解体工事前の「アスベスト(石綿)事前調査」の義務化と追加費用の目安。
こんなご相談をいただきました
築45年の実家を解体して建て替える予定です。
解体会社から「アスベスト事前調査が必要で、見つかった場合は追加費用がかかる」と言われました。一般的な木造住宅でも調査は必要なのでしょうか。また、どのくらいの費用を見込めばよいですか?
A. 木造住宅を含め、建築物の解体・改修工事では、原則として工事前にアスベストの有無を調査します。さらに、一定規模以上の工事では行政への調査結果報告も必要です。
アスベストがなくても事前調査は必要
「鉄骨造やビルだけの問題」「吹付け材がなければ関係ない」と思われがちですが、アスベストは一般的な木造住宅にも使用されていました。
使用されている可能性がある建材には、次のようなものがあります。
- スレート屋根材
- 窯業系サイディング
- 軒天材
- ケイ酸カルシウム板
- 石こうボードの一部
- ビニール床タイル
- 接着剤
- 配管の保温材
- 吹付け材
- 外壁や下地調整材
アスベストの使用が確認されなかった場合でも、「調査をしなくてよい」という意味ではありません。
調査を行った結果、使用されていないことを確認する必要があります。
2023年10月から資格者による調査が必要
建築物の解体・改修工事では、2023年10月1日以降、原則として資格を持つ建築物石綿含有建材調査者などが事前調査を行います。
調査は、解体会社の担当者なら誰でもできるわけではありません。厚生労働省・建築物石綿含有建材調査者
依頼前に次の点を確認してください。
- 調査者の氏名
- 保有資格
- 調査費用
- 分析が必要な場合の費用
- 調査報告書の提出時期
- 行政報告を誰が行うか
「見た感じでは入っていません」という説明だけで解体を始めてはいけません。
事前調査の3段階
1. 書面調査
設計図、仕様書、竣工年、改修履歴、建材の商品名などを確認します。
当時の図面が残っていない古い住宅では、書面だけで判断できないことがあります。
2. 現地での目視調査
資格者が建物を確認し、屋根、外壁、天井、床、配管など、使用されている建材を特定します。
表面だけでなく、増築やリフォームで追加された建材にも注意が必要です。
3. 試料採取と分析
書面と目視でアスベストの有無を判断できない建材は、一部を採取して分析機関で調べます。
分析を行わず、「アスベスト含有あり」とみなして適切な方法で撤去する場合もあります。
80㎡未満なら調査不要、ではない
よくある誤解が、「床面積80㎡未満なら調査しなくてよい」というものです。
80㎡は、解体工事における行政への事前調査結果報告の基準です。
建築物の解体部分の床面積が合計80㎡以上の場合、原則として調査結果を電子システムで行政へ報告します。環境省・石綿事前調査結果の報告
| 工事内容 | 行政への報告基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 解体部分の床面積合計80㎡以上 |
| 建築物の改修・補修 | 請負代金合計100万円以上・税込 |
| 対象工作物の解体・改修 | 請負代金合計100万円以上・税込 |
ただし、この基準未満でも事前調査そのものは必要です。
80㎡未満=調査不要ではなく、80㎡未満=電子報告の対象外となる場合がある、という違いです。
追加費用はどのくらいかかる?
一般的な戸建住宅における費用の目安は、次のとおりです。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 書面・目視による事前調査 | 3万~10万円程度 |
| 試料の分析 | 1検体3万~5万円程度 |
| 複数箇所の分析 | 10万~20万円以上の場合あり |
| 成形板などの撤去・処分 | 数十万円~100万円以上の場合あり |
| 吹付け材などの除去 | 数百万円規模になる場合あり |
これは一般的な目安です。建物の大きさ、建材の種類、使用量、足場、養生方法、処分場までの距離によって変わります。
アスベストが見つかっただけで必ず数百万円かかるわけではありません。一方で、解体見積もりにアスベスト処理費が含まれていなければ、契約後に大きな追加費用が発生する可能性があります。
危険度によって撤去方法が違う
アスベスト含有建材は、発じん性などによって対策が異なります。
レベル1
吹付け石綿など、飛散性が非常に高い建材です。隔離、負圧管理、専門的な除去作業が必要になり、費用も高額になります。
レベル2
保温材、断熱材、耐火被覆材などです。飛散防止措置を講じた専門的な撤去が必要です。
レベル3
スレート、サイディング、床材などの成形板です。戸建住宅で比較的見つかりやすい建材ですが、割らずに撤去する、湿潤化するなどの対策が必要です。
レベル3だから通常の廃材と同じように重機で砕いてよい、ということではありません。
特定の石綿が見つかると届出期間も必要
吹付け石綿、石綿含有断熱材、保温材、耐火被覆材などが使用されている場合、除去作業開始の14日前までに、都道府県などへの届出が必要になる場合があります。環境省・建物を壊すときの石綿対策
アスベストが解体直前に見つかると、追加費用だけでなく、解体工期や新築着工も遅れる可能性があります。
仮住まいの延長料金、引っ越し日の変更、住宅ローンの実行時期にも影響するため、早めの調査が重要です。
契約後の追加請求を防ぐ確認事項
解体工事の見積書には、次の内容を明記してもらいましょう。
- 事前調査費が含まれているか
- 資格者による調査か
- 分析費は何検体まで含まれるか
- 行政報告費が含まれているか
- アスベストが見つかった場合の単価
- 養生・撤去・運搬・処分費の内訳
- 追加工事前に施主の承認を得るか
- 工期が延びる場合の扱い
- 調査報告書と処分記録を受け取れるか
「アスベストが出た場合は別途」という一行だけでは、追加金額を判断できません。
少なくとも、屋根、外壁、軒天、床材など、発見される可能性がある建材ごとの撤去単価を確認してください。
安い解体見積もりほど調査範囲を確認する
他社より100万円安い解体見積もりでも、アスベスト調査や処分費が含まれていなければ、最終的には高くなる可能性があります。
次のような説明をする業者には注意が必要です。
- 木造だからアスベストはない
- 80㎡未満だから調査不要
- 解体しながら見つければよい
- 全部まとめて通常廃材として処分する
- 調査報告書は発行できない
- 資格者名を答えられない
アスベストを含む建材を通常の重機解体で破砕すると、作業員だけでなく、近隣住民や施主の健康にも影響する可能性があります。
デザインハウス甲府からのアドバイス
建て替えで怖いのは、アスベストが見つかることより、調査せずに予算と工期を決めてしまうことです。
デザインハウス甲府では、築年数、図面、改修履歴を確認し、解体契約前に次の費用を整理します。
- 事前調査
- 必要な検体分析
- アスベスト撤去・処分
- 行政への報告
- 養生と近隣対策
- 追加費用に備える予備費
「解体費150万円」と聞いて契約し、調査後に250万円へ増えるのでは、正しい総額表示とはいえません。
アスベスト処理費を最初から完全に確定できない場合でも、想定される建材、単価、最大リスクを契約前に説明してもらうべきです。
安い解体価格ではなく、調査・処分・届出まで含めた総額で比較してください。










