視力が低下しても見やすい「照明の明るさ(ルクス)」とスイッチの位置。
こんなご相談をいただきました
71歳です。建て替えを機に、年齢を重ねても安全に暮らせる照明にしたいと考えています。
部屋ごとに何ルクスくらい必要でしょうか。また、車椅子になった場合も使いやすいスイッチの高さを教えてください。
A. シニア住宅では、単に照明を強くするのではなく、部屋全体の明暗差を減らし、必要な場所へ補助照明を設けることが重要です。明る過ぎる照明は、かえってまぶしく見づらくなることがあります。
加齢によって必要な明るさは変わる
年齢を重ねると、瞳孔から取り込める光の量が減り、暗い場所で物を見分けにくくなります。
さらに、次のような変化も起こります。
- 小さな文字が読みづらくなる
- 暗い場所に目が慣れるまで時間がかかる
- 床の段差を認識しにくくなる
- 光をまぶしく感じやすくなる
- 白と薄い色の違いを判断しにくくなる
若い世代と同じ照明計画では、「照明は点いているのに見えづらい」という問題が起こることがあります。
JISの照明基準でも、生活行為や年齢に応じた照度を確保する考え方が示されています。住宅照明と推奨照度の考え方
部屋ごとの明るさの目安
照度は「ルクス(lx)」で表します。ルクスとは、床やテーブルなど、照らされる面の明るさです。
シニア住宅では、次の数値を設計上の目安として考えます。
| 場所・生活行為 | 明るさの目安 |
|---|---|
| 玄関・廊下 | 100~200ルクス |
| 階段 | 150~300ルクス |
| リビング全体 | 150~300ルクス |
| 読書・新聞 | 500ルクス前後 |
| ダイニングテーブル | 300~500ルクス |
| キッチン作業台 | 500~750ルクス |
| 洗面・化粧 | 300~500ルクス |
| 脱衣室 | 200~300ルクス |
| トイレ | 100~200ルクス |
| 寝室全体 | 50~150ルクス |
| 枕元の読書 | 300~500ルクス |
ただし、これらは一律の正解ではありません。
壁や床の色、天井の高さ、照明器具の位置、目の状態によって、同じルクスでも見え方が変わります。白内障や緑内障などがある場合は、本人が実際に確認して決めることが大切です。
部屋全体を明るくし過ぎない
高齢者には若い人より明るさが必要だからと、強い照明を部屋の中央へ1灯だけ設置する方法はおすすめできません。
光源が直接目に入ると、まぶしさによって周囲が見えにくくなることがあります。また、照明の真下だけが明るく、部屋の隅が暗いと、目が明暗差へ対応できず疲れてしまいます。
おすすめは、次の組み合わせです。
- 天井照明で部屋全体を照らす
- 読書場所にスタンドやブラケットを設置する
- キッチンの手元へ専用照明を設ける
- 洗面台は顔の正面や左右から照らす
- 廊下や収納内部の暗がりを減らす
必要な場所だけ明るさを補う「適所適照」にすれば、まぶしさと消費電力を抑えながら見やすくできます。
読書では500ルクス程度が一つの目安とされていますが、部屋全体を500ルクスにする必要はありません。照度と年齢による見え方
階段と廊下は影をつくらない
シニア住宅で特に注意したいのが、階段と廊下です。
照明の位置が悪いと、本人の身体によって足元へ影ができ、段差が見えにくくなります。
次の対策が有効です。
- 階段の上部と下部に照明を設置する
- 段板へ強い影ができない配置にする
- 廊下の曲がり角にも照明を設ける
- 人感センサー付き足元灯を設置する
- 床と壁の色に適度な差をつける
- 階段の先端部分を床と違う色にする
照明だけでなく、床、壁、建具の色のコントラストも安全性に影響します。
夜間は明る過ぎない足元灯を使う
夜中にトイレへ行くために、寝室や廊下の照明を一気に明るくすると、まぶしさで一時的に周囲が見えづらくなります。
寝室からトイレまでの動線には、低い位置へ人感センサー付き足元灯を設置するのがおすすめです。
- ベッドの足元
- 寝室の出入口
- 廊下
- トイレ前
- トイレ内部
この順番で弱い光を連続させると、床や障害物を確認しながら移動できます。
センサーが反応するたびに強い天井照明が点灯する設定ではなく、夜間は足元灯だけが点く回路を検討しましょう。
スイッチの高さは90~110cmを目安にする
一般的な住宅では、床から約120cm前後にスイッチを設置することがあります。
シニア住宅では、立った状態でも車椅子でも操作しやすいように、床から90~110cm程度を一つの目安にします。
ただし、身長や腕の動く範囲によって使いやすい高さは異なるため、実際に壁へ手を伸ばして確認してください。
スイッチは高さだけでなく、位置も重要です。
- ドアを開ける前に手が届く
- 開いたドアの裏に隠れない
- ベッドから手が届く
- 廊下の両側で点灯・消灯できる
- トイレの外側でも操作できる
- 大きく押しやすいワイドスイッチにする
玄関、廊下、トイレ、洗面所は、人感センサーと手動操作を組み合わせると安心です。
色と明るさを調整できる照明を選ぶ
日中のキッチンや洗面所では、白っぽい光の方が作業しやすくなります。一方、夕方以降のリビングや寝室では、暖かみのある光の方が落ち着きやすくなります。
おすすめの目安は次のとおりです。
- キッチン・洗面所:昼白色から温白色
- リビング・ダイニング:温白色から電球色
- 寝室・夜間照明:電球色
- 収納・作業場所:色を見分けやすい高演色照明
調光・調色機能があれば、体調や時間帯に合わせて変更できます。
ただし、複雑なリモコン操作が必要な照明は、年齢を重ねてから使いにくくなる可能性があります。壁のスイッチだけでも基本操作ができる機種を選びましょう。
デザインハウス甲府からのアドバイス
シニア住宅の照明で大切なのは、「何畳用の照明を付けるか」だけではありません。
確認すべきなのは、実際に生活する場所が何ルクスになるのか、光源が直接目に入らないか、身体の影で足元が暗くならないかです。
特に、寝室からトイレまでの夜間動線、階段、玄関の上がり框、キッチンの手元は、図面上で照明位置を確認してください。
また、将来の視力低下に備えて、照明の追加ができるように配線やコンセントを準備しておくことも有効です。
シニア住宅では、「明るい家」より「まぶしくなく、影が少なく、必要な場所が見える家」を目指してください。照明計画の小さな違いが、将来の転倒防止と暮らしやすさを大きく左右します。










