建替え契約や資金の支払いをできるように、任意後見制度を利用した方がよいでしょうか?」
A. 任意後見制度は有効な備えですが、契約を結んだだけでは、子どもが親の預金を自由に使えるようになるわけではありません。建替えを考えているなら、親の判断能力が十分なうちに、資金計画・名義・代理権の範囲まで具体的に決めておく必要があります。
任意後見制度とは?
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに、将来の財産管理などを任せる人と内容を決め、公正証書で契約しておく制度です。
ただし、契約後すぐに任意後見人が財産を管理する制度ではありません。
本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が生じます。法務省「任意後見制度について」
つまり、次の2つの期間を分けて考える必要があります。
- 判断能力がある期間:原則として本人が契約・支払いを行う
- 判断能力が低下した後:任意後見監督人の選任後、契約内容の範囲で任意後見人が代理する
「子どもだから払える」は通用しない
親名義の預金を、子どもが建替え費用として勝手に引き出すことはできません。
金融機関が認知症の疑いを把握すると、預金の払戻しや高額な振込みが難しくなる場合があります。委任状を用意しても、親に契約内容を理解する能力がないと判断されれば、建築契約そのものが進まない可能性もあります。
特に建替えでは、次のような高額な手続きが連続します。
- 解体工事の契約と支払い
- 建築工事請負契約
- 着工金・中間金・最終金の支払い
- 住宅ローンやつなぎ融資の手続き
- 登記、保険、補助金申請
- 仮住まいや引越しの契約
途中で判断能力が低下すると、工事が止まるだけでなく、追加費用や仮住まい期間の延長につながる危険があります。
任意後見契約には具体的な代理権が必要
任意後見人に任せたい内容は、契約時に具体的に定めます。
建替えを想定するなら、単に「財産管理を任せる」ではなく、次の権限を含めるか専門家と検討します。
- 預貯金の管理・払戻し・工事代金の支払い
- 建物の解体および建築工事請負契約
- 設計変更や追加工事の契約
- 不動産の登記や各種申請
- 仮住まい、引越し、火災保険などの契約
- 建築会社や金融機関との協議
任意後見人が持つのは、契約で定めた範囲の「代理権」です。契約に含まれていない行為まで、当然にできるわけではありません。
任意後見契約があれば必ず建替えられるのか?
必ずしも建替えられるとは限りません。
任意後見人には、本人の財産と生活を守る義務があります。多額の建築費を使う計画が、本人の年齢、健康状態、介護費、預金残高、完成後に住める期間などから見て合理的かどうかが問われます。
例えば、本人の預金が2,500万円しかないのに、2,000万円を建替えに使えば、介護や施設入居に必要な資金が不足するかもしれません。
「新しい家を建ててあげたい」という家族の思いだけではなく、その建替えが本当に親本人の利益になるのかを説明できる資金計画が必要です。
建替えを予定しているなら早めに決めること
任意後見制度は、認知症になってから本人が契約する制度ではありません。
親の判断能力が十分なうちに、家族で次の内容を確認してください。
- 誰のために建替えるのか
- 誰が建築費を負担するのか
- 土地と建物を誰の名義にするのか
- 建替え後、何年間住む想定なのか
- 介護・医療・施設費をいくら残すのか
- 判断能力が低下したとき、誰が手続きを引き継ぐのか
- 本人が住めなくなった後、家をどうするのか
任意後見だけでなく、判断能力がある期間の財産管理委任契約や家族信託などが適する場合もあります。制度ごとに権限・費用・監督方法が異なるため、司法書士や弁護士などへの事前相談が必要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
建替えで最も危険なのは、親が認知症になった後に、家族が慌てて資金や名義の問題を整理しようとすることです。
任意後見契約を結ぶこと自体が目的ではありません。重要なのは、建替え契約・工事代金・老後資金・将来の家の処分まで、本人の意思が確認できるうちに決めておくことです。
デザインハウス甲府では、建物の見積もりだけでなく、完成後に残る預金、介護費、名義、相続まで含めて建替え計画を確認します。
「建てられるか」ではなく、認知症や介護が始まっても家族が困らない建替えになっているか。ここまで確認してから契約することが、シニア世代の建替えには欠かせません。










